2004年06月30日

マイクロソフトの画期的な検索エンジン新技術

久しぶりに検索エンジン関連で、eNatural.orgさんのサイトの記事を参考にさせていただきました。
上記サイトが参照しているソース記事によれば、従来の検索エンジンのように入力された語句を含むサイトを機械的に表示するのではなく、その検索の「意味」まで考えるというのです。具体例として、ゲイツ氏は「ユーザーがコンピュータのチップのことを調べている場合は、ポテトチップに関することは表示しない」と述べています。
この報道は色々な意味で大変興味深いものです。第一にグーグルVSヤフーVSマイクロソフトの検索エンジンバトルにおいて、今後マイクロソフトがかなり優位を築くものと思われます。ただ、マイクロソフト製品はよく知られているように大量にバグを抱えたままリリースされますから、導入初期は難しいロジックを加えたことにより、却っておかしな検索結果が表示されることも予想されます。また、ヤフー・グーグルのブランドもそう簡単には突き崩せないでしょう。しかし、マイクロソフトの検索結果の品質の優位性が浸透していけば、確実にシェアを奪うことが予測されます。ゲイツ氏いわく、この技術は「10年間の言語学の研究」により誕生したものであり、資金量や人材面で劣位にたつグーグル・ヤフーが同じ土俵で渡り合うのは困難と思われます。
第二に検索技術をベースとした広告においても、マイクロソフトの技術をベースにすれば、より関連性の高い広告が表示されることとなるでしょう。例えば、会計関連の専門的なブログとして、こちらの「経営・会計通信」というサイトを私はよく拝見させていただいているのですが、トップ部分に表示されるグーグルのアドセンス広告の文章との関連性の悪さといったらありません。こちらのサイトを訪れる方は、会計の学問的で高尚な議論を楽しみにサイトを訪問しているであろうに、表示されるアドセンス広告は消費者金融だったり、低価格で会計事務を代行する会計事務所のものであったりと、想定訪問者との関連性は限りなくゼロに近いものとなっています。ここで、文章の意味を考慮した広告をマイクロソフトがはじめたら、コンテンツとの関連性という点において、グーグルは大きく引き離されてしまうことでしょう。
第三の興味は個人的なものなのですが、私は大学時代、言語学を学んでいたことがあり、今回のマイクロソフトの技術が言語学のどの分野(チョムスキーの生成文法、形式意味論等々)を応用したものであるのか、という点に興味があります。
リリースは7月からということであり、日本でも同時期に開始されるのか定かではありませんが、この新技術が信頼たりうるものとなったとき、ウェブビジネスは新たな節目を迎えることとなることが予想されます。

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2004年06月29日

病める厚労省

先日、出生率が厚生労働省の予測した1.32を大きく下回る1.29を記録して話題となりましたが、その厚生労働省は2050年の出生率は1.39が達成可能だと主張しているとの報道です。彼等の主張する根拠は上記リンクより記事原文を読んでいただくとして、私には46年後に1.29が1.39に回復するとは到底思えません。
なぜ、彼らが我々の感覚とかけ離れた主張をするかといえば、先日可決された年金改革法案の前提が覆るのを嫌うからであり、問題を蒸し返すことで、面子がつぶれたり、手戻りの作業が発生したり、実はそういった次元の低いことが、本当の原因なのではないかと思います。
社会保障制度の抜本的な改革を目指す動きについて、先日の弊社記事で触れましたが、このような厚生労働省の態度を見ていると、国土交通省に骨抜きにされてしまった道路公団民営化案のような事態が、再び起こるのではないかという不安が、どうしてもぬぐえません。
官僚とはみなこうなのかといえば、金融庁などはUFJと激しくやりあったりして、どちらかといえば「改革派」の省庁といえるのではないでしょうか?この違いはどこからでてくるのかといえば、金融庁の親玉が民間人というのも多少はあるでしょうが、要所のポストに民間でキャリアを積んだ人々が入ってきていることが大きいと思うのです。たとえば、金融庁の求人サイトを見ると、かなりの高度な専門的知識を要する民間人を募集していることがわかります。また、これらの民間出身官僚はその後一生金融庁でサラリーをもらい続けていくのかといえばそうではなく、役所で働いていたという箔を得た上で民間に戻り、外資の金融機関で再び高給をもらえるポストについたりしているのです。そうした、官民の流動的な人材の出入りが金融庁を、まともな役所にかえたのではないかと私は思うのです。
社会保険庁にも民間人を入れるとの報道がありますが、こうした一度きりの採用ではあまり効果は期待できず、年金数理の専門家(アクチュアリー)等が民間の生損保と厚生労働省を行き来する時代が到来してはじめて、厚生労働省がまともな数値にもとづいた年金改革案を立案してくれるのではないかという気がいたします。

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監視されるソフトバンクBBの従業員

一連の顧客情報流出騒ぎの末に、ソフトバンクが打ち出した対策は、この報道にあるように、社内に外部のセキュリティー専業者が運営する「顧客情報」監視センターを設置することでした。
「顧客情報を扱う端末の画面やキーの入力状況を見張ったり」、「カメラでも監視し」たりするそうで、情報を預ける顧客としては、かなり安心感が得られる対策になっていると思われるのですが、懸念されるのは同社で働く従業員への影響です。
2003年度のソフトバンクの決算発表において、孫氏はブロードバンドビジネスの顧客の生涯価値が4,000億円と算定されると胸を張りました。つまり、YahooBBの既存ユーザーに今後ADSLの高速化やBBフォン、無線LANパックなどの付加価値メニューを追加し、利益を拡大していくという目論見です。しかし、そうした付加価値メニューの販売にあたって、販売担当者は、当然顧客情報を参照せざるを得ず、どういう属性の顧客にはどういうアプローチをしようと、考えにふけるわけです。そういうクリエイティブな作業をしているそばで、キーストロークを見張られていたり、カメラで監視されていたりしたら、よいアイデアは浮かんでくるのでしょうか?常に監視の目を気にしながら働かざるを得ないとなると、人間の心理にはどのような影響が与えられるのでしょうか?
以前の弊社記事にて、個人情報保護法対策は、情報システム部門だけではなく、マーケティング・営業部門も含めた社内横断的なアプローチで対処せねばならない旨を指摘しましたが、ソフトバンクBBの動きを見ると、人事部門もこの課題に大きな役割を担う必要があることを感じます。

