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2007年03月21日

「負ののれん償却」すんなり理解できたら要注意

先日仕事の都合で成田空港第二ビルより東京までの乗車券を購入し、成田エキスプレスに乗ったときのこと。用あって、京浜東北線に乗り換え、蒲田駅まで足を伸ばし自動精算機にて精算しようとすると300円以上の表示が出る。記憶では東京-蒲田間は百数十円の運賃のはずで、「これは精算機のバグ」と意気込んで若そうな駅員に告げると「成田空港第二ビルから蒲田までの一括の運賃が、成田空港第二ビル-東京間と東京-蒲田間の合計より高くなることは全然おかしくないですよ」と一蹴されてしまった。
この駅員の言うことが全く納得できず、かつ腹立たしい物の言い方だったのでよっぽど粘ろうと思ったのだが、後ろには私が早く終わらないかと待つ乗客の行列ができており、100円程度でわめくのも大人気ないと想い、断腸の思い(笑)でその場を後にした。その後、鉄道に詳しい方に聞くと、確かにそのような料金体系のねじれのようなものは存在するらしく、毎日の通勤ともなると差額がばかにならないので、通勤定期を分割して購入して対策を講じているらしい。
JRのシステムに精通していれば、この料金体系のねじれは「おかしくない」と断言できるのかもしれない。しかし、途中下車した運賃の方が安くなるケースがあるという事象は、一般的な顧客の目からすれば、全く納得しがたい。

この体験談は本日話したいことの前フリにすぎず、本日のテーマは本日の日経新聞15ページに掲載されていた『企業価値を探る』に掲載されていた、以下の一節である。

(引用始)
『負ののれんは、買収先企業の資産に含み損があるなど、帳簿価格より安く取得した際に発生。固定負債に計上され、会計上は二十年以内で償却する。「負ののれん償却額」という営業外収益となる。』
(引用終)

「EX-ビーンカウンター(accounting professionalに対する軽い蔑視用語です(笑))」である私は、当然のことながら、この記述を何の違和感もなく読み飛ばせる。会計に疎い方に若干の解説をしておくと、なにか「わけあり」な企業の買収の値段は、その企業のB/S上の純資産額の金額よりも、安く上がることがある。その場合、買収側の企業が計上する仕訳は、イメージ的に以下のようになる。

(借)資産 XXX(貸)負債 XXX
            現金 XXX
            PLUG XXX

買収金額の方が純資産額よりも小さいので、貸借が一致するためには、何か貸方に入れ込まなくてはならない。それが「負ののれん」である。「負ののれん」は貸方の項目だから、それをP/Lに償却すれば、当然費用ではなく収益となる。
複式簿記というシステムに毒された私には、あまりにも明白な話であるが、一般人としての私に戻って考えると、収益が発生し続ける意味を理解するのは難しい。だって、PBRが1倍未満の「わけあり」企業を買収したんですよ。そんな危なっかしい企業を買ったら、数年間営業外利益が計上されるなんて、おかしいと思いません、フツーに考えれば?
とまあ、こういいつつも、自分の中では説明がついているんです。一人のりつっこみの様相を呈してきましたが(笑)、買収金額が純資産額よりも小さいということは、一つの可能性としては、被買収企業の現時点での損益がマイナスであり、それに基づいて計算されたフローの現在価値がマイナスになっているという事態が想定され得る。買収後も何の経営努力もしなければ、被買収企業からあがる損益はやっぱりマイナスのままで、「負ののれん償却」による収益とオフセットされる、ということ。
読者の皆様にこの説明がしっくり伝わったかは定かではないが、企業の儲けを知るという、ただそれだけの単純な目的のために作成された損益計算書に計上される項目を理解するために、これほどの手間がかかるのは、フツーの一般人から考えておかしい。「負ののれん」を訳知り顔で読み飛ばす私は、あの不親切な蒲田駅の駅員と、「システムの渦中にあって、一般人の心中が察することができない」という点において、なんら変わりはなかったのである。・・・ということで前フリとの関連性はご理解いただけたでしょうか?(笑)
では、どうして会計がこんなにややこしいことになるのかといえば、買収金額なるものは、将来のCFの現在価値をベースに計算されるためであり、会計は客観性を重視するために取得原価をベースに記帳が行われるためにある。その差異を複式簿記の世界で矛盾が生じないように処理しようとすると、まあ、この手の「?」な処理に、一般投資家が苦慮することとなるのである。
最近、物事の根本に疑問を抱くことが多いのだが、そもそも複式簿記が諸悪の根源なのではないかと思う今日この頃。内部統制的な観点からいえば、確かにあんな優れたシステムはないと思うが、財務諸表が複式簿記にひきづられていいのかとも思う。しかし、複式簿記と無関連の財務諸表が登場すると、今度は「外部監査」というものが実質的に不可能になるのかもしれない。
・・・といって、「どうのこうのせい」という結論があるわけではないのだが、時にはシステムの外に身をおいて思考することは大切なのではないかと、改めて思った次第である。 

Posted by Ken Kodama at 2007年03月21日 23:32
Comments

>nara様

ご無沙汰しております。ようやく忙しさが徐々に平常時のレベルに戻って参りました。
しかし、なんと、「横浜→田町」のような近距離ですらそのような現象が起きていたとは知りませんでした!「途中下車した方が安い料金になるなら、安い方の料金設定に合わせる」みたいなプログラムを組んで、料金表書き換えた方が良い気がしますが、でもそうすると、券売機のボタンが異常に増えそう(笑)。
のれんが「つじつま合わせ」というのは、全く同感です。

Posted by: 児玉 at 2007年03月22日 09:39

ご無沙汰しております。
確かにJRの料金は理不尽ですよね。そこまで長くなくても、「横浜→田町(380)」ですら「横浜→蒲田(210)→田町(370)」とした方が安くなるという理不尽なことになっています。田町の一つ手前の品川までと田町から先で値段が全然違うのが理由なのですが、これは酷いですよね。

本題の複式簿記ですが、結局「のれん」の意味不明さが問題なのでしょうか?会社法の本を読んでると、結局「つじつま合わせ」の項目というようにしか思えないのですが…

Posted by: nara at 2007年03月22日 05:19
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