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2007年04月17日

「有限」の中の「成長」という矛盾

(上場された)株式会社とは、その成長を目的とする組織である。成長こそが理論的には株価の上昇を可能にするが、最近新聞で目にすることが多くなったのは、「成長の限界」に関する報道である。最も分かりやすい「成長の限界」はグローバルウォーミングであろう。多くの産業にとって、成長のためには化石燃料の消費が不可欠である。しかし、これ以上化石燃料を消費し続けることは地球温暖化を増進させ、このままのペースでいけば小さな島国である日本が水没する日は遠くはない。また、増加しつつあるM&Aも、株主から受ける成長へのプレッシャーという側面も見逃せない。創造性の乏しい成熟産業の経営陣にとって、M&Aは成長のための起死回生のホームラン的な意味合いを持つ、もちろん実際そうなることは稀なのだが。
昨日NHKのクローズアップ現代のバイオ燃料に関する特集を途中から見て、一点よく分からないことがあった。それは、バイオ燃料と地球温暖化の関係なのだが、本日の日経新聞の13ページには私の疑問に対する一つの解が呈されていた。

(引用始)
『植物は大気中のCO2を吸収して育つ。バイオ燃料を燃やしてもCO2は出るが、生育中に吸収したCO2との差し引きで、エタノール相当分のCO2排出量はゼロと計算されるためだ。』
(引用終)

最初はなんとなく納得してしまったのだが、昨日のクローズアップ現代では、食用の大豆からバイオ燃料としてのトウモロコシへの転作が相次いでいると紹介されていた。ここからは推測だが、それならば、発展途上国などでは、森林・草原を焼き払ってトウモロコシ畑が作られるケースがあるかもしれない。その場合、永遠にCO2を吸収し続けるはずであった貴重な森が失われ、CO2を吸っては出し吸っては出し・・・のトウモロコシ畑がとってかわるわけだが、それでもこのバイオ燃料のCO2排出量はやはり「ゼロ」と計算されるのだろうか???

別に「自動車を捨てよ!文明を捨てよ!」とヒステリックに声高に叫ぶつもりは毛頭ないが、地球という有限性を意識し、そのために低成長へのソフトランディングを念頭に置いた行動をとることが我々に求められていることは、確実であろう。20世紀においては、別に難しいことを考えなくても、「市場」が自然に様々な難問を解決してくれたが、「低成長」へのソフトランディングという命題を「市場主義」に解決を委ねるというのは、はなから論理破綻を招いている感がある。

全く別の興味から読み始めているダニエル・ピンクの『フリーエージェント社会の到来』であるが、何のためらいもなく成長を放棄し、ダウンサイジングに踏み切る人々が現れているという。そう、フリーエージェント達だ。(ちなみに、この本の方が『ハイコンセプト』に比べ、ピンクの体験談が色濃く表出され、読み応えがある。『ハイコンセプト』は当ブログで若干絶賛しすぎてしまったが(笑)、知識が蓄積された今あの本を読み返すと、既によく知られていた事項を「右脳」というキーワードでつなげただけ、といった感が強い。)

(引用始)
『ベンソンは、不愉快な思いをしてまで収入を増やしたいとは思わなかった。(中略)従来の成功の指標だった「拡大」ではなく、従来は失敗の指標だった「縮小」を選択したのだ。しかしベンソンは、事業の縮小を失敗とは考えていなかった。(中略)「仕事はいいものでなくてはならない。楽しいものでなくてはならない。儲かるものでなくてはならない。楽しくなくなれば、仕事を変えたほうがいい」』
(引用終)

ここに登場するフリーエージェント達は、地球の有限性を意識して「縮小」の道を選択したのではない。その動機は、自らの内面の重視、ダニエル・ピンクの言葉に従えば、「自由」「自分らしさ」「責任」「自分なりの成功」の4つの価値観に従って行動した結果である。

「株式会社というのは最大の発明である」とも言われるが、それほどの「陽」があるものであれば必ず「陰」も随伴するのが常である。所有と経営が分離すれば、必然的に所有者たるはその金銭的価値の増大を経営陣に要求し、経営陣はその受託責任を全うせんと、「有限性」を突き抜けてまで「成長」を志向する。一方で、所有と経営が一致するフリーエージェント達は、金銭的価値の際限なき増大を、内面的な満足によってオフセットさせることができる。
昨今の株式非公開化の動きも、「株主からのノイズのシャットアウト」に本音があるようであり、そのノイズとは「絶え間ざる金銭的価値の成長の要求」に他ならない。MBOを推進する企業の経営陣の思想には、「地球という有限性への思いやり」等のものは微塵も見られないが、このような観点から非公開化ということを考えてみてもいいのかもしれない。

本日のエントリーはあまりにも大きなテーマに挑みすぎたため、普段に増して(笑)、考えがまとまっておらず失礼しました。

Posted by Ken Kodama at 2007年04月17日 10:24
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