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2006年06月05日

村上 VS バフェット

当ブログにおいて何度となく考察してきた村上ファンドであったが、本日の日経新聞トップにおいて「逮捕」の文字が躍ることとなってしまった。もちろん、法という一線を越えてしまったわけだが、ホリエモン逮捕が敵対的企業買収の全否定につながるべきではないのと同様に、村上氏逮捕がアクティビスト・ファンドの全否定へと発展することは好ましくない。猪瀬直樹氏は某テレビ番組において、ウナギを活かしたまま輸送する際に、水の中にピラニアを一匹入れておくとウナギの緊張感が増して輸送中の死亡率が減少するという例を引き合いに出して(というかこんな話自体の方が私には驚きであったのだが)、村上ファンドは水槽の中のピラニアとして日本経済に貢献した、というような話をしていた。私も全く同感であり、老後資金の運用が企業からどんどん外出しにされる昨今において、ピラニアとして日本経済に程よい緊張感を与える社会的役割を、他のアクティビスト・ファンドは自覚して欲しいところである。
話を転じて、アメリカのバフェット。彼は「オマハの賢人」とも称され、あれほど株式投資で財を成していながら、アメリカ国民の多くから尊敬され続けてもいる。村上氏逮捕を「いい気味」と感じている人が日本国民の過半数を占めている状況とは大きく異なる。バフェットは崇め奉られ、村上氏は唾をはきかけられる。この差は一体どこからくるのか?
両者はともに株式投資において財をなそうとしている点において共通している。また、投資対象とする株式も理論株価に比して割安に推移しているバリュー株であるという点でも共通している。しかし、株式の保有期間という点では、バフェットは長期保有が前提なのに対して、村上氏は短期間での実現益を志向する。この差をかつてのエントリーにおいて私は、「家康型」と「秀吉型」と表現した。バフェットは「上がらぬなら上がるまで待とうバリュー株」。対する村上氏は「上がらぬなら上げてみせようバリュー株」。バリュー株を上げてみせるために行動を起こすから、アクティビストと呼ばれる所以である。あるいは、村上氏は「秀吉型」のつもりであっても、世間は感覚的に「上がらぬなら殺してしまおう」の「信長型」ととらえていたのかもしれず、そこが嫌悪感の源泉なのかもしれない。
バフェットはなぜ「長く待つ」などと悠然と構えることができるのか?それは彼の投資手法が信頼をベースにしているからである。なぜか市場で評価されていないが、経営陣は信頼に足る。そのような経営陣に対して必要最小限の口出しにとどめておきながら、長期的な関係を築くことにより、長期的に大きな利益を手にする。であるから、実はバフェットの投資銘柄には「バリュー株」という条件に加えて「経営陣が信頼に足るか」という極めて高いハードルが課せられている。もちろん言語の壁の問題も大きいが、なぜバフェットが未だ日本株への投資を行っていないのか、その理由について日本の上場企業経営者は自問してみる必要があるだろう。
その一方で、村上氏は過去の失敗体験から、ますます人間不信に陥っていったのは先日のエントリーにおいて考察したとおりである。信頼関係を構築するということは、高度な人間的な成熟度及び精神性といったものが必要となってくる。バフェットと村上氏が基盤としている財務理論はベンジャミン・グレアムに遡ることができる投資理論であることに変わりはなく、左脳の世界では両者には大きな差異はない。「成功」という言葉をここで出すことには若干躊躇せざるを得ないが、両者の「成功」を分かつものは、精神性すなわちスピリチュアリティと言っても過言でないのではないか?当ブログで度々紹介する神戸大学の金井教授の『働くひとのためのキャリア・デザイン』においては、以下のような興味深い記述がある。

(引用始)
『小川千里氏は、神戸大学大学院経営学研究科に2000年に提出された博士論文のなかで、船を動かす専門家にとって、知識とスピリッツの両面が重要であることを詳細に記述した。』
(引用終)

村上氏とバフェットの比較をしている限りにおいては、投資家にもスピリッツが重要であるという仮説が導けるような気がしてならない。
過去何度となく当ブログで取り上げてきた村上ファンドだが、私自身の視点も180度近く転換し、当初はロジックの世界だけで考えてきたものが、個人的な体験も相俟って、スピリチュアリティという視点からも考察できるようになり、それなりに過去1~2年で私もわずかながら成長を遂げた感がある。
私に使命のようなものがあるならば、それは左脳オンリーのガチガチ頭の人々にスピリチュアリティの重要性を説き、それがビジネスと相反するものではないということを、ロジック的にも納得させることであると思うに至っている。村上ファンドは日本経済のみならず、私の成長にとっても貴重な役割を果たしてくれたのだ。

Posted by Ken Kodama at 2006年06月05日 09:22
Comments

>匿名様

書き込みいただき誠にありがとうございます。「多くの点で共感」いただいているとのこと、嬉しい限りです。

>村上さんに対する残念な気持ちよりは日本国民の精神面に対して残念な気持ちが強く残ります。

おっしゃることは私にも分かる気がします。ただ、そんな隣人の気持ちを踏みにじることはつつしむべきであり、我々もまたそうした一面を持つ日本人なのだという認識を新たにして、前に進んでいくべきなのでしょうね。

今後も思うところがありましたら、匿名で構いませんので、ご意見をお待ちしております。

>masato様

書き込みいただき誠にありがとうございます。
私もご指摘いただいたとおりだと思います。特に挙げていただいた3氏のような偉大なリーダーであれば、なんらかの経営哲学を持っており、そればビジネスに活かされているのだと思います。北尾氏は特に過去の経験上、「株式市場のモラル」というものに関して、確固たる倫理観を持っているように思います。
今後も思うところがありましたら、書き込みをお待ちしております。

Posted by: 児玉 at 2006年06月06日 11:22

以前、稲盛和夫さんや、松下幸之助さん、北尾吉孝さんの著書などを読んで

「倫理観や道徳心ってのは、冷徹で厳しい競争社会や市場主義とは一切関係ないもので、むしろ企業の成長の足かせにさえなるんではないかと考えていたのですが、実際はそうでもないのかもしれない。」

と考えたことがあります。

今回のスピリチュアリティの重要性という話に共通点があるような気がしたのでコメントさせて頂きました。

Posted by: masato at 2006年06月05日 11:09

昨日からここの内容を拝見させており、
多くの点で共感しております。

現在ニュースを見ておりますが、私個人の感情としては
「残念」な気持ちが残ります。

村上さんの周りにどういった状況があったのか、
真偽はわかりませんが、村上さんに対する残念な
気持ちよりは日本国民の精神面に対して残念な
気持ちが強く残ります。何故か言葉には出来ない
のですが、児玉さんがおっしゃる事に大きく共感
しています。

まだ村上さんの会見を見終わっていない個人的な
意見ですが、この度児玉さんのお話を拝見でき、
また、村上さんの話だけでなく他の記事も大変
勉強になります。

途中になってしまいますが、ちょっと村上さんの
会見に集中しようと思います(笑)割と元気に発言
している村上さんを見て幾分嬉しいです。

また今後とも拝見させていただきますので、今後
とも楽しく拝見させていただきます。

Posted by: 匿名 at 2006年06月05日 11:08
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