武田國男氏の私の履歴書が、本日をもって最終回となってしまいました。今回の私の履歴書は特に楽しみにされていた方が多いと思います。
先日のエントリーにて、月の半ばになったにも関わらず、武田國男氏の名経営者の片鱗すら現れず、この先どういう展開になるのだろう、との感想を書きました。シリーズを終えて振り返ってみると、武田氏が化けた最大の理由は「アメリカでの職務経験」にあると考えてよいでしょう。そして、同じく名経営者として名高く、アメリカでの職務経験が大変大きな影響を与えたと公言しているのが、キャノンの御手洗冨士夫社長です。
キャノンの御手洗氏は、利益を水増しする粉飾を指摘したアメリカの税務署の担当者の言葉が印象的であったと語っています。
「ミスター・御手洗、これだけしか利益のでないビジネスなら、会社をたたんで残ったお金を定期預金にしなさい。」
これが税務署員のアドバイスですが、これは他ならぬ投資利益率(ROI)のことを語っているのであり、売上高を利益より重視していたり、あるいは利益を重視していても売上高との対比でしか考えないのが、多くの日本企業の実態です。投下資本に対する利益率を重視するというコンセプトを経営者が肌で学んできたため、キャノンはずっと元気な会社でい続けられるのでしょう。武田氏の場合、「私の履歴書」という読み物としての性格を配慮してか、そうした財務的な硬い話は登場しませんでしたが、交渉術といった仕事のプロセスの違いに関して影響を受けたとの趣旨の記述がありました。
アメリカで教育を受けたり、働いたりした経験を持つ経営者は少なくないですが、そうした経営者連と2氏を分けるのは、米国流の経営と日本の風土の融和を考えた点であり、それは特に御手洗氏において顕著でしょう。富士通などがあまり深い考えなしに、米国流の経営手法(成果主義等)を導入して右往左往している顕著な例といえるでしょう。一言でいうなら、陳腐な四字熟語ですが、和魂洋才が2氏を際立たせる真髄なのではないでしょうか。
日本経済新聞社が全国3000人の消費者を対象に、主要な消費財・サービスをいくらなら購入しようと思うかを聞く「買いたい価格調査」の結果の一部が本日の日経新聞に掲載されていました。
新聞の情報を更に要約すれば、「液晶テレビ、プラズマテレビなどのデジタル関連商品は消費者の『買いたい価格』が上昇して実勢価格に近づき割高感が薄れたものの、外食・サービスでは割高感がある」といったところになるでしょうか。しかし、この調査結果を読む上で一点注意せねばならないのは、ネットリサーチのバイアスです。
日経朝刊9ページには調査の方法として、以下が明記されています。
『調査会社インフォプラント(東京・中野)の協力で、11月に全国の15歳以上の男女1,500人ずつを対象にインターネットで実施』(引用終)
このようにインターネットを使いこなせるという時点で、既に母集団である「消費者全体」から乖離していることを割り引いて考えた上で、マーケティング戦略等に応用すべきでしょう。バイアスの一例を挙げれば、ネットを駆使できる人々には、新製品に飛びつく「革新的な」消費者の割合が多い、とされています。プラズマテレビと液晶テレビの「買いたい価格」が上昇していることも、多少そういったバイアスを差し引いて考えねばなりません。
私が印象的に感じたのは牛丼の「買いたい価格」が250円から300円が最も多く、350円未満では7割を占めてしまう、との記述です。一昔前では牛丼は400円前後であったはずです。それが吉野家が価格破壊を起こして、280円という値段が定着してしまいました。私も300円以上だして牛丼を食べる気にはなかなかなれません。慣習価格の恐ろしさといったところでしょうか。
トヨタ自動車は鋼材需給のひっ迫が長期化するとみて、アジアの4大鉄鋼メーカーを軸とする鋼材の新たな調達体制を構築するとの報道です。また、昨日は日産の鋼材調達難を背景とした操業停止が報じられました。数年前にゴーン氏が鉄鋼業界に冷たい仕打ちをした反動、といったような浅薄な報道も見受けますが、円高や貿易摩擦等の過去の数々の難題を克服してパワーアップしてきた日本の自動車業界は、今回のこの難題も成長へのバネにしてくれるであろうと期待しています。本日の日経新聞には解決の方向性を示唆する記述がいくつか見られます。順に検討してみたいと思います。
【サプライヤーとの長期的関係の構築】
まず、以下の日経新聞3ページの記述を見てみましょう。
『トヨタは先手を打ち、自動車生産に必要な鋼板を約五百種に絞り込み、その安定供給を新日鉄とJFEの二社に求める。一方でポスコ、上海宝鋼からの調達本格化は長期的に新日鉄、JFEの値上げ要請をけん制する思惑がある。』(引用終)
複数のサプライヤーと長期的関係を構築し、サプライヤー間で競わせるというのはトヨタのお家芸といえるでしょう。日産についても先日の報道で、部品のサプライヤーの選定のあたって、今後は技術力のある部品会社を選び、資本関係を持たないまま長期安定的な「系列関係」を築く方針に転換するとの報道がありました。系列の負の面に苦しめられてきた日産ですから、その反省にたった上で長期的関係をサプライヤーと構築していくことでしょう。
【SCMの更なる深化】
SCMとは、サプライヤーも含めた企業グループで需要予測データを共有し、在庫量などを単一企業レベルではなく、サプライチェーン全体の中での最適化を目指そうとする考え方のことです。トヨタグループなどは、SCMなどという用語が登場する前から、既にこうした考え方で生産を行っていたものと考えられます。ただ、今回の鋼材需給ひっ迫への対応ぶりから推測する限りでは、このSCMの輪の中に鋼材メーカーは含まれていなかったとみるべきでしょう。
