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2006年07月12日

個人でも見抜ける「収益計画の疑問」

本日の日経金融新聞では、2社の収益計画に対する「疑問の声」をとりあげる記事が掲載されていた。一社はMBOを発表したすかいらーくであり、もう一社はJAL。このような会社の作成する収益計画については、個人投資家はただだまって受けいれるしか手立てがないと考えられている方が多いと思う。しかし、極めてローテクな方法で、経営陣が作成するビジネスプランを批判的に検討することは可能である。アナリストと一般投資家のアクセスできる情報量については、その格差は10年前に比べれば格段に縮小している。大きく異なるのは、どれだけの時間を収集した情報の分析に費やせるかであり、もしこのブログをお読みの方にリタイアされた個人投資家の方がいらっしゃれば、保有する株式のビジネスプランを当エントリーを参考にしながら、詳細に検討されるのもよいと思われる。

①アサンプション(前提条件)を疑う

収益「計画」というくらいで未来のことを扱っているのだから、未来の数字を作り上げるには、当然のごとくなんらかの前提条件をしかねばならない。ビジネスプラン作成にあたって前提条件を開示している企業は少なくなく、例えば本日の日経金融新聞で槍玉に挙げられているJALの中期経営計画の前提条件は、以下のリンクの文書の34ページにまとめられている。

JAL中期経営計画PDF文書

このアサンプションに対し、日経金融新聞では以下のような疑問を投げかけている。

(引用始)
『しかし燃油価格の指標となるシンガポールケロシンの前提は1バレル75ドル。足元は85ドルと高止まりしており、5億円の黒字など吹き飛びかねない。』
(引用終)

このように個々のアサンプションを現状のレベルと比較するだけでも、有意義な検討が加えられる。調べようとする過程で、マーケットに対して有意義な学習を得られることも期待できる。時間と興味さえあれば、お手持ちの株式の企業でチェックされてみるといいと思う。

②現在の収益と将来の目標額を比較する

すかいらーくの収益計画に対しては、現在の収益(CF)と将来の目標収益(CF)を比較する形で、以下のような疑問が投げかけられている。

(引用始)
『同社によると、店舗閉鎖などで200億円程度までいったん落ちる(前期は300億円程度)キャッシュフローを、最終年度には400億円程度に改善するというシナリオというが、アナリストの間には、「既存店の改装だけではさほど大きなキャッシュフローの改善は見込めない」(国内証券)との見方が優勢だ。』
(引用終)

また、営業利益ベースでは、4年後の目標値は前年度に対して2.7倍の水準に設定されているという。店舗改装だけで2.7倍にまで営業利益を増やせるのか?これが某国内証券のアナリストが呈している疑問である。一般的には、ビジネスプラン上の目標値は現時点よりもかなり上乗せがされているものだが、個人投資家としてはその上乗せ幅が新たな施策群によって裏打ちされているか、少なくともざっくりとは検討してみるべき余地はあるだろう。例えば、すかいらーくが「積極的な新規出店」のような施策を掲げていたとすれば、議論は別種のものとなっていたであろう。

もちろん多くの証券アナリストには深い業界知識が備わっており、それがゆえに高度な分析がなせるわけだが、その出発点は我々にもとっつきやすい上記のような一般常識をベースにしたアプローチだったりする。もちろん個別株への投資で継続的に利益を挙げるのは至難の業だが、このような「簡単にできることをやらず」して損失を被っているとすれば、それは投資などではなく博打に等しいのだ。

Posted by Ken Kodama at 2006年07月12日 09:37
Comments

>ヤマアラシ様

再度コメントをいただきありがとうございます。
私自身も「バリュー」と「グロース」という定義をあいまいにしていた感が否めなく反省すべき点が多々ありますが、「バリュー」と「グロース」という用語には理論値に比して「割安」「割高」という意味合いや、平均値に比して「低PER(あるいはPBR)」「高PBR」という意味合い等の様々な意味がこめられていることが多いようで、ご指摘のおかげで論者も読者も気をつけてかかれねばならない用語だと認識するにいたりました。ですから、

>本来グロースは”成長”なのですから、”割安”と両立しうるはずです。

というヤマアラシ様のご指摘は正しく、また同時にバリューを機械的に「低PER(PBR)」と解するなら、「割高のバリュー株」というものも存在するといえるでしょう。言葉遊びみたいになってしまいましたが(笑)。

さらに考えてみると「割安」「割高」という言葉も実はあいまいで、「平均的なPERやPBRに比して割安・割高」という意味合いで使っている人もいれば、「理論価格に比して割安・割高」という意味合いで使っている人もいることでしょう。