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2004年06月26日

世帯の所得格差が最大に

家計の所得格差が広がり続けているとの報道です。何によって所得格差が広がっているのかと結論づけているのかといえば、ジニ係数と呼ばれる数値が上昇したからで、この数値はゼロから1までの値をとり、ジニ係数が大きいほど所得格差が大きいことを示します。「厚労省は高齢化が進んだことや1世帯当たりの家族の数が減っていることが響いていると分析している。」とのことですが、森永卓郎氏の「年収300万円」のキーワードに象徴される、所得の二極分化の進展により、「勝ち組」と「負け組」がはっきりと分かれてきた事実にも目を向けなければならないでしょう。
新聞紙面では、橘木俊詔京大教授のコメントとして、「このまま富裕層と貧困層との格差が広がる社会でいいのかどうか、日本は選択の時を迎えている。」と記されています。意見の分かれるところですが、私としては、所得の二極分化については、もう流れに抵抗できないのではないかと考えています。ただ、私が問題に思うのは、日本の労働市場は深い考えも議論も準備もないまま、企業の自主的な改革努力に引きずられて、過去10年間で急速にアメリカ型の実力主義的な雇用形態に移行してしまったことです。
もっと具体的に問題点を指摘するならば、この所得の二極分化の流れの中で、大量のフリーターと呼ばれる人々が出現しました。彼等は、厚生年金に加入できないので、国民年金の被保険者となります。ところが、国民年金保険料を払ったところで、自分達が年金を受給する側になれば、確実に払い損になるのが目に見えていて、彼等は国民年金保険料を払おうとしません。したがって、このまま、なんの法改正がなければ、30年後には大量の無年金者が続出することが目に見えています。では、彼らを福祉の対象として生活保護で面倒を見るかといえば、生活保護の世話になるのは抵抗があるでしょうし、その財源はどうかと言えば、現時点で政府が考慮している可能性は限りなくゼロに近いでしょう。
このような時代において、我々個人にできることはなんでしょう?私は2つあると考えます。第一は、年金・医療保険等の所得の再分配機能を労働市場の変化に合致したものとなるよう、選挙等を通じた政治的な活動に関心を持つことです。第二は、なんとかして「勝ち組」に入ることを考えることです。しっかりとキャリアプランニングを行い、年収アップを目指したり、場合によっては自分でビジネスを開始する「起業」という選択肢で一発逆転を目指すことも可能です。前者はみんなで助け合う選択肢で、後者は競争に勝つ選択肢といえるかもしれません。
いずれにせよ、貧富の格差が拡大していることは、数値により裏付けられ、我々は無策でいるわけにはいかないことを、認識いただければと思います。

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2004年06月24日

吉野家に学ぶフレキシブル経営とパートタイマー人件費管理

吉野家が不採算店20店の深夜営業を休止するとの報道です。既に既存店売上高は4月から3割減のペースが続いており、この決断を迅速と呼べるかどうかは評価は分かれるでしょうが、お客様の利便性等も考慮に入れると時期的にも適切と思います。売上が回復しないときには、コスト減でなんとかしのぐというのはビジネスの鉄則ですが、吉野家は深夜営業を休止することにより、パートタイマーの人件費と光熱費を削減することが可能となります。言うまでもなく、パートタイマーの人件費削減の方が金額的にもインパクトが大きいのですが、ではパートタイマーの人件費とはどのように管理すればよいのでしょうか?
新聞紙面には「原則として赤字になっている時間帯に限り営業を休止」と書いてあります。ということは、吉野家は月次決算や日次決算を超えて、時間帯別の損益管理を行っていることになります。これは最新鋭のシステムがないとできないのではないかというと、そんなこともありません。小売業であればPOSレジはあり、したがって時間帯別の売上・客数・客単価は存在しますし、原価テーブルをあわせれば、時間帯別の粗利も簡単に算出できます。それにあとは人件費を合わせれば、最低限必要な時間帯別損益は算出できます。(実際、勤怠管理が行えるPOSレジも多くあります。)
一方、小売業でパートタイマーを減らすと覚悟せねばならないのは、顧客満足度の低下です。(レジの打てる店員が少ないと、レジ待ちで我々はいらいらしたりします。)では、コスト削減から享受できるメリットと顧客満足度の低下からくるデメリットをどのように折り合いをつけていけばよいのでしょうか?これを管理するための経営指標として、人時生産性というものがあります。
人時生産性(英語ではSPH = Sales Per Hour)とは売上を店舗で働く人の総労働時間数で割ることにより算出されます。たとえば、ある1時間に9万円の売上があり、その1時間に3人の店員で対応していたとすれば、人時生産性は1時間あたり3万円となります。人時生産性の数値が高い程効率がよく、低いほど、売上に比べて過剰な人員を有していることになります。
吉野家のようなフレキシブル経営を目指す場合、まず最初にすべきことは、この人時生産性をPOSの売上と勤怠表から作成し、記録を作ることです。そして、どの程度の人時生産性の値が自社のビジネスの平均的な値であるのかを、肌にたたきこみます。そして、それにより得られた数値の感覚を頼りに、人が多すぎると思われる時間帯の人員を減らし、逆に店員が少なく、売り逃しの機会損失が生じていると考えられる時間帯に、追加人員を投入する、その繰り返しをすることが、売上の変動にも耐えうる強靭な企業を作り上げていくのです。
フレキシブル経営は、巨額の投資で完成した最新鋭のシステムなどによってではなく、実はこのような当たり前な思考の愚直な実践の繰り返しにより実現されるのです。