SCMを突き詰めて考えるならば、原材料である鋼材メーカー、そして鋼材の原材料となる鉄鉱石まで遡って、サプライチェーンを定義せねばならないでしょう。こうした事態に直面するまでは、SCMを仲良しグループの間でとどめておいた感が否めません。日経新聞には以下の記述があります。
『さらに鉄鋼拡大の足を引っ張っているのが原料に使う鉄鉱石、石炭の不足だ。ブラジルやオーストラリアの資源大手は増産計画を打ち出しているが、中国などいわゆるBRICs地域での鉄鋼生産の拡大に追いつかず「一~二年は需給のひっ迫が続く見通し」(JFEスチール)という。』(引用終)
今回の問題の最も理想的な解決策は、SCMをサプライチェーンの末端まで浸透させることであると考えます。また、このようにSCMを究極まで分解して考えることは、先日のエントリーにて書いたBCP(Business Continuity Plan)を考える上で、有意義であると思われます。
自動車業界がこの逆境をどう切り抜けていくのか、注目していきたいと思います。
本日の日経新聞のトップを、知的財産関連の報道が飾りました。映画やアニメなどのコンテンツ(情報の内容)を対象とした国内初の知的財産信託が登場するとの報道です。これまで、当サイトでは、知的財産関連の報道を注視し、以下のエントリーを書いてきました。
当サイトが知的財産信託に着目する理由は①土地等の担保を持たない中小企業にとって新たな資金調達源となりうること、また②私が受験指導をしている中小企業診断士試験の要である財務会計と経営法務の交錯する論点であり、学んだ知識を生きたビジネスの場に応用するのに格好である、と考えるからです。
【なぜビデオ化権が対象となったのか】
今回の知財信託の対象となったのは、「ビデオ化権」又は「ビデオグラム化権」と呼ばれるもので、この権利を知的財産の中でどこに位置づけられるのか確認しておきたいと思います。
知的財産は大きくわけると①工業所有権と②それ以外に分類することができます。工業所有権としては、特許権・実用新案権・意匠権・商標権があり、工業所有権以外の代表格が文化的な創造物を保護する著作権です。
著作権はさらに、著作物の財産的価値を保護する「財産権としての著作権」と著作者の人格的な利益を保護する「著作者人格権」に分かれます。著作者人格権の方は、他人に譲ることのできない性格のもので、ビデオグラム化権は分類としては「財産権としての著作権」の支分権と位置づけられます。
例えば映画に関していえば、映画館で上映する権利は上映権、そしてDVDやビデオにする権利はビデオグラム権と、「財産権としての著作権」は支分権に分かれているわけです。住友信託は知的財産信託第一号をはじめるにあたって、なぜ上映権に手を染めず、ビデオグラム化権に着手したかといえば、それはビデオグラム化権から生ずる将来のキャッシュフローの予測が比較的容易であるからに他なりません。映画があたるかあたらないかを予測するのはかなり難しいですが、ビデオが売れるか売れないかは、上映のデータにある程度比例すると予測され、知的財産信託の最大の難問である、キャッシュフローの予測をある程度クリアできるのです。
今回対象となったアーティストハウス社の映像子会社アーティストフィルム社の事業理念にはその点が明記されているため、以下に引用します。
『株)アーティストフィルムは、国内外の映画を中心にビデオグラム化権(DVDやビデオとして出版する権利)の取得を行っています。
リスクの高い映画配給を原則行わず、長期的収益を見込めるマーケティングコストが限定的なビデオグラムに事業を特化しており、一定の収益が確実で当社のブランド作りに有効な作品には、プロデュース、出資の参加もしております。』(引用終)
今後もしばらくの間は、著作権がらみの知的財産信託の主流は、こうした二次利用に関わるものが主流になるのではないかと、思われます。
【今後の信託銀行の動向】
知的財産信託の信託財産を工業所有権に定めるか、著作権に定めるかによって、まったく異なる人材が必要となります。工業所有権をターゲットにするのであれば、技術に対する洞察をもつ人材を集めねばならず、またウォッチすべきマーケットは産業財市場となります。逆に著作権がらみであればエンターテインメント業界に見解を有し、消費財市場のマーケティングの観点を欠かすことはできません。大田区と組むUFJ信託は、最初は恐らく前者に特化していくのでしょう。住友信託は「今後は特許権などの知財信託にも力を入れる。」とのことですが、「知財信託」ということで一まとめにして、同じ人材を投入しているようであれば、適正なプライシングを提供できるのかどうかという点において、一抹の不安を感じざるを得ません。
キャノンが国内生産の4分の1を無人化するとの報道が、本日の日経紙面のトップを飾りました。キャノンといえば、セル生産方式で知られているように、大胆な生産革新で成功を収めている企業です。今回の生産無人化がキャノンの経営に与えるインパクトについて、セル生産方式と対比することで考えてみたいと思います。
【セル生産方式とは?】
まず、セル生産方式自体が初耳の方に、簡単に解説をしておきます。セル生産方式とは、ベルトコンベアを使った分業を否定して、一人一人の組立工が多能工となり、一つの製品の組立ての最後まで、一人で担当させる生産方式のことを言います。「分業」を否定してしまうわけですから、一見生産性が落ちるような気がしますが、導入当初は若干生産性が落ちるものの、セル生産方式の方がベルトコンベア方式より高い生産性を示すことが確認されています。セル生産方式の生産性の高さの秘密は、人間心理にあります。ベルトコンベアの1工程を担わされ、歯車の一つとしての仕事を延々と繰り返すより、ものを1から作り上げる方が得られる満足度は高く、またそれゆえに、品質への責任の意識も徹底されるのです。
