本日の日経新聞に、新潟地震関連で製造業の経営を考える上で、非常に興味深い記事がありました。
二輪車メーカーにメーターを供給する日本精機の長岡工場が被災したため、同社から部品の供給を受けるヤマハ発動機と川崎重工業の生産ラインが停止するというものです。
両社の組立工場は被災地にはないものの、被災後、比較的早く生産ラインを止めねばならなかった背景として、ジャスト・イン・タイムがあったと日経新聞は指摘しています。在庫を必要最小限に抑えコストを削減する狙いである同手法により、組立工場内の在庫がすぐに底をついてしまったのです。
災害発生時にいかにジャスト・イン・タイムを復旧させるかについて、日経新聞では、トヨタが阪神大震災のときに、サプライヤーへの人員派遣をした事例を紹介しており、「ジャスト・イン・タイムを最後に維持するのは会社と会社のつながりだ」と結んでいます。
災害時にいかにして、事業を継続するかというテーマは9.11のテロ後のホット・トピックでもあり、そうした災害時に事業を継続して行うための計画をBCP(事業継続計画、Business Continuity Planning)と呼んでいます。例えば、東京に進出している外資系金融機関は、都心部での地震やテロに備えて、郊外にデータセンターのようなものを持ち、非常時には誰がその場所に行って作業を行うか、といった計画を用意しています。
金融であれば上記のようにデータをバックアップして、別のロケーションにオペレーションの場所を用意すれば、大方はこと足りますが、製造業の場合はサプライヤーも気にせねばならないため、複雑さは大きく増します。
アメリカでこうしたテーマでの研究がないかとグーグル検索してみたところ、驚くほどたくさんの文献がひっかかりました。以下に、英語文献ですが、いくつかリンクを貼っておきます。
Effective Practices for Business Continuity Planning for Purchasing and Supply Management
Business Continuity for Today's Manufacturing Enterprse
Traditional Threats and New Risk Complexities have Manufacturing Environments Spinning
私も熟読したわけではないのですが、リスクを評価し、リスクコントロールを考え、モニタリングする、というリスク・マネジメントの手法をベースに考えているようで、やはり計画を作成するという点に重きを置いて考えています。またIT技術の活用を指摘する文献も多いようです。
確かに会社と会社の人的つながりが重要であることは否定できませんが、その人的つながりがスムースな復旧をもたらすためには、周到な事前の計画が重要であることを忘れてはならないでしょう。
本日も大きな余震がありました。
新潟地震への義援金の寄付金控除に関する関心から、当サイトへのアクセスが増えています。
新潟県が窓口となる義援金については下記新潟県のサイトに寄付金控除が受けられる旨が明記されています。
また、寄付金控除の仕組みについては、下記FP総研さんのサイトの説明が分かりやすいです。
寄付金控除に関する同サイトの説明を以下に引用させていただきます。
『本人の所得や控除の状況により、異なってきますが、大雑把にいって、扶養一人として、給与700万円位までの人は寄附金控除額の10%、年収700万円から1300万円位までの人は20%が還付になります。』(引用終)
上記の記事は2001年10月2日現在に書かれたものですが、上記内容が大きく変わるような税法の変更は現時点までありません。
原油高を受け、石油元売り各社の2005年3月期の収益が急拡大する見通しだとの報道です。特に、新日本石油においては、連結経常利益が従来予想を310億円上回り、前期の三倍の1700億円前後に膨らむとのことです。
日経新聞の紙面では、こうした増益要因の背景にあるものとして、棚卸資産の評価法の1つである総平均法を挙げています。これはどの会計の基本的な書物には書かれていることであり、一般的に物価上昇期にはFIFOを用いると利益は増加し、LIFOを用いると利益はあまり変わらず、総平均法ではその中間となり、会計の教科書の理論を生きたビジネスの中に見出せる好例といえるでしょう。
しかし、総平均法だけでは、新日石の1,390億円の増益を説明することはできません。事実、日経紙面でも、在庫評価による増益要因は300億円としています。あとの1,000億円近い増益はどのように説明できるのでしょうか?
