UFJと三菱東京グループの経営統合に、三井住友グループが待ったをかけたという報道です。合併がアナウンスされると、このような泥仕合が展開されることは、実は珍しい話ではありません。私のプロフィールをご覧いただいた方は、ご記憶にあるかもしれませんが、私の在籍していたフランスの金融機関BNPパリバも同じような泥仕合を経て、統合にいたったいきさつがあります。まずその背景をお話したいと思います。
私が入社したのは、フランスの金融機関の日本法人、「パリバ証券」の東京支店でした。パリバは歴史の古い、ホールセール専業の名門金融機関でした。世界的に金融再編の進む中、2000年に、同じフランスの金融機関であるソシエテ・ジェネラルとの合併プランが公にされました。ソシエテ・ジェネラルはホールセールのみならずリテール網もフランス国内に有しています。両者が友好的に統合し、「SGパリバ」が誕生しようとしていた矢先、パリ国立銀行(略称BNP)が、今と同じように待ったをかけたのです。
パリ国立銀行の提案は、ソシエテ・ジェネラルとパリバの両者の株式をTOBによって取得し、一気に三行統合を目指すという大胆なものでした。BNPもフランス国内にリテール網を有しており、特にSGとBNPの統合により、メリットが大きいとされていたのですが、ふたを開けてみると、統合が実現したのは、BNPとパリバというシナジー効果の低い両者の統合だったわけです。
このように、大きな案件の「売り物」が出ると、「買い手」が複数出現し、競争が展開されるということは珍しくありません。またその激しい競争の結果、必ずしも経済的に見てプラスとなる結果に落ち着くわけでもありません。どうして、合併話が持ち上がると、激しい争奪戦が繰り広げられ、最後には不毛な結果がもたらせるのでしょうか?
小口の投資案件は別として、報道のようなビッグディールについては、ごく少数の経営陣で意思決定を行うこととなります。問題の重要性が他の案件に比べて格段に高いにも関わらず、意思決定に関わる人はわずか数人に限定されてしまうと、いかなる名経営者とはいえ、その意思決定には人間的な弱さがにじみ出てしまうものです。また、そうした経営者の人間的な弱さをくいものにする「インベストメント・バンカー」なるM&Aの仕掛け人の存在という問題もあります。経営者が少人数で極限の状態で意思決定をせざるを得ないところに、M&Aの難しさがあるといってよいでしょう。
なお、「どろどろしたM&A」という点では、先日のライブドアの近鉄買収報道が記憶に新しいところです。あれは、どう解すればよいのでしょう?堀江社長は何を狙って、手をあげたのでしょう?
確かに、ライブドアには近鉄買収に十分なキャッシュはあります。ただ、第一に、球団経営のノウハウを有する人材などライブドアにはいません。第二に、買収が仮に実現したとしても、期待できるシナジーが乏しいです。第三に、ナベツネ氏ら球団関係重鎮に阻まれることは目に見えています。
こうして考えると、百戦錬磨の堀江社長が本当に買収が実現できると想定していたとは考えにくく、買収に名乗りをあげることにより、ネットコミュニティーから脱皮して、オフライン社会へ向けての大々的なPR活動だったと解するのが妥当でしょう。
今後は三行の話は、どう進展するのでしょうか?買収劇は経済ニュースを見る感覚ではなく、「橋田ドラマ」を見ているのだと割り切ってしまえば、新聞報道がより楽しめると思います。
クーラーに当たりすぎて体調をおかしくしてしましました。皆様も猛暑の中の体調管理をしっかりなさっていただきたいと思います。
そのような事情で、今回はあまり頭を使わず書ける話題とさせていただきました。厚生年金の未加入事業者を社会保険庁が強制加入させるとの報道がありました。国民年金保険料を払わない人には年金徴収人がしつこくせまり、厚生年金についても同様に未加入事業所に強引に迫ろうとしています。
しかし、こんなアプローチが本当に機能すると政府は本気で思っているのでしょうか?この種の報道で私がいつも思い出すのは「北風と太陽」の寓話です。保険料を払わない人というのは、一部悪質な人もいるものの、大半のものは、保険料を支払う余裕がないから、支払わないのです。そのような社会的弱者に冷たい北風を吹き付けて、どうなると思っているのでしょうか?