セル生産方式を導入するにあたっては、それほど大きなリスクは伴いません。なぜなら、ベルトコンベアを廃し、人員配置を替え、適切な教育を行うことくらいがメインの切り替え作業で、ほとんど追加的な設備が伴わないからです。若干、専用の工具を開発することが必要となるらしいですが、たかがしれています。生産性が上がるか否かが確認できるまでは不安が大きいですが、導入にあたって大きなコストを必要としない、というのがセル生産方式のメリットでもあります。
【生産無人化の成功の鍵 ~オペレーティング・レバレッジ~】
もう一方の生産無人化ですが、生産を無人化できれば、直接工の賃金が不要になるわけですから、製造原価に占める変動費の大幅な削減が可能となります。その一方で、無人化で人にとって代わる機械設備を導入せねばならず、かなりの額の固定費の増加を覚悟せねばなりません。また、この自動化にあたり、キャノンは技術者を追加的に600人採用するとしていますが、これらの技術者も固定費増の要因となります。仮に技術者の平均年収を700万円とすれば、年間あたり42億円の固定費増となります。
生産無人化ではこのように、費用構造が固定費にシフトすることとなり、これはセル生産方式では見られなかった現象です。このように固定費に費用構造を転換し、利益の増加を望もうとする戦略をオペレーティング・レバレッジ戦略と呼びますが、オペレーティング・レバレッジの恩恵に預かるためには、大きな売上高が確保されることが不可欠となります。つまり、大胆な生産戦略でありながら、成功の鍵は売上にあり、魅力的なマーケティングプランがあるか否かが、成功の鍵となっているのです。
またキャノンの御手洗社長はアメリカ流の財務指標を重視した経営を行いながら、終身雇用を維持するというのが彼の信条でもあります。今回の生産無人化でうく組立工についても、人員削減は行わず他への配置転換を行うことが、新聞でも明確に謳われています。ということは、なおさら大きな売上が、成功のために必要となってくるわけです。新経営計画では売上高を1.5倍に増やすとのことですが、どれだけ魅力的な製品を作り出せるかに、かかっているといえるでしょう。
【柔軟性という視点】
また、生産無人化において懸念されることは、生産の柔軟性がいくらか損なわれる可能性があるという点です。今日の経営において、柔軟性はどの部門においても、重要なテーマです。財務においては、柔軟性を積極的に評価するリアル・オプションの手法が開花しつつあります。また、マーケティングにおいては、IT技術を駆使し、一人一人の顧客の要求に柔軟に答えていこうとするワン・トゥ・ワン・マーケティングの手法が主流となりつつあります。
こうした時流の中で、生産を無人化することは、どうしても柔軟性を多少損なうことを覚悟せねばならないでしょう。最近の機械設備は多品種少量生産にも対応しうるときいていますが、キャノンがどのような工作機械メーカーと組むのかという点も、今回の計画の成功を左右する大きな要因となりうるでしょう。
リコーと富士通研究所が、パソコンなど事務機器を通じて企業内などの業務内容を自動的に記録・分析する知識管理システムを共同開発したとの報道です。なぜ、リコーが登場するかといえば、コピー機やファックスからの情報までも取り込もうとする構想であるからのようです。「こうした多様な情報から内容の意味を理解し、データベース化する」ことを目的としているようです。
先日お会いしたMRの方から伺った話によれば、MRの方はマーケティング・ツールとして、医学論文をデータベース化したものを活用しているらしいです。薬の名前や病名などのキーワードをデータベース化して、ドクターの関心領域を探り、効果的なセールスを行っているようで、この新聞報道を読んだときに、連想しました。
新聞報道のデータベースの活用目的は、内部の人的資源の効果的な活用にあり、また、そのデータベースを自動的に作成してしまおうという遠大な計画ですが、システム的に2つの課題があると考えられます。
第一は、ナレッジデータベースを自動生成する際に参照されるであろう、キーワードのテーブルのメンテナンスに関わる問題です。経営に関する用語は次々に新しく生まれており、それを財務から生産、研究開発にいたる社内の全分野にわたって、アップデートしていかなければなりません。大方の部分は富士通が作りこんでおくとしても、社内・業界でしか使用されない特殊な用語(ジャーゴン)もあり、そうした用語は社内の人間にしか対応できず、そうなるとこのシステムのメンテナンス要員に、相当な知識を持つ人物を充てなければなりません。
第二は「意味を理解する」ロジックの精度でしょう。翻訳ソフトの精度などから類推しても、「意味を理解する」部分のロジックはいまだ発展途上にあり、だからこそ翻訳家が食べていけるのです。早期からこのシステムを導入しようとする企業は、導入当初の論理バグをある程度覚悟しておく必要があるでしょう。
三菱商事がいすゞ自動車への出資を発表するとともに、伊藤忠がタワーレコードへの出資を発表しました。貿易仲介をドメインとしていた総合商社は、いわゆる「中抜き」の脅威にさらされ、その結果の選択が投融資事業へのシフトでした。しかし、こうした方向性の転換に、個人的には疑問があります。
第一には、こうしたシフトはここ10年くらいのものであると思いますが、現在の投融資ビジネスで意思決定権を握っているのは40代くらいの人々であるはずで、彼等はまさしく貿易仲介でキャリアを築いてきた人々で、投融資の経験はごく少ないはずです。投融資の専門家を商社が外部から積極的に登用しているという話はききません。確かに貿易仲介を行う上で幅広い業界の内部情報を深く蓄積することは可能ですが、だからといって、株をかいまくるということには直結しないはずです。商社の方とは若干面識もあり、その優秀さは認めますが、こうした投融資ビジネスを手がけるには十分な経験を必要とするのではないでしょうか?