答えとしては、石油元売各社は原油の上昇によるコスト増を下流に全て転嫁していると考えることができます。原油価格がどれほど上昇しようと、「コストプラス+α%」で下流への販売価格を設定しているため、仕入れ値が上昇すればそれだけ利益も増えるというわけです。
簡単に数値で検証してみたいと思います。新日石の昨年度の連結損益計算書を、かなり数字を丸めたものは以下の通りです。
売上高 4兆2,800億円
売上原価 3兆9,300億円(約92%)
売上総利益 3,500億円
販管費 3,000億円
経常利益 500億円(営業外損益をゼロとする)
ここでいくつかの前提をおきます。
● 売上の「数量」については昨年度と変わらない。
● 原油の価格は2003年度平均から2004年度平均は40%上昇している。
● 石油元売から下流への販売価格設定に際し、昨年度と同じマージンを確保するものとする。
● 販管費は固定費とする。
①まず、原油価格が売上高より40%上昇しているため、今年の売上原価の予想は「3兆9,300億円 × 1.4」より、5兆5,000億円となります。
②昨年度と同じマージンを確保するための今年の売上高は、「5兆5,000億円 ÷ 92%」より、5兆9,800億円となります。
③これらをもとに今年の新日石の業績予測を下記に作成してみます。
売上高 5兆9,800億円
売上原価 5兆5,000億円(約92%)
売上総利益 4,800億円
販管費 3,000億円
経常利益 1,800億円(営業外損益をゼロとする)
これは、新聞で発表されていた1,700億円とかなり近い数字といえるでしょう。私が分析に要した時間はデータ収集も含めて30分くらいしかかかっていません。このように売り手が圧倒的に強く販売価格を支配できる業界においては、業績予測は比較的簡単に行うことができます。みなさんも是非、頭の体操としてみてトライして下さい。
本日の日経紙面トップの片隅に、「新日本製鉄、王子製紙は住友信託銀行と共同で、不動産投資信託(REIT)に参入する」との記事がありました。恐らく多くの方が、この記事になんらかの違和感を覚えたのではないでしょうか?その違和感を、私が皆様に代わって掘り下げて考えてみたいと思います。
第一には、シンプルな問題として本業との関連性が挙げられます。なぜ、紙屋と鉄屋(こういう言い方で道路公団の7人の侍はののしりあったんでしたっけ??)が不動産投資信託に手を染めねばならないのか。新日鉄の100%子会社である新日鉄都市開発と王子製紙の100%子会社である王子不動産が住友信託と3社で出資するとのことですが、多角化の類型としては拡散型に分類されるのでしょう。弊社サイトで紹介したNTTの事例では、NTTの不動産子会社は上場され、株式の売却資金を本業への投資に回す予定です。本業回帰という潮流の中、こうした分野に進出することで、経営資源が不用意に分散されてしまわないのか、疑問です。
第二の疑問はより深刻な問題に関わるものです。『新日鉄、王子製紙の両グループの保有不動産だけでなく、新規に物件を取得する』と記事の最後にありますが、これは投資法人の親会社から運用対象となる物件を購入するということです。果たして適正な価格での購入は可能なのでしょうか?両不動産子会社はできるだけ高い価格で物件を売りつけたいと考えていますが、投信の購入者はできるだけ低い価格で購入してほしいと望んでいます。こうした根本的な利害の対立をマネージできるのでしょうか?
第二の疑問に対する明快な説明がない限り、私であればこのREITへの投資は差し控えます。
新潟県のサイトが、つながるようになりました。
税法上の措置としては以下が明記されています。
『所得税法第78条第2項第1号の規定に基づく寄附金控除、法人税法第37条第4項第1号の規定に基づく損金として扱われます。』(引用終)
つまり、平たくいえば個人の方であれば先ほど記述した寄付金控除を受けることができ、法人であれば損金に計上できるということです。
希望されている物資は保存食品、飲料水(ペットボトル入り)、 紙コップ、紙ざら、使い捨てカイロ等とのことですが、市町村への割り振りの都合から、まとまった単位での物資を希望しているとのことです。
この度、地震の被害に遭われた方々にお見舞い申し上げます。
当サイトをご覧の方々は、何らかの貢献をしたいが、仕事の制約がある、という方々がほとんどであると思います。そうした方のために、ご参考になる情報のリンクを下記に用意しましたので、ご参照下さい。
【義援金募集窓口】
● 日本赤十字社
(現在まだ新潟地震関連での募集は掲載されておりませんが、過去の経緯から近々アナウンスされることと思います。)
● はてな義援金窓口
(「はてな」をご利用の方はポイントを義援金として送付できるようです。)
義援金に関しては、所得税の寄付金控除を受けられる可能性があります。所得税の寄付金控除の仕組みに関しては、こちらのFP総研さんの説明が分かりやすいのでご参照下さい。また、所得税の寄付金控除が受けられる義援金とそうでないものがあるので、関心のある方は、各窓口に直接御問い合わせ下さい。
現時点では新潟県庁のサイトは非常につながりにくく、また、今後義援金の窓口も多く設置されることと思います。
【地震関連情報】
● 新潟県中越地震情報
