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2006年05月10日

教えて下さい!「ダイナミックヘッジ」

今日は恥をしのんで「分からない」ということについてエントリーを書かねばならない。しかも金融ネタで。なにが分からないかと言えば、本日の日経新聞4ページに記載されている、みずほコーポレート銀行の『企業向け 為替取引代行』と題されたダイナミックヘッジに関してである。
まず、私に分かることから書けば、「ダイナミック(動的)」に対する「スタティック(静的)」な為替リスクのヘッジ手段といえば、為替先物(予約)か通貨オプションである。為替先物を使えば比較的安価なコストで将来レートを固定できるものの、為替レートが自社に有利に振れた際の為替差益を計上することができない。通貨オプションは、そうした為替差益を理論的には追求できるものの、ばか高いオプションコストが金融機関にもってかれてしまう。ということで、現実には数ヶ月先の為替先物予約でレートを固定している企業がほとんどであるというのが、私の経験からの実感である。
で、「為替予約と通貨オプションに続く『第三の策』と位置付け(本日の日経新聞より引用)」られているというダイナミックヘッジであるが、新聞の説明だけでは腑に落ちないことが多すぎるし、ネットで検索してもあまり引っ掛からないし、英語で検索しても同様である。私の「腑に落ちないリスト」を以下に掲げるので、当該分野にお詳しい方からのご教授をお待ちしております。

①コストは本当に安くなるのか?
日経新聞の比較表には、ダイナミックヘッジと為替予約のコストが同レベルであることを示唆する記号が付されている。一方で、「売買に備えてみずほコーポ銀は二十四時間体勢を敷く。東京、ロンドン、ニューヨークの三ヶ所に少数の売買担当者を配置し、各地の相場を見ながら取引を進める。(本日の日経新聞より引用)」との記述があり、「顧客には手数料がかかる。(引用)」としっかり書かれている。本当に、為替予約レベルのコストが実現できるのか?

②計画レート確保の確実性について
表を見る限りでは、確かに計画レートの確保の確実性については、静的ヘッジに比べて劣ることが示唆されているが、といいながら、「実用化実験ではほぼ確実に計画レートを達成できたという(引用)」などという記述も見られる。どういう仕組みで計画レートが達成できるというのか?

Macquarie Dynamic Currency Hedging

私の探したネット上の文献では上記のものが、本日の記事のみずほのサービスに近いような「気がして」、かつ分かりやすい。上記の文書の3ページには、ダイナミックヘッジによるペイオフは、為替がどちらにふれてもベストストラテジーとワーストストラテジーの中間にくるようなイメージ図が描かれており、これなら私も感覚的に理解できる。
みずほのダイナミックヘッジは一体どうやって計画レートを達成するのか?

③オプションは使うのか?
さきほどURLを掲載した英語の文献によれば、オプションの使用が前提となっているようである。しかし、本日の新聞記事からはオプションを使うことは読み取ることができない。オプションは使うのか否か。また仮に使うのであれば、疑問①に戻るが、本当に低コストは実現できるのか?

まあ、恐らく99%の確率でこんなヘッジのスキームに対して、仕事として関わることは今後ないと思われるのだが、上記の英語の文書では、これを企業の輸出入に対するソリューションというよりは、外貨建資産を持つ投資家向けのソリューションとして記述されていた。とすれば、個人向けのファンドが同様の為替リスクヘッジ戦略を採る可能性があるわけで、そうであれば「分からない」で済む問題ではない。
あと、最近お受けした仕事で、間接的に「証券化」にからむものがあり、あわてて証券化に関する書物を買い漁って事なきを得た経験があった。「証券化」なんてものも、概念を一般投資家に分かりやすく説明するくらいが、仕事として関わる可能性だろうなーと思っていたのだが、本当に人生いつ何にぶつかるか分かったものではない。そういう体験を経て、分からないものはどこが分からないのか明確にしておく意味で、本日のブログを書いた次第です。あと、「分からない」って告白している人に、ダイナミックヘッジがらみの仕事を頼むはずもないので、「魔除け」としての意味もこめて(笑)

Posted by Ken Kodama at 2006年05月10日 11:09
Comments

>通りすがり様

私の質問に対して、これほどまでに丁寧に答えてくださっている点に感動いたしました!!誠にありがとうございます。
オプションブックのPLを作っていた経験もあり、当然「デルタヘッジ」については知っていたのですが、なまじっか経験があるばかりに「デルタヘッジってのはオプションポジションをヘッジする手法」という固定観念が拭えず、「ダイナミックヘッジ」で検索する度に「デルタヘッジ」の内容が現れることに困惑して、「きっと違う内容だけど、おんなじ名前を使っているんだ」と、勝手に納得していました(笑)。そっか、このみずほの「ダイナミックヘッジ」は、ご指摘のように恐らくは「為替予約のポジションからオプションを複製している」のでしょうね。
でも、デルタヘッジを行うには結構小刻みに売買を繰り返さねばならず、そうすると「トータルでみたヘッジコスト」に関して、このサービスの導入を検討している企業は、詳細な検討をする必要がありそうですね!
それにしても、これほど丁寧なご指摘をいただいたのははじめてで、感動しております(笑)これからも私の理解が至らぬ点があれば、ご指摘いただければと思います。

Posted by: 児玉 at 2006年05月12日 10:38

コモディティスワップをぐぐって調べていたらたどりつきました。

デルタヘッジという言葉をご存知でしょうか?
為替であれば通貨オプションに対してリニアな商品(為替予約・先物etc)でその時点の
価格リスクをヘッジすることです。とはいっても価格がある程度動くとデルタも
動くので再調整(為替予約の売り買い)が必要です。
毎日・毎時間デルタをチェックし、この再調整プロセスを継続していけば
オプションの行使期限まで為替レートのリスクに対して中立的になります。

さて、大きく見るとこれは当初取り組んだオプションとその後何度も契約した複数の
ヘッジ為替予約ポートフォリオになります。

ここで、このポートフォリオからオプションを取り除いて考えてください。

複数の為替予約が残りますが、期中のリスク特性は取り除いたオプションと全く反対となります。
これは為替予約を何度も実行して反対のペイオフを持つオプションを作りだしたことと同じになります。

つまり毎日がんばればオプションと同じ経済効果を為替予約で得られる、つまりオ
プションを複製できるということになります。(相場の急変には弱いですが)

ダイナミックヘッジとは望ましいペイオフを持つ原資産とオプションの組合せを、
実際にオプションを購入することナシに継続的に為替予約で調整することで実現することです。

したがって考えとしてはOption-basedですが、オプションは使ってませんし、プレミアムも
払う必要はありません。

まちがってたらスミマセン。

Posted by: 通りすがり at 2006年05月10日 21:51
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