第二の疑問は、商社がこうした業態転換を行うにあたって、自らのコアコンピタンスを「ブランド」と「なんでもやる」という点に求めた点です。「なんでもできる」をコアコンピタンスにビジネスの転換を図った成功事例としてはIBMが有名ですが、IBMですら「IT」というしばりがありますが、商社の場合はなんのしばりも私に見えません。ブランドについても、確かに総合商社が築いたブランドは強固なものですが、それを足がかりに投融資を手がけるのには、危うさを感じます。
第三の疑問は、総合商社が脱貿易金融の選択肢として、みな横並びで投融資を掲げている点です。もっと多様な業態転換のあり方があってよいはずなのに、横並びで同じ方向に業態転換している点に大きな違和感を覚えますし、そうした横並び思想から脱しきれない経営トップを抱える企業が、全て成功するとは、考えにくいです。
私はまだ読んでいないのですが、総合商社のビジネスモデルに関する論文を2つ発見しましたので、関心のある方は是非目を通してみて下さい。
格付け基準:日本の総合商社-ビジネスモデルの変遷が信用力に及ぼす影響(スタンダード・アンド・プアーズ)
ブッシュ米大統領が16日、パウエル国務長官の後任に側近のライス大統領補佐官を指名すると発表したとの報道です。当サイトのテーマとはかなり離れておりますが、個人的な思い入れからあえて取り上げたいと思います。
本日の日経新聞では、彼女が飛び級で大学、大学院を卒業し、彼女が「天才少女」であったことを伝えていますが、彼女のピアノの腕前については一言も言及していません。私の周りの知人もこのことをあまり知らない人が多いのでご紹介しておくと、彼女のピアノはプロ級で、なんとあのヨー・ヨー・マとの競演した経歴もあります。(このときの曲目はブラームスのバイオリン・ソナタだったのですが、なぜチェロではなくバイオリンなのか、ご存知の方がいたら、是非コメントかメールにて教えていただけると、非常に嬉しいです。)もちろん、ピアノを弾けることが政治的有能さに直結するものでは全くないということを、最も短命な某元首相を擁した我々日本人は身をもって知っていますが、それでもこうした多才な女性がアメリカの国務長官に就任するのは、なんとなく嬉しい気がします。
ライス氏がヨー・ヨー・マ氏との競演をしたときのアメリカ人の反応の一つとして、面白いエントリーを発見したので、拙訳を以下に記します。
『こりゃひどい。なぜかって、これほどまで聡明で思慮深く、かつ右脳と左脳のバランスのいい人が、どうしてあんな愚鈍な政策のどう猛な擁護者になってしまうんだい??』
私は多感なティーンの時期をスティービー・ワンダーやプリンスといったブラック・ミュージック一辺倒で過ごしましだが、そうした関係から人種差別等といった問題にも関心があり、今回のライス氏の異動は多くのアメリカ黒人女性にとって意義深い出来事であったのではないかと思います。
気が早い話ですが、ライス氏を2008年の大統領選の候補にしたいと考える人も多くいるようで、そうしたサイトも米国では人気があるようです。一方で、民主党の候補としての出馬の噂が絶えないのがヒラリー・クリントン氏です。2008年の大統領選が女の戦いになったら面白いですね。
異業種から新規参入した銀行4行の2004年9月中間決算が15日に出揃い、ソニー銀行を除く3行は黒字であったとの報道です。赤字の理由として、本日の日経新聞朝刊には以下のような一文がありました。
『住宅ローンの金利リスクを抑えるために実施したヘッジ取引で評価損が膨らんだ。』(引用終)
この一文は、まずヘッジ取引なるものを知らない方には全く意味をなさないでしょうし、また、ヘッジ取引に関して漠然とした知識しかもたない方にとっては、更に不可解なものにうつるはずです。こうした2パターンの方を想定して、上記の一文の背景を解説してみたいと思います。
【ヘッジ取引とは】
ヘッジ取引とは、私なりの定義をさせていただくと、将来の不確定要素を排除するための取引です。
よく使われるのが外国為替取引です。例えば、アメリカに商品を輸出した決済代金として3ヶ月後に100万ドル受け取ることが確定しているとします。そのような場合、3ヶ月後の為替レートの水準など分からないわけですから、そうした不確定要素を排除したいわけです。いくつかの手法はありますが、ポピュラーなのは、現時点でドルの為替先物を売却しておくことです。こうしておくことで、為替レートを3ヶ月後ではなく、今の時点のレートで固定させることが可能となります。そして、この際に用いられた「ドル為替先物の売却」が、この場合におけるヘッジ取引ということになります。
ソニー銀行の場合、主力の住宅ローンの大部分は変動金利建てとなっています。このままでは将来受け取る金利が確定していないため、不確定要素を排除するためにヘッジ取引が行われます。ソニーのIR資料を見ると、住宅ローンのヘッジ取引として金利スワップが使用されていることが明記されています。金利スワップとは、変動金利と固定金利を交換する取引のことで、ソニーは住宅ローンから変動金利を受け取るわけですから、変動金利を支払い固定金利を受け取る金利スワップを組むことにより、将来の不確定要素を排除することが可能となります。
【なぜヘッジ取引から赤字が出てしまうのか?】
ここまでは、ヘッジ取引とはなにかの説明でしたが、ヘッジ取引について漠然とした知識しかもたない方は、なぜソニー銀行はヘッジ取引から赤字を垂れ流しているのか、疑問であるはずです。先ほど書いた外国為替の設例の取引からは、評価損益は生じません。なぜ、ヘッジ取引から赤字が出ているのでしょうか?