(地震関連のブログのトラックバックが集まっています。またこのサイトの左側には、地震関連サイトのリンクが収集されています。)
【ボランティアをお考えの方へ】
● 現在の防災ボランティア情報(BY 内閣府)
● ボランティアの心構え
また、日頃「CSRを実践したいが何をしたらよいか分からない」とお考えの企業の方も、困った状況にある日本国民を支援することは、それは十分立派なCSRの一形態です。この際に、是非ご検討下さい。
銀行のビジネスモデルが変わりつつあり、大口融資先への融資の利ざやが縮小する中、中小企業向け融資や住宅ローンを核とするリテール市場への本格的進出を狙おうとしているのはみなさんご存知の通りです。
そんな中、中小企業向け融資の新たな試みに関する報道が、本日も日経新聞に掲載されました。「大手銀行が中小企業向けの資金繰り支援融資に知恵を絞っている」との報道で、UFJとりそな銀行の商品が紹介されています。両者とも売上債権をバックにしたものとなっており、UFJのものは売掛金残高の枠内で融資を行うが売掛債権を担保にとらないという点で目新しいと思います。
新聞報道等から見る限り、中小企業向けの融資は3つの方向に向かって進展している感があります。
第一の方向性は、当記事に紹介されているような、売掛債権をバックにした融資です。売掛債権を売却するのか、担保にとるのか、それとも今回のUFJのように無担保で貸し出すのか、技術的な差異はありますが、売掛債権をバックにしているという点で共通しています。こうした融資において貸し出す側にとって重要なのが、リアルタイムで売掛債権の回収状況を把握するという点で、今回のUFJの融資においては、UFJに開設した口座での売掛金回収が前提となっています。また弊社サイト6月8日に紹介した、ガリアプラス社とミロクドットコム社共同の売掛債権担保融資では、会社の帳簿を会計ASPを通じて融資先に開示することで、より低利で融資を受けることが可能となっており、趣旨は同じと考えてよいでしょう。売上債権をバックとした融資は①リアルタイムで回収状況を把握し、②銀行側のシステムで定量的なリスクを人手(コスト)をかけず把握することが、銀行が競争に勝つための条件となるでしょう。
第二の方向性は知的財産信託を活用したもので、ここでは知的財産から生み出されるキャッシュフローがバックとなっています。こちらについても弊社サイト7月6日付けの記事で紹介済みですが、このタイプでの融資において重要なファクターとなるのが、知的財産の評価法であることはいうまでもありません。
第三の方向性がいわゆるリレーションシップバンキングの考え方に基づくもので、私が新聞を読み落としているだけなのか、「リレーションシップバンキング」という文字が新聞紙上を躍るのを見かけた記憶があまりありません。このタイプの融資では、上記2つのような定量的な情報より、経営者の資質といった定性的な情報をいかにして入手するかが重要となってきます。
土地がなければ融資が受けられないという時代からは確実に変化していることが窺えます。融資をする銀行も、受ける中小企業も、そして私のようなコンサルタントも、マインドを切り替えないと、新しい時代を乗り越えていくことはできません。
「ブログをビジネスに使いましょう」という趣旨の記事を最近よく見かけるようになりました。例えば下記のようなものです。
● 日経BP連載記事
● イーナチュラルサイト
ブログをビジネスに使うことの一般的に語られるメリット・デメリット等は上記のサイトに譲るとして、私もブログサイトを運営しているという立場から、一般的にあまり語られていないメリットについてお話したいと思います。
私がブログサイト運営を通じて、最も享受しているメリットといえば、それは「自己研鑽に最適」であるという点です。当サイトはニュースレビューという形で、弊社のビジネスに関わる経営コンサルティング・ファイナンシャルプランニングがらみの最新のニュースを解説したり、読者の皆様と一緒に考えるというスタイルをとっています。そうした記事を、不特定多数の方の読者の目を気にしながら毎日書くということは、弊社サービスのプロモーションという短期的な観点より、私自身のスキルアップというより長期的な観点から得られるメリットの方が大きいと思われます。ナレッジそのものが売り物であるコンサルティング業界でブログを運営することは大変意義深いことだと私は思います。
起業を考えている人には、会社を辞めてしまう前にまず関連する分野でブログをはじめて見ることを勧めています。アクセスを分析することで、どの分野に潜在顧客の関心があるかどうか分かり、同分野に関心がある人たちとの人脈が形成できる可能性もあるからです。また、自分がビジネスをしようとする分野で定期的に記事を書くことすらおぼつかないようであれば、それはその人の熱意が足りないということを意味します。
ノウハウをウェブ上で無料で提供することに抵抗感を抱く方がいるかもしれません。私の個人的な考えでは、フィーは個々のお客様にカスタマイズしたサービスを提供したときにはじめて頂くべきものだと思っています。一般的なネタを解説するだけでお金をもらえると思っているコンサルタントがいるとすれば、その底の浅さを疑います。
語るべきネタとネットにアクセスできる環境さえあれば、ブログはコストゼロに近いレベルではじめることが可能です。様々な可能性を秘めたブログを、読者の皆様もはじめてはいかがでしょうか?