強制的なとりたてよりもはるかに有効な策は、公的年金制度自体を魅力的なものにする「太陽」政策であるはずです。まず行うべきは、グリーンピア等の無駄遣いは一切やめ、国税庁と保険料の徴収機能を統合させ、コストを抜本的に削減することにより、我々が支払う保険料が無駄に使われないことを宣誓すべきです。
第二には、「少子高齢化」という構造的な問題に真剣に取り組み、子供を育て安い環境をつくり、場合によっては移民等も視野に入れ、若い世代の保険料の払い損にならないような制度を構築すべきです。
第三に、保険料の運用に最新の手法を取り入れ、少しでも将来の受給額の増加に努めるべきです。
そして、最後に、これらの改革を総合的に進めた場合の年金需給予定額を国民に示せば、現時点での未加入者も進んで加入するようになるはずです。
OECDがパートタイマーも企業年金に加入させるよう、勧告を出したとの報道です。
5月26日付弊社レビューにてパートタイマーにも残業代を支払うようにしようとする、労働基準法の改正の動きを伝えましたが、日本国内のこのような法改正に、今後OECDの勧告が影響を与えることが考えられます。
OECDの勧告の原文は公開されてはいますが、残念ながら、現在邦訳はみあたりません。同勧告は会計基準や年金基金の健全性など、多岐に渡る内容を含んでいますが、日経報道とのかかわりで言えば、PDF文書の7ページ目が該当します。ここで、OECDはパートのみに限らず、「企業年金の加入資格を年齢・性別・雇用形態等によって差別してなならない」ともっと幅広い視点での勧告をしています。
会社経営に携わる方は、現時点では、当然日本の法改正の動向までは読めず、動きようがないように感じられるかもしれませんが、そのようなことはありません。人事政策は長期的な視点で行わねばならず、かなり先の法改正も視野に入れておく必要があります。
現時点で何を考えるべきかといえば、漠然としていますが、パート社員の処遇に関して考えをめぐらすべきです。パート社員の戦略的活用については、多くの事例が出るにいたっていますが、その処遇については、多くの場合、パート社員の活躍に伴っていないのが実情です。しかし、こうした労働者保護を目的とする法律の動向は、パート社員への残業手当支払いの義務付け、及び当報道の年金加入の勧告など、ますます保護を高めていこうとする、大きな流れがあります。
パート社員に負の部分を全部押し付けるような考えは捨て去るべきでしょう。パート社員保護の大きな流れの中で、自社のパート社員の処遇をどのようにすべきか、漠然と頭の中に絵を描く段階にあると考えられます。
また、公的年金の計算ミスの報道です。老齢基礎年金の「振替加算」で、全国の約700人に年金を7億円払い過ぎていたとのことです。ここで、「振替加算」について、簡単に説明しておきましょう。
老齢厚生年金をもらえる人に65歳未満の配偶者がいれば、一定額上乗せして、老齢厚生年金をもらえることができます。この上乗せ分のことを、「加給年金」と呼びます。配偶者自身が65歳になると、配偶者は自分の老齢基礎年金をもらえるようになります。このとき、今まで夫の老齢厚生年金の中でもらっていた「加給年金」は、配偶者自身の老齢基礎年金からもらえるように、きりかわります。そして、配偶者は老齢基礎年金に上乗せ額をもらえることになり、この老齢基礎年金に切り替えられた上乗せ分を「振替加算」と呼びます。
ただし、配偶者自身も現役時代に働いており、ある程度の老齢厚生年金・退職共済年金をもらえるのであるならば、この振替加算はもらうことができません。今回の計算ミスは、このように本来はもらえないはずの振替加算が、支給されてしまったことによるミスです。
多くもらえる分にはまだよいのですが、公的年金は仕組みが複雑で、下手をするとこのようなシステムミス等により、本来もらえるはずの金額をもらえない危険性があります。ご自身で検算してみるのがよいのですが、年金の仕組みに明るくない方は、ファイナンシャル・プランナー等にご相談されることをお勧めします。
医療費の定額払い制度を、新たに62の病院で導入するとの報道です。では、この「医療費の定額払い」とは何なのでしょうか?