可能性は二つあります。第一はヘッジがうまくいっていないという可能性です。金利スワップでヘッジ取引を行うこと自体、高度な専門的知識を要し、そうした資質にかける方が担当されていた場合、ヘッジ取引が適切に行われなくなる可能性があります。また、仮に専門的知識があっても、内部統制が機能していない場合には、金利スワップで投機的な取引を行い、損失を出す可能性すらありえます。
第二の赤字の説明の理由として考えられるのは、極めて会計的なものです。通常ヘッジ取引を行った場合、ヘッジされる原取引とヘッジ取引の損益を合算すると、ゼロに近くなります。しかし、会計原則の仕組上、ローン債権は時価評価しませんが、ヘッジ取引である金利スワップ取引は時価評価することになっており、片側しか時価評価していないために、大きなマイナスを計上したりプラスを計上したり、ということがあり得ます。
「ソニーブランド」を信奉するならば、第一の理由のようなお粗末なものは考えられず、したがって、赤字の理由は第二の極めて会計的なもの、となるのでしょうが、名門の住友商事ですら、かつてデリバティブで巨額の損失を計上したくらいですから、易々とソニーブランドを信奉するわけにもいきません。
【住宅ローン販売金融機関に望まれる開示情報】
ソニー銀行の場合、住宅ローンが全体のビジネスに占める割合が非常に高く、こうした問題が早くから顕在化してしまいましたが、他の金融機関も大なり小なり同様な問題を抱えているはずで、それが我々の眼に触れないだけです。
公庫の廃止を受けて、今後民間金融機関の住宅ローンの比重はますます高まるでしょうから、適切な情報開示が求められるところです。
私は、住宅ローン債権の時価情報を、注記情報として開示するのが望ましいと考えています。金融機関にそれほど手間もかからないはずです。仮に現時点で、内部管理用としてローン債権を時価評価していないとすれば、それは大きな問題です。
また、民間金融機関の住宅ローンの多くは変動金利建てのローンを主力商品としていますが、今後金利上昇を受けてローン破産者が続出することが大いに考えられます。そうした場合、金融機関は貸倒のリスクのみならず、ヘッジ取引だけ残存してヘッジ元取引が消失してしまうことによるアンマッチが生じてしまうことも、将来的に大いに考えられます。そしてアンマッチ分のヘッジポジションをクローズする際に大きな損失を被ることも十分考えられます。預金者として、また、投資家として、銀行に必要十分な情報開示を望みたいところです。
武田薬品工業の武田國男社長の「私の履歴書」が現在日経新聞に連載中ですが、大変興味深く読んでいます。
武田社長といえば、武田の時価総額を大きく増加させ、キャノンの御手洗社長らと並んで、絶大な人気を誇る方です。しかし、興味深いのは、本日の「私の履歴書」は折り返し地点の15回目に達したにも関わらず、「名経営者」の片鱗すら未だ現れていない点です。先週は入社試験や社内のレポートを社長の息子であることを理由に目をつむってもらったような話ばかりかと思えば、本日は1973年、武田社長33歳当時に、クレープショップの新規事業開発に失敗した体験談など、なんともイタイ話ばかりです。
あと15回足らずで、現在の名経営者像にどうやってつながっていくのでしょうか?興味津々です。30代からでも、まだまだ「化ける」チャンスがあるということなのでしょうか?だとすれば、私なども大いに勇気付けられます。今後の展開から目が離せません!
厚生労働省は会社員が自宅などで働く在宅勤務が普及するよう「みなし労働制」の適用範囲拡大など関連法制の整備を検討するとの報道です。
「みなし労働制」とは現在既に労働基準法で規定されていますが、大きくわけて2つのタイプがあります。第一のタイプは外回りの営業マンなどに対して適用するものです。外回りの営業マンは、そもそも働いた時間をチェックすることができないので、所定労働時間、つまり就業規則に定められている時間について働いたとみなしてあげましょう、という制度で、これは事業場外のみなし労働時間制と呼ばれています。
第二のタイプは、外回りではなく内勤だけれども、仕事の性質上、仕事のやり方を個々の従業員にゆだねる必要があり、労働時間を算定することが難しいタイプのものです。具体的にはどういう仕事があるかというと、デザイナー等のクリエイティブな職種の方などは、アイデアが浮かばないと仕事が進まず、気分がのらない昼間はお茶でも飲み、夜になると突然アイデアが湧いてくる、などということがよくあります。こうした方に適用されるのが専門業務型裁量労働制で、前もって決めた時間を働いた時間とみなそうという制度です。また、デザイナーとまでいかなくても、経営企画や証券会社のアナリストなどという企画・分析を担当する方達に対して適用されるのが、企画業務型裁量労働制と呼ばれています。
一見働く労働者側にとって好都合にきこえる制度ですが、今話題の富士通のバクロ本でも弊害が指摘されています。「ある決まった時間働いたとみなしてあげる」ということは、反面から見れば、「いくら多く働いても残業として認めない」ということで、富士通のバクロ本では、裁量労働制が適用された社員に時間がかかりそうな面倒な仕事を全て振り、残業代を減らそうとする行為が描かれています。
現在検討されている、みなし労働の在宅勤務への適用拡大についても、労働者保護の見地から、在宅勤務者にしわ寄せがいかないよう、法整備を進めていく必要があるでしょう。ただ、あまりに適用の手続きが煩雑となると、理想的な勤務形態である在宅勤務が進展せず、落としどころをどの辺りにするのかという点に、今後注目していきたいと思います。
ソニー傘下の金融持ち株会社、ソニーフィナンシャルホールディングスは2006年春にも株式を上場する方針を固めたとの報道です。ソニーフィナンシャルホールディングスは、ソニー銀行、ソニー生命保険、ソニー損害保険の三社の持株会社で今年4月に設立され、その上位にソニー本体があることから、いわゆる「中間持株会社」といわれる形態の会社です。本日は、中間持株会社を設立して上場する意義について、私個人の考えをまとめてみたいと思います。
【「中間持株会社」は上場してはじめて意味をもつ】
中間持株会社を積極的に展開する企業グループとしてはソフトバンクグループが有名です。中間持株会社も当然、一つの法人ですから、それを設立するとなると、設立のための事務コストや、毎期毎期の経理事務などのコストが発生することとなります。そうしたコスト負担を背負ってまで、中間持株会社を設立するメリットとはなんなのでしょうか?