日本IBMが金融機関向け次世代型基幹システムを開発し、第一弾としてスルガ銀行から受注したとの報道です。新聞報道では、このシステムの技術基盤がオープンシステムであるというハード面を強調していますが、ファイナンシャル・プランナーとしては、背後に見える銀行のリテール戦略の方に目が行ってしまいます。
本日付の日経新聞の15ページの図を見れば明らかなのですが、システムのメーンの切り口は「顧客」であり、顧客の属性に適合した自前のローン商品、提携先の投信、保険等をクロスセルして、顧客の生涯価値を最大化しようとする、ワン・トゥー・ワン、CRMの思想が鮮明に伺えます。
また、私の興味を大きく惹いたのが以下の記述です。
『新システム導入で利率や融資期間などの個別機能を自由に組み合わせ、年齢や勤務先、家族構成など顧客の属性をもとにした特注の住宅ローンや融資が可能になる。』(引用終)
これは、実は私が温めていたアイデアと重なります。(といってももちろん弊社の力では商品化できないのですが・・・)今でも返済期間・利率などは銀行の既存のシステムで柔軟に対応できると思うのですが、返済額については、元金均等・元利均等のいずれかからしか選択できません。返済のスケジュールを変更しようとすれば繰上返済を行うほかなく、若干その手間が面倒であり、繰上返済の手間を軽減するローン商品として新生銀行・東京スター銀行から新ローン商品が登場していますが、いずれも返済額は一定との前提にたつことにはかわりはありません。
はじめからライフスタイルに応じて返済額にめりはりをつけるローンがあれば、利用する側にとっては大きなメリットだと思います。(子供が中高生のときは教育費がかさむのでその期間だけ返済額を少なめに組みたい等々)また、銀行側も「繰上返済」というサプライズをマネージする必要が軽減され、ALMの観点からも有効だと思われます。スルガ銀行がここまでの商品を考えているのであれば、あっぱれといいたいところです。
一点、「オープンシステム」という点についてコメントするならば、既存のソフトを組み合わせて使用するため、新聞報道にあるように①コスト削減②将来の戦略変更に柔軟に対応できる等のメリットを享受できますが、①複数のシステムにアクセスするために操作性の観点から接客する人の生産性が落ちる、②顧客のポートフォリオ全体の分析をどこまで詳細に行いうるか疑問、といったデメリットもあります。
経営コンサルタントとしてこの新聞報道はリテールバンキングを考える上で実に興味深いですが、FPとしては、こうした情報武装した銀行が続々登場するとなれば、明らかに脅威です。うかうかしていられません!!
