当サイトが一貫して注目してきた「知的財産信託」ですが、UFJ信託が特許権信託の第1号を受託したとの報道がありました。(日経紙面には記事があったのですが、残念ながらNIKKEI NETには同記事がアップされていない模様です。)
日経新聞紙面の図を見る限り、この第1号の特許権信託のスキームは、ライセンス使用者からUFJ信託が実施料を徴収し、配当という形で中小企業に金銭が流れていく形式になっており、特許権信託を活用する中小企業が特許権を活用して早期に資金化できるというメリットはない模様です。このスキームにおいては、信託銀行が特許料の金銭の取り扱いや、契約締結の代行といった、専門的な事務を代行してくれるといったメリットのみのようで、先日紹介した二次著作権のビデオグラム化権を対象とした知的財産信託が、映像資産の早期の資金化を謳っていた点とは大きく異なる模様です。
私が7月6日に書いたレビューを読み返してみても、UFJ信託の知的財産信託が掲げていた当初の目的は①特許権侵害の防止と②中小企業の資金調達の2つであったはずで、今回の第一号案件では後者のニーズは満たさないものとなっています。後者のニーズを満たすためには、知的財産から生み出される将来キャッシュフローの予測という難問に立ち向かわざるをえず、最初のケースにおいては、こうした難問を回避したスキームとなってしまうことは止むを得ないのかもしれませんが、中小企業側のニーズとしては、法的な事務委託より資金調達の方が圧倒的に大きいわけですから、資金調達のニーズを満たす真の意味での知的財産信託が、早く登場することを望みます。
再生機構がダイエーとミサワの支援を正式に決定したとの報道です。新聞紙面によれば、「『(店舗などの)自社保有』『事業多角化・拡大路線』『全国展開へのこだわり』『低価格路線への過度の依存』のダイエーの特色だった四項目について、全面的に決別する方針を表明」したとのことです。まるで、MBAのケーススタディのごとく、優等生のつくるような再建案ですが、本日はダイエーの上記の4つの特色がなぜ問題であったのか考えてみたいと思います。
【(店舗などの)自社保有】
確かに、店舗を自前で保有すれば、物件の所有者がとるべき利潤も自社内に留めておくことができるというメリットはあります。しかし、自前で店舗物件を保有するためには、莫大な借金を必要とするため、財務体質を劣化させるというデメリットがあります。また、土地・建物を所有するということは、それ相応のリスクを負うことを意味しますが、これは必ずしも小売業者の追うべきリスクではありません。このリスクは減損会計の導入により、P/L上にも顕在化するようになってしまいました。
また、店舗が賃貸にかわりB/S上から消滅すると、それだけROAが高くなるという効果もあります。現代の経営は基本的には、(不要なものは)持たざる経営で、ダイエーも経営の基本に従って再建が進んでゆくのでしょう。
【事業多角化・拡大路線】
一昔前のダイエーのビジネスドメインは「生活総合産業」という言葉で語られていました。つまり、消費者の生活に関係あればなんでもやるというわけで、そんな思想のもと、球団経営やホテル経営にまで手を広げてしまいました。ダイエーの事例は「ビジネスドメインを広く取りすぎてしまった失敗例」として有名です。ただ、代わりに中核事業として据えられた「食品スーパー」では将来的な発展性に乏しく、経営が軌道にのるにつれ、より現実的でかつ発展性のあるビジネスドメインを規定していくべきでしょう。
【全国展開へのこだわり】
さきほどの事業多角化に比べて、地理的な全国展開は、よく知っているビジネスを全国に広げていくわけですから、それほど大きなリスクがないように思われますが、無視できないのがロジスティクス、すなわち物流のコストです。
ダイエーほどの規模になると、物流センターの維持費もばかにならないはずで、その物流センターを使用する店舗の儲けで物流コストを回収できないようでは、全国展開する意味はありません。
【低価格路線への過度の依存】
このデメリットについては改めて書くまでもないですが、ただ食品スーパーを中心に据え、かつ、低価格路線に依存しないとなると、単純に考えれば、ウォルマート流のEDLP(エブリデー・ロープライス)を導入するのか、商品構成に占める高級食材を増やすか、いずれかくらいしか方策はないでしょう。そのような大規模な方針転換が既存顧客をつなぎとめておくことができるのか、今後もダイエーの行方から目が離せませんね。
他国の災害であると、なぜ、こうも鈍感になってしまうのでしょうか?昨日、このトピックでエントリーが書けなかった自分を恥ずかしく思います。今朝の新聞を見て、その被害の大きさを改めて実感させられました。
日本赤十字社では、また義援金を募集しています。皆様の暖かさを、アジアの同胞に差し伸べていただければ幸いです。
『ショッピングセンター(SC)運営大手のダイヤモンドシティは来店客の性別や年齢層を自動判別するシステムの実証実験を始めた』との報道です。入店者の顔をカメラで撮影し、画像により年齢・性別を判断しようというのが、新システムの仕組みの基本です。
現在でも、ある程度の規模がある小売店舗は、入口に赤外線センサーを装備し、店舗に入った「入店者数」をカウントしています。小売業界が月次速報等で発表する、「客数」なる数値はこの入店者数とは異なり、実際に品物を買い上げた人数のことであり、赤外線センサーではなく、POSレジにより把握されます。この「入店者数」を分母にし、「買上客数」を分子にした比率が「買上率」又はコンバージョンと呼ばれ、これらの数値を分けて認識することが重要です。