中間持株会社は上場されてはじめて意味をもつのだと私は考えます。中間持株会社が非公開であれば、ひとつ余計な法人ができただけで、コスト増の要因となるだけです。しかし、これを上場するとなると、バラで上場する場合より、その傘下の企業のシナジーが市場で評価され、より高い株価で評価されうるからです。つまり、「ソニー銀行+ソニー生命保険+ソニー損害保険<ソニーファイナンシャルホールディングス」の不等式を目論でいるのでしょう。ソニーが中間持ち株会社を設立したのが今年4月で上場を発表するまで1年足らずですから、当初から上場を視野に入れての設立であったのでしょう。また、ソフトバンクグループの中間持株会社もみな上場されていることも、これを裏付けているといえるでしょう。
【ソニーが金融持株子会社を上場することは正解なのか?】
中間持株会社は上場してはじめて意味をもつのだとして、では、そもそもソニーは金融持株会社を上場すべきだったのでしょうか?私は概ね正解だったと考えます。
当サイトで先日、東急の百貨店完全子会社化を取り上げました。これは、上場している企業を非公開にする、今回のソニーのケースとは全く逆のもので、その背景には以下の理由がありました。
①事業領域重複の排除を通した相乗効果
②親会社と利害の相反する少数株主の排除
これを、今回のソニーにあてはめて考えると、まず最初の事業領域の重複についてですが、ソニーのビジネスを考えると金融と他部門ではほとんど重複は生じえないと考えられ、この点からのデメリットはないでしょう。また二点目の「利害の反する少数株主」とは、主に配当としてキャッシュが外部に流出してしまう点に関してですが、金融は成長期にあり、まだ刈り入れの段階に入っていないため、現段階では配当すべき金額もそれほどないはずですから、心配する必要はないでしょう。
逆に、3社のシナジーを株価として顕在させ、資金調達を行うことにより、新聞でも指摘されているようなシステム投資にまわすことも可能となります。金融はシステムを核とした装置産業と考えられており、積極投資の後押しが可能となるのであれば、今回の金融持株会社の上場は合理的な選択肢であったと考えられます。
一点、気にかかるのは将来、例えば10年後くらいに、金融が成熟期に入り、刈り入れの段階に入ったときの青写真を描いているかどうか、という点です。そのとき、再び完全子会社化するのか、あるいは上場を続けるのかによって、長期投資スタンスの投資家の態度は変わってくると考えられるからです。
昨日、このサイトもコメントスパムの攻撃を受けました。攻撃しても、私一人がおろおろするだけで社会的になんらインパクトがないので、こうした零細サイトは標的にしていただきたくないのですが・・・他にも大阪府がなんらかのサイバー攻撃を受けたようで、昨日はハッカーにとってのメモリアルな日であったのでしょうか?
おそらく非常に古典的な解決法なのでしょうが、こちらのサイトに紹介されているファイルをリネームする方法を行ったところ、ぴたりと止みました。MTでブログを運営されている方は、予防措置として行っておくことをお勧め致します。
本日の日経新聞5ページに『GDP統計 景気判断の波乱要因に』なる、一見、難解そうであまり面白くなさそうなコラムがありました。
コラムの粗筋はこんな感じです。
『現在のGDPデフレーターの算出方法によれば、実勢よりかなり低い物価下落率がはじきだされていて、問題である。したがって、算出方法を「連鎖方式」に見直し、実勢に近づけるべきだが、そうすると実質GDPが下振れし、景況感が変わるリスクがある。』
なかなかマニアックな議論ですが、「経済学」が受験科目に入っている資格試験(例えば私が担当する中小企業診断士など)受験者の方には、「ラスパイレス」「パーシェ」の特徴を、より実戦的に復習するよい機会かもしれません。以下、「ラスパイレス」「パーシェ」そして、新聞の「連鎖方式」をからめて、整理してみたいと思います。
【CPI(消費者物価指数)の計算方法】
まず、一番みなさんになじみのある物価指数である、消費者物価指数(CPI)です。この数字をもとに、我々は「物価が上がった下がった」と論議をします。この指数を計算するには、我々が日常生活で使いそうな品物をピックアップして、それらの価格を加重平均して、物価指数を計算するわけです。
ここで問題となるのは、ウェイトづけする品物の数量を、いつの時点を基準とするか、という点です。CPIの算出においては、ある基準年を定め、その数量でウェイトづけを行っており、その基準年は現在2000年になっています。こうした、ある昔の基準年の数量でウェイトづけして物価指数を計算する方法をラスパイレス方式と呼びます。
実は、このラスパイレス方式で物価指数を計算すると、実勢より高めに物価が計算されてしまう、という上方バイアスが生じてしまいます。なぜなら、我々はあるものが安くなれば、その安くなったものの消費を増やしますが、ラスパイレス方式では数量を基準年に固定しているため、こうした「安いものの消費を増やす」という数量構成の変化をとらえきれないためです。
【GDPデフレーターの計算方法】
一方で、基準年ではなく比較時点での数量でウェイトづけして計算するのがGDPデフレーターで、この方法をパーシェ方式と呼びます。
ただ、一点注意せねばならないのが、こちらにおいても「基準年」という概念がなくなってしまうものではない、ということです。実際、GDPデフレーターの基準年は、現在1995年に設定されています。
では、この基準年を使ってなにをするかというと、品質調整ということを行います。品質調整とはなにかというと、例えばパソコンなどを、基準年(つまり1995年)と比較年との間で性能を比較してみるわけです。そして、性能が4倍になっていれば①価格は4分の1になったとみなすと同時に②消費数量は4倍になったみなす、ということを行います。
当然、我々はパソコンの性能が4倍になったからといって、パソコンを4倍買うことはなく、今度は先ほどのCPIとは逆に、「安いパソコンの消費量を過大にみなしてしまう」という問題から、GDPデフレーターは下方バイアスがある、といわれています。
【GDPデフレーターの見直し ~連鎖方式~】
現在の方法では、品質調整という仕組みによりGDPデフレーターが下振れしてしまう、ということを確認しましたが、その下振れを大きくしてしまう原因の1つに、設定されている基準年が古いという問題があります。1995年と比べ続けていれば、品質調整による下振れはどんどん大きくなってしまいます。
解決策として考えられているのが連鎖方式なるもので、この基準年をこまめに見直していくことで、下振れを少なくしましょうというのが狙いです。
【当エントリーの参考文献】
日銀論文 経済点描 『GDPデフレーターの下落率はなぜ大きいのか?』
本日の日経新聞9ページの「経営の視点」と題したコラムに西武株を購入した側の理由が書かれていました。そのうちの1つに「株式持合いによる株主安定化」があったのですが、「株主安定化が株価下落につながる危険性もある」との興味深い記述があります。安定株主工作が株価下落につながるというのは、感覚的になんとも理解しがたい現象です。なぜこのようなことが起こりうるのでしょうか?