「定額払い」に対する用語として「出来高払い」があります。そして、現在の医療費は基本的には出来高払いにより決まります。イメージとしては、出来高払いは検査・投薬などといった個々の治療行為ごとにお金が決まるのに対して、定額払いでは病気や治療法ごとにお金が決まる制度です。
「出来高払い」制のもとで、病院が儲けを多くしようとすれば、どうすればよいのでしょうか?簡単です。検査や投薬を増やせばいいのです。この仕組のせいで無駄な医療費がかさんでしまったともいわれています。
反面、「定額払い」制のもとでは、病気や治療法ごとに値段が決まっているため、無駄な検査や投薬を行うと、病院は自分で自分の首を絞めることとなります。したがって、「定額払い」制のもとでは、無駄な医療費が削減され、この制度の導入により、医療費全体が抑制されることが期待されています。(反面、本当に必要な検査や投薬が省略されてしまうのではないかという、不安もありますが。)
法相の諮問機関である法制審議会が、有限会社制度を廃止し、株式会社に一本化する方針を固めたとの報道です。2006年度中の施行を目指すとのことです。
起業を考えている人にとって、法的な形式を考えると今までは、実質的には①法人を設立しないで個人事業主としてビジネスを始める、②株式会社を設立する、③有限会社を設立する、の3つの選択肢があったわけですが、今回の方針が実現すれば、「個人事業主 OR 株式会社」の二択となるわけです。
では、会社設立にあたって、今までは株式会社と有限会社で、どのような違いがあったかといえば、一言でいえば、有限会社の方が気軽に設立が可能でした。株式会社では3名以上の取締役と1名以上の監査役が必要になりますが、有限会社には監査役は不要で取締役は1名でスタートできます。また、司法書士等に設立事務を依頼すると、有限会社の方が株式会社に比べて10万円くらい手数料が安く済みます。有限会社の方が、そんなにお手軽に設立できるのに、多くの人がなぜ株式会社を選ぶかといえば、これは外見上の体裁を気にするという理由からだけです。株式会社を設立して代表取締役に就任すれば、法的形式上はトヨタやソニーの代表取締役に並べるわけですから・・・
では、有限会社廃止で、このようなお手軽なメリットもなくなるのかといえば、さにあらず、同報道によれば、「中小の株式会社に課していた規制は現行の有限会社並みに緩和し、取締役会や監査役の設置義務を撤廃する」とのことです。ですから、外見的に見栄えのいい株式会社を、有限会社のお手軽さで設立できる方向性で、法改正はなされるようです。実際の法改正まで、弊社では注意深く動向を見守りたいと思います。
最期に、では法人設立と個人事業主という形態でビジネスを開始することのメリット・デメリットの比較についてですが、それは、こちらのサイトの比較表を参照して下さい。
社会保障審議会による介護保険見直しの議論に関する報道が本日の日経新聞でありました。本日は、介護保険見直しの内容の詳細について述べるよりも、「介護は他人事ではない」ということをみなさんに、是非知っていただきたいと思います。
先の年金改革法案では、日本中が年金の話題で盛り上がりましたが、一方で介護の問題となると、新聞報道等も盛り上がりにかけてしまいます。報道が盛り上がらないのは、我々読み手に関心がないからです。なぜ、我々が、介護に関心がないかといえば、そもそも自分とは関係がないことと、楽観視している人が多いからだと思われます。つまり、老いて夫婦で縁側で日向ぼっこしながら緑茶をすすっているような老後は想像できても、我々の親や、まして自分自身が介護の対象になろうなどと、考えたくもないから、介護問題を直視しないのが実情だと思われます。
介護は本当にそんなに疎遠なものなのでしょうか?ここで、私が尊敬する介護の専門家である春山満氏著作の『介護保険 何がどう変わるか』から、若干古いデータではありますが、数字を引用したいと思います。
同著作によると、1998年に厚労省が発行した介護保険に関するパンフレットには以下のような記述があったそうです。
● 65歳以上の人で人生の最期に6ヶ月以上の寝たきり、痴呆、要介護を経験する人は50%を超えている。
● それらの人々の寝たきり・要介護状態の平均年数は5年7ヶ月である。
つまり、この数字が信頼たりうるものであれば、2人に1人は5年7ヶ月の寝たきりないし要介護状態となってしまうというわけです。
介護保険は、このような要介護状態になってしまったときに、金銭面でサポートしてくれる制度ですが、やはり年金と同じように財政面でかなり厳しくなりつつあります。官僚や一部の専門家の手に介護保険の見直しをゆだねてしまうのではなく、我々国民が目を光らせていないと、公的年金の二の舞になってしまうということを、肝に銘じておくべきだと考えます。
また、自分自身のファイナンシャルプランを作成するときにおかれても、親や自分自身の介護のリスクをどう手当てするのか、といった視点が重要になってくることを忘れないで下さい。
ファーストリテイリングの第3四半期の決算が発表されました。おおむね好調で通期の業績予想も上方修正していますが、以下小売業界の決算を読むときの基本的な留意点についていくつか説明したいと思います。上記リンクよりファースト・リテイリングの第3四半期決算情報を見ながら、下記を読んでいただけると幸いです。
【①前年比は既存店売上高ベースで見ること】
第3四半期の売上高は、前年比で12.8%増と表中に記載されています。この数値を見て、即座に「ユニクロ絶好調だな」と判断してはいけません。なぜなら、店舗を増やしていたとすれば、売上が増加するのは当たり前だからです。実際、コメントには「17店舗の純増」とあります。したがって、これらの新しくできた店舗の売上高を除いて前年との比較をしなければ、ユニクロが好調なのかどうかはわかりません。このような新規出店の店舗の売上高を除いた売上高のことを既存店売上高といいます。そして、コメントにあるように、第3四半期の既存店売上高は、前年同期比4.3%増となっています。この数値からユニクロは顧客からの支持を伸ばしていると判断してよいでしょう。
