一般の方が海外旅行だ、お盆休みだとはしゃいでいる時期に、私はこれから怒涛の1ヶ月をすごすこととなります。また、更新が滞りがちになることと思われますので、予めご承知をいただければ幸いです。
さて、本題に戻り本日の日経金融新聞のトップ記事はなんとWeb2.0であった。といっても、IR(インベスターリレーションズ)とブログというあまり新鮮味のないテーマなのだが、Web2.0という用語が、日経金融新聞のトップを飾るということは、なかなか象徴的な出来事でもある。ただ単に流行を追っているという側面ももちろん否めないが。念のため、Web2.0という概念について、門外漢の方は下記の著作がお薦めである。
Web2.0については、私はこれはIT業界の人々だけが考えればよい技術的な問題かと思っていた。しかし、実はそうではない、これは人間の欲求の問題なのである、ということに最近気がついて、そうなると最早これはテッキー達ばかりに任せておくことはできない。Web2.0とはいくつかの新しいトレンドをひとまとめに総称する呼称にすぎず、まとめられている一つの側面が、CGM(Consumer Generated Media、コンシューマー・ジェネレーテッド・メディア)という用語で示されるものであり、要は一般人が無償で提供するコンテンツのことである。私もこのブログでは専門外のことにも幅広く口を出すため、このブログもCGMの一つである。
そしてこうしたCGMを整理するためのテクノロジーの一つがいわゆるブログソフトウェアであり、あるいはSNSという会員制のシステムなのだが、研修講師として人の心を扱う私が考えねばならない最大のテーマは、①なぜ人々は無償で貴重な知識を提供し、かつ②その知識が程度の差こそはあれ有用であるか、という点である。
消費者が無償で情報を提供する動機には様々なものがあると考えられる。例えば対人的な動機。ごく親しい友人に近況報告をしたいから、ネット上で情報を発信したいという方々は多く存在する。が、これらの人々は不特定多数から自らの書いたものが閲覧されることを必ずしも好まないため、SNSが最適なツールとなる。対人的な動機を持つ人々が書く情報は信頼できるかといえば、それは当然ながら口コミと同様のレベルに信頼に足る。なぜなら、信頼に足らぬ情報を流し続ければ、友達を失い、そもそもの対人的な動機を満たすことはできなくなるから。
ブログを書く動機となると、これは様々だ。例えば私は、2年間近くブログを書き続けているが、ブログ記事が金銭獲得につながったケースはあまりない。しかしそれでもなお執筆を継続するのは自己研鑽のために大いに有効だからだ。あるいはアフィリエート・プログラムで金銭を獲得しようという動機のもとでブログを書いている人々もいる。しかし、前者のタイプのブログの方が後者のタイプのブログに比べて、はるかに信頼性に足る、あるいはアミューズメント性が高いということを、みなさんは既にお気づきのはずだ。なぜか?
この疑問に対する答えの一端を提供するのが、下記の著作であり、私が久々に感銘を受けた本でもある。
当初は部下育成というテーマの足しにでもなればと思って読んだのだが、扱っている内容は深遠であった。この本で私が得た最大の驚きは「金銭は人を統制する」という事実である。金銭は人々を動機付けるものであると考えられている。お金がもらえるから働く、そして給料がパフォーマンスに比例すればもっと働く。こんな考えのもとに導入された給与制度が、いうまでもなく成果主義である。
しかし、この著作の著者は以下のような興味深い実験を行った。知的好奇心を満たしうるパズルを2つのグループの人々に行わせる。Aグループの人々にはパズルを解くことによる報酬を与える。一方で、Bグループの人々にはパズルを無報酬で解かせる。で、パズルを解いた後の休憩時間に両グループの人々を観察する。すると、Aグループの人々はパズルに目もくれていなかったのだが、Bグループの人々は休憩時間中もパズルに熱中していた。これが金銭報酬の持つ負の側面であり、金銭報酬は我々の内発的な動機付けを放棄させるネガティブな効果をもっているのである。また、加えて金銭報酬は、報酬を獲得するために人が手段を選ばなくしてしまう危険性をも兼ね備えているという。村上ファンドがその好例か。
さて、WEB2.0にこの著作の結論をあてはめてみれば、無報酬で提供されるCGMは、消費者(トフラーの言うところの「生産消費者」)が無報酬で情報提供をしているからこそ、内発的な動機付けが失われることなく、したがって比較的良質な情報が提供されているとの仮説をたてることが可能となる。
無報酬で情報提供する動機は他にもあり、例えば有能な仲間からの承認欲求(自分の力を認められたい)がリナックスという巨大プロジェクトを成功に導いたことは言うまでもない。リナックスを成功に導いた人々の倫理観や動機については、下記の著作が的確な記述をしているようだが、私は買ってまだ「ツンドク」状態のため、詳細は分からない。他のタイプの動機も考えられるはずであり、グーグルの行く末をひたすらウォッチしたり、やれポッドキャスティングだ、マッシュアップだ、とカタカナ用語やテクノロジーに浮かれることが、Webの未来予測に役立つわけではない。
・・・とかここまで書いといて、振り返って私のブログを見れば、アマゾンのアフィリエートへのリンクのオンパレードである(笑)。金銭的な動機に目がくらんだ私のブログの質は低下していくのか?ご心配なく。動機付けれられるほどの金銭は、アフィリエートプログラムからは入ってきませんから(笑)。
Posted by Ken Kodama at 2006年07月27日 16:37