【機関投資家の運用スタイル アクティブ VS パッシブ】
この現象の真因を探るには、機関投資家の運用手法を知る必要があります。機関投資家が株式での運用を行うスタイルは、大きく分けて2つのタイプに分類できます。第一がアクティブという手法で、値上がりしそうな株式を選別し、積極的に投資を行う方法です。第二がパッシブと呼ばれる手法で、ひたすら日経平均やTOPIXのような株価指数に追従しようとするスタイルです。後者においては、個々の銘柄分析などは行わず、コンピューターシステムを使って、指数に連動するような売買注文が一括で出されるのが特徴です。
【浮動株指数とはなんなのか?】
TOPIXという株価指数は、それぞれの会社の株価がその会社の時価総額でウェイトづけられています。つまり、時価総額が大変大きいトヨタの株価が大きく変動すれば、TOPIXへの影響も大きくなりますが、時価総額の小さな会社の株価が乱高下したとしても、TOPIXの動きにはあまり影響がありません。
ですからパッシブスタイルをつらぬこうとする機関投資家はインデックスに追従することが目的なのですから、トヨタ株は多めに保有しますし、時価総額の小さい会社はそれほど保有しません。
しかし、こんな極端な例を考えてみて下さい。どちらも時価総額が同じ1兆円の企業2社で、A社は株式のうち90%は依然として創業者一族が握っていて市場に出回ることがない会社で(実際にはありえませんが)、B社は逆に株主の90%が個人投資家であったとします。インデックスに追従しようと機関投資家が買い注文を入れると、A社株式は10%しか市場に出回っていないため、株価が急上昇しますが、B社株式の値上がりはそれほどではありません。市場に出回っている株(浮動株)が少ないほど、需給の動きをもろに受けて乱高下してしまうため、そうした不都合をインデックスを代えることによって解消しようとするのが浮動株指数なのです。つまり株価指数を計算するときに、個々の株価のウェイトづけを時価総額全体ではなく、市場に出回っている株式の時価総額のみでウェイトづけして計算された指数が浮動株指数なのです。
先程の例でいえば、A社株式については、B社株式の9分の1のウェイトしか株価指数にインパクトを与えないため、機関投資家の買い注文は少なくてすむわけです。
【ではなぜ株式持合いが株価下落を招くのか?】
ここまでくれば、上記の質問の答えは自明でしょう。株式持合いにより取得された株式は原則的に市場に出回らないために、その会社の浮動株比率は減少し、インデックスに与えるインパクトは小さくなります。機関投資家は自らのポートフォリオを浮動株をベースにしたインデックに連動させるために、「調整」のための売り注文が一時的に市場にまとまって出されることが考えられます。こうした一時的な売り注文があるため、日経新聞は「株主安定化が株価下落につながる危険性もある」としているわけです。
東京三菱銀行とみずほコーポレート銀行は年内に貸出債権の売買仲介に共同で乗り出して、第1弾として三菱商事向けの貸出債権(最大500億円)を対象にした売買市場をつくるとの報道です。
このローンの転売市場を必要としている背景に、「シンジケートローン」なるものがあります。さてシンジケートローンとは一体なんなのでしょうか?
【シンジケートローンとは】
シンジケートローンは、複数の金融機関がシンジケート団を組んで、それぞれの銀行が同じ契約書で、同じ条件で実行される融資のことで「協調融資」とも呼ばれます。こうしたタイプのローンが広まってきた背景としては、銀行側の事情があり、近年クレジット(与信)の管理が精緻化してきており、たとえよい融資案件と思われるものであっても、一つの銀行が単独でB/Sに巨額の資産を計上して融資を実行することはリスク管理の観点から好ましいと考えられていなく、したがって、他の銀行とチームを組んで融資を実行するわけです。
シンジケートローンには2つの形態があり、短期の運転資金に対応するのが「コミットメントライン」で、3~10年の長期資金に対応するのが「タームローン」です。タームローンの方は、長期の融資がシンジケート団により実行されると考えてよいのですが、コミットメントラインは多少理解しにくいかもしれません。
コミットメントラインとは、かみくだいていうと、融資設定枠をシンジケート団との間で設定して、その枠内であれば、「借りたい額をいつでも借りれる仕組み」といってよいでしょう。例えば融資枠10億円を設定すれば、ビジネスの成長などで運転資金が必要になった場合は、そのときに新たな契約を結ぶことなく運転資金を機動的に調達できるというメリットがあります。ただし、設定された枠に対して、銀行に手数料を払わねばならず、いつでもお金を借りられる保険料のようなものと考えて差し支えないでしょう。銀行側も資産を増やさず手数料収入が得られるため、メリットがあるわけです。このコミットメントラインは協調融資の形態をとってシンジケート団と取り交わされることも、また個別の銀行と相対で取り交わされることもあり、必ずしもシンジケートローンという枠内で行われるものではありません。
【中小企業のシンジケートローンの活用】
こちらの日銀のHPでは、「3」でコミットメントラインの活用事例が、「4」でタームローンタイプのシンジケートローンの活用事例が紹介されています。中小企業がコミットメントラインを活用するメリットは①資金を機動的に調達できることと、②必要なときに借りればよいのでB/Sを圧縮できることです。
またタームローンタイプのシンジケートローンを活用するメリットは①単独行では実現できないローンが可能になる点であるのは分かりやすいですが、②シンジケート団に財務状況を開示する「デットIR」のノウハウが将来、株式公開を志向するときに大いに役立つ点であるというのは、面白いメリットです。
こちらの富士総研のレポートの5ページでは、中小企業がシンジケートローンを活用したくない理由の第二位として「利用するメリットがよくわからない」が挙げられているのは、なんとも残念です。一中小企業診断士として、こうした情報不足の解消に役立てればと思い、本日のエントリーを執筆しました。
昨日はばたばたしており、昨日のエントリーを読み返してみると、数値の差異分析に終始しており、あまり本質的な問題に触れている感がありません。