例えば売上が減少しているとして、その原因が入店客数の減少にあるのであれば、より多くのお客様をお店に呼んでこなければ始まらないわけですから、広告を打つ等の対策が必要となります。対して、売上の減少の原因が買上率の減少にあれば、お客様はお店に来ていただいても魅力的な商品がないから購入しないのですから、商品構成を刷新したり、接客を積極的に行う等の対策が必要になり、数値を分けて把握することにより、原因に的確にヒットした対策を打つことが可能となるのです。こうした考え方はネットショップにも導入されており、トラフィック・コンバージョン等の数値データはネットショップの場合は、アクセスログを加工することにより安価で得られるため、ネットショップの方が、現在では進んだ分析が可能となっています。
さて、今回のシステムですが、実際の店舗(モルタル)において、来店客数のデータに「年齢層」と「性別」という属性データを付与することが可能になります。マクドナルドのレジを昔見たとき、顧客の年齢層を入力するボタンがありましたが、ダイヤモンドシティ内の店舗のPOSレジにも顧客の属性を認識する機能があるとすれば、年齢層別、性別毎の買上率を把握することが可能となります。
もちろん、データが増えればより詳細な分析が可能となり、このシステムから得られるデータが有用であるのは間違いありません。反面、店舗に入るだけで顔写真を撮影されるということが分かっていれば、お客様はどう思うでしょうか?『プライバシーに配慮し画像はすぐ消去する。(引用)』とのことですが、やはり顔写真をとられて、年齢を識別されるというのは、特に女性にとっては、嫌な話でしょう。
この報道自体がダイヤモンドシティへの来店客数にどのような影響を及ぼすのか見極めた上で、他企業は導入を考えても遅くはないと思います。
ミサワホームHDのリストラ案の全容が明らかになったとの報道です。リゾート事業の売却・本業への回帰、取引行からの金融支援等の内容が新聞には書かれています。
金融支援の内容としては、債権放棄、デット・エクイティ・スワップの活用等が記述されています。この2つとデット・デット・スワップを合わせた3者が、過剰債務の削減に使用される常套手段ですが、その詳細内容にご興味のある方は、信金中央金庫の総合研究所の下記のレポートが参考になると思われるので、是非ご一読下さい。
デット・エクイティ・スワップとは、言葉どおり、金融機関の持つ債権を株式に交換することです。これにより利払いや元本返済が大幅に軽減され、再建を目指す企業のキャッシュフローは改善します。また、金融機関側も株式を取得するわけですから、再建企業に深く関与することが可能となります。
さて、標題の「いまさら人に聞けないデット・エクイティ・スワップ」ですが、これは金融ネタに極めて漠然とした知識しか持たない方が持つ素朴な疑問であると思うのですが、この「デット・エクイティ・スワップ」なるものは、デリバティブの一種といってよいのか、ということです。というのも、「デリバティブ」をかじったことがある方は、①先物(含む先渡)②オプション③スワップがデリバティブの代表例であると学んだはずですし、昨日私はそのように講義で述べたばかりです。
結論から言うと、デット・エクイティ・スワップはデリバティブではありません。デリバティブの特徴として、①元本の動きを伴わない②原資産に依存して価格が決定される、といったものを挙げることができますが、デット・エクイティ・スワップはどちらの特徴も満たしていません。「交換」という意味で「スワップ」という言葉が使用されただけだと考えるのが自然でしょう。
余談ですが、私が今から約10年前に読んだデリバティブのスワップに関する本では、「通貨スワップ」ですら、厳密な意味ではデリバティブとは言えないとまで言い切っていました。なぜなら、金利スワップでは金利部分のキャッシュフローの動きがあるのみで元本は動かず「想定元本」という概念が使用されますが、「通貨スワップ」においては、契約の始期と終期において、元本部分の通貨の交換が行われるからです。ただ、現在の一般的な定義においては、「通貨スワップ」もやはりデリバティブであると捉えられているようです。
本日は特別にもう一つエントリーを書かせていただいております。税務に馴染みのない方が共通して経験される疑問を解消しようというのが狙いです。
まず、会計上の損益計算書ですが、以下のような末尾をもった損益計算書を考えてみたいと思います。
税引前当期純利益 50,000
法人税、住民税及び事業税 20,000
当期純利益 30,000
前期繰越利益 10,000
当期未処分利益 40,000
この場合、法人税を計算するための別表4のスタートは当期純利益 30,000円となるわけですが、ここで2つの疑問が生じるはずです。
①別表4とは法人税を計算するためのものであるはずのに、なぜ、法人税を既に控除した控除した「当期純利益」から出発することができるのか???
この疑問については、このように理解するのがよいと思います。損益計算書については株主総会に提出する都合から、税務申告書を提出するより前に作成せねばなりません。したがって、損益計算書上に記載された「法人税、住民税及び事業税」の数字は、実は見積もりの値なのです。別表四では、見積もりの法人税が控除された「当期純利益」から出発して、様々な加減算を行い、きちんとした法人税額を算出していくこととなるのです。
②法人税が差し引かれた「当期純利益」から出発して法人税額を計算したら、二重に税金を計算していることにならないか???