では、どのような場合に気をつけるべきかというと、例えば「全体の売上高が5%増加で、既存店売上高は10%減」というような場合です。このようなときは、顧客からの支持が低下しているにも関わらず、新規出店を加速させており、有効な対策を打たないと、将来的な大幅な業績悪化が心配されます。
【②売上高は客数と客単価に分解して考えること】
さらに、①の既存店売上高の増減は、客数と客単価の増減に分解して考えます。客数とはPOSレジを打った回数のことです。また客単価とは1回の買い物で購入した、平均の金額のことです。つまり、下の式のような計算式が成立するわけです。
売上高 = 客数 × 客単価
一般的に、客単価を下げるような戦略を採ると客数が増えます。つまり、安売りをすれば、それだけ多くの顧客を呼び寄せることができるというわけです。逆に、客単価を上げれば客数が減り、両者はトレードオフの関係にあるのが一般的です。
ファースト・リテイリングの第3四半期決算に戻ると、既存店客単価は前年同期比0.8%減とほぼ前年横ばいである一方、既存店客数は前年同期比5.2%増とあります。つまり、それほど値下げに頼ることなく、顧客を増加させることができるわけで、ここまで細かく見た上で、はじめて「ユニクロ好調だな」と判断できるわけなのです。
【③景気回復後のユニクロ ~長期的展望~ 】
第3のポイントは前2者と異なり、私の根拠なき推論です。
今も使われている言葉かどうか知りませんが、「ユニばれ」という言葉がありました。つまり、ユニクロは安くていいけど、それを着ていることが友達にばれると恥ずかしいというわけです。本当はユニクロなんてあまり着たくないけど、お金もないし、ただ安いから買う、という人たちが結構いたわけです。
では、こうした人達は景気が回復して、たくさんの給料をもらえるようになった後では、果たしてユニクロの服を買い続けてくれるのでしょうか?
経済学にはギッフェン財という用語があります。ふつう、大抵のものは、所得が多くなればなるほど、消費量も多くなります。例えば、酒好きな人は、所得が増えれば酒量も増えるでしょう。ところが、所得が増えると消費量が減ってしまうモノも存在し、それらがギッフェン財と呼ばれます。ギッフェン財の例として、経済学の教科書は、決まったように「アワやヒエ」を挙げます。つまり、米も買えない極貧時代にはしかたなくアワやヒエを食べてしのぐけど、通常の所得になったら、あんなまずいものは食いたくないというわけです。
ユニクロの服はギッフェン財なのかどうかは、現時点ではまだわかりませんが、仮に景気が回復した後に顧客が離れてしまう可能性があるのであれば、なんらかの対策を考えねばなりません。例えば、アメリカのギャップは「ギャップブランド」の他に、比較的高所得層を対象とした「バナナリパブリックブランド」、そして、比較的低所得層を対象とした「オールドネイビーブランド」を保有しています。これにより、企業全体として見たとき、景気変動により生ずるリスクを回避することが可能になるのです。
ファースト・リテイリング株が長期保有するに値するためには、こうした景気回復後もにらんだ展望も抱いていないと、私だったら、躊躇(ちゅうちょ)してしまいます。
【弊社からのおしらせ】
来月(8月)より、まぐまぐプレミアムマガジンを通じて、『ウォーレン・バフェットへの着実な第一歩 ~株価の動きを解明する~』というメールマガジンの発行を予定しています。毎週月曜、月4回のサイクルでの発行予定で、内容としては、バフェットのような長期投資のスタイルでの投資を考える人が最低限知っておくべき、株式・企業分析の枠組みをわかりやすく紹介するものです。ご興味のある方は、下記サイトより詳細内容をご確認の上、お申込み下さい。
UFJグループが13日、三菱東京フィナンシャル・グループと経営統合に向けた交渉に入る方針を固めたとの報道です。三菱東京側の現時点でのプレスリリースでは、まだUFJ側からの申し入れすらない段階のようで、どのような展開になるかは現在では分かりませんが、仮にこの経営統合が実現すると、4大金融グループが3大金融グループになってしまいます。FPとしての視点からは、体力の劣ったUFJが救済され、個人の預金がより安全になるというメリットはあるものの、これだけ銀行が統合されてしまうと、銀行業界も寡占状態となり、競争が働きにくくなるというデメリットもあります。個人的な体験ですが、私が某金融機関に時間を約束の上訪問した際、1時間待たされるという腹立たしい思いを最近致しました。こうした金融再編の動きが消費者へのサービス低下につながらないことを切に願う次第です。
さて、UFJをここまで追い込んだのは先の金融庁による検査なのですが、その検査を担当したとされる目黒謙一検査管理官が、大手行全てを担当するとの人事が発令されたとする報道がありました。これだけ注目を浴びてしまうと、特定の銀行を担当させることは、担当行の株価下落等も招きかねず、こうした形にせざるを得なかったのでしょう。
注目すべきは、目黒氏は高卒のノンキャリア組だということです。「仕事と学歴は関係ない」、いやむしろこの場合は、高度な専門性が要求される検査のような業務だと、長年の経験が要求されるのですが、一般的に高学歴のキャリア官僚は細かい事実の検証のような地道な作業を嫌がったり、一箇所に固定される人事を嫌うということを考えると、「学歴は仕事の邪魔となることももありえる」ということを如実に語る事例といえるでしょう。キャリア戦略という観点からも興味深い報道です。
なお、目黒氏についての記述は、こちらのブログに詳しい記述があり、参考にさせていただきました。ご興味のある方はご覧下さい。
日銀がまとめた家計の資産構成に関するリポートによれば、日本の家計の金融資産に占める現金・預金の比率は米国の4倍以上であるとの報道です。
同報道では「米国に比べるとなお安全志向が強い様子がうかがえる」と結んでいますが、現預金の比率が高ければ、それはすなわち安全といえるのでしょうか?