厚生労働省は大規模有料老人ホームに他の市町村から転入してきた入居者の介護費用について、転居前に住んでいた市町村に負担させる方針を固めたとの報道です。
この問題の背景には、当サイト過去記事でも触れたような、次に掲げる介護保険財政の仕組みにまつわる根本的な問題に起因しています。
①介護保険の財政は国民年金・厚生年金等とはことなり、市町村が単位となっている。なぜ、市町村が単位となっているかについては、介護は地域密着のサービスであるべきだ、との思想があるように見受けられる。市町村が財政単位となっていることから、当然、地域間格差の問題が生じ、保険料に極端な格差が生じていたり、介護認定の基準にも地域間の格差が報告されている。
②「介護施設の立地に相応しい地域」と「介護を必要とする老人が多い地域」とは当然に一致しない。したがって、介護施設に入居するために、老人が市町村を移動して転居することはよくある。
③上記の人口移動に伴い、「介護施設の立地に相応しい地域」に介護を受ける老人の流入が多くなり、当該地域の若年層にとっては、「あかの他人の老人が移り住んできたために、保険料が増加してしまう」という不公平感が生じてしまう。こうしたことから、グループホームの建設を市町村が抑制する動きが始まっている。
今回の報道は上記の③に掲げたような不公平感を除去するための措置といえるでしょう。ただ、日経のネットの記事では「大規模」有料老人ホームとなっており、グループホームの問題も視野に入れているかどうかは定かではありません。
ただ、このような措置を設けてしまうと、別の種の不公平感・不条理が生まれてくる可能性があります。すなわち、「私の住む地域の介護保険料は高いけど、その割に有料老人ホーム等の介護を受けられる施設が乏しい」といった類のものです。
いつまでたってもこうした不公平感が生じるのは、やはり介護保険の財政単位が市町村単位であるためなのでしょう。私は、介護保険財政も国でまとめて一つに移行すべきであるとの考えです。財政が一つにまとまれば、事務処理上のコスト減にも大きくプラスになると思われます。
最近、新聞で見かけることがあまりなくなってしまいましたが、年金・医療・介護等を総合的に考え直すという、社会保障協議会の健闘に期待したいところです。
ダイエーの問題はポリティクスの領域に移ってしまい、あまり当サイトの話題にふさわしくなくなってしまいましたが、本日の日経新聞を読んでいて思うところを書いてみたいと思います。それは、「タイムリミット」が高木社長の意思決定に重要な役割を果たしたということです。
ダイエーの再生に産業再生機構を活用するとの方針は、銀行側の意向が強かったと報道されています。そして、その背後にあるのが金融庁の「不良債権比率を来年3月末までに半減する」との大目標です。竹中氏の設定したこのマクロ目標に従い、銀行マンの頭の中には、「3・2・2」の数字が叩き込まれていたと、本日の日経1面の「ダイエー落日」に記載されています。つまり「査定に三ヶ月、準主力行の調整に二ヶ月、債権放棄に二ヶ月」でトータル7ヶ月かかるから、逆算して今年の9月から査定を始めねばならない、という大枠のスケジュールです。
ダイエー再建に産業再生機構を活用した方がよかったのか、民間で再生した方がよかったのか。それを議論することは興味深いことなのでしょうが、それより重要であるのは、タイミングを逃さず、適時に意思決定をし続けていくことだと私は思います。竹中氏の設定した非常にわかりやすいマイルストーンがあったため、日本の産業再生は一つ前進できたのではないでしょうか?
高木社長の背中を押した要因として、監査法人側の働きかけも指摘されています。監査法人は財務諸表監査の監査報告書に、その企業の継続性の前提に疑問符がつくときは、その旨を注記として記載しなければなりません。今回、機構を活用する決断をせねば、「継続性の前提に疑問あり」と書かざるを得ませんよ、と監査法人から指摘されたことも、機構活用の決断を後押ししたのです。政府のマクロのタイムリミットだけではなく、制度的ディスクロージャーの設定したタイムリミットも、機構活用の決断を促す結果となったのです。
上記のタイムリミットはいずれも企業の外部から課された意図さざるものでしたが、これを教訓とするならば、経営においてタイムリミットを自らに課して、適時に意思決定をし続けていく仕組みを作ることが、強い会社への第一歩といえるのでしょう。
堤義明氏が、コクドなどが保有する西武鉄道株の比率を有価証券報告書に虚偽記載していたことの責任を取って、コクド会長やプリンスホテル会長など西武鉄道グループの全役職を同日付で辞任したと発表したとの報道です。
日経新聞は、堤氏を糾弾する言葉として「コーポレートガバナンス」という言葉を繰り返し使用しています。なぜ、有価証券報告書の虚偽記載が「コーポレート・ガバナンス」上の問題として取り上げられるのでしょうか?