これについては心配ありません。別表四がきっちりと調整をしています。
まず、「当期純利益」から出発した上で、中間申告時の法人税を「損金計上法人税」なる調整項目で加算し、決算時に見積もり計上した法人税額を「損金計上納税充当金」なる項目で加算調整を行い、その上で税額を計算することとなります。したがって、法人税額が二重計上される心配はありません。
総務省が、家庭の電源コンセントにパソコンや家電のプラグをつなぐだけで高速インターネットに接続できる「電力線通信」を2006年にも解禁する検討に入るとの報道です。昨日と同様、こうしたテクニカルな問題を真正面から語るバックグラウンドは持ち合わせていないため、本日は斜に構えた視点でのコメントとさせていただきたいと思います。
①NTTの経営へのインパクト
今回の解禁では見送られた屋外での電力線の利用ですが、屋外での利用が解禁されたとき、現在光ファイバーの敷設を進めるNTTの経営へのインパクトは相当なものであると思われます。パソコンだけで考えても、今までは電話線が引いてある部屋でしか使用できなかったのが、コンセントさえあればブロードバンド接続が可能になるわけですから、利便性は電力線通信が勝るはずです。
今から10年程前のことですが、通信業界の某社の役員の方のお話を伺う機会がありましたが、その方は「電話というものは、線さえ引いておけば、黙っていてもお金が入ってくるおいしいビジネス」といった趣旨のお話をされていたのを懐かしく思い出しますが、まさに10年一昔といったところでしょうか。線を引き終わってもお金が回収できなくなる可能性が出てきたわけですから。
②「電線ネット」という言葉
「電線ネット」という言葉でグーグル検索したところ、ひっかかったのはたったの519件で、しかもトップにきたのは、「・・・日立電線、ネット・タイム、・・・」というトピックに全く関係のないものでした。しかし、当然この結果はこのトピックがマイナーであるがためではなく、「電力線通信(英語ではPower Line Communictaion)」で検索すると30万件近くもの検索結果がヒットします。これは、日経新聞が「電線ネット」なる言葉を普及させたいということでしょうか?日経の思惑通り、この用語が定着するかどうか見物です。
なお、ネットサーフィンの過程で、京都大学の梅原助教授の作成する電力線通信がらみのリンク集を発見しました。テクニカルな側面にご関心のある方は是非、ご覧になって下さい。
本日の日経1面を、ソニーがプラズマテレビから撤退し、液晶テレビに経営資源を集中させるという報道が飾りました。また、昨日の日経1面の記事は、偶然にも(なのかプレス発表をわざとぶつけたのか知りませんが)、シャープが1500億―2000億円を投じ、三重県亀山市に液晶パネルの新工場を建設するという報道でした。「プラズマVS液晶」の技術的な側面に関しては、残念ながら、私には語るだけの技術的なバックグラウンドはありませんが、本日は「撤退」の選択肢をも評価する投資の意思決定法、すなわちリアル・オプション法について考えてみてみたいと思います。
【NPV法とその限界】
一般に、企業が設備投資の意思決定を行う際において、経済性の評価に用いる手法がNPV法です。NPV法の手法を簡単に記述すると以下の通りです。
①投資により将来得られるCFを見積もる
②投資のリスクに応じた割引率を用いて将来CFを現在価値に割り引く
③②の将来CFの現在価値の合計から初期投資額を差し引き、プラスであれば投資を実行し、マイナスであれば投資を実行しない
大手の企業のほとんどが、NPV法により投資の意思決定をしていることと思われますが、このNPV法にも限界があります。第一の限界は単一のシナリオに基づくものであるという点です。そして、第二の限界が、将来の環境が不確実である場合に、意思決定を誤らせてしまう可能性があるという点です。
NPV法で使用する割引率はプロジェクトのリスクに見合ったものが採用されるため、プロジェクトを取り巻く環境が不確実であればあるほど、高い割引率を使用せねばならず、従って、NPVの値は低く計算されてしまいます。そもそもリスクの高いベンチャー企業においては、より事態は深刻です。なぜなら、ベンチャー企業の行うビジネスは不確実であることが多く、NPV法を厳格に採用していては、なにもできなくなってしまうからです。
【リアル・オプション法とは】
こうしたNPV法の問題点を克服しようと、不確実な環境下での意思決定において採用されるのがリアル・オプション法です。中央経済社発行の『アントレプレナー・ファイナンス』においては、「ベンチャー企業とはリアル・オプションのポートフォリオである」とまでいいきっています。
リアル・オプションは知らないけど、株や債券の金融オプションなら知っているという方も多いと思いますが、本質は同じです。金融オプションは原資産である株や債券を売ったり買ったりする権利のことですが、原資産の値動きが読みづらく市場の不確実性が高い(=ボラティリティーが高い)ほど、オプションの価値は高くなります。なぜなら、株価が上昇するとわかっているなら株そのものを買えばいいわけですし、その逆ならカラウリすればいいわけですけど、不確実で株価が読めない場合はオプションを買うことにより態度が保留しておけるからです。
設備投資の意思決定に使用するリアル・オプション法では、将来の状況の変化に応じて、プロジェクトを延期したり拡張・縮小したり、最悪の場合撤退するといった複数の選択肢の評価が可能となり、今回のソニーが撤退を決めた「液晶テレビ」のような技術革新の著しい分野における意思決定手法としては、最適であるといえるでしょう。
【ソニーのケーススタディ】
薄型テレビの製造が開始された2001年前後の時点においては、プラズマという技術を選択すべきか、液晶という技術を選択すべきかはどちらか一方に絞り込むことは恐らく困難であったことでしょう。両者の技術で製造を開始し、技術動向がある程度はっきりしてきた時点で一方に経営資源を集中させるという青写真を当初から描いていたとすれば驚嘆すべきで、そうした戦略を可能にするのが、リアル・オプション法です。なぜなら、一方の技術から「撤退」するオプションを織り込んで経済性を評価することが可能となるからです。撤退によりプラズマの製造工場は液晶の製造に転用することが可能となり、その転用の価値をも評価することが可能となるのです。ただし、実際にソニーがリアル・オプション法を用いて意思決定を行っているのかどうかは私は知りません。