「日本人は安全志向の国民性なのだ」と短絡的に片付けてしまう前に、次の2つの事実に目を向けるべきだと私は思います。第一に、我々のマネーライフを取り巻く外部環境は、「自己責任」を中心原理とする米国型に急速に移行しつつある事実から目をそらしてはなりません。決して我々が望んだからではないのですが、少子高齢化や社会保険庁の怠慢により年金財政は急速に悪化してしまい、公的年金のみに頼っていたのでは、豊かな老後を送ることはできません。また、企業の雇用形態・企業年金なども急速な変革期の途上にあり、企業が老後の面倒を見てくれる時代も終わりました。公的年金や企業のバックアップが急速に縮小しつつあり、社会全体が好むと好まざるに関わらずアメリカに近づこうとしている中で、我々の投資法だけが純和式のままでよいはずがありません。
第二の点はインフレへの対応という視点です。確かに、つぶれる心配のない銀行に現預金を預けておけば、価格変動リスクや為替リスクにさらされることなく、元本は保証されるわけで、安全この上ない気がしますが、現預金だけでは物価上昇のリスクに対応していないのです。最近では、連日のように企業・消費者物価指数の上昇を伝える報道があります。歴史的にみても、デフレであった期間よりインフレであった期間の方が圧倒的に長いのです。10年満期の100万円の定期預金は10年後に100万円の元本と利息がしっかりと帰ってくることは確かですが、その10年間で物価が5%、10%上昇する可能性を考えると、果たして現預金に有り金全部つぎ込むような投資スタイルは、「安全」だといえるのでしょうか?
財務省が、企業などが納税手続きで必要な書類について、電子データでの保存を認める具体案をまとめたとの報道です。「貸借対照表などの決算書や3万円以上の領収書は、これからも紙で保存しなければならない」とのことです。
今からさかのぼること約10年前、私はアンダーセン・コンサルティング(現アクセンチュア)という会社で、会計システムコンサルタントをしていましたが、当時流行していたのが「ペーパーレス会計」というものです。膨大な量となる会計伝票を電子上のみで運営して、紙の運搬や保管のコストを削減しようとする試みのことです。グローバル展開していたり、全国に営業所があったりして、請求書を受け取って伝票を作成する箇所と承認する箇所が違う企業などは、請求書等をスキャナで読み込み、伝票や請求書を社内で郵送することなく、承認・決済のプロセスにつなげ、一定の効果を生み出していたことは確かです。ただし、当時もやはりネックになっていたのが、「税務上の必要性」で、これにより、結局請求書は紙で保管せねばならず、それならば、請求書だけ保管するより会計伝票も一緒に保管した方がわかりやすいとのことで、結局保管コストの削減には結びつきませんでした。その程度の効果しか得られないのならば、とペーパーレス会計システムの導入を見送る企業も多かったことも事実です。
あれから、10年、インターネットの目覚しい発展により、紙の授受を行うことなく行われる取引が急増しました。それにもかかわらず、財務省の出した方針は「3万円以上の請求書は保管すること」というものです。もちろん、悪質な不正等を防止するという観点にたっての方針なのでしょうが、その一方で保管等のために社会的なコストは減りません。紙があればなぜよいのか、紙媒体と電子媒体の本質的な違いを認識した議論を行っていただきたいものです。
外貨建ての投資信託の残高が10兆円を突破、過去最高となったとの日経報道がありました。中でも、日経紙面の記事によれば、国際投信投資顧問が運用する「グローバル・ソブリン・オープン」は純資産残高が3兆円を超えているとのことで、外貨建て投信ブームを牽引しているといっても過言ではないでしょう。そこで通称「グロソブ」と呼ばれる、同ファンドについて様々な角度から考えてみたいと思います。
【グロソブ人気の秘密】
なぜ、かくも多くの人がグローバル・ソブリン・オープン・ファンドを購入するのでしょうか?人気の秘密は2つの集約されると思います。
(1)投資対象の債券の格付けが高い