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2004年06月23日

政府税調の個人税制改革のための報告書

政府税制調査会(首相の諮問機関)が22日、個人税制の改革論議の土台となる報告書をまとめたとの報道がありました。

報告書全文がある政府税調のサイト

上記の報告書は、税制改革論議の共通の土俵作りを目指すために、日本の経済・社会構造変化の実像をを把握したもので、したがって、具体的な税法の条文をどうこうするといった記述は全くなく、社会学の論文の要旨のようなものです。このような根本的な経済社会の構造変化を正しく把握して、トップダウンアプローチで税制を改革していこうとする姿勢は大変素晴らしいですが、道路公団改革の一連の動きからもわかるように、小泉改革に見られる共通の特色として「竜頭蛇尾」が挙げられます。この論文で示した経済社会の構造変化の認識が、具体的な税法条文の改正にどこまで反映されるのかという点に不安を覚えます。また、現時点で具体的な改正の方向性を打ち出していないのはよいとしても、少なくとも現行の税制が、この構造変化にいかに対応できていないか、そのギャップ分析を行うことは可能です。税制改革の工程表を作成し、期限を決めた上で論議を進行させ、この報告書での問題意識が、個々の条文の改正にまで行き渡ることを、切に願います。
当報告書の経済社会構造の変化の認識はそれ自体興味深いので、「構造変化の実像の10のキーファクト」を以下に、列挙・引用致します。

 1.今世紀日本は「人口減少社会・超高齢化社会」
 2.「右肩上がり経済」の終焉
 3.家族の形の多様化
 4.「日本型雇用慣行」のゆらぎと働き方の多様化
 5.価値観・ライフスタイルの多様化・多重化
 6.社会や「公共」に対する意識
 7.分配面での変化の兆し
 8.環境負荷の増大、多様化
 9.グローバル化の進行
10.深刻化する財政状況

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2004年06月22日

難民への遺産寄付と高齢者の生きがい

非常に地味で小さな記事ですが、本日の日経紙面に私の関心を惹く記事がありました。中央三井信託銀行が国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)日本委員会と提携して、国連側に遺産寄付を申し出た人に中央三井の遺言信託を紹介するというものです。中央三井にとっては、国連という絶大なる信用力をバックにした販売窓口ができたようなものでしょうが、私にとっては、高齢者の方の「寄付」という選択肢に対する関心の高さを確認できたという意味で非常に興味深いものです。
【高齢者の自己実現について】
一般的には残すほどの遺産があれば、自分の子供にいかに多くの額を残すか節税に頭を悩ませるのでしょうが、寄付という選択をする方々も存在するわけです。どのような方が寄付をするかといえば、まず考えられるのは子供がいない方々です。また、いても関係が疎遠になってしまった方も、寄付を考えるかもしれません。また、それ以上に重要なファクターとなっていると考えるのが、自己実現ではないかと私は思うのです。自分の命はつきようとも、社会的に貢献したい、またそれにより、自分の生の痕跡を残したいと考える方が増えているからこそ、このようなビジネスが発生しているのでしょう。
少子高齢化社会の到来で「これからはシルバービジネス」と短絡的に考える方が多いのですが、終末期のケアにせよ、このような遺言信託にせよ、高齢者の自己実現と尊厳について、深く考えたものでなければ、成功は難しいと私は思います。
【遺言信託について】
ここで、遺言信託について若干説明を加えておきたいと思います。遺言信託とは信託銀行が提供するサービスで、遺言に関わる面倒な事務手続きを一手に引き受けてくれるサービスと申し上げてよいでしょう。具体的には、遺言書作成の相談から始まって、実際の作成及び保管、相続の際の財産分与の手続きまでを信託銀行が行ってくれて、そのかわりに手数料を支払うというものです。手数料の具体例としては、こちらのサイトをご参照下さい。また冒頭の記事には、「死亡後の税金対策も手掛ける」との記述がありましたが、寄付をすることにより、例えばこのサイトでいうような寄付金控除を受けることができます。節税という観点からも寄付を検討することも可能なのです。

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2004年06月19日

高額医療に対してどう備えるべきか?

本日の日経新聞朝刊記事に、小さな記事ですがショッキングな見出しがありました。「高額医療また増加 月1000万円以上が101件」との見出しで、ネット上の記事については、こちらをご参照下さい。最高の金額は「大動脈解離」の手術代で2,985万円とのことです。我々にできることは、このような高額の医療費を請求されることのないよう、ただ神仏に祈るしかないのでしょうか?
実はこの新聞記事で話題にされている数字は医療機関が請求する金額で、我々は健康保険に加入していれば、自己負担は3割で済んでしまいす。しかし、1,000万円の3割でも300万円で、まだ卒倒しそうな金額です。
実はこんな状況をカバーしてくれる、「高額療養費」という給付が健康保険からなされます。(弊社サイトに関連記事がありますのでご参照下さい。)高額療養費の仕組みにより、3割で計算した自己負担分があまりにも高額になってしまった場合には、健康保険からお金がでます。いくらでるかというと、その人の収入や年齢により計算式が異なるのですが、日経新聞の記事では「1,000万円の医療費なら自己負担は17万円弱で済む」と書いてあり、私も簡単に検算してみましたが、大体そんなところと思っておいてよいでしょう。
では、これで一安心かというと、実はそうではないのです。保険のきかない医療というものが、世の中にはあるのです。それが、高度先進医療と呼ばれるもので、こちらのサイトにわかりやすくまとまっているのですが、高度先進医療の定義を引用させていただくと「現在、一般の保険診療で認められている医療水準を遥かに超えた最新技術であると承認された医療のこと」です。具体的にどのような医療が該当するかについても、同サイトに列挙されていますが、ひとつ挙げると、脳死肝臓移植手術などが該当します。
では、運悪くこの高度先進医療を受けなければ死んでしまうと宣告されてしまったときのお金はどうやって準備したらよいのでしょうか?以下の3つの選択肢があると考えられます。
①普段の行いをよくして、ひたすら高度先進医療などと関わりのない人生を送れるよう祈る。
②いつそのような医療を受けても大丈夫なくらいの貯蓄をする。
③民間の保険でカバーする。
実際のところは①の選択肢に近い行動をとられている方が大半でしょう。②のように、このようなリスクのためだけに何百万円という貯蓄をするのも非現実的な気がします。毎月の保険料を支払う余力があれば③の選択肢のように民間保険でカバーするのが合理的な方法でしょう。
医療保険に加入されている方は多いと思われますが、大半が「入院1泊で1万円」といったタイプのもので、高度先進医療の費用をカバーするタイプの保険に加入されている方は、あまり多くはいらっしゃらないと思われます。医療保険を選択する際に気をつけるべきことは他にもたくさんあるのですが、高度先進医療に対していくらカバーしてくれるのか、ということも選択の際の1つの視点にすると、よいと思われます。