本日の日経1面の「金融重点強化プログラム」の記事とどちらを取り扱うか迷ったのですが、「金融重点強化プログラム」でも中小企業金融について触れられていたため、こちらを扱うことにしました。
みずほ銀行が西日本シティ、大垣共立、スルガ、荘内の4つの地方銀行と共同で、中小企業に無担保で無保証の長期資金を供給する新手法を開発したとの報道です。ここでスキームの概要をNIKKEI NETの記事から引用しておきたいと思います。
(引用始)
『新手法では参加する地銀が窓口になり、無担保無保証での資金調達を希望する企業を募集。応募した企業がみずほ銀行を引受先に一斉に私募債を発行する。みずほ銀行は集まった私募債をみずほ信託銀行を通して証券化し、投資家に社債担保証券(CBO)として販売する。社債担保証券は比較的安全な優先部分と元本割れの可能性が高めの劣後部分に分かれる。優先部分は参加する地方銀行が買い取るが、劣後部分は外部の投資家に引き受けてもらい、リスクをできる限り切り離す。』
(引用終)
ここで、このスキームへの参加者のそれぞれのメリットですが、まず資金調達が可能となる中小企業のメリットですが、これは、いわゆる、少人数私募債を発行したメリットと同じで、少人数私募債の詳細については、私の所属する中小企業診断士城南支会の一部メンバーが作成するサイトに非常に詳しいのでそちらに譲りたいと思います。
この新スキームで最大の恩恵に与るのは窓口となる地銀で、具体的には地銀のB/S上のポートフォリオのリスク分散が図られることとなります。私募債引受の窓口となる地銀は、その見返りとして、みずほから証券化後の優先部分を引き受けることとなり、その優先部分は貸倒リスクが少なく、地域的にも東北から九州までの4地域に分散されているわけですから、おいしいところどりです。資産の地域的な分散が図られていないとどのようなことになるかというと、例えば最近のマツダの火災などが、万一もっと大きな大惨事であったとした場合の、1次2次下請け等に波及する影響を考えていただけると分かりやすいと思います。
このスキームへの私なりの疑問は2つあります。まず、これは、証券化全般にいえることですが、劣後部分は誰が引き受けるのかという点です。ざっと検索した限りでは、劣後部分は売れ残ってしまうことが多いようであるということしかわかりません。クレジット・デリバティブ等を駆使した先進的な買い手がいるのかどうか、私にはよくわからないので、劣後の引き受けてに関してお詳しい方は、是非ご教授いただけると幸いです。
第二の疑問は、今後の地銀の存在意義といったところでしょうか。地元企業との密な関係をもとに深い情報を仕入れ、それをもとにリスクをとって融資を行うのが地銀の本分であるはずなのに、このスキーム上では地銀はリスクテークを放棄している感があります。新聞には「金融庁は地方銀行に対して(中略)地域に偏っているリスクの分散を進めるように求めている(引用終)」とありますが、それが実現できたときには、地銀は「地銀」ではなくなっているのではないかという気がします。
自民、公明両党は15日、2005年度税制改正大綱を決定したとの報道です。昨日は所得税の主要トピックである、定率減税について取り上げましたので、本日は法人税がらみのトピックを取り上げたいと思います。恐らく、本日の新聞報道の中で、(中小)企業経営者の方の目を大きくひいたのが、人材投資減税の文字ではないでしょうか?ある程度細かい説明は本日の日経新聞の4ページに記載されていますが、残念ながら非常に読みにくい文章となっています。これを分かりやすい言葉に翻訳するだけでも付加価値があるのではないかと思われるので、日経新聞4ページの情報を以下に分かりやすく記述してみたいと思います。
【中小企業者の場合】
人材投資減税は、中小企業者とそれ以外で減税額が異なります。もちろん、中小企業者の方が減税額は大きいわけですが、誤解を恐れず感覚的にわかりやすい文章で表現すると、中小企業者は他の様々な条件が整えば、2005年4月以降の事業年度に支出した教育訓練費の2割が法人税額の控除という形で戻ってきます。つまり教育訓練費が実質8掛けとなるということです。ここで他の様々の条件の骨子を書いておきましょう。
①教育訓練費の金額が、直前2年の平均額に比べて40%以上の割合で増加していること。
②「税額の控除」という仕組みであり、その控除の限度は法人税額の10%相当額となっています。つまり、教育訓練費の金額の2割が、法人税額の10%に収まっていなければフルに適用は受けられません。したがって、赤字企業には適用できない仕組みであるということです。
ただし、①の条件については、増加率が40%未満であれば、増加率に0.5を乗じたものが控除率となります。例えば、教育訓練費の増加率が20%であった場合は、控除率は0.5を乗じて10%となり、教育訓練費は実質9割となります。
【大企業の場合】
参考までに大企業の場合を書いておくと、控除率自体は25%と中小企業者より大きいですが、控除率を乗じるベースは教育訓練費全額ではなく、過去2年間の平均額を超える部分のみとなっています。
【これを受けてどうすべきか】
既に教育訓練を2004年度において実施しようと考えていた企業は、実施を遅らせることで、2割セーブできます。また、この税制を受けて、教育訓練を積極的に行うのは素晴らしいことですが、税制に振り回されるのではなく、戦略的な人材育成プランを練り上げ、それにしたがって支出をすることが肝要であることをお忘れにならないで下さい。また、「教育訓練費」と認められるか否かの判断については、顧問税理士にご相談下さい。
最近新聞をにぎわしていた「定率減税」ですが、ようやく政治決着がついたという報道です。以下、キーとなるポイントを引用させていただきます。
(引用始)
『所得税減税の上限は06年1月から現行25万円を12万5000円、控除率は20%を10%に引き下げる。個人住民税は06年6月から減税上限額を4万円から2万円、控除率を15%から7.5%に縮小。年年間の負担増は最大で所得税12万5000円、個人住民税2万円の合計14万5000円となる。』
(引用終、強調は私の判断によるもの)
この記事を読んで多くの方は、「なんとなく年間で数万円の増税だな」との印象をお持ちかと思われますが、サラリーマンの方は今後右肩上がりで給与が増加していくことは期待できないわけですから、増税分を事前に織り込んで家計を営むことが肝要となってきます。
