2005年01月31日

東芝の業績下方修正と管理会計

東芝が2005年3月期の業績を下方修正するとの報道です。以下にNIKKEI NETの記事を引用致します。

(引用始)
『東芝の2005年3月期は、本業のもうけを示す連結営業利益(米国会計基準)が従来予想を300億円下回り、前期比8%減の1600億円程度となる見通しだ。従来の9%の増益予想から一転、減益となる。デジタル家電向けを中心に半導体の価格下落が進み、電子部品の採算が悪化する。ソニーやNECはすでに業績予想を下方修正しており、デジタル家電関連の価格下落が大手電機全般に波及し始めた。』
(引用終)

下方修正の主因はソニー等も苦しめた「予想外のデジタル家電製品の価格下落」にあるようですが、当初の9%の増益予測から8%減の予測に修正したわけですから、17ポイントの予測修正ということになり、かなり大きな予測修正といわざるを得ないでしょう。
企業はひとたび上場すれば、業績予測というものを外部に示していく宿命を負わされ、その予測にコミットすべく経営を行うことが重要となります。こうした経営を可能にするためには、どのような経営管理ツールが必要となるのでしょうか?鍵は管理会計の仕組の構築にあります。
私は外資系の会社数社で管理会計を担当してきましたが、その仕組みは大枠で共通しています。その仕組みの概要を本日はご紹介いたしたいと思います。
①年間予算の策定
まず、年間の目標を予算として数値化します。そして、後の管理に資するために、この年間の数値を月次レベルにブレークダウンしておくことが肝要となります。
②月次実績決算との差異分析
さて、最初の月が経過した後すぐに、実績値と予算値との差異分析を行います。そして、その差異の真因を探り、経営上の問題点・課題を探ります。例えば、小売業で売上が目標値に至らなかったのであれば、それは来店者が少なかったためか、コンバージョン(買上率)が低下したためか、買上点数が低下したためなのか、その原因をしっかりと認識します。また、このような分析が可能となるためには、年間の予算を策定する段階において、これらの構成要素に分解して予算を策定することが必要であることは、言うまでもないでしょう。
③残りの月の予測値の修正
予実算の差異分析が行われたならば、その結果を残っている月の予測値に反映させる必要があります。例えば、報道にある東芝が仮に7月頃に価格下落を認識したのであれば、8月から3月までの予算をより現実的に修正する必要があります。
④コスト削減プランを盛り込む
さて、年間予測をより現実的な値に修正して、年間の利益が当初の見込みに達成しないようであれば、コスト削減策を早い段階で盛り込まねばなりません。もちろん、外部環境の急変による業績悪化は対応が不可能なものもありますが、業績が下方修正されれば株価の下落を通じて株主が痛手を負うということを忘れてはならないでしょう。

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2005年01月28日

苦境に立つ酒類卸売業

ビールメーカーがリベートを廃止する動きがしばしば報じられていましたが、本日は、イオンが小売価格に転嫁しないとの報道です。以下に日経NETの記事を引用します。

(引用始)
『大手ビールメーカー4社が1月から新取引制度を導入したことに伴うビール・発泡酒の店頭価格の動きが注目されているが、イオンは27日、店頭価格を据え置くことを明らかにした。一部安売り店を除き、大手スーパーやコンビニエンスストアも店頭価格を据え置いている。当初は販売奨励金(リベート)廃止に伴う卸売価格の実質値上げ分が小売価格に転嫁されるとみられていたが、値上げが浸透するかは不透明だ。』
(引用終)

この記事への私の雑感を述べさせていただくと、20年後くらいの経済学の教科書では、鋼材価格の上昇等の動きと合わせて「インフレ」というカタカナ4文字で片付けられているのかもしれませんが、それが最終段階の小売価格にまで波及するには、いかに多くの複雑な過程があるかを窺い知る上で興味深いと思います。
さて、まずことの発端ですが、ビール業界のリベート慣行は不当廉売を招くとの公正取引委員会による指導に始まります。この公正取引委員会の判断に関心がある方は、以下の公正取引委員会のページをご参照下さい。