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2004年06月18日

長期金利上昇と企業年金 ~ サルでもわかる退職給付会計

長期金利の上昇が連日のように日経新聞で報道されています。このような局面では、我々個人のマネーストラテジーとしては、個人向け国債に代表されるような変動金利建て商品を保有することが有利であることは、先日述べた通りですが、今日は長期金利の上昇により、企業はどのような影響を受けるかを考えてみたいと思います。
直観的には、「長期金利上昇 → 金利の支払負担が増える → 純利益が増える → 企業経営は苦しくなる」といったところでしょうか?本日の日経新聞朝刊でも、借入の多い企業は返済を急いでいるとの記述があり、この流れに沿ったものです。
一方で、長期金利が上昇することで、企業経営にとってプラスになることもあるのです。本日の日経新聞にも数行ふれれていましたが、実は企業年金にとってはプラスになるのです。なぜ、長期金利の上昇が企業年金にとってプラスに作用するかと言えば、理由は2つあります。
第一の理由は、これは日経紙面にも触れられていたことですが、企業年金は株式のみならず、債券でも運用を行っており、長期金利が上昇することにより、債券での運用の利回りが上昇するからです。これは、わかりやすい理由です。
第二の理由は、年金債務の会計処理に関する知識がないと、理解できません。企業年金の仕組がある企業においては、退職給付引当金という長期の債務が計上されています。この退職給付引当金の債務として計上すべき金額を計算するのは、実はかなり大変な作業なのです。
社債を100億円発行している企業は、その社債によりやはり100億円の債務を計上します。これはいたって簡単です。ところが、退職給付引当金は社債のように、計上すべき明白な金額がありません。まず、債務として計上すべき金額を計算するには、将来、その企業で働く従業員に対して退職金及び年金をいくらくらい支払わねばならないか見積もらねばなりません。これは大変な作業です。年金をもらう前に会社を飛び出してしまう人もいれば、中途採用でこれから入ってくる人にも年金を払うわけですから、容易な作業ではありません。
大変な作業ではありますが、将来の退職金・年金の支払額が見積もれたとします。その金額が債務として計上すべき金額かというと、そうではなく、見積もった金額を現在価値に割り引くという作業をせねばなりません。1年後にもらえる1万円と10年後にもらえる1万円のどちらを選ぶかといわれれば、みなさんは当然1年後の1万円を選びます。なぜなら、1年後の1万円を銀行に9年預けておけば、10年後には確実に1万円以上になっているからです。つまり、将来のお金は、今のお金より価値が低いのです。したがって、退職金のような将来支払う債務を計上するときは、今のお金の価値に割り引いてやらなければなりません。これが現在価値に割り引くという意味です。
現在価値に割り引く際に用いられるのが、実は今話題になっている、国債の利回りなのです。将来受け取るお金を国債の利回りをベースにした数字で割ってやって、現在価値を計算します。長期金利は上昇しているわけですから、国債の利回りも上昇していて、割る方の分母の数が大きくなれば、計算結果は小さくなります。したがって、長期金利が上昇すると退職給付引当金は減少するのです
負債の額が減少すると、その裏返しとして、利益を計上することになります。現在の長期金利の上昇のペースを考えると、来年の3月決算の時期には、企業年金を運営する多くの企業が、かなり多額の特別利益を計上することが予想されます。多額の特別利益が計上されるなら、株はカイかと言うと、そう単純ではありません。冒頭に述べたように、利払いの増加によるデメリットもあります。また、退職給付会計から生ずる特別利益は、企業の本業に関係なく、企業価値を本質的に増加させる類のものではありません。やはり、株で儲けるのは難しいのです。

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2004年06月17日

金融一体課税とはなにか、またどう対処すべきか?

政府税制調査会より、金融一体課税に関する報告書が発表されました。日経新聞報道では、早ければ2005年度中からの段階的な実施を検討しているようです。詳細は上記のリンクより原文をご覧頂くとして、ここでは報告書の背景と概要を簡単にご紹介したいと思います。
【現行の所得税の仕組みとその問題点】
企業が支払う法人税の仕組と、我々個人が支払う所得税の仕組を比べてみると、所得税の仕組の複雑さがわかります。法人税の仕組を単純化して簡単に説明すると、全ての収益(益金)とそれにかかった費用(損金)を全部まとめて所得の金額(課税標準)を計算して、それに法人税率をかけて計算します。
ところが、我々の支払う所得税を計算するためには、我々の得た所得はそれぞれの所得の性格に応じて、「利子所得」「配当所得」「譲渡所得」「給与所得」などと分類されて、それぞれの所得に応じた税率で所得税が計算されます。ここで問題なのが、分類されたそれぞれの所得の間で損益を通算することがほとんどできない点にあります。
例えば株式投資を行っていらっしゃる方は少なくないと思われますが、損失を出してしまった方もまた少なくないと思われます。しかし、株式の売買で損失を出す一方で、配当はしっかり受け取っていると思われますが、この配当のもうけと売買の損失を相殺できないため、結果的に税金を多く納めねばならない結果に陥ってしまっています。安間伸さんという方の書いた「資産運用のカラクリ」という著作の表現を借りれば、「勝ったら税金、負けたら救済なし」という、我々個人のとって厳しい仕組になってしまっているのが、今の税制の問題点なのです。
【金融一体課税の目指すもの】
「負けたら救済なし」という酷な仕組を見直し、金融商品から生じる所得を一体として見て、例えば株の売却損が出ても、その分配当から得たもうけから控除できるようにして、リスクのある金融商品への投資を促そうというのが、金融一体課税の目指すところなのです。これを一言でいうと「貯蓄から投資へ」という言葉になり、報告書では「貯蓄から投資へ」というスローガンが何度も登場します。
【我々はどう対処すべきか?】
まだ、改正法案の細かい点はでていないため、具体的な対応策は申し上げられないのですが、少なくとも今の時点でいえるのは、これまで株式投資を敬遠していた方も、税制によるメリットが生まれるのですから、株式投資を行うことを検討してみてもよいのではないかということです。会社や政府が老後の生活資金を高い利回りで運用してくれる時代は終焉を迎え、我々が経済的に豊かな老後を送るには自らの手で金融資産を増やすことを考えねばなりません。金融一体課税が実現すれば、損をしても節税できるわけですから、今までよりもリスク商品への投資はしやすくなると思われます。
このサイトでは今後も金融一体課税の動きを注視し情報提供を行っていきたいと考えています。