その増税額を把握する一助として、本日の日経新聞3ページには「モデル家庭」の増税額の概算表が記載されています。こうした特集でいつも登場するのは子供2人夫婦2人のモデル家庭で、独身の方や、子供1人の家庭は途方にくれるばかりです。本日はサラリーマンの方を対象に、この新聞報道のもとで税制が確定した場合の、来年度の増税見込額の把握方法をご紹介したいと思います。
【現行の定率減税の仕組みを知る】
廃止されてしまうといっても、現行の仕組みを知らないことには、増税見込み額を把握することは不可能です。現行の定率減税とは最終的に計算された所得税を2割引きにしてくれる仕組みです。ただし、国民全員の所得税を2割引きにしてしまうと、高額納税者がものすごい得をしてしまうため、2割引きの限度が現在は25万円となっています。
これが、来年度は1割引となり、限度が12万5千円になるということです。
【源泉徴収表が鍵となる】
さて、来年度の増税見込み額を把握するには、現在の所得税額が把握できればよいこととなります。その上で鍵となるのが源泉徴収表です。少しでも早く知りたい方は、昨年度の源泉徴収表をご用意いただき、そうでもない方は今年分のものが会社からもらえるまでお待ち下さい。こちらのサイトには大変見やすい源泉徴収表の見本がありますので、イメージのわきにくい方はご参照下さい。
さて、この源泉徴収表の2段目の一番右側に「源泉徴収税額」なる欄がありますが、これが前回払った所得税の金額です。そして、これは2割引の特典を既に受けた金額であることに留意して下さい。
2004年度の「源泉徴収税額」が10万円である場合の、翌年度増税見込み額は以下のプロセスで算出できます。
①今年の定率減税適用前の税額=10万円 ÷ 80% = 12万5千円
②翌年度の所得税の見積もり額 = 12万5千円 × 90% = 112,500円
③増税見込み額 = 112,500 - 100,000 = 12,500円
ここで、注意せねばならないのが所得税の定率減税が今までは25万円であったのが、翌年度は12万5千円になるというポイントです。
したがって、プロセス①で計算した定率減税前の所得税額が125万円以上であった方は、増税見込み額は新しい限度と古い限度の差額の12万5千円となります。
【定率減税と証券税制】
実はこの定率減税を活用した証券投資に関わる節税のテクニックがあるのですが、それは私が発行する有料のメルマガのコンテンツであるため、ここではご紹介できません。この節税メリットを最大に享受できるのも今年度限りとなります。ご興味のある方は上記リンクより12月号のバックナンバーをお求め下さい。(仕組み上、1月以降にならないと購入できないかと思われます。)
こうした動きがあるということは、私は全く初耳でした。金融庁が一般企業が保険業務に進出しやすくするため、新たな参入基準を2006年にもつくる方針であるとの報道です。以下、報道の概要を下記に引用しておきたいと思います。
(引用始)
『既存の保険会社の基準とは異なり、10億円の最低資本金規制を緩め、商品審査も簡略にする。一方で取り扱う保険商品を限定する。小粒ながら斬新な商品を提供できる「ミニ保険会社」に門戸を開き、利用者の利便性向上につなげる。』
(引用終)
新聞でも書かれているように、この動きの狙いは、まずは、様々な問題を抱える無認可共済への対応にあります。数年の移行期間を設けて、無認可共済を免許制か登録制のいずれかにより、保険業法のもとに従わしむることを目指しており、消費者にとっては好ましい動きといってよいでしょう。企業年金の分野においては、受給権保護に問題があった「税制適格年金」の廃止が決定し、確定拠出企業年金法、確定給付企業年金法のもとに整備がなされた経緯をなんとなく連想させられます。
ただ、そんなことより、圧倒的に興味深いのは、この法律を使って、どのような保険ベンチャーが誕生するかという点です。新聞には、下記のような記述がありました。
(引用始)
『自転車や登山用具のメーカーが、レースや登山でのけがを保証する商品を開発する例などを金融庁は想定している。』
(引用終)
「Mountain」「Bicycle」「Insurance」の3語でググってみて、トップに出てきたのが、こちらのMcKay Insurance Agencyなる会社のサイトです。いつもながら、役所は海外の情報収集については、しっかりやっているなと感心させられます。この法律の可決により、日本でも保険マーケットのニッチの開拓が進むことが予測され、その際参考になるのは、やはりアメリカです。日本では目にしたことのない新奇なビジネスアイデアであっても、英語でググると、大抵既にビジネスとして成立している場合が多いものです。
保険のニッチマーケット開拓にご興味のある方は、英語で検索してみることをお勧め致します。
本日は新聞休刊日のため、ネット上になにかネタはないかと探していたところ、私が愛読する会計士の磯崎哲也氏のisologueというブログに、中小企業融資のビジネスモデルに関する興味深いエントリーがありました。
非常に簡単に、引用を交えつつ、エントリーの要旨を私なりにまとめさせていただくと、「銀行以上商工ローン未満の金利」での中小企業融資ビジネスにはオリックスや三井住友銀行等の成功例が多いとのこと。そして、その成功の秘訣は(1)『本部で「全体のポートフォリオ像」を考え、「それに合わせた貸出候補先」を営業マンにアタックさせる(引用)』ことと、(2)『融資を申し込みに来た客には貸さない(引用)』点であるとのことです。
ビジネスの基本は顧客の声に耳を傾けニーズを汲み取ることから始まるわけですが、商品そのものが「融資」となると、ニーズのあるところには貸倒リスクがある、となってしまうため、ビジネスの基本を否定してマーケティングを行うというのは画期的な発想の転換といえるでしょう。
そもそも新規の融資を必要としない企業に、どのような営業を展開しているのかには興味があります。やはり、生命保険商品のセールストークで行われるように、「節税」トークが展開されているのでしょうか。
こうした必然性のない融資残高も含めた数値で、国が政策決定をしているとしたら、いつまでたっても本当に融資を必要とするところにカネは回ってきません。
続けて磯崎氏はこうも述べています。
(引用始)
『「儲かるニッチ」を貸し出しを行う側から摘みに行くのと、「貸し渋りで困っている中小企業に貸します」というの(公益的な香りのするスタンス)はまったく対極の概念とも言えます。
ただし、そうした「公益」と「収益性」が合致するニッチが絶対存在しませんよ、ということを申し上げているわけではありませんので念のため。』
(引用終)