この種の議論を行うにおいては、言葉の定義を厳密にせねばならないということを痛感いたした次第です。

翻って、冒頭に引用いただいた私の「小型グロースにむしろアノマリーがある」と書いた文章中での「グロース」の意味合いは単に「高PER」という意味合いで、ボーグルの著作ではファンドを「バリュー・ブレンド・グロース」と「大・中・小」の3×3=9に分類した場合、アクティブファンドのリスク調整後のリターンが唯一インデックスファンドを上回っていたのが、「小型グロース」であったとした記述があったため、私がこれは「アノマリー」ではないかと記した次第です。もっとも、ボーグル本人はインデックスファンド会社を経営している方ですから「単にデータの異常値のせいかもしれない(引用)」と解していますが(笑)。

最後にヤマアラシ様のサイトが、当ブログの不具合により表示されていなかったため、下記に掲載させていただきます。今後もお気づきの点があれば、是非書き込みをお願い致します。

http://www.k4.dion.ne.jp/~value/

Posted by: 児玉 at 2006年07月18日 10:22

度々すいません。先ほどの補足をさせてください。

>アノマリーが存在するのはむしろ「小型グロース」なのではないでしょうか?

この文脈でのグロースはバリューの対語、つまり普通現在の利益&資産水準から見て割高株を意味していると考えられますが、「小型グロース」が世界各国で長期的に存在していくことを体系的に説明できるロジックが思いつくでしょうか?グロースが”割高”という意味であるなら、すでに市場の注目を集めているのだから、人間の認知エラーによる妥当価格と、現在価格の差が生まれにくいような気がします。小型であるから、投資家の見落としにより成長性が正しく評価されない、ということになるのでしょうか?

現在、いわゆるバリュー効果は、小型株または何らかの理由によって注目されていない銘柄は人間の認知エラーにより、妥当な価格よりも低すぎる水準まで売られすぎてしまう、というロジックで説明されているようです。何十年にも渡り、世界各国でバリュー効果が認められるのは人間の認知のエラーが容易には解消されないことを物語っています。私は”行動ファイナンス”信奉者ではないのですが(社会科学の世界で絶対的な真理をつく理論があるとは思っていないので)、バリュー効果は今後弱まりこそすれ、完全にはなくならないのではないかと思っています。それは投資家が機械のように判断できないからです。一部の投資家が”清原銘柄”を追いかけたぐらいでは市場全体が効率的にはならないのではないでしょうか。そもそも、追いかけるのではなくて先回りしてみなが買っていないと”効率的”になってはいないですし。

スタイル別のインデックスに見られる"グロース”の言葉の定義には問題があると私は思っています。本来グロースは”成長”なのですから、”割安”と両立しうるはずです。割安かつ成長性のある銘柄であれば、インデックスより長期的にみてリターンが高くても納得できます。なんだか、金融商品によくある言葉のごまかしみたいです。

いずれにせよ、本当に大切なのはどのような理屈をつけるか、ではなくてどのような現象が継続的に観察されるのか、なんですけどね。以上、素人個人投資家の感じたことでした。

Posted by: ヤマアラシ at 2006年07月15日 17:49

再びお答えいただきありがとうございました。
1.確かに小型バリューのアノーマリーは消失しつつあるのでしょうね。私のような門外漢ですら知っていますから。それは、バリュー投資家にとってリターンの源泉がなくなることを意味していますが、日本経済にとってはいいことなのでしょう。

>そうした銘柄を排するというのは、ファンド・マネージャーにとって勇気のいる行為ですが。

結局、こうした人の気持ちが正負のアノーマリーを生み出すのですから、定量的に銘柄を選別した例えば小型グロースや小型バリューといったインデックスファンドがあればいいなと思います。メンテナンスコストも安いでしょうし。

2.運用ってとても難しいですね。だから、面白くもあるのでしょうけれど。ある運用方法を人に薦めるためにはできる限りシンプルで、なるべくリスクが少なくリターンが高い方法でなければなりませんが、そんな方法はなかなか・・・・

児玉さんのようなFPの方が、個人投資家の道しるべになっていただけたらと思います。

こちらのブログは面白いコラムが多いので、今後もコメントさせていただくことがあるかもしれません。そのときはよろしくお願いします。

Posted by: ヤマアラシ at 2006年07月15日 14:18

>ヤマアラシ様

再び、書き込みをいただきありがとうございます。難しそうなご質問に思わずむせてしまいましたが(笑)、私のような者の意見をお求めいただき嬉しい限りです。

1.まず前者に関してですが、私にとって日本で「小型バリュー」といって思い出されるのが、タワー投資顧問の清原さんです。彼につづけとばかり、「清原銘柄」をウォッチして買い集める個人投資家が存在すると聞いており、そうであるならばアノマリーは消失しつつあるはずです。かなり「感覚的な」意見ではありますが、アノマリーが存在するのはむしろ「小型グロース」なのではないでしょうか?ボーグルの著作のデータもそれを裏付けており、先日にも書いたような「ライブドア」のような「トンデモ銘柄」を排することで、小型グロースのインデックスを上回るパフォーマンスが実現できるはずです。もっとも、失墜前のライブドアには神がかり的な威力があり、そうした銘柄を排するというのは、ファンド・マネージャーにとって勇気のいる行為ですが。