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2004年06月16日

個人情報保護法の指針への対処とCRM経営

経済産業省が個人情報保護法の適用に関する指針を公表したとの報道がありました。指針に関しては、まだネット上では公表していない模様で、追ってリンクを加えたいと考えています。
6月16日付けの日経トップを飾った記事であるため、目に止まった方も多いと思われますが、同記事の中に「個人情報保護法の対象となる個人情報」が表に列挙されています。様々な議論を経て指針は作成されたのでしょうが、例えばアンケートの回答用紙については、「住所や氏名などに基づいて分類したもの」は保護法の対象になるとするものの、「未整理でまったく分類していない場合」は対象外となるなど、結論だけを見ると、省庁の出す指針にありがちな意味不明なものが多いようです。このような指針を目にすると、例えば「じゃあ、アンケートは整理しないでとっておいて、保護法の対象外にして面倒な規制を免れよう」と考える方がいるものですが、個人情報に関しては昨今の情報流出事件及びその重要性を考えて、法律及び指針を各企業の情報リスクマネジメントの最低限の要求水準と考え更に充実を図る、正攻法のアプローチで対処されることが望ましいと考えます。
指針の全文を見ていないのではっきりとしたことは言えないのですが、この指針がCRMをベースにしたマーケティングを制約する可能性が考えれれます。例えば、日経紙面の記事によれば、アンケートで顧客情報を収集する際には、目的を本人に知らせることが必要で、「サービス向上のため」等の抽象的な表現では足りず、「商品情報の発送のため」等踏み込んだ表現にせねばならないとしています。各企業の具体的な対応策は指針の全文を詳細に検討した後に行われるべきですが、これを機にCRMの手法についても全面的に再考すべきでしょう。CRMにおいて本当に必要な顧客の属性とはなんなのか、原点に戻って考え直すよい機会だと思われます。
また、大規模な企業におかれては、これは情報システム部門のみが抱える課題ではなく、マーケティング戦略にも重要な影響を与えるため、社長をプロジェクトリーダーとした、組織横断的な対応が必要となるものと考えられます。

参考文献
 個人情報保護法全文(首相官邸のサイト)
 CRM経営に関する弊社記事

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2004年06月14日

個人向け国債とは?

6月12日付日経朝刊にて、7月発行分の個人向け国債の当初発行予定額が1兆5千億円に達したとの報道がありました。個人向け国債とはどのような金融商品なのでしょうか?また、購入にあたって注意すべきポイントはどこにあるのでしょうか?以下に簡単にまとめてみました。
【商品の概要】
商品の詳しい説明に関してはこちらの財務省のサイトをご参照下さい。以下に特に注視すべき要約を説明します。
最低額面単位が1万円となっており、小口の資金でも可能です。
満期は10年です。
③金利は変動金利であり、半年毎に見直されます。どのように計算されるのかというと、「基準金利-0.8%」という算式で見直されます。ここで基準金利とはなにかといえば、「10年固定利付国債の入札における平均落札価格から引受手数料に相当する額を控除した価格を基に計算される複利利回り」と財務省サイトには記述されています。かみくだいていえば、金利を見直す時点の長期金利より少し低めの金利が半年毎に計算されるということです。
④発行から1年後であれば中途換金は原則としていつでも可能です。ただし、中途換金をすると直前2回分の利子(税引前)相当額が差し引かれてしまいます
【どのような人におすすめの商品か?】
連日の報道でもあるように、長期金利はほぼ上昇局面にあるといってよいでしょう。金利が上昇局面にあるときは、固定金利の金融商品を購入するのは損です。したがって、今まとまったお金を銀行の10年物の定期預金にしようと考えている人がいるとすれば、将来の金利上昇を考えれば、個人向け国債の方がおすすめです。
ただ、中途解約をすると直前2回分の利子相当額が差し引かれてしまうため、差し迫った出金の可能性がある場合は結果的に有利な運用とはいえなくなるのでおすすめできません。
【ワンランク上のアドバイス】
現在手持ちの金融資産が少ない方、あるいは既にリタイアされた方などは、あまり高いリスクの金融商品を購入すべきではないので、個人向け金融商品は有力な選択肢となりえます。
一方、金融資産にかなり余裕のある方、あるいはまだかなり若い方などは、ある程度積極的にお金を増やすという視点ももつべきでしょう。そのような方は、余ったお金を全額個人向け国債等の金利商品だけにふりむけるのではなく、株式等の購入も検討された方がよいでしょう。なぜならば、金利商品だけではインフレのリスクには対応できないからです。
【弊社PR】
弊社では個人の方それぞれのライフスタイルの立脚した上でのファイナンシャルプランの作成を行っています。総合的な見地から、細かい新金融商品の動向も踏まえた助言を行っていますので、ご興味のある方は弊社サイトをご覧下さい。