36歳とはいえ、まだ、青い私は氏のいう「公益性と収益性が合致するニッチ」を拡大していくことが、中小企業診断士としての使命であると考えていますし、また、私が受験指導しているTAC受講生の方にも、そうした方向性を志向していただきたいものです。
そうした方向性を志向する上での鍵となるのが、融資機関と中小企業の密なるコミュニケーションで、いわば中小企業の戦略的なデットIRが今後不可欠になるはずです。このコミュニケーションの橋渡しをするのが中小企業診断士なのですから、現在TACで受講中のみなさんは、心して、12月の財務会計の授業を聴講していただければと思います。
松井証券とUBS証券が資金調達業務で提携したとの報道です。
「企業が発行する転換社債型新株予約権付社債(CB)などをUBSが引き受け、株式に転換した後に松井がインターネットを通じて個人投資家に販売する。(引用終)」
これが仕組みの骨子なのですが、その狙いは公募増資をアナウンスしたときの株価下落を防止することにあります。そのため、具体的には以下のプロセスを経ることとなります。
「まずUBSが第三者割当形式でCBを引き受け、段階的に株式に転換。その株式を立ち会い終了後に終値より数%低い価格で松井のネット取引画面を使って個人投資家に取り次ぐ。(引用終)」
松井証券の経営理念や手法には感銘を受ける部分が大きいのですが、この仕組みに限っては疑問を感じざるを得ません。その理由は、この仕組みが長期的投資スタンスを採る個人投資家にとってあまりよいとは思えないからです。
ゼロクーポンCBを発行する企業の最大の悩みはそれがヘッジファンドに渡り、いわゆる「空売り保険」として利用され、株が売り込まれてしまうことです。(詳しい仕組みについては弊社発行のメールマガジンの10月号をご参照下さい。)この仕組みを使用すれば、CBのオプション部分がヘッジファンドに渡ることはありえないため、こうしたリスクは回避できます。ただ、「その株式を立ち会い終了後に終値より数%低い価格で松井のネット取引画面を使って個人投資家に取り次ぐ」との記述から推測するに、この仕組みで採用されるCBとは、最近週刊誌等で取り上げられた悪名高きMSCB(Moving Strike Convertible Bond)である可能性が濃厚です。MSCBとはそのときの時価に応じて転換価額が変動する転換社債のことであるので、株式転換時の時価が下がっていれば、発行する株数は当初の予定より増加し、長期ホルダーである個人投資家が被る希薄化のダメージは当初より大幅に増加してしまします。
一時的な需給悪化による株価下落は回避できたとしても、希薄化による本質的な株価の下落は通常の増資をした場合に比べて大きくなる可能性が大だと思います。さらに、松井証券の顧客は終値より数%低く仕入れることができるのですから、デイトレーダー的スタンスの個人投資家は、即売却して薄利を稼ごうをするでしょう。一時的な需給悪化も本当に回避できるのか疑問です。
また、市場が合理的な投資家で構成されるのであれば、資金調達が「増資」という形をとろうと「CBの発行」という形をとろうと、株数増による希薄化の影響を勘案して、価格は同じように形成されていくはずです。今回の新たな資金調達の仕組みは、投資家が合理的でないとの前提にたったものであり、個人投資家を小ばかにしているような気がして、その点でも好きになれません。
松井証券は顧客の声に耳を傾けすぎるあまりに、デイトレーダーのための証券会社になってしまった感があります。長期的ホルダーである個人投資家の声にも耳を傾けてはいただけないでしょうか?
最近、このエントリーを書く際のポリシーとして、できるだけ日経新聞で大きく取り上げられた記事に関するレビューを書こうと努めております。日経新聞の編集に私が踊らされているのか、本日のトップを飾ったインドネシアのLNG輸出削減の報道にしても、先日取り上げた自動車鋼材の問題にしても、昨日の信越化学の動きにしても、共通するテーマはサプライ(調達)のリスク管理といえるでしょう。
近年のSCM(サプライチェーンマネジメント)の潮流により、製造業は一企業のみならず企業グループ間での在庫量の削減に努め、今までの手法では得られなかった効率性、ひいては収益性を実現させています。
しかし、収益性と安全性は常にトレードオフの関係にあります。BCP(Business Continuity Plan)とは、災害等の緊急時においても企業活動を継続させていくために、事前に作成される計画のことで、コンティンジェンシープランの一種と考えてよいでしょう。日産も収益性を追及するあまりに鋼材不足での対策が後手に回ってしまいましたが、ゴーン氏はこの課題への対策として後戻りは考えておらず、SCMとBCPの同時追及を模索していく考えのようです。SCMとBCP、すなわち効率性(収益性)と安全性は両立し得るのでしょうか?
こうした、深遠な問題を考えるにあたっては、まず製造業をとりまくリスク要因を明らかにしていくことが有効でしょう。先日紹介した下記の論文では、製造業のサプライチェーンを考える上での今日的なリスク要因を列挙しており、昨今の新聞報道の問題の真因がずばり指摘されている部分もあり有用であると思われるため、以下に拙訳を記しておきたいと思います。
論文(英語) Traditional Threats and New Risk Complexities have Manufacturing Environments Spinning
●東南アジア、東欧、中南米等の新興国のインフラへの依存
●企業の経営システムが機能し得るように情報コミュニケーションシステムを整備しておく必要性
●ジャスト・イン・タイムでの製造をサポートしていく上で、原材料の段階と在庫管理の重要性が増していること
●納期と価格を最優先して単一のサプライヤーに依存してしまった場合に大きな損失を被ってしまう可能性
●地域的な一極集中が高まりすぎてしまった場合のリスク
●バックオフィス機能をアウトソーシングした場合に失われる柔軟性と、増加してしまう依存性
●特に外国のサプライヤーやパートナーと組む時に信頼度と透明性が高い運用手続きを維持すること
●ナレッジ・マネジメントシステムの整備の重要性
●ボトルネックや機能的な相互依存への早急な対処
●インパクトと許容度に応じてリスク要因に優先順位をつけること
今回のLNGの問題に限って言えば、横並びと言われた電力業界にもリスク管理に巧拙が見られ、東京電力や東北電力は調達先の多様化により影響を少なくとどめられたものの、関電は急きょ「他の電力・ガス会社からの融通で賄う」方針を決めたとのことであり、手厳しくいえばこの問題に対して無策であったことが露呈してしまったことになります。
