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2008年04月02日

サブプライム騒動から金融業界以外の人々が学ぶべき教訓

例年2、3月は忙しいのですが、nara様とsakura様にいただいたコメントへのレスポンスが出来ずじまいでした、ごめんなさいね。そうこうするうちに、新入社員研修のシーズンになってしまい、しばらくはゆっくり出来そうにはありません。
とはいえ、あまりこのブログをほったらかしにしておくのもなんなので、新しいエントリーを書いてみることにしました。それは、本日のUBSの追加損失1兆9000億円の報道がある、サブプライム問題に関してです。以前も昨年の8月20日のエントリーで取り上げましたが、まだまだこの問題、終わるところを見せません。どうして、こんなことになってしまったのか、そしてどうしてこんなに長引くのか?
私もかつて金融業界に身を置いていたため、著名な投資銀行各社の事情は、それとなくは知っています。で、彼等は金融リスクをとる(リスクテーク)ことによって生計を立てているため、リスク管理に対する投資額たるや、半端ではありません。その内訳はシステム投資と、人件費です。金融リスク管理の仕事は、かなりのテクニカルスキルがないと出来ず、リスク管理という裏方の仕事で高報酬を獲得している人々は結構います。にもかかわらず、サブプライム騒動は起きてしまい、そしてその余波はなお続いている。
その原因は私の考えによれば非常にシンプルであり、自らの能力で管理できないリスクを引き受けてしまった、ということにつきると思われます。この問題を考えることは、異業界の人々のリスクマネジメントを考える上でも有用であると思われるため、私なりの考えを以下に示しておきたいと思います。
「自らの能力で管理できないリスク」と私が言う場合に、以下の2つの要素に分解できます。

①リスクの大きさを早期に発見できない
②発見できたとしてもアクションが取れない

まず、前者からですが、投資銀行業界のスタンダードとして、日々ポジションの値洗いをしています。つまり、抱えている債権債務を日次ベースで時価評価しているわけです。(かつては私もこの仕事に忙殺されていました。)で、なぜ毎日時価評価ができるかといえば、時価が日々入手可能だからです。株であれば、それこそ日経新聞からでも東証の終値を入手することができます。つまり、取引所のマーケットプライスです。取引所で活発に取引されていない国債のような商品であってもマーケットメーカーを通じて流通市場は形成されているので、これもやはり日々時価を入手することができます。
一ひねりしないと、時価を入手できないものもあります。金利スワップやオプション等の店頭デリバティブ商品が、このカテゴリーに該当します。しかし、一般的に入手可能な時価を「加工」することで、簡単に時価を産出できます。「加工」とは具体的には、金利や残存期間といった値をブラック・ショールズ式に代入してやる、といった類のことです。
で、ようやく本題のサブプライムがらみの証券化商品ですが、私も詳しいプライシングの理論は知りませんが、サブプライムローンは、アメリカの低所得者層に向けた住宅ローンですから、彼等の延滞率、自己破産率といったファクターが、証券化商品のプライシングに影響を与えることは、容易に推測できます。しかし、こうした情報は、証券化商品保有者が、オリジネーターと余程の深いパイプでも築いていない限り「毎日」入手することは不可能です。
で、政府統計の発表だとか、業界の調査会社からの情報を買ったりするわけですが、彼らもそうそう暇ではないので、データの更新が月次とか、それ以上の頻度になってしまうのです。
他の金融商品は毎日値洗いできているのに、サブプライム関連商品は毎日の時価評価ができない、というのが、私が「管理不能」という厳しい用語を使う所以の一つです。
次に第二のポイントですが、仮に日々の時価評価ができたとしても、サブプライム関連商品に対して日次評価をしたところで、あまり意味がないと考えています。というのも、有効なリスクヘッジの手段がないからです。
よくありがちな「トレーダーが不正を起こして巨額損失を抱えてしまった」等の場合は、そのポジションを売却してしまうか、あるいは、先物等を活用して反対のポジションを形成してオフセットしてしまうことによって、発覚した時点以上の損失を食いとどめることは可能となります。
しかし、サブプライム関連商品に関しては、報道等から類推する限り、リスク回避のための有効な金融デリバティブは存在しないようです。では売却すれば、ということになりますが、このご時勢でサブプライム関連商品を買ってくれる人は、まず存在しません。もちろんやばい債権(Distressed Assets)を売買するハゲタカ的な人々も存在しますが、そうした人たちは足元を見て、徹底的に買い叩きます。
たとえリスク値が分かっても、ポジションを解消することもヘッジすることもできない、すなわちリスクをコントロールする手立てがないわけなのです。

ということで、我々一般人が学ぶべき教訓としては、コントロールできないリスクはテークすべきではない、というものが導出できるかと思われます。
私にとっては、サブプライム問題はこれほど単純な黄金律からの逸脱にしか見えないのですが、なぜ優秀な投資銀行の経営陣が逸脱してしまったのか、というのもなんとなく分かる気がします。その辺については、また別の機会にでも。

Posted by Ken Kodama at 2008年04月02日 12:34
Comments

>MikeRossTky様

しばらくネットから離れていたため、書き込みに気がつかず失礼しました。あと、ロスさんのブログのURLが正しく表示されていないため、以下にコピーしておきます。

http://mikerosstky.spaces.live.com/

>そのリスクを無視させたのが、証券化した商品に対して巨額な資金がつぎ込まれたことだと思います

ご指摘された点に私も同感です。オリジネーターがローンを証券化して販売するためには、かなりの規模でローンを「バンドル」する必要があり、そのためには多くのローン契約を必要とします。そうした過程において、「いずれは売却されてしまうローンなのだから」と、オリジネーターの審査が甘くなったであろうことも、推察されます。

しかし、本当に損失計上は底なしですね(笑)いつまで続くやら・・・

Posted by: 児玉 at 2008年04月16日 11:06

Kodama-san,

今回の問題の要素の一つは確かにリスク管理の不備と思いますが、そのリスクを無視させたのが、証券化した商品に対して巨額な資金がつぎ込まれたことだと思います。その結果、銀行はリスク管理がされていないローンを作り、ローンを”売る”現場に売るプレッシャーが入ったと見ます。

リスクが把握できれば、リスクは管理できます。証券化の乱用と証券化がもたらした大量な資金。悪いコンビネーションですね。

MikeRossTky

Posted by: MikeRossTky at 2008年04月05日 23:28
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