酒類の流通における不当廉売,差別対価等への対応について

酒類の不当廉売に関する考え方の明確化について

本日の日経新聞に詳しく書かれているように、この公正取引委員会の指導は、値下げ競争に疲れきったビールメーカー等の思惑と合致して、すんなりと受け入れられたのですが、誤算は値上げはビールメーカーと卸との間の価格に留まり、小売業界まで波及しなかった点にあるようです。なぜ、小売業界に波及しなかったかといえば、それは業界間の力学によるもので、先日エントリーを書いた、ポーターのモデルが参考になるかと思われますので、ご参照下さい。

意外に使えるポーターの5フォースモデル

こうして、ビール卸売業界は実質的に仕入価格が上昇したにも関わらず、小売業界への販売価格に転嫁できず、一挙にふところ具合が厳しくなってしまったわけです。「中抜き」の潮流の中で、他業界の卸売業者も苦境にたってきたわけですが、そうした苦境の卸売業界へのリバイバルプランとして登場する常套の手段が①リテールサポートの強化②情報システム投資③物流の高度化の3つです。どのような方向性を志向するのかは、それぞれの業者の内部資源を分析することにより決定されるべきで、旧制度の中小企業診断士試験で出題されてきた論点でもあります。酒類卸売業界の今後を注意深く見守っていきたいと思います。

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2005年01月26日

成果主義時代の労使交渉

本日の日経新聞の企業総合面に、大きくスペースを割いた、日産の労使交渉のトピックがありました。NIKKEI NETより以下に報道の要旨を引用いたします。

(引用始)
『日産自動車労働組合(郡司典好委員長、組合員数3万人)は25日、今春の労使交渉で、月次給与の総原資引き上げを軸にした新しい賃上げ要求案を決定した。日産は昨年4月から個人の業務成果に応じて月次給を決める新制度を導入、ベースアップ(ベア)の考え方がなくなった。日産労組はベアに代わる基準を設け、好業績に見合った賃上げの獲得を目指す。』
(引用終)

人事の専門家でない方には、上記の記述は意味は分からないとはいわないまでも、ぴんとこないのではないでしょうか?そのような方のために、定期昇給ベースアップの概念を簡単にご説明しておきたいと思います。

【定期昇給・ベースアップ・職能資格制度】
定期昇給もベースアップも、どちらも従業員の給料が上がることというのは正しい認識ですが、両者のもとにあるのが賃金表なるものです。賃金表とは、等級ごとの給与水準を定めた表のことで、例えば、「事務職2級の人は基本給20万円、営業職3級の人は基本給30万円」といった具合に等級と給与水準がマッピングされている表です。
そして、ベースアップとはこの賃金表の書き換えのことを言います。ですから先ほどの例でいえば、「物価上昇に伴い、事務職2級の基本給は21万円、営業職3級の基本級は31万円とする。」といった具合に、賃金表そのものを書き換えてしまうことを言います。これに対して定期昇給とは賃金表上の移動のことで、「事務職3級が昇格して事務職2級になって基本給が増える」といった具合です。
そもそも、こうした賃金表をベースに個別の賃金を決定するためには、等級がしっかりと定義されている必要がありますが、こうした等級をベースに人事制度を運用する手法を、職能資格制度と呼びます。ですから、職能資格制度を敷いている企業における労使交渉においては、その根幹である賃金表に照準が定められ、ベースアップが労使交渉の最大のテーマとなっていたわけです。

【成果主義時代の労使交渉】
さて、先ほどの職能資格制度ですが、厳密にいえば年とともに給与が増える年功制とは異なるのですが、結果的に年功制と同様な運用を行っている企業が多く、適正な個別賃金の配分がなされていないという問題が多くの企業で表れました。そこで登場したのが、成果主義という考え方で、各従業員の生み出した成果に基づいて給与を決定しようというのがその考え方の基本です。したがって、当然の帰結として、先ほどの「賃金表」は成果主義のもとでは意味をなさなくなり、賃金表の書き換えを目指すベースアップを労使交渉の主テーマとしても意味をなしません。
そこで、成果主義を導入している日産の労使交渉においては、ベースアップという考え方がなくなり、「賃金の総原資」が交渉の争点となった、というのが今回の報道の背景です。
成果主義の普及が、いわゆる個人レベルにおける「勝ち組」と「負け組」の二極分化を後押ししていますが、こういう時代にこそ労働組合の存在意義は大きいと思われます。本日は従業員よりのコメントとなりますが、今回の報道を機に、「なんとなくイメージが悪い」と思って敬遠していた労働組合について、考え方を改めてみるのもよいのではないでしょうか?