収益性と安全性のトレードオフはビジネスの永遠の課題であり、今にはじまったことではありませんが、時代の変化を受けて、常に最重要な経営課題の一つと位置づけて考え直していくことが重要であると思われます。
先日ご紹介した鋼材の需給ひっ迫等に見られるように、にわかに原材料への需要増に対する製造業の対応策がクローズアップされてきた感があります。本日の日経1面では、塩化ビニール樹脂で世界最大手の信越化学工業が米国に、塩ビを原料から一貫生産する大型工場を新設すると報じられました。サプライチェーンの上流を自前で押さえてしまおうというのが、原材料不足問題への信越化学の出した回答なのです。
本日の日経新聞の情報のみを元にすれば、塩化ビニール樹脂の製造過程は以下のように簡略に書くことができます。
岩塩 → 塩素 → 塩ビモノマー → 塩ビ樹脂
この積極的な投資策を財務的な見地から考えてみるならば、他のメーカーから塩ビモノマーを調達する場合と比べて、信越化学が享受するメリットは以下のようになります。
①輸送コストの低減(新工場は岩塩が豊富な地域に立地されるようですから、岩塩の輸送コストが大幅に低減できます。また中間材料である塩ビモノマーも一貫生産するわけですから、その輸送コストも低減可能となります。)
②塩ビモノマー製造の利潤の確保(内製することにより、これまで外部に流出していた塩ビモノマー製造の利潤を内部に確保することが可能となります。)
③将来、需要が増加したときの機会損失の極小化(全部自前で生産してしまうわけですから、日産のようにサプライヤーの対応に苦慮し、工場を休止させる必要がありません。)
新聞に「モノマーは長期契約を結んでいる米ダウ・ケミカルから調達してきたが、ダウが一部の設備を縮小・停止するなか・・・」という記述がありました。こういう動きがあるのであれば、ダウの縮小する設備を買い取るというオプションもあったはずですが、それにも関わらず自前生産にこだわるのは、①の輸送コストの問題が結構大きかったのではないかと推測されます。
一方のリスクとしては、需要が減少した場合、塩ビ樹脂メーカーとしての痛手とモノマーメーカーとしての痛手を二重にくらうことです。ただし同社の9月30日時点の連結貸借対照表によれば、その当座比率は170%で過剰ともいえる安全性を有しており、1,000億円の投資後も当座比率は140%にまでしか落ちません。また9,000億円強の自己資本にも支えられており、強固な財務体質を持つ信越化学の今回の積極投資策は高く評価されることでしょう。
本日の日経1面に、自民党税制調査会が国際取引への課税強化の方針を固めたとの報道がありました。2つの柱があり、①海外投資家の日本国内での取引に対するものと、②国内企業に対するもので、後者に対しては移転価格税制の対象となる海外グループ会社の範囲を拡大しようというものです。本日はこの移転価格税制について考えてみたいと思います。
【移転価格とはなにか】
法人税率の高い国、低い国があるのは、皆様ご存知の通りです。海外で積極的に事業を展開している国際的な企業グループであれば、税率の高い国での利益をできるだけ少なくして、代わりに税率の低い国の利益を多くして、全体での支払税額を少なくしようとする誘惑にかられます。しかし、こうした行動は税務当局から租税回避と見られ、こうした租税回避を抑制するのが移転価格税制なのです。
移転価格とは多国籍企業のグループ会社間で、国境を超えて行われる取引の価格のことです。グループ会社間の取引なのですから、親会社の意のままに決定することができ、通常取引されている価格より高かろうが低かろうが、子会社は従わざるを得ません。しかし、このような市場とかけはなれた移転価格を野放しにしておくと、租税回避が横行してしまうため、企業グループ間の取引価格すなわち移転価格にしばりをかけようというのが移転価格税制の趣旨なのです。
基本的には企業グループ間の取引であっても、独立した企業間の取引価格の水準で価格を設定せねばならず、こうした独立した企業間で設定されるであろう取引価格をアームズ・レンクス・プライス(arm's length price)と呼ぶのです。
【租税回避と認定されないために】
私の少ない経験からすると、実際のところ、租税回避などという大それた意図は少しもないのに、知らず知らずの内に、アームズ・レンクス・プライスとかけ離れた取引価格を企業グループ間で設定しまっていることが、結構あるものです。租税回避と認定されてしまわないためには、どうやって企業グループ間の取引価格を決定すればよいのでしょうか?
まず、行うべきはファンクション・アナリシス(function analysis)と呼ばれるものです。企業グループ内のそれぞれの独立した法人が、グループ内においてどのような機能を担っているか、そしてどの法人がビジネスリスクを負うべきなのか、といったことを分析し明らかにしていきます。
次に行うべきなのが、上述のファンクション・アナリシスに基づいた価格設定で、価格設定のメソドロジー(方法論)には、2つの代表的な方法があります。すなわち①マーケット・ドリブン法と②コスト・プラス法の2つです。マーケット・ドリブン法は、市場で販売できる価格を基準にして、各法人のとるべきマージンを控除して移転価格を算出する方法で、コスト・プラス法は製造原価に適正なマージンを上乗せして移転価格を算出する方法です。
ここで大切なのは、税務当局に追及されたときに、グループ企業間の移転価格は合理的な考えと数値データに基づいて決定されたものだということを説明する、バックアップの資料を整備しておくということです。こうした資料がなければ、税務当局への反論のしようがありません。
【例題 ホンダの1000cc級戦略車の移転価格を考える】
本日の日経1面には、移転価格を考える上で、格好の例題があります。ホンダは排気量1000cc級の「コンパクトカー」と呼ばれるクラスで、2008年にも発売する世界戦略車の開発に着手したとの報道がそれで、日経紙面には「開発」は日本で行い、「生産」はタイで行い、「販売」は欧州で行うとの図が描かれています。これは、非常に粗いレベルのファンクション・アナリシスと考えてよいでしょう。では、このファンクション・アナリシスに基づけば、タイから欧州に販売するときの移転価格は①マーケット・ドリブン法によるべきか、②コスト・プラス法によるべきかどちらでしょう?