昨日のエントリーをお読みいただいた方は、以下のような疑問を持たれたことと思います。
「なぜ負債と株式の時価総額を足したものから、投下資本を差し引いた金額が意味をもつのか???」
これは最初に私がMVAに出会ったときの根源的な疑問でもあり、以下には自分の理解の整理という意味も含めて、MVAの意味するところを解説してみたいと思います。
【企業価値の測定 ①B/Sの右側からのアプローチ】
まず、企業価値を測定するには大きくわけて、2つのアプローチがあります。第一にはB/Sの右側からアプローチする方法で、第二にはB/Sの左側からアプローチする方法です。
B/Sの右側は、ご存知の通り、負債と自己資本しかありません。これらは資金の提供者を表し、資金の提供者の持分である負債と株式の時価評価額を足し合わせることにより企業価値を求めようという方法です。数式で書くと、以下のように表されます。
企業価値 = 負債の時価 + 株式の時価総額
株式の時価総額は、その時点の株価と発行済株式数を掛け合わせればよいため、比較的簡単に求められます。
負債については利払いのタイミング等を把握して割引率を適用して求めねばならないため、いわゆる「ランキングもの」のために負債の時価を算出することは、事務の手間がかかりすぎ、実質的に不可能です。日経も東洋経済も、そうした制約から負債については、「時価」としたいところを「簿価」で代用しているのです。
【企業価値の測定 ②B/Sの左側からのアプローチ】
もうひとつの企業価値の測定方法が、B/Sの左側、すなわち、資産からアプローチする方法です。現在の理論では、どのような資産であれ、その資産が将来生み出すキャッシュフローを現在価値に割り引いたものが、その資産の評価額として妥当である、という考え方が一般的です。企業とて、お金を生み出す資産であることにかわりはないのですがから、企業価値は以下の算式で求めることができます。
企業価値 = 将来のキャッシュフローを現在価値に割り引いたもの
これが、俗にいうDCF法による企業価値の測定方法ということになります。
資産サイドからアプローチする方法にDCF法とならんで、エコノミック・プロフィット法なる測定方法があります。以下に算式を掲げます。
企業価値 = 投下資本 + 将来のエコノミック・プロフィットの現在価値の総和
DCF法の計算結果もエコノミック・プロフィット法の計算結果も一致するのですが、エコノミック・プロフィット法の計算式は、投資元本とそこから生み出される経済的付加価値をわけた、とイメージすると分かりやすいでしょう。この、「エコノミック・プロフィット」はEVAと同義であるため、計算式は、以下のようになります。
企業価値 = 投下資本 + 将来のEVAの現在価値の総和
【①と②のアプローチを統合する】
さて、左側からアプローチする方法も、右側からアプローチする方法も、どちらも同じ「企業価値」を求めるものなのですから、両者を等号でつないでみます。
負債の時価 + 株式の時価総額 = 投下資本 + 将来のEVAの現在価値の総和
株式の時価総額は先ほど述べたように簡単に求められますし、負債と投下資本についても簡単にB/Sから入手できます。問題なのは、将来のEVAを推計することで、これはたとえ内部データへのアクセスが自由である、当該企業の経営企画担当者にとっても難しい作業です。それをすでにわかっているものから、引き算で求めましょう、というのがMVAの算式の意味するところです。
MVA = 将来のEVAの現在価値の総和 = 負債の時価 + 株式の時価総額 - 投下資本
つまり、MVAというのはその企業が将来にわたって生み出す経済的付加価値を、株式市場での評価から逆算したものであるということができるのです。
昨日の日経新聞で企業買収価値ランキングなるものが発表されました。また、本日発売の東洋経済ではEVA、MVAランキングなるものが発表されています。どちらも、なんとなく会社の価値のランキング、といった感じがしますが、両者の順位は大きく異なります。この違いはなぜ生じるのでしょうか?
まず、EVAですが、これは単年度のフローの概念なので、とりあえず除外しておきます。MVAと日経の企業買収価値の違いですが、両者の計算式を記述しておきましょう。
【東洋経済のMVA】
MVA = 株式時価総額 + 負債(簿価) - 投下資本(簿価)
【日経新聞の企業買収価値】
企業買収価値 = 株式時価総額 + 負債(簿価) - 金融資産(簿価=時価)
両者とも出発点として株式時価総額と負債を足し合わせている点では同じですが、差し引くものがMVAでは投下資本、企業買収価値では金融資産と異なる点が、ランキングの相違に反映されています。
例えば東洋経済によればトヨタのMVAは58,590億円で投下資本は159,184億円とでていますので、両者を足し合わせると、217,774億円となり、これが株式時価総額と負債の合計額ということになります。ここから日経新聞に記載されている金融資産の43,659億円を差し引くと174,115億円となり、日経新聞の企業買収価値である184,297億円とかなり数値が近づきます。依然として一千億円近くの差異が残るのは、株式時価の測定時点の差異(東洋経済は2004年3月末、日経新聞は2004年9月末)から生じていると推測されます。
東洋経済ではランキングが上位にきているものの、日経新聞ではランキングが下位に甘んじている企業は、巨額の設備投資を必要としない企業で、いわゆる「ネット系」の企業が多いです。ヤフー(東洋経済 3位 VS 日経 14位)、ソフトバンク(東洋経済 9位 VS 日経 35位)、楽天(東洋経済 35位 VS 日経 99位)などが顕著な例と言えるでしょう。
逆に日経で上位で東洋経済で下位に甘んじているのは設備資産が巨額の企業で、電力会社が顕著な例で、東電(日経 2位 VS 東洋経済 17位)、関電(日経 9位 VS 61位)等となっています。
両者ともに株式市場の時価評価を出発点としており、ご存知のように株式市場は必ずしも合理的に動くとは限りません。そこで、より理論的に企業価値を求めようとするのであれば、企業の営む事業から生み出される将来のキャッシュフローをビジネスプランで予測し、それを現在価値に割り引いて、いくつかの調整を経て企業価値を求めるというアプローチをとることとなります。