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2005年01月25日

リストラが止まらない松下と経営者の資質

松下電器産業はAV(音響・映像)機器を手掛けるデジタル家電部門の国内従業員を1000人規模で削減するとの報道です。オヤジ的な言い回しを使えば、「勝って兜の緒を締めよ」という感じで、業績が回復した後も、少しも手綱を緩めようとしない経営手法は高く評価したいと思います。ただ、その一方で、一連の日経新聞の報道から受ける印象では、松下の経営は縮み志向が強すぎる感も否めません。これに関連した当サイトのエントリーでは、以下をご参照下さい。

復活!松下銀行

一連の改革を推し進めてきた中村邦夫社長の手腕は高く評価しますが、松下は今新たなステージに移行しつつあります。新たなステージには、やはり新しい経営者が必要なのではないでしょうか?
私が上記のような考えを持つに至った背景には、私がフォード広島本社勤務時代に間近に見たマツダの社長の変遷の歴史があります。
苦境に陥っていたマツダがフォード傘下で経営再建を行うにあたって、フォードから派遣された社長はヘンリー・ウォレス氏でした。彼はマツダで社長を勤めた後、フォードヨーロッパのCFOとなったことからも分かる通り、財務の専門家です。瀕死の企業において最も重要なのはキャッシュフローの改善で、不採算事業の売却等をからめながら、本業を黒字化していくことが必要で、そのためには財務・会計の専門的知識・経験を持ったものがリーダーシップを発揮すべきなのです。
ヘンリー・ウォレス氏の後任としてマツダ社長に就任したのは、ジム・ミラー氏で、彼はマツダ社長になる前、フォード・ニュージーランドで社長を務めており、彼の専門はセールスでした。大ナタをふるって数字を改善した後は、成長を志向せねばなりません。そのためには売上高の回復が急務で、セールスの専門家がリーダーシップを取ることは十分理にかなっているといえます。
ジム・ミラー氏の後任として派遣されたのは、名前は忘れてしまいましたが、アメリカのMBA出の若手で、マーケティング・ブランドの専門家でした。ただ、売上を回復するだけならば、インセンティブを増やしたり、営業マンの猛烈なプッシュアプローチで売り込みを行えば売上高は増えますが、薄利多売に終わってしまう可能性も否定できません。EVAの考え方を導入すれば、資本コストを下回る利益率(ROIC)の下で成長を企図しても、それは逆に企業価値の破壊につながってしまいます。企業価値の増加を伴う成長を実現するには利益率(ROIC)の増加が不可欠で、そのためには周到なマーケティング・ブランド戦略が必要となります。財務リストラが完了し、売上高が上向いてきたら、マーケティングの専門家にバトンタッチするのは、株主価値の視点から極めて合理的といえるでしょう。
もちろん、一人で全てやってしまうようなスーパーマンのような経営者も存在し、日産のゴーン氏やIBMのガースナー氏がその好例でしょう。私は松下の中村氏の詳しい人となりについては、全く知らないのですが、少なくとも日経新聞の主要報道から判断する限りでは、適任の後継者にバトンタッチすべきではないかという気がします。しかし、だからといって、これまでの建て直しの功績を否定するつもりは毛頭なく、会社のステージに相応しい人材が舵取りをすべきであるということです。そして、こうした考えに基づいた社長交代を可能にするのが、社外取締役を多く配した取締役会です。松下がいつまでもキャッシュを溜め込んで成長のプランを描けないようであれば、それはガバナンスの視点が欠落していると言わざるを得ないでしょう。

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2005年01月24日

知的財産の金銭価値算出

日本ユニシスとソフトバンクは特許など知的財産のコンサルティング事業で包括提携したとの報道です。この包括提携の舞台となるのが、ソフトバンクの子会社であるインテクストラなる会社ですが、日経一面でとりあげてもらい大変効果の高いPRとなったことでしょう。
「知的財産信託」という観点から同様のエントリーはこのサイトで数多く扱ってきましたが、以下の2つのケースなどは、その根幹である「知的財産の評価」という難問を回避したスキームとなっていました。