「ソブリン」の意味がわかれば自ずと分かることですが、グロソブは世界各国の政府もしくは世銀等の国際機関が発行する高格付けの債券のみを対象としています。アメリカ政府やドイツ政府が財政破綻することは、まず考えられません。こうした、「安心感」がグロソブ人気の第一要因となっています。
(2)毎月分配型であること
毎月決算型のグロソブは、最近では、1万口あたり毎月40円の分配金を出しています。これは税引前の数字ではありますが、単純に12倍すれば、年間で480円と、この低金利の時代には結構な額の「おこづかい」が入ってくることになるのです。
年金に代表されるように、この手の「毎月毎月ちゃりんちゃりんとおこづかいが入ってくる金融商品」に日本人は目がありません。先日ご紹介した、新生銀行の外貨預金も、この心理を巧みについた広告を展開していました。
【グロソブのリスク】
このような魅力的に見える金融商品であっても、必ずなんらかのリスクがあるものです。以下の3つのリスクがあることを、はっきりと認識せねばなりません。
(1)為替リスク
投資対象の債券のほとんどは外貨建てなのですから、当然為替リスクのある金融商品です。ただ、投資対象は米ドル、ユーロなどに分散されているため、全額ドル建ての債券を購入する場合などと比較すれば、ポートフォリオのリスク分散効果により、為替リスクは低減されてはいます。ただ、他通貨に対して円が独歩高になるケースも考えられ、そのような場合には大きな為替差損を被ることとなります。
(2)金利リスク
金利が上がれば債券価格は下落し、金利が下がれば債券価格は上昇します。したがって、投資対象の国で金利が上昇すれば、債券の価格が下がり、それに伴う損失を被ることになります。
(3)ファンド規模が大きくなることによる不都合
最後の点は、グロソブの目論見書などには記載されていませんが、一般的に、ファンドの規模が急激に大きくなると、ファンドのパフォーマンスが下がってしまうことがよくあります。たとえば、今回の新聞報道により、またグロソブ人気が高まり、多くの資金が集まってきてしまうと、ファンドマネージャーはその資金の運用先のことを考えねばなりません。それにともなって、運用対象としている債券の銘柄が増加してしまうと、注意力が散漫になってしまうという可能性もある、ということを気に留めておくべきでしょう。
【ライフプランとのミスマッチ】
こちらのサイトによれば、フィデリティ投信が行った調査によると、分配金の出る投信を買った人の約7割は分配金を使わずに貯蓄している、とのことです。もちろん、分配金をどうしようと個人の勝手なのですが、たとえば、グロソブを現在40代くらいの方が老後資金の形成のために購入されていたとしたら、私はその方に変額年金保険との比較検討を勧めます。投信の分配金には当然課税がなされるわけですが、変額年金保険のような金融商品を使えば、この課税を繰り延べることができ、長期間にわたれば、その額は無視できないものになります。(変額年金保険と投資信託の課税の違いについてはこちらのサイトをご参照下さい。)
どんなに人気のある金融商品であっても、その人のライフプランに合致しているものでなければ、その効果は半減してしまいます。グロソブの購入に関心がある方も、まずなんの目的で購入するのか、今一度深く考え直してから、購入されるとよいでしょう。
【追記】(2005年9月14日記)
当ページには検索エンジンを通して多くのアクセスをいただき、ありがとうございます。当エントリーを執筆した当時に比べて、最近では毎月分配型ファンドの利点よりも問題点に対して、私の関心は移りつつあります。「よく分からないまま商品を購入している方が多いのではないか」との疑念を深めることが多いので、その後関連するエントリーを2つ執筆いたしましたので、ご関心がある方はご一読下さい。
UFJ信託銀行と大田区産業振興協会が月内にも提携し、中小企業が持つ知的財産の活用を支援する事業が始動するとの日経報道です。知的財産信託に関しては、弊社2004年5月19日のレビュー記事において、日本生命とみずほ信託銀行の事例を紹介し、同記事へのアクセス数等の面から、みなさまの関心の高い分野であることが改めて確認できました。本日ご紹介するのは、中小企業の活用事例であり、中小企業の資金調達の道を広げるという意味で、非常に興味深いものです。