コーポレート・ガバナンスとは、平たくいえば、会社をチェックする仕組みのことです。では、どのような観点からチェックするかといえば、株主を中心とするステークホルダーの立場から、経営の効率性、健全性、透明性、公正さなどの観点から、会社をチェックする仕組みであると言われています。
今回、問題となっている虚偽記載の中身はといえば、西武鉄道株のコクドの保有比率が本来64.83%であったものを、意図的に43.16%と過少に記載していた点にあります。公的な文書である有価証券報告書を意図的に虚偽記載していたという点で、証取法に違反しており、法令遵守をしていないという点で、まず、コーポレートガバナンス意識が欠如していたといえます。
一見、些細に見える虚偽記載ですが、深刻な内容をはらんでいます。というのも、この虚偽記載を行わないと、株主の数が東証の上場基準より少なくなってしまうのです。なぜ東証は上場基準として、一定の株主数の存在を掲げているのかといえば、ある程度の株主がいないと、市場で公正な株価が形成されないからです。実質的には公正な株価が形成されない株主数であるにも関わらず、それを偽装して株主数が上場基準をクリアしているかの如く見せるというのは、少数株主軽視という点で大きな問題です。
更に、コーポレート・ガバナンスに照らして大きな問題といえるのが、堤氏の会見の要旨です。上場廃止になる可能性を問われて、堤氏は以下のように答えています。
「西武鉄道の株価は中身と比べて安すぎると考えている。解散しても(一株あたりの資産価値は)もっと高い。上場廃止になっても損をしたということにはならないのではないか。そもそもなぜ西武鉄道を上場しなければならなかったのか私にはわからない」(引用終)
株主は「ボイス」と「エグジット」という2つの方法で会社の運営に関与できます。「ボイス」は議決権の行使であり、「エグジット」は売却です。西武鉄道のように過半数を所有する大株主が存在する場合、少数株主の「ボイス」は実質的に効力を持たず、従って少数株主には「エグジット」しか残されていないといってよいでしょう。
もし上場廃止になれば、少数株主からは「エグジット」すら奪われてしまうことになりますが、この点を堤氏は全く意に介していないようです。
法令遵守の不徹底と少数株主軽視が、堤氏がコーポレート・ガバナンスの観点から問題視される所以なのです。
カルフールが日本事業の売却を検討しているとの報道です。カルフールに関しては、進出以来、突然の日本トップ交代があったり、ポリシーが一貫していなかったり、他にも多々「?」と思わされるところがあり、一抹の不安を感じてはいました。
ただ、一般的にいえば、フランス企業の日本進出はうまくやっている、というのが、私の思うところです。そして、その成功の根源にあるのが、フランス人の日本文化に対する理解であるというのが私の私見です。
私は今までいくつもの外資系企業を渡り歩いてきましたが、その中の一つであるBNPパリバ証券会社は、やはりフランスが本籍の会社です。そこで特徴的だったのは、日本人がマネージャーで、それにフランス人スタッフがレポートする、っといった部門がいくつもあったことです。米系企業の日本法人では、あまり見られない光景です。アメリカ人マネージャーに日本人スタッフがレポートするのが通常で、その逆はほとんど見たことがありません。こうした違いが出てくるのは、「フランス人は日本人を信頼しているが、アメリカ人はそうではない」といったあたりに行き着く気がします。ではなぜフランス人は日本人を信頼できるのかといえば、日本文化に対する深い理解があるからだと私は思っています。例えば、ヨーロッパの人には、「書道○段!」のような、私よりはるか達筆の人がいたり、源氏物語を読破しているような「日本通」が多くいるものですが、アメリカ人にはそれほどいないようですし、いたとしても、そういった人がビジネスの世界に入ってくることはあまりないように見受けます。そうした、日本文化に対する畏敬の念があるか否かが、組織において信頼できるか否かということにつながってきていると思うのです。
日産のゴーンさんもやはり、日本人を信頼した上で改革を行ったために成功したのだと思います。その根拠は、日産にルノーから送り込まれたフランス人役員、マネージャーが比較的少ないという点です。一方で、フォード傘下のマツダには驚くほど数多くのアメリカ人マネージャーが存在しましたが、劇的な復活は日産に奪われてしまいました。
これは、日本企業が海外に進出するときにおいても重要なポイントだと思います。ただ、「人件費が安い」ということのみを追求しようとすると、いつか窮地にたたされることでしょう。海外進出においては、異国の文化を深く理解し畏敬の念を抱くことが重要であると考えます。