特許権信託第1号

住友信託の知的財産信託

信託銀行も、今後知的財産評価の部分はこうした専門業者に外出ししていく可能性も否定できませんが、知財評価なき知財信託はインテル・マイクロソフトに旨味を吸い取られたパソコン組立業界のようなものです。今後、知財評価というニッチな分野で、どこがリーダーとなっていくのか、非常に興味があります。
インテクストラ社の受託評価・分析サービスのサイトを見ると、評価手法としてインカム・アプローチ、マーケット・アプローチの二種類が掲げられており、それぞれどのような場面に応じて使い分けるべきか、簡単な表もあり興味深いです。

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2005年01月21日

意外に使えるポーターの5フォースモデル

昨日はエントリーをお休みしてしまいましたが、日経一面のトップは資源高騰に関わる報道でした。鉄鉱石、鋼材、原油等の資源の価格が高騰しているとの記事でしてたが、記事を注意深く読むと、各業界の温度差が浮かび上がってきて、興味深いです。例えば、鋼材については、「新日鉄は二月にも値上げを要請する。(引用、強調は私の判断)」とありますが、ガソリンについては、「新日本石油は十九日、二月からガソリンなどの卸値を前月比一リットル当たり一~一・五円値上げする方針を明らかにした。(引用)」と明らかにトーンが異なります。これはそれぞれの業界の競争構造が異なっているのが原因で、その業界の競争構造を明らかにしようというのがマイケル・ポーターの5フォースモデルと呼ばれるものです。

【5つの競争要因】
中小企業診断士試験においては頻出されますが、ポーターは業界の競争構造の要因を以下の5つに分けて考えることを提唱しています。
①新規参入の脅威
②競合の脅威
③代替品の脅威
④供給者の脅威
⑤購入者の脅威

鉄鋼業界が5割近くもの鉄鉱石の価格値上げを受け入れざるを得ないのは、供給者の価格交渉力が圧倒的なパワーを持っているからに他なりません。鉄の代替品というものは考えにくく、また巨大な設備投資が必要なため新規参入もほぼ考えられないですが、それにも関わらず原料の値上げをすんなりと製品価格に転嫁できないのは、自動車業界に代表される購入者が強大な価格交渉力を持っているがためです。余談ですが、一月ほど前に新日鉄が企業理念を制定したとの報道がありましたが、同社サイトで見ても企業理念の中に「顧客」という言葉は登場しません。一般的に、きれいごととはいえ企業理念にはカスタマーを登場させるものですが、そうでないところに、この業界の事情を推察せざるを得ません。
それに比べて石油元売のガソリン価格の値上げの速やかさといったら、鉄鋼業界とは比べ物になりません。こうなってしまうのは、購入者であるガソリンスタンドが全く価格交渉力を持たないからです。石油元売は原料の値上げをほぼ100%製品価格に転嫁していると考えられるため、業績予測も行いやすく、同記事は下記の過去エントリーをご参照下さい。

サルにもできた!石油元売の業績予測

一方で、ガソリンスタンドが販売価格にすんなりと転嫁できないのは、新規参入が比較的容易で、かつ、業界内の競争が激しいからに他なりません。
個人投資家として株式投資を行う際の視点としても、個別企業のみならず、こうした業界の分析を行うことは重要で、その際の考える視点がポーターの5フォースモデルになりますので、活用してみて下さい。

【本日のソニーも・・・】
ソニーの業績見通しの下方修正の報道が本日の日経一面にありましたが、主因はエレクトロニクス部門の不振とのことです。このエレクトロニクス部門の不振は、新聞報道にあるように、ブランド・バリューの低下、製品開発力といった、個別企業の努力の観点から分析されねばなりませんが、先程の記述から関連させれば、このエレクトロニクス業界というのは競争が激しい業界であるということが、遠因であるといえるでしょう。携帯型オーディオといった分野にアップルが新規参入してきたり、松下・シャープらとの既存競合との競争も激しく、また量販店を物色して回る我々消費者が顧客であり、こうした要因から、この業界の競争が激しくなってきています。

Posted by Ken Kodama at 10:02 | Comments (0)