【仕組の概要】
大田区は東大阪市と並んで優れた技術をもつ中小企業が集積していることで知られる地域です。今回の仕組みのもとでは、大田区の中小企業が持つ特許権の信託をUFJ信託が一括して請け負い、特許権侵害を防ぐとともに、資金調達にも知的財産を活用する、となっています。
この中で最も注目すべきは、信託銀行が不正利用の監視や特許利用契約の締結を通して、特許権侵害の防止に一役買ってくれる点でしょう。一般的に、下請け的な立場に甘んじている中小企業は、販売顧客である大企業への交渉力を持たず、本来受け取れるべき正当な対価を受けていないケースが往々にしてあります。この仕組みのように信託銀行を介することで、中小企業側が正当な対価を受け取ることが可能となれば、意義は大きいでしょう。
また、契約締結等の事務作業の負担から中小企業が解放される点も、意義が大きいといえるでしょう。一般的な大企業であれば、きっちりとした法務部門が存在し、事務作業を信託銀行が請け負ってくれることによるメリットはあまりないと考えられますが、中小企業では法務専任のスタッフを抱えることはコスト的に難しく、信託銀行側に投げることができるメリットは大きいでしょう。
【最大の難問~知的財産の評価額をどうすか?~】
上記の仕組において、中小企業は特許権等を信託することにより、まとまったお金を調達することが可能となるのですが、最大の難問はその特許権をいくらで評価するのかという点です。これは私の推測ですが、信託銀行各社もまだ確たる方法論を現段階では確立しておらず、現在評価方法を急ピッチで作成しているはずです。公認会計士協会からは、6月15日に「知的財産評価を巡る課題と展望について(中間報告)」と題されるレポートが発表され、信託銀行各社がこれを参考にすることは大いに考えられます。(残念ながら同文書は有料ダウンロードのため、リンクできません。7月のJICPAジャーナルに掲載されるそうなので、ご興味のある方はご参照下さい。)
したがって、知的財産の評価方法を具体的にご紹介することはできないのですが、ここで一般的な財産評価の考え方をご紹介しておきます。
株式であれ、債券であれ、不動産であれ、どのような資産であっても、その評価額は一般的に「その資産から生み出される将来のキャッシュフローを現在の価値に割り引く」ことにより算出されます。
債券がもっともわかりやすいでしょう。利払いと償還の期日にいくら入ってくるかは決まっているのですから、あとはこれを適切な割引率で現在価値に割り引くだけです。債券ディーラーはこうして計算された理論価格をもとに債券の売買を行っています。不動産であれば将来得られる賃料の予測額を、株式であれば将来得られる配当の予測額を、適切な割引率で割り引きます。ここで、債券と比較すると、債券の利子や元本に比べて、賃料や配当は将来得られるキャッシュフローというのが、より不確実になるという点に注意する必要があります。不動産には空室リスクが、株式には利益の変動リスクがあるからで、したがってリスクを反映させた債券の割引率よりは高い割引率を設定すべきです。
この考えを例えば特許権に応用すると、やはり特許権も将来得られるキャッシュフローの予測額を割り引くことにより評価額が計算されますが、特許権においては、技術の陳腐化のリスク等を勘案して、割引率を設定することになるのでしょう。
【改正信託業法の成立時期について】
現行の法制度のもとでは、上記の仕組みは実現できません。というのも、現行の信託業法では、信託の引受ができる財産の種類を①金銭②有価証券③金銭債権④動産⑤土地及びその定着物⑥地上権及び土地の賃借権の6つに限定されており、特許権等が含まれていないからです。信託業法の改正は、年金改革関連法案の混乱を受け今国会では成立できず、臨時国会での成立、来春の施行を目指すとの報道があり、具体的に動きがあるのは、来春以降となる見通しです。
インフレ参照値・・・最近しばしば小耳にはさむ言葉です。何を意味するのでしょうか?
