全く私という人間は、自分がスピリチュアリティに入れ込めば「21世紀はスピリチュアリティの時代だ」といい、哲学書にはまりだせば「これからは哲学の時代だ」というエントリーを大げさに書いたりする・・・と、軽く自虐を交えつつ書き始めながらも、これからはスピリチュアリティも哲学も両者ともにマネジメントに大きな影響を及ぼすと真剣に考えている。
【思考面への影響】
このうち思考面に関しては、既にその萌芽が見られている。今年4月の日本語版HBRのテーマは「弁証法」だったではないか。
私が担当するような、というか世間一般に普及している企業研修で行う「ロジカルシンキング」のメインテーマは2つある。①MECEという、いわば集合論と、②帰納法、演繹法を積み重ねる論理学だ。しかし、哲学の分野から思考面で応用できるものは、これだけに留まるはずもない。上記の弁証法的思考もそうだし、あと野中先生の「暗黙知」の概念も、もとは哲学者ポランニーの提唱したものである。
何事も根底から覆そうとすれば、全て哲学的な課題にぶちあたる。我々が全てゼロから考えるのもよいが、先人のたどった道を活用しない手もない。
なお、余談だが、下記の著作を読んでいて面白い一節を見つけた。
(引用始)
「これは本当の話かどうかわからないけどね。トヨタがレクサスを開発するときに、300人のエンジニアを集めて『メルセデスがクールな理由をすべて分析しろ』と言ったそうなんだ。それで彼らはメルセデス・ベンツを研究し、言語化できない特徴を徹底的に洗い出した。たとえばドアを閉めるときの音とかね。でもその結果、そのドアの音を再現するには、ドアの枠全体が車のシャーシに『同時に』触れなければならないとわかったらしい。もしどこかの箇所が先にシャーシに当たったら、あの音は出ないんだそうだ。」
(引用終)
私も不勉強で上記の話が本当かどうか知らないし、本当であるとするなら既に「有名な」逸話なのかどうかも分からない。本当であると仮定するなら、既に「暗黙知」という哲学者ポランニーが唱えた概念は企業経営に根深く入り込んでいると言えるだろう。
【倫理面への影響】
リーダーシップにとってインテグリティ、モラルといった要素が重要であることは多くのマネジメント系の著作で指摘されている。しかし、これらの著作がその学問的基盤として主に依拠するには「心理学」である。たとえば、「モラルリーダーシップ」みたいな著作は、一章を「Emotion(感情)」にあてたりしている。思えば、前世紀においてはマネジメントは心理学の遺産をかなり引き継いで発展を遂げた。これから一歩先を行く深みのあるリーダーシップを発揮したいのであれば、哲学の遺産に学ぶことが有効であるような気がする。
例えば、自律性の重要性を説くカントの道徳形而上学。その一方で、自由意志を否定するスピノザのエチカ。こうした哲学的アンチノミーに悩み自分なりの答えを出すことが、深みのあるリーダーシップを発揮する上でも重要なのではないかと思う。というか、そう信じたい。私が今まさに悩んでいるところだから(笑)。