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2004年06月11日

出生率低下をライフスタイルの視点から考える

合計特殊出生率が全国で過去最低の1.29を記録したとの報道。厚労省は2000年の「ミレニアム結婚」、01年の「21世紀結婚」の反動で、統計前年の02年の婚姻数が大幅に減ったことによる「一時的な現象」と説明しているとのことだが、極めて浅薄な原因分析である。日経新聞も出生率低下を年金財政への影響の観点からしか触れていない。
統計データに関しては信頼できると思われるため、出生率の低下の主因が婚姻数の減少にあるとみてよいのは確実であろう。しかし、これは決して一時的な現象ではないというのが私の考えだ。
【なぜ婚姻数が減少したのか?】
以下の記述はデータ等に基づいてない、私が肌で感じたことに基づいた推論なのだが、婚姻数の減少は次に述べる3つのグループの人々の増加によるところが大きいと思う。
①年収300万円・フリーター層
森永氏のベストセラーでおなじみとなった「年収300万円」だが、要は労働者の年収が2極分化していくということであり、年収の低いグループを「年収300万円」と呼んでいるのだが、その多くを占めるのがフリーターであろう。これらの多くの人々は、経済的な理由で結婚したくても結婚できない人々である。今後景気が持ち直したとしても、この年収の2極分化は解消しないことが予想され、法的な支援やキャリアカウンセリングなどがなければ、結婚したくてもできない人々の数は減少しないだろう。
②「負け犬」と呼ばれるキャリアウーマン
①との対比でいえば、この人々は仕事で成功しているという点で対象的だが、女性が仕事で成功して、その継続を願うとき、現実的に結婚という選択肢をあきらめざるを得ない事実に直面する。その岐路で、結婚を捨て仕事を選択した人を最近「負け犬」と呼ぶらしいのだが、非常に失礼な話である。これらの人々は、結婚したくなかったのかといえば、そうとはいえないであろう。男性と同じように家庭と仕事を両立させたかったはずだ。
独身のキャリアウーマンが結婚できるようになるには、雇用する側の企業の理解が必要であるし、それを促す更なる法整備も必要かと思われる。
③同性愛者の人々
しばらく前のアメリカの同性婚の報道で、アメリカでは同性愛というのはセクシャリティという問題を超えライフスタイルの問題になったという感があった。では、同性愛者の方がどれくらいいるのかと言えば、このサイトによれば10%を超えることはないようだが、全人口の5%前後の数字のようで、その数字は10年前の調査より確実に増加している。
【シングル者が直面する問題】
結婚しない理由には色々あるものの、いずれにせよ、子供を持たないという選択をしたのであれば、次のような様々な問題に直面する。まず、マネー面だが、老いてから頼るべき子供がいないのだから、死ぬまでの自分の生活費は全部自分で用意しておかねばならない。そして、老いてからの生活だが、老人が一人で死ぬまで生活するというのは、非常に難しいと思われるし、なによりも寂しい。お金がある人は有料老人ホームに入居するのも一つの手かもしれないし、最近はグループリビングという健康な老人の共同生活の試みも生まれ始めている。(グループホームは「痴呆老人」の共同生活である点がグループリビングと異なる。なお、このグループリビングに関しては今後急速にニーズが高まると個人的に予想しており、弊社としても注意深く動向を追っていきたいと考えている。)さらには自分が痴呆になってしまったときどうするのか、残余財産が残ったときの処分を誰に頼むのか・・・子供を持たずに一人で生きていくのは非常に大変なことであり、それでも豊かで楽しい老後を送りたいのであれば、若い頃から周到なライフプランを作成することが必要なのである。
家庭を持つ人であろうと独身者であろうとライフスタイルに関わらず適切なライフプランを作成できるのがファイナンシャルプランナーであり、ご自身の老後の不安について相談されたい方は、弊社サイトをご覧の上、メールにてご連絡いただきたい。

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2004年06月10日

1円起業の制度が恒久化

法制審議会は「1円起業」を恒久的な制度とする方針を固めたとの報道である。
起業を志す人には今さら詳細な説明は不要であろうが、若干解説しておくと、本来ならば、有限会社を設立するには最低300万円の資本金が、株式会社を設立するには最低1,000万円の資本金が必要となる。いうまでもなくかなり高額であり、起業を志す人にとって大きなハードルとなっていた。そこで2003年より5年に限り、設立後5年以内に本来の金額まで増資するのであれば、設立当初の資本金は1円であってもよいと認め、この制度が俗称「1円起業」の制度と呼ばれた。今回の方針が実現すれば、この制度を2003年から5年間に限るのではなく、2008年以降も資本金1円で有限会社や株式会社を設立することが可能となる
ときどき誤解している方がいるので、念のために説明しておくと、この制度を活用したからといって、どんなビジネスをはじめる場合でも、資本金が1円で済むわけではない。例えばカフェを始めるという場合で、仮に1月あたりの必要経費を100万円と見積もるのであれば、最低3ヶ月分の300万円近くの自己資金を用意してから開業したいものである。では、なぜわざわざ1円の資本金で会社が設立できるようにしたかといえば、世の中には初期費用を多く必要としないビジネスが多くあり、それらの起業を後押しするためである。例えば、私の経営するコンサルティング業などは、頭とパソコンと机があればはじめられ、300万円もの自己資金は開業にあたって必要ない。また、インターネットの登場により、ネット上だけで販売を行うのであれば、店舗を借りるための敷金・賃貸料はいらないことはもとより、販売員等も雇わずにすみ、所要資金はぐんと少なくてすむ。そのような少額資本で開業が可能なビジネスを後押しするのがこの法律であり、ビジネスの種類によっては初期費用が多くかかることを忘れないでいただきたい。
弊社では起業にまつわる様々な相談を受け付けているので、ご興味のある方は弊社サイトをご覧いただきたい。

Posted by Ken Kodama at 14:46 | Comments (0)