西友はパートを含む3万5000人の従業員に業績連動型の給与体系を導入したとの報道です。パートの戦略的活用のために業績連動型の給与を導入すること自体は、今日ではそれほど目新しいことではありませんが、これもウォルマート傘下に入ったことによるものでしょう。ウォルマートはパートにもストック・オプションを付与していることで有名です。今後、西友もパートへのストック・オプション付与に踏み切るかどうかは分かりませんが、既にパートにストック・オプションを付与している企業が権利行使価額をどのくらいの水準に設定しているかに興味があったため、調べてみました。日本でパートにストックオプションを付与している企業としては、スターバックス・ジャパン、オリジン東秀、リンガーハットが有名なので、この三社について調べてみました。
【スターバックス・ジャパン】
2001年2月決議 7,679株 6,500円
2002年6月決議 9,682株 30,500円
【オリジン東秀】
1999年6月決議 79,000株 1,084円
2000年6月決議 93,000株 1,374円
2001年6月決議 61,500株 2,316円
2002年6月決議 75,500株 2,469円
2003年6月決議 80,000株 1,393円
【リンガーハット】
2001年決議 211,400株 113,000円
スターバックスは私の推測ですが、最初の条件が役員クラス用で、後のものが一般社員用であると思われます。特に、オリジン東秀において、顕著に見られるのですが、毎年新しく資格を得た従業員に継続的に付与しているのでしょうが、そのときの株価の8~9割辺りを権利行使価額に設定しているため、そのときの株価の動向によりかなり条件が不平等になってしまいます。例えば、オリジンの株価が全従業員が一丸となって努力したことにより2,000円に回復したとしても、2001年と2002年に付与された従業員は恩恵にあずかれません。
リンガーハット、スターバックスは実質的に付与したのは1回だけのようですが、そうすると、付与された従業員と、その後に入社してきた従業員との間に不公平感が生まれてきます。
役員クラスならいざ知らず、パートの従業員は100円、200円節約するために必死になっている人々です。そうしたパート従業員間にこのような不公平感が生まれれば、日々の仕事にも影響がでるのではないかと懸念されます。不公平感を払拭するために現金賞与を併用したりすれば、企業収益にかなりの痛手になるでしょう。
どうやら、パートや一般従業員にストックオプションを導入するためには、株価が安定していて、かつなだらかに右肩上がりを続けていることが、必須条件のようです。
国内最大規模の年金基金である厚生年金基金連合会が、2003年度(2003年7月から2004年6月)の上場企業の株主総会で会社議案の25%に反対したことが判明したとの報道です。同報道によれば、厚生年金基金連合会は1部上場企業の株を全て保有しているとのことです。「25%」とは全体の数字で、個別の議案別に見ると退職慰労金支給にいたっては、なんと58.2%において、反対票を投じています。どのような議案に反対したのかについては、判断基準が明確に記されており、以下に引用します。
● 長期に渡って業績不振が続いており、経営責任が問われるべきと判断されるにもかかわらず、退職慰労金が支給されている事例
● 高い独立性の確保が求められる社外取締役や社外監査役への退職慰労金が支給されている事例
書店に行けば、あれほどたくさんの「コーポレート・ガバナンス」の書物が並び、経営者へのインタビューでも「コーポレート・ガバナンス」や「株主重視」といった言葉が聞かれるようになったにも関わらず、1部上場企業の社長といえど、先代の社長には頭が上がらない実態が浮かび上がります。
株主重視が実態として軽視されているのは、経営陣の人間関係も勿論要因ですが、やはり株主側も株主総会の議案を吟味して、声を上げていないことが大きな原因でしょう。厚生年金基金連合会の動きが個別の企業年金に伝播し、ひいては個人投資家までもが、こうした視点で株主総会に関わりはじめれば、日本の企業経営は本当に株主重視の方向へシフトし始めるのでしょう。
【参考サイト】厚生年金基金連合会 平成16年6月株主総会 インハウス株主議決権行使結果について
総務省は2007年度にも、課税漏れとなっている1年未満の短期就労者から個人住民税を徴収するとの報道です。本日の日経朝刊トップに『フリーターに住民課税』の見出しが躍り、フリーターの方はどきりとされたことと思いますが、別に新たな課税がなされるわけではありません。現在は、1月1日時点で就労していなければ納税義務が生じないため、極端な話で言えば、1月2日から12月31日まで就労された方には住民税が課されないことになってしまい、今回の措置は、こうした制度の不備による不公平感を解消することに目的があります。ですから、公平性という観点からは当然の措置で、こうしたフリーターから住民税を課税できるようにするため、全ての企業に事務負担が生ずるとの観点から、トップ記事に取り上げられたのだと思われます。