2.後者に関してですが、そもそもポートフォリオの配分割合(株7、債券3みたいな)を最初から決定しておき、定期的に機械的に「リバランス」を行おうというのが、いわゆる「アセット・アロケーション」というものの考え方です。これを一歩進化させて、「平均PER60越えは異常だから、こういうときは配分割合を「株5債券5」に修正しようよ」という考え方が「ダイナミック」・アセット・アロケーションです。しかし、ダイナミックに配分割合を修正するのはかなり高度な判断が要求される事項であり、個人的には配分割合は一度決めたら固執する方が、「私の性」にはあっています。

また、お気づきの点がありましたら、今後ともよろしくお願い致します。


Posted by: 児玉 at 2006年07月15日 13:12

お返事いただきありがとうございます。

>あくまでも個別株投資を志向する個人投資家の方に、「開示資料」への関心をもっていただきたいとの想いを胸に、このエントリーを書いた次第です。

実は私も”あくまでも個別株投資を志向する個人投資家”です。私は貴重なお金を失いたくないので、専門外なのですが少し勉強して決算短信を読んでいます。多分素人なので読みは甘いと思いますが。でも、周りには確かに全く決算短信も読まずに個別株投資する人もいます。

今後、個人投資家のレベルが全体にもっと高くなれば、見る目も厳しくなり、企業の資本効率、経営効率もそれに合わせて上がっていくのでしょう。なるべく早くそうなってほしいものです。

ところで、本題から外れてしまいますがいくつか質問をさせてください。

1.効率市場仮説では説明できないアノーマリーが各国で長期間に渡って観察されています。低PER、低PBR、リターンリバーサル効果などのかなり単純な指標からみて”安い”銘柄でも市場平均よりリターンが高いようです。また、小型株効果というアノーマリーも存在するようです。一方、TOPIXなど時価総額加重平均型のインデックスでは大型割高株の組み入れ比率が大きくなってしまいます。よって、コスト(リバランスによる売買コストを含む)が安い小型バリュー型の投資信託があればその方がインデックスファンドより良いように思えるのですがいかがでしょうか?

2.バブル期のような日経平均の平均PERが60倍台以上という時期では、ほとんど全ての銘柄がとてつもない成長率を仮定しないと株価の説明がつかなくなってしまうと思います。このような時期には(マーケットタイミングは取ることは難しいでしょうから、例えば機械的に平均PER25倍台以上を目安にするとか)、債券に資金を移すというのはどうでしょうか?

Posted by: ヤマアラシ at 2006年07月14日 22:41

>ヤマアラシ様

書き込みいただき誠にありがとうございます。

>証券アナリストの将来の予測だって、どれほど当てになるのでしょうか。

私の主観では、「エコノミストの予測よりははるかにまし」といったところです(笑)。

>とすると、個人投資家にとっては過去の利益水準を参考にしつつ、来期予想を見る位でよいのではないかと思うのですがいかがでしょうか(長期予測は当てにしない。)

ヤマアラシ様がご指摘の通り、プロにとっても難しい利益予測なのですから、バンガード社長のボーグルやバフェットが言うように「個人投資家はインデックスファンドに長期投資すべき」というのがFPとしての私の信念です。

しかし、そうはいっても個別株投資をしたがる人は後を絶たないわけで、そういう方は「過去の利益水準を参考にしつつ、来期予想を見る」だけでもやっていらしたら、素晴らしいと思います。ただ、ここから一歩進んで「開示資料」等にも細かく目を通していただくと、例えばライブドアのような「トンデモ銘柄」を手にしてしまう可能性は激減するわけです。

あくまでも個別株投資を志向する個人投資家の方に、「開示資料」への関心をもっていただきたいとの想いを胸に、このエントリーを書いた次第です。

また、お気づきの点などありましたら、お気軽にコメントいただければ幸いです。

Posted by: 児玉 at 2006年07月14日 20:18

いつも楽しくコラムを拝見しています。考えてみれば、事業に通じているはずの会社の一年後の利益予想が大きく結果と異なるなんて日常茶飯事なのですから、4,5年後のことなんて分かるはずもありません。個人投資家であればなおさらです。証券アナリストの将来の予測だって、どれほど当てになるのでしょうか。とすると、個人投資家にとっては過去の利益水準を参考にしつつ、来期予想を見る位でよいのではないかと思うのですがいかがでしょうか(長期予測は当てにしない。)。

Posted by: ヤマアラシ at 2006年07月14日 07:48
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