2004年06月09日

伊藤園のストックオプションを株主の立場で考える

伊藤園は役員退職慰労金を廃止しその未清算部分をストックオプションの付与にて行い、また同社と子会社の役員の報酬の一部を同じくストックオプションの付与にて行うと発表した。
ストックオプションとは株式をあらかじめ決められた価格で、一定期間内に自社株を購入できる権利のことである。つまり、これを与えられたものは株価が上昇すればするほど儲かるわけで、伊藤園はこれを役員報酬の一部として役員に与えたわけだから、伊藤園の役員は伊藤園の株価が上がれば上がるほど儲かるわけだ。したがって、伊藤園の株主と伊藤園の役員の利害は一致することになり、伊藤園は今以上に株主の利益のために経営を行ってくれることが期待でき、そういう観点からは株主とって望ましい動きである。
一方で、希薄化という問題もある。希薄化とはこのストックオプションが全て権利行使されたときに一株当たりの価値がそれだけ薄まってしまうことをいう。他の条件、例えば企業業績などが変わらないとすれば、発行済株式数だけ増加するのであるから、その分一株あたりの価値が低下してしまうことは、感覚的に理解できるであろう。
今回の発表では、今後ストックオプションにより発行される新株の上限を18万株としているが、かりに上限めいっぱいの新株が発行されたとしたら、伊藤園の現在の発行済株式数は約4,560万株であるので、一株あたりの価値は約0.4%低下する計算になる。発行済株式数に比べて、発行される新株数が少ないので、ほとんど影響を被らない計算になる。
なお、株式の数が増えるという点では、株式分割を想起される方もいるかもしれないが、株式分割をしても希薄化の問題は生じない。なぜなら、たとえば1株を2株に分割した場合、1株持っていた株主はもう1株もらえることになり、分割前と後では株主の保有する株式全体の価値は変わらないからだ。

Posted by Ken Kodama at 21:27 | Comments (0)

2004年06月08日

低利の売掛債権担保融資

ガリアプラスという会社ミロクドットコムのASPの会計システムのユーザーである企業を対象に、売掛債権担保融資の貸出金利を実質年利2%引き下げるとの報道である。両者ともターゲットは中小企業であり、資金調達に頭を悩ませる中小企業経営者の方には、押えておいていただきたいニュースである。「売掛債権担保融資」そして「会計ASP」という言葉に若干に解説が必要かもしれない。
【売掛債権担保融資とはなにか】
これについては、ガリアプラス社のサイトに非常に詳しく丁寧な説明があり、詳細はそちらに譲るが、若干私なりの言葉で説明を加えると、売掛金を担保にした融資なのであるから、お金の流れとしては請求後即入金があったかのような効果をもたらすものである。だから、請求から入金までの期間が一般的に長い業界(例えば金型製造)等にある企業は、この仕組を利用することによる恩恵が大きいと思われる。また、成長期にあり、年々運転資金が増加してしまう企業なども、この仕組の活用により、運転資金部分の銀行借入額を圧縮することが可能となる。
似た仕組みとしてファクタリングがあるが、こちらは売掛債権をファクタリング会社に売却してしまうものであり、その根本的な違いから派生する両者の違いに関しては、ガリアプラス社のサイトを参照されたい。
【ASPとはなにか】
次にASPについてだが、ASPとは「Application Service Provider」の略で、一言で言えば、インターネットを活用したソフトのレンタルのことである。プログラムはレンタルする会社のサーバー上にあるのだから、アップグレード等があってもレンタルする側としてはなにもしなくてもいいし、レンタルなのだから初期費用が大きくなることなく、気軽にサービスを開始できる。
記事に登場するミロクドットコムは会計のASPを提供する会社である。
【なぜ会計ASPの利用企業への売掛債権担保融資が低利になるのか】
理由は簡単である。つまり、融資先の会社の帳簿をリアルタイムで見せて下さい、その代わりに低利でお貸しします、ということである。この点に抵抗感を示す、中小企業経営者の方がいるかもしれない。帳簿をガラス張りにする代償として2%金利が下げられるのがこの仕組であるが、中小企業経営者の方がどのように受け止めるかに、このプログラムの成功はかかっているだろう。

Posted by Ken Kodama at 11:20 | Comments (0)

2004年06月07日

国民年金をこのまま放置してもよいのか?

恐ろしい報道である。かいつまんで要旨を説明すれば、国民年金の集金人に対して支払う給料の方が、集めた年金保険料より多くなってしまった「赤字」の都道府県が7県もあったとのことである。「最も効率が悪かった愛知県は、1万円の給与に対し4000円の保険料しか集められなかった計算」との記述もある。
いうまでもなく国民年金の保険料は年金給付の財源になっているのだが、この報道の7県では、年金としてリタイア生活を送るみなさんに分配される前に、年金集金人への給料を支払うために消えてしまっているのだ。では、肝心の年金の財源はどこから賄っているのかといえば、恐らく厚生年金の積立金を取り崩しているものと考えられる。
この状況は更に悪化することが予想される。ここ数ヶ月の政治家・有名キャスターの年金未納問題により、国民年金保険料を納めなくなる人は更に増加するであろう。そして、その人々を説得しようと年金集金人は増員されたり、残業を強いられたりして支払うべき給料は更に増加する。
特定の政党を支持する発言は避けたいのだが、年金の徴収コストを限りなくゼロに近づけるアイデアというのが、民主党案にあった、「基礎年金の財源を消費税にする」というものである。消費税を徴収するメカニズムというのは既に完成されている。仮に基礎年金の財源が消費税に置き換われば、数パーセントの消費税率上昇は覚悟せねばなるまい。しかし、そのための追加的なコストの出費はゼロである。なぜなら、全国のPOSレジの消費税率を5%から7%にいじれば、それで作業はほぼ完結するからである。その一方で、国民年金徴収人という人々は不要になるから、浮いた金額を年金の給付のために有効に活用できる。
一般的にFPとして、我々がアドバイスするのは「既存の制度をいかに有効活用するか」という点に絞られる。すなわち、「少しでも年金を多くもらうための裏技」を紹介する類のものであり、書店にもそのような趣旨の書籍が多く並んでいる。しかし、制度を与えられたものとして考える受動的な態度では、我々の真に幸福なマネーライフは程遠いのみならず、冗談ではなく、この国の財政基盤が崩壊してしまうかもしれない。
国民一人一人が主体的に行動して、制度を改革して未来を明るく変えていかねばならないとの意識を持たねばならない、そんな時期に来ているのだと思う。

Posted by Ken Kodama at 10:25 | Comments (0)

2004年06月04日

ドンキホーテが増配してなぜ株価が上昇するのか?