2005年01月19日

製造業のトレーサビリティー

日産自動車が、自動車部品の詳細なトレーサビリティーを世界で展開するとの報道です。食品がらみで、トレーサビリティ(追跡可能性)という言葉自体はお茶の間まで浸透した感がありますが、製造業で部品単位のトレーサビリティを展開するというのは、私には初耳です。このシステムによるメリットですが、日経新聞一面には以下の記述があります。

(引用始)
『新システムではリコール実施の際に該当車種を探し出し、確実な部品交換が容易になる。不具合の発見された部品だけを交換することもでき、対策コストを最小限に抑えられる利点もある。製造物責任の所在を明確にできる。また消費者が今月からフロン類など三点の処理費用を負担している自動車リサイクル法の対象範囲が今後広がった場合、部品の素材が分別しやすい。他の製造業にも波及する可能性がある。』
(引用終)

最大の金銭的メリットはリコールコストの最小化でしょうが、その他非定量的なメリットとして、消費者からの信頼性の向上等も期待できるでしょう。システム導入コストを除けば、このシステムからのデメリットは考えられず、昨今の潮流から考えると、上記に引用した文末にもあるとおり、「他の製造業に広がる可能性」というのは、私は必至であると思います。
トレーサビリティという概念自体については、アカウンティングに深く関わってきたため、私には馴染みが深い概念ですが、その体験から、今後トレーサビリティ・システムの導入を考える製造業者にアドバイスを申し上げるとすると、シンプルですが、「まず導入の目的を明確にすること」が最も大切な心構えです。
「トレーサビリティ」というものを考え始めると、完璧主義的思考に陥りやすく、「全て追跡可能に」を目指してしまうことがよくあります。しかし、「なんのためにトレーサビリティを導入するのか」ということを最初に明確にしておけば、導入コストを最小限に抑えることが可能です。例えば、日産の例で言えば、リコールコストを最小限に抑えることが主目的なのですから、車内のカップホルダー等に履歴番号を付与することは無意味といえます。
次に大切なことは、「トレーサビリティ・システムに基づいてアクションをとれる体制を整える」ことです。システム導入により問題のある工程が特定できるのか、その工程を改善することは可能なのか、そうしたアクションを取ることができないのであれば、システム導入の効果は激減してしまいます。
第三のポイントはトレーサビリティ・システムを使用するユーザーのトレーニングを徹底的に行い、ユーザーへの啓蒙をきちんと行うという点です。若干、本日の報道とは話がずれますが、以前、管理会計目的で経費を伝票レベルまでさかのぼることができる簡易なアプリを作成したことがあるのですが、システム・ユーザーへの啓蒙・教育が不徹底であったため、システムがほとんど使用されない、といった経験を昔したことがあります。導入効果をフルに発揮するには、ユーザー教育が不可欠です。
色々書きましたが、一消費者の視点からすれば歓迎すべき動きで、こうした動きが広まっていくことを期待したいと思います。

Posted by Ken Kodama at 16:17 | Comments (0)

2005年01月18日

フジテレビ、ニッポン放送をTOBで子会社化

標題の報道の概要は、皆様ご存知のことかと思います。以下の二面から、私なりにこの問題を考えてみました。

【村上氏側の論理】
村上氏の行動は私から見れば至極単純で、「割安と考えられる株を大量に買い込んで高く売る」という投資の王道を歩んでいるに他なりません。ここで「割安」の判断の根拠ですが、日経新聞にも書かれていたとおり、『ニッポン放送が保有するフジテレビ株の時価総額だけでニッポン放送の時価総額を上回るといういびつな状態(引用)』という、分かりやすいものですが、これを一般化すると、村上氏のアプローチはB/S(資産と負債)に着目して理論株価を算定していた、ということができるでしょう。理論株価の算定にあたってもう一つの代表的なアプローチは、将来のフローに着目する方法で、DCF法がその代表といえるでしょう。(DCF法等の詳細については、私の発行するメールマガジンをご参照下さい。)将来のフローに着目した理論株価の方が、B/Sに着目した理論株価に比べて高くなることが一般的で、村上氏の投資手法は、その点だけを取り上げれば「控え目」な理論株価に基づいたものといえるでしょう。同じような例としては、ソフトバンクが数年前下落を続けていたときに、保有するヤフー株に基づいた理論株価が議論されていたことを思い出します。
ただ、一つ、我々零細個人投資家にマネができないのは、村上氏