色々な考え方があるのかもしれませんが、私はタイから欧州に販売するときの移転価格はコスト・プラスによるべきであると考えます。その根拠に、マーケット・ドリブンにした場合を考えて下さい。マーケット・ドリブンで移転価格を設定すれば、販売台数が計画に満たないときに、タイの生産工場に赤字が出てしまうことが考えられます。これはすなわち、タイの生産工場に欧州での販売リスクを負わせているからに他ならず、このスキームを考える以上、タイの工場には生産に対する適正な利潤が落ちるようにすべきで、コスト・プラスを採用すべきでしょう。
今年の中小企業白書の主要テーマの一つが中小企業のグローバリゼーションであり、中小企業とて移転価格税制に対して無策であるわけにはいきません。かといって、あまり追加的なコストをかけるわけにもいきませんから、仮に税務当局に追及されても理論的に説明し得る、バックアップの資料を整備しておくことを、まずはおすすめ致します。
UFJ銀行の検査妨害事件で、元副頭取ら3人が銀行法違反(検査忌避)容疑で逮捕されたとの報道です。本日の日経の社説は同記事を取り上げ、「UFJ銀だけでなく、どの企業にとっても法令遵守という当然のことの重要さをもう一度確認する機会にしたい(引用終)。」と結び、これは企業側の問題であるとしています。もちろん、この認識に間違いはないのですが、検査忌避への真に抜本的な対策を考えるのであれば、監督官庁側の中長期的な努力が必要になると私は思います。
同社説では沖原頭取の反省の言葉として「内部管理や法令遵守の意識が脆弱な企業風土があった(引用終)」を引用しています。「個」の責任を「風土」という形のないものになすりつけようとする無責任な発言ともとれますが、一方で、自ら会社全体で法令遵守の意識に乏しいと認める開き直りの発言ともとれます。我々は、「では何がそのような風土を生み出してしまったのか?」と問いを深めるべきでしょう。
私は検査忌避を増長させるような企業風土があったとすれば、その原因は監督官庁の側に跳ね返ってくると思っています。一言でいえば、監督官庁の人材に法令遵守を徹底させうるだけの資質が備わっているのかどうか、という点です。その資質とは①モラルと②業界知識の2点です。
モラルについては、私から申し上げるまでもないですが、金融庁の役人にはかつてノーパンしゃぶしゃぶ接待にほいほい出かけていってしまった人々が含まれています。また省庁は異なりますが、厚生労働省の勤務実態がないといわれる監修料の受取や、年金資金の巨額の蕩尽などを考えると、「こうした役人に法令遵守うんぬんを言われる筋合いはない」と考えるのが人間心理というものでしょう。日本のビジネスの中枢をチェックするわけですから、監督官庁側にも高潔な人材が求められることは、当然の道理だと思います。
二点目の業界知識については、金融業界人はプライドの塊であるということを理解する必要があり、そのプライドの裏打ちするのが高い学歴と、最先端の金融技術に通じているという自負です。金融業界の人は役人やマスコミを、「全く知識がない」といってとかくバカにしがちです。普段バカにしている相手から検査を受ければ、その検査そのものをバカにしてしまうのは目に見えています。中途採用や人材の交流により金融庁は最先端の金融技術の習得に努めねばなりませんが、この点については金融庁も努力している点が伺えます。
「検査」が有効であるには、検査する側に十分なモラルと知識があることが前提となります。今回の事件を一民間企業を叩く表層的な反省に終わらせることなく、監督官庁の高度化につなげていかねばなりません。
本日の日経新聞1面を、中小企業関連のニュースが飾りました。経済産業省と財務省は中小企業向けの公的信用保証を縮小する方針であるとの報道です。この報道はこれからの中小企業金融を考える上で重要であると同時に、信用補完制度は中小企業診断士試験の頻出事項でもあります。まず、圧縮の対象となる「中小企業向けの公的信用保証」とは何であるのか、概要を見ておくこととします。
【信用補完制度の概要】
信用補完制度とは、担保を十分にもたない中小企業が民間の金融機関から融資を受けやすくするために、中小企業の信用力を補完する制度のことです。
もう少し具体的に言うと、融資を受けたいが担保が十分にない中小企業は、信用保証協会という団体に保証料を支払うことにより、万一の場合の借金の返済を肩代わりしてもらいます。
信用保証協会は、こちらの一覧表からわかるように、現在全国で51あります。全国で51もあるわけですから、それぞれの財政基盤がこうした保証を行うに足るほど磐石であるわけではありません。そこで、各信用保証協会は信用保険を中小企業金融公庫との間で締結します。(信用保険業務は平成16年7月に中小企業総合事業団から中小企業金融公庫に引き継がれました)こうすることにより、中小企業金融公庫が、最終的な肩代わりをして、万一のことがあれば、信用保証協会に保険金を支払ってあげるわけです。
では、中小企業金融公庫自体が財政的にどうしようもなくなるとどうするのかといえば、税金が投入されます。今朝の日経新聞によれば2003年度の中小企業金融公庫の信用保険事業は4,000億円の損失を計上したとのことで、これだけの税金が投入されているのです。これまでの話を簡単に図示すると以下のようになります。
中小企業金融公庫 ← 政府
<税金>
保険金 ↓ ↑ 保険料
信用保証協会 → 銀行
<代位弁済>
保証 ↓ ↑ 保証料
中小企業
【モラルハザード】
一見、中小企業に優しい制度に見える信用補完制度ですが、この制度により引き起こされる最大の問題がモラルハザードと呼ばれるものです。モラルハザードとは危険を回避する仕組みを作ってやることで、かえって保険事故の発生可能性を増やしてしまうことをいいます。
上図を見ていただければわかるように、融資を行った銀行は、融資先が倒産してもお金がいくつかの機関を迂回して国から入ってくるわけですから、痛くも痒くもありません。その結果が4,000億円の税金投入となってしまったのです。
このモラルハザードを抑制するという意味においては、今回報道されているように保証範囲を圧縮することは好ましいことといえるでしょう。そして、タイミング的にも、銀行の不良債権の削減に目処がつき、信託業法の改正により可能となる「知的財産信託」等の融資の代替となる枠組みが提供されることが間近である今は、この報道の与える衝撃を少しでも和らげるという意味でよかったのかもしれません。
【中小企業のとるべき道】
中小企業の融資は、担保を絶対に必要とする時代から確実に変化してきています。新たな融資の方向性とは、当サイトにて紹介した、以下の2つのエントリーが参考になるかと思われます。
中小企業経営者の方は、伝統的な融資手法にとらわれず、積極的に新しいタイプの融資の動向に目を配っていく必要があるといえるでしょう。