ドンキホーテが今期増配する公算との報道を受けて、株価が、前日比250円高(+3.4%)の7,600円で本日引けた
配当を増やすから株価が上がる・・・一見当たり前に聞こえるが、企業財務の理論の世界から見ればそうもいかない。
モジリアーニとミラーという二人が体系化した「MM理論」によれば、税の存在しない世界では、「配当政策の変化は株価に影響を与えない」とされている。つまり、理論的には配当を増やそうが減らそうが、株価は変化しないはずだと言っているのだ。しかし、当然ながら我々の住む世界には税は存在するわけで、では、税が存在するもとではこの理論はどう修正されることになるかというと、驚くなかれ、所得税の存在を考えれば配当は低く抑えておくほどよい、という結論になっているのだ。これは、本日のドンキホーテの株価の動きと矛盾する。
しかし、本日のドンキホーテに限らず、一般的には増配がアナウンスされると、株価が上昇することが多い。これは、我々一般投資家が馬鹿で、目先のにんじんにだまされているからなのであろうか?
増配アナウンス後に株価が上昇する現象を説明する理論としては、次のようなものがある。一般的に配当を減らしたり(減配)、無配に転じたりすると、その企業の経営者は株主から厳しく批判される。だから、経営者は減配や無配という事態をなんとしてでも避けようとするものである。一方で、増配するということは、配当額の水準を上げてしまうことだから、将来減配・無配に転じるリスクが増すことを意味する。そのようなリスクをとってまであえて増配するのは、経営者のその企業の将来に対するよほどの自信の現れである。市場は増配を将来に対する自信の裏づけと読みとり、株価が増配アナウンスを受けて上昇する、というのが、企業財務理論からの説明となっている。

配当政策で有名なのは、マイクロソフトであろう。マイクロソフトは「余分な現金は将来の会社の成長のための投資に回したいから、配当はしない」と宣言していることで有名である。グーグルもIPOに先立って、配当を当分しない旨を宣言している。ドンキホーテとて事情は同じで、将来多くの新規出店を予定しているのであれば、あまり配当を増やしたくないのが実情のはずだ。したがって、今回の増配の動きから推測されるのは、ドンキホーテが新規出店のペースを鈍化させるのではないかということである。有望な投資案件がないのであれば、現金を手元にじゃぶじゃぶ持っているのではなく、配当や自社株買戻しという形で株主に還元すべきというのが最近の潮流であり、ドンキホーテの成長のペースが今後鈍化するのではないかというのが、本日の増配アナウンスを受けての私の推測である。

Posted by Ken Kodama at 16:10 | Comments (0)

2004年06月02日

年金が目減り?マクロ経済スライドとは何か

本日の日経1面の次のような見出しをご記憶の方も多いと思う。
 基礎年金 15年で1割目減り 月額6万円割る
現在審議中の年金制度改革法が成立したとの前提で、厚生労働省が試算を行ったところ、上記のようなケースも見られたという。そして、この年金受給額が減少する原因がマクロ経済スライドなのだと書いてある。恐らく大半の方が、「なんだかよくわからないが将来の年金の受給額が減りそう」という感覚であると思われるので、以下に若干解説を加えたい。
【現在の国民年金の年金額の決定の仕組み】
そもそも、大前提として、新聞に「基礎年金」と書いてあれば、それは「国民年金」のことで、これは年金保険料さえ払っていれば、誰でももらえる。サラリーマンであっても、厚生年金保険料をきちんと納めていれば、老後は老齢国民年金を老齢厚生年金に加えてもらうことができる。
で、この国民年金だが、保険料を何年間支払ったかによってもらえる金額が異なってくるのだが、40年間きちんと納めた場合の満額は、現在年間79万7千円(月額6万6千円)である。
実は、この金額は毎年見直されている。どのような観点から見直されているかといえば、物価だ。物価が上昇しても年金が目減りしてしまわないように、総務省が作成する全国消費者物価指数を参照して、消費者物価指数が上がればそれに応じて年金額を上げる。逆もまたしかりで、消費者物価指数が下がれば年金額は下げられてしまう。

【新法案のもとでの国民年金額決定の仕組み】
さて、私がいうまでもなく、年金財政は火の車である。現在の年金額のレベルを維持しようとすると、現役世代の保険料が高騰してしまう。それでは若い人々があまりにも可哀想なので、老人のみなさんも痛みをわかちあって下さいという趣旨のもと作られた仕組が、マクロ経済スライドなのである。
具体的には、毎年年金額を見直すのは今までと同じなのだが、前年度の年金額に以下で計算された率を乗じることで、年金額を見直すのである。

 物価変化率 - スライド調整率

この後の「スライド調整率」が年金生活者のみなさんに痛みをわかちあっていただくための調整率であると考えてよい。では、このスライド調整率とはなにでどのように計算されるのかについては難しくなるため説明を避けるが、厚生労働省によれば、2025年までは平均的に0.9%と見込まれている。イメージとしては、年金額が毎年0.9%近く、じわりじわりと減っていくと考えてよいだろう。このじわりじわり年金額が減るマクロ経済スライドの仕組みにより、物価の動きによっては、冒頭に挙げたような「15年で1割目減りしてしまう」ケースや「月額が実質的に6万円を割ってしまう」ケースがありうるということを、厚生労働省が試算してみせたということだ。

【今回のコラム執筆にあたって参考にしたネット資料】
みずほリサーチのPDF文書・・・年金改正の全体像をつかむのによい文書である。
自治労連のHP内の文書・・・当コラムではふれなかったが、スライド改定率と物価増減率の関係に関する細かい論点がわかりやすくまとまっている。
ALL ABOUT JAPAN内の文書・・・マクロ経済スライドに関するわかりやすい説明がある。

Posted by Ken Kodama at 10:54 | Comments (0)