これは、公平性という観点から至極まともな措置なのですが、しかし「フリーターからお金をとる」ことだけ考えているという点からすれば、極めて「木を見て森を見ず」的な政策だと私は思います。
UFJ総研の作成したフリーターに関するレポートに非常に興味深いものがありますので、以下引用したいと思います。
(引用始)
【平均年収】正社員:387万円、フリーター:106万円
【生涯賃金】正社員:2億1500万円、フリーター:5200万円
【住民税】正社員:64,600円、フリーター:11,800円
【所得税】正社員:134,700円、フリーター:12,400円
【消費税】正社員:135,000円、フリーター:49,000円
【消費額】正社員:282.9万円、フリーター:103.9万円
【年金受取額】正社員:(月額)146,000円、フリーター:(月額)66,000円
【経済的損失】税収:1.2兆円減少、消費額:8.8兆円減少、貯蓄:3.5兆円減少
(引用終)
こうした数字を目の前にして、税の公平性だけを振りかざして、フリーターから税をとりたてることは、果たしていかがなものなのでしょうか?もちろん、フリーターになる動機は様々であるのは事実ですが、人件費抑制を推進する企業の犠牲になっている面も否定できません。フリーターの老後の生活はどうなるのでしょう?こうした面に道筋をつけることが先決なのではないでしょうか?
全てのフリーターに可能な選択肢ではありませんが、彼等にはもともと捨てるものがないわけですから、人生一発逆転を目指して、起業するというのも一つの有効な手段だと思います。ただ、起業のノウハウを当然有しているはずはなく、かといってコンサルタントにフィーを払うほどの蓄えもないでしょうから、政府がフリーターが行う起業に補助金を出してくれると、私のようなコンサルタントにとっても、フリーターにとっても、そして社会全体にとってもハッピーな解になると思うのですが・・・
みずほ銀行は10月から、20―35年の長期固定型住宅ローンの金利を0.33ポイント引き下げ、年2.87%にするとの報道です。このローンはいわゆる「民間新型住宅ローン」と呼ばれるもので、ローン債権は銀行から住宅金融公庫に売却し、公庫が証券化してまとめて、他の投資家に販売するという仕組のローンで、弊社過去記事にも関連記事があります。
新聞報道には「認知度の低さから、取扱件数が年三千三百件程度と伸び悩んでいる。」との記述がありました。なぜ、この商品は普及しないのでしょうか?答えは、販売している金融機関が、競合する自前の住宅ローンを用意しているケースが多いからです。
銀行は昔は、優良企業にお金を貸し付けて、相当な利ざやを稼いでいましたが、優良企業は直接金融市場に流れて、優良企業への貸付からは高い利ざやは望めなくなりました。その代わりとして銀行の収益源として注目されているのが、住宅ローンです。住宅ローンを販売すれば、2~30年という長期に渡って高い利ざや収入を獲得できることとなります。そこで、銀行は自前の住宅ローンを用意して、収益源を強化することを狙っているのです。
一方で、この「民間新型住宅ローン」は、①ローンを販売する銀行②証券化事務を行う住宅金融公庫③証券を購入する投資家の3者でローン収入を分配することとなります。この中でいわゆる「利ざや」の部分は証券のホルダーである投資化が享受することになり、銀行はこの「利ざや」収入がオイシイと思っているのに、仕組み上、それを第三者にみすみすもっていかれることとなってしまうのです。
さて、自前の住宅ローンと民間新型住宅ローンの2種類を揃えている銀行が、ローンの申込者から相談を受けたとき、どちらを勧めるでしょうか?答えは自明で、これが民間新型住宅ローンの普及が進まない理由です。
銀行の窓口に行けば、ローンの相談には無料で応じてくれます。しかし、ただほど高いものはないのです。無料で相談するとはいえ、営利ビジネスなのですから、銀行が収益を確保するためには、お客様にとってよいローンより銀行にとってよいローンを勧めざるを得ません。
住宅は人生最大の買い物で、ローン商品の選択・返済計画の立て方次第で、一生涯に支払う利息の金額は数百万円(私のお客様のケースでは500万円前後の金額をセーブできることが多いです)という単位で変わってきます。適切な商品選択・返済計画立案のためには、専門的な知識が必要ですが、商品の販売側にたっている人からは中立的な立場での助言は望めません。
住宅ローンの相談は是非弊社をはじめとする、独立系FPに御用命下さい。