MBOによる非公開化というのは、今回が初めてではなく、「そういえばワールドでもなんか書いたな~」と思い出し、以前のエントリーを読み返してみた。
新聞とあえて異なる視点から物事を見ようとしているため、「非公開化」という問題に対してはあまり突っ込んで考えていない。唯一、私の当時の非公開化に関するスタンスとして明確な記述があるのは、以下の文章くらいであろうか?
(コピー始)
仮にこのMBOが買収防衛目的であったのなら、会社法とにらめっこした小手先だけの株式分割や新株発行権の付与といった防衛策と異なり堂々としたもので、私好みではある。
(コピー終り)
私のirrationalな右脳的には「MBOは堂々としていて好き」なのだが、正直なところこの感覚とフィットした論理的にも明晰な文章を書くことは、今もって自信がない。MBOという問題に対しては情報収集という基本的な段階すら未だ実施しておらず、まだ自らの信念が形成されていないのだ。したがって、当ブログを読んでいらっしゃる方からのご意見を賜れれば、非常に嬉しい限りです。
まあ、これで終わってしまっては元も子もないので、何かしらの足しにならないかと、すかいらーくの開示資料を見に行ったのだが、ここでは、「正々堂々」とは全く異なる「卑怯」に感じられる面を発見するにいたったのである。
すかいらーく社の資料の4ページには「従業員の参加も視野に入れたバイアウト」と称して、MBOにEmployeeをはさみこみMEBOなる用語を掲げている。短絡的に思考すれば、これはガチャガチャと五月蝿い株主を排除して、代わりに「物言えぬ株主」としての従業員を株主に据えようという、なんともご都合主義に見える施策に見えて仕方がないのだが、いかがなものか。同開示資料の3ページあたりまではしきりに危機感をあおっており、こうした会社の株式を半ば強制的に購入させられる従業員はたまったものではないだろう。私が忙しくて新聞をきちんと読んでいなかったからかもしれないが、今回のMBOがただのMBOではなく、従業員を巻き込んだMEBOである点に触れた新聞報道・解説を見た気がしない。
では、仮にこのMBOが従業員を巻き込まない形の、経営陣が100%株式を買い取る形のMBOなら、これは「良い側面」が多いのか「悪い側面」が多いのか?この良し悪しを「現株主」「経営陣」「会社」の3つの観点から考えてみることが有用であろう。
まず、現株主であるが、これほど危機感を醸成する開示資料を見せられた上で、十分なプレミアムを載せた価格で株式を買い取ってくれるという提案を聞いて、悪い気がする株主はいないだろう、今の日本には。しかし、経営陣が株式を買い取るからには、今後数年間はリストラ関連で決算が思わしくなかったとしても、将来的には再上場でキャピタルゲインを得る目算があるのであろうから、そうした長期的な利潤追求の場を奪ってしまうことに関して、違和感を拭えない。一度上場した子会社を親会社が非公開化する動きが最近多いが、そのときもマスコミ(や私)が批判する論調はまさしくここにあったはずであり、MBOでも同様の側面が議論されるべきではないかと思う。
次に「経営陣」だが、非公開化することにより、うるさ型の株主からの声に悩まされずに、長期的な経営に専念できるというメリットが大きい。しかも、そのようなメリットを享受するために、自らが株式を購入するという、大きなリスクを背負っているわけである。経営陣はMBOにより、リスクに見合ったリワードを手に入れられるのであり、従業員に転嫁したりすることなくリスクを引き受ける覚悟さえあれば、経営陣にとっては理想的なオプションの一つといえよう。
最後になったが、「会社」にとってはどうか?ここが恐らく最も難しいのではないか?短期的な決算発表に振り回される株主達の動向を「長期的な視野にたった経営を実践する上でのノイズ」と考えるのであれば、こうしたノイズを遮断するMBOは「会社」にとってプラスである。しかし、一見ノイズである「株主」と「経営陣」の相克こそがすなわち「ガバナンス」なのだ、と考えるならば、MBOにより「株主=経営陣」となってしまいガバナンスが機能しなくなってしまうため、「会社」にとってはプラスとはならない。その顕著な例が「コクド」であり、堤家の相続税の評価額を下げるという目的のもとに、株式会社であるにも関わらず大きな利潤を追求することが放棄され、結果として「あーなって」しまった。
・・・と、ここまで書いて上記を読み返してみると、私の「思考プロセス」を考える上で、実に興味深い。当初、なにがしかのものが書ける自信もないまま、このテーマで書き始めたのだが、まあ、それなりのものが書けてしまった。その助けとなったものは、一つは開示資料を実際に見たこと。これによりイメージが膨らみ、とっかかりができた。また、第二がより重要なのだが、「良し悪し」のような曖昧とした感情を、「誰にとって」という視点、すなわち「株主」「経営陣」「会社」という視点を自ら提示したら、とたんに筆が進みはじめた。本日のエントリーは極めてリアルな、「問題解決及びロジカルシンキング」の事例としても、鑑賞に値すると思います(笑)。
Posted by Ken Kodama at 2006年06月14日 10:19>Kiefer様
書き込みいただきありがとうございます。
MEBOは"Managment Employee Buy-out"の略で、経営者と従業員が共同で行うBuy-outのことですね、私も今回はじめて知ったのですが。
"Buy-out"と検索するか"Buyout"と検索するかによって結果は異なるのですが、検索結果は日本語のサイトが多く、悪名高きMSCBほどではないにせよ、検索結果からも日本的なスタイルであることが窺われます。
今回のすかいらーくのスキームに関しては、本日の日経新聞に掲載されていますが(といってもドイツでは購読可能なのでしょうか?)、一旦投資ファンドが出資するSPCを設立した上で、そのSPCとすかいらーくが合併して新法人を設立するとのことのようです。経営陣と従業員の出資分はわずか3%と記載されており、この程度であれば従業員といってもおそらくは役員クラスに限定されるのではないかとの気がします。
>MEBOなる用語
むかし流に言えば、「株式会社から有限会社への組織変更」、でしょうか(違ったらご指摘ください)。今はもう有限会社は新規設立できないそうで、そういう手法はあり得ないんでしょうが。
自分もMBO自体は小手先でどうこうするよりは好みではあります。それで本来的な目的、要するに再建ができる環境を構築できるのであれば。
Posted by: die Kiefer at 2006年06月14日 17:47