【インフレ参照値とは】
インフレ参照値とは中央銀行が望ましい物価上昇率を示すことをいいます。例えば日銀が1%くらいの物価上昇率が望ましいと言えば、その1%がインフレ参照値です。「そんなことはわかっている」という声が聞こえます。では今なぜインフレ参照値が、我々庶民の耳に届くまで話題になっているのでしょうか?それには現在の経済情勢をざっと見ておく必要があります。
【デフレはそろそろ終わりらしい】
現在の経済情勢をざっと見ると、デフレはそろそろ終わりそうだ、と言えるでしょう。消費者物価指数の動向を見るとだんだんプラスに転じている方向性が見えてきます。
では、なぜデフレが終わりそうになったかといえば、実は日本銀行が一役かっています。日銀は「デフレが終わるまで量的金融緩和を続ける。」と約束し、その約束通りに量的金融緩和ベースにした金融政策を実行してきました。
ここで量的金融緩和とは、日銀がいろいろな方法でお金を市場に放出することをいいます。では、なぜ日銀がお金を市場に放出するとデフレがおさまってしまうのでしょうか?それは、例えばキャベツがあまりにも豊作だと値段が暴落しますよね。それと同じような感覚で、お金もあまりにも量が多すぎるとお金自体の価値もさがってしまうのです。お金の価値が下がるということは、逆から見れば、ものの価値があがるということです。すなわち物価があがる。だから、量的金融緩和はデフレを収めてくれるのです。
【デフレが終わると長期金利が上がる?】
さきほど、デフレは収束にむかいつつあるといいましたが、すると日銀の約束は「デフレが終わるまで量的金融緩和を続ける」ことだったのですから、裏返せば、デフレが終わって物価が上がりはじめたら、もう量的金融緩和は行わないといえます。つまり、簡単にいえば、金融引き締めに転じるということです。どうやって日銀は金融引き締めを行うかといえば、市場に出回っているお金の量を減らしていったり、さらには公定歩合を引き上げたりして、金融引き締めを行います。・・・ということは、金利が上がるわけで、その辺を先読みして、長期金利が最近になって急上昇しはじめたのです。
【長期金利が急上昇は好ましくないと日銀は考えている】
日銀は、長期金利が急上昇することを、あまりおもしろく思っていません。なぜならば、景気の回復を妨げてしまう恐れがあるからです。現在国債の利回りが上昇しているのですが、銀行から企業への貸出金利も国債の利回りをベースに決められます。国債の利回り上昇につられて企業への貸出し金利が上昇すれば、利払いの負担が増えて苦しくなる企業がでてきたり、そこまでいかなくとも、はでな投資を行おうとしていた企業の意欲を妨げ、そのような過程を経て景気回復のシナリオに暗雲が漂いはじめてしまいます。では、どうしたら長期金利の急上昇を避けることができるのでしょうか?
【長期金利の急上昇を避ける方法がインフレ参照値】
長期金利の急上昇を抑える働きをしてくれると考えられているのが、このインフレ参照値なのです。では、どのようなメカニズムでインフレ参照値が長期金利の急上昇を抑えるのか?それにはフィッシャー効果という下の式を理解する必要があります。
名目金利 = 実質金利 + 期待インフレ率
名目金利とは、まあ、世間で口にされる、あるいは、新聞で書かれている金利のことです。日経新聞で「長期金利が1.8%」と書かれていればそれが名目金利です。上の式の意味は、物価が上がっていくと期待される中では、名目金利もそれにつれて上昇するということを意味しています。
ですから、今長期金利が急上昇しているというのは、実はこの期待インフレ率が急上昇しているということなのです。
ここで、強大なパワーをもつ日銀が「私が望ましいと思う期待インフレ率は1%くらいなんです。」といってくれたらどうでしょう?「日銀さんがそういうんだったら・・・」ということで、人々のインフレ期待も1%程度におさまり、したがって、長期金利が急上昇をするということはなくなるのです。つまり、このようなメカニズムでインフレ参照値は長期金利の急上昇を抑えてくれるわけなのです。
政府はタイ、フィリピンなどから看護師・介護福祉士を受け入れ、外国人に閉ざされている門戸を開放する検討に入ったとの報道が本日の日経1面を飾りました。また、ヤフー記事によれば、既に全国12の病院や介護施設などが、外国人の看護師や介護士の受け入れを認めるよう求めているとのことです。日経紙面を読む限りでは、東南アジア各国と自由貿易協定を結ぶ上で、しぶしぶ譲歩して、看護師・介護福祉士を受け入れざるを得ないとのニュアンスが伝わってきます。
基本的には私はこの動きに賛成です。理由は、第一に看護・介護分野で将来的に予測される深刻な人材不足が解消されること、第二にライフスタイルの変化により出生率の回復は望めず、経済成長の達成・年金財政の健全化のためには移民の受け入れしか選択肢が残っていないことが、賛成の理由です。
しかし、日本の長期的な展望なくして、交渉のカードとして労働者を受け入れていくというのは、問題があると思います。日本はこれから移民とともに成長していく国家を目指すのか、それとも経済成長は放棄し、あくまでも日本民族を主体とした国を維持するのか、その根本的な議論なくして、労働市場をなし崩し的に開放していけば、必ずその歪みが将来現れることが目に見えているからです。
移民を受け入れるには覚悟が入ります。治安が悪化するかもしれないし、文化的にも変化が加速するかもしれません。また、日本の高齢者・障害者のお世話をしていただく方々なのですから、受け入れる側として彼等が日本社会に適合できるための支援を全面的にし、彼等に対する精神的なケアや言語面でのサポートについても万全でなければなりません。
中曽根元首相は何度となく「小泉には哲学がない」と小言を言い、私もその通りだと思うのですが、この問題については、確たる哲学なしで対処するのはあまりに危険だといえるでしょう。