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2006年12月09日

シャインの組織文化論と日本の外資系企業の悪しきカルチャー

終身雇用が暗黙的な前提となっている日本において、「ビジョナリー・カンパニー」という理想郷を実現する現実的な手立ては、恐らく「現場の心に灯をともす」以外にないことは既に下記のエントリーで考察した。

You Put A Move On My Heart(現場の心に灯をともす)

私が比喩的に用いた「現場の心に灯をともす」にあたっては、リーダーがイケイケドンドンで引っ張るという強引な手法よりも、組織文化を変革するというソフトな手法な方が遥かに現実的なのであろう。ということで、組織文化に関して定評のあるシャイン著(キャリア論においてはかなり有名な学者です)の下記の著作をアマゾンより入手してみた。

翻訳本も出版されているようだが、下記のアマゾンのリンクを見る限り、絶版になっている可能性が高そうだ。

400ページ近くある著作の、まだ最初の40ページを読んだだけで、彼の理論をおそらくはきちんと理解していないと思うのだが、企業文化には下記のような3つの層があるという指摘は、なるほどと思った。

1.Artifacts
2.Espoused Beliefs and Values
3.Underlying Assumptions

直訳するとなんだか変な感じになってしまうのであえて訳さないが、1は要は組織内において表面的に観察できる事象のことである。2は一応、共有された信念及び価値観としておこうか。その例として戦略、目標、哲学等が記述されている。3は無意識下で働いている暗黙の前提とでもいおうか。そして、シャインは表面的に観察できる事象だけで暗黙的な前提を憶測することの危険性を唱えている。この節を読んで、私はハタと自らの抱えていた認識の誤謬に気づいてしまった。
最近私のキャリアはファイナンスからヒューマンな領域に大きく転換を経つつあるが、対人的な側面の重要性を中途半端にかじっただけで、私は外資系企業の東京の拠点を「対人的な資質に著しく欠ける人々の集まり」と考えるに至っていた。というのも、例えば下記に掲げるような観察事象を目の当たりにしてきたからである。(以下に記述する事項は、私が勤務してきた特定の企業について述べるものではない。これから私が述べる観察事象は、豊富な転職経験と独立後のお付き合いから抽象化した「一般的な外資系企業の東京の拠点」の話とお考えいただきたい。)
例えば、外資系企業の東京支店では無能である者、失敗を犯した者に対して、「恐ろしい」としか形容し得ないほどの手厳しい仕打ちが下される光景がしばしば見受けられる。電話での罵倒や、怒りをあらわにした文体のメールを「膨大なCCリスト」を通じて流布させたり、といった具合に。あるいは、私が非常に印象深く残っているのは、「上司をいびり出す」という慣習がかなり多く観察されるという点である。外部からマネジャーが採用された場合、部下達によって「無能」と判断された上司は、実際に執拗にいびられ、そして他社への転職を余儀なくされてしまうことが、多々ある。
確かにこれらの行為は著しく思いやりに欠けるが、この原因を個人に帰属させるのは酷な話である。これらの非人間的な行為は、「外資系の東京拠点」という特異な空間の企業文化の副産物と見たほうがよいのであろう。
というのも、多くの外資系企業の東京拠点の共通の「Espoused Beliefs and Values」として、厳格な職務主義に基いた人材採用・異動のポリシーが存在する。あるポストが空けば外から経験者を採用して補充する。マネジャーのポジションがあいても、古参のスタッフを昇格させることは稀であり、またディレクターのポジションも同様に古参のマネジャーの昇格により補充させることは稀である。なぜなら内部昇格は経験者の外部からの採用に比べてリスクが高いし、また外部からの採用により一定の成果をずっと出し続けてきたという成功体験があるから。この成功体験こそが、「Beliefs and Values」を「Espoused(支持される)」の域に高める要因である。
このような「Espoused Beliefs and Values」を持つ外資系企業の東京拠点における暗黙の前提事項とは、以下のようなものであることが想像される。

1.私はJob Description(職務記述書)に記載された仕事は忠実にこなします。(裏を返せば、それ以外のグレーな領域の仕事をこなす意図は毛頭ないということ。なぜなら、やったところで「昇格」のチャンスは外部からの採用者に奪われてしまうから。)

2.他の人のミスは許さない。なぜなら、それは私の仕事を増やすことにつながるから。そして、仕事が増えたところで、私が良いポストや高い給料で報われるわけではない。

3.特に上司のミスや無能さは絶対に許せない。なぜなら、彼(彼女)は私の昇格の機会を奪ったばかりでなく、私の倍近い年俸を手にしている。その上、彼(彼女)の無能さゆえに私の仕事が増やされちゃうなんて、冗談じゃない!!!

実際に私の経験上からも、仕事上では著しく対人的配慮に欠けている行動をとる方も、休憩時間などにお話をすると、豊かな趣味を持っていたり、人間的な温かみに溢れる方であったり、ということが非常に多かった。こうなってしまうのも、(1)リーダーが組織文化というソフトなものに関心を露ほども払っていないか、あるいは(2)悪しき組織文化に気づいていても、そのマネジメント・変革の方法論を知らないからであろう。
組織文化の変革については、シャインの著作のかなり後半部分に書かれているようなので、年明けにでもまた何かしらのエントリーが書ければと思う。

Posted by Ken Kodama at 2006年12月09日 14:21
Comments

>nara 様

ご無沙汰しております!日ごとに寒くなりますが、お元気ですか?
もちろん、日本に進出している外資系企業は多数あって一概には言えないのですが、東京拠点の人数が300名に満たない中小規模の事業所ではキャリアパスが明確でなく、私が書いたような事象はちょくちょく見られるようです。
マイクロソフトさんとは一切おつきあいがないので分かりませんが、あれほどの規模ともなると内部からの昇格とかもあるのではないかという気がします。あくまでも憶測ですけどね!

Posted by: 児玉 at 2006年12月11日 09:43

ご無沙汰しております。
外資系に勤めたことがないので、大変興味深かったです。そういえば、マイクロソフトのマスコミに露出する部長クラスの人の経歴は転職してきた人ばかりですね。そして、継続して露出する人はあまりいないように思います。

Posted by: nara at 2006年12月10日 01:22
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