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2006年07月04日

「empathy」と「営業」

もう1件、7月3日号のビジネスウィーク誌からのご紹介。1件しかネタにしないと費用対効果の観点からもモッタイナイし(笑)。記事は"Death of a Pushy Salesman(押し付けがましいセールスマンの終焉)"と題した108ページの記事。アルテラという会社が営業マン研修において、「empathy(共感)」を重視した研修を採り入れたというのが、記事の概要である。
まず、この記事に着目したのは、私の個人的な体験という伏線がある。某社の企業研修において、入社2年目くらいの方々を前に話をさせていただいたとき、一人の受講生の方が「顧客の悩みに共感することが大切だと考える。」という趣旨のことをおっしゃった。その方は営業職だったのだが、入社2年目くらいの営業職なら「若さ」を武器にした「パワフル営業」を展開しているか、あるいは本の虫タイプの人なら「ソリューション営業」といった言葉が飛び出すのが関の山だろうと、認識の甘い私は高をくくっていた。ところが、その方は「聞くことの大切さ」を越えた上で、「共感することの大切さ」とまで言い切っている。最近の若い人は、「超空前の売り手市場」と言われた我々と違って、なんと優秀なんだろうと感嘆し、素直にその感嘆を言葉にして講義を続けた、という体験があって、この記事を目にしたのである。
まず、なぜ私があえて「empathy」と英語で書くかといえば、「私は英語ができますよ」というアピールは理由の10%ほどにすぎず、実は「共感」と翻訳される英語は別に「sympathy」があり、この二つは似て非なる言葉であるからだ。どう違うのか?多分こちらの記事の説明が一番分かりやすい。

(引用始)
The Nineties have blurred the original distinction between sympathy and empathy and the dictionaries have followed suit, but just for old times' sake, here it is: We sympathize with people whose troubles are different from ours; we empathize with people in the same boat. "I feel your pain" is empathy, but "I can imagine your pain" is sympathy.
(引用終)

自分とは異なる悩みを持つ人に対する共感がsympathyであり、同じ悩みを持つ人に対する共感がempathyである。したがって、empathyの方がより深いレベルの共感であるといえる。相手の悩みを自分のものとして共感するためには①それだけ自分も豊富な体験をしていなければならず、また②そうした体験に対する鋭敏な自己認識が必要となる。そこで、このアルテラ社が実施したトレーニングというのは、まず「自分を知ること」から始まり、心理学のアセスメントとしてよく使われるマイヤーズ・ブリッグス・タイプ・インディケーターを使用して、自分のパーソナリティタイプを把握することから始まる。営業研修自体は私は担当したことも、今後も担当するつもりもないのでいわゆる「一般的な営業研修」を知らないのだが、なんとなく営業研修としてはかなり「深い」という印象を受ける。
なぜ、「empathy」が営業にとって重要となるのか?記事とは離れた私なりの意見を述べさせていただけば、それは恐らく『フラット化する世界』や『ハイ・コンセプト』で述べられていた、インドの脅威にも通じる部分があるだろう。たとえばシステムの営業の場合、価格面ではインドのベンダーには太刀打ちができない。今は「ソリューション」が彼等に対抗する武器になるとしても、所詮それはロジカル・シンキングの範疇であり、インド人の得意とするところである。そこで登場するのが、右脳領域で行う「共感」である。少なくとも、インド人には「アウトソーシングで仕事をインドに持っていかれる」というアメリカの顧客の悩みを、sympathyすることはできても、empathyすることはできない、絶対に(笑)。empathyは『ハイ・コンセプト』で述べられていた6つのキーワードの一つでもあるのだ。
とここで思うのは、あの2年目の方は、私がダダダっと書き上げた上記のごとくのバックグラウンドも持ち合わせた上で、「共感」という言葉を使っていたのだろうかということ。そうだとしたら、完全に脱帽である。日本の未来は明るい!!

Posted by Ken Kodama at 2006年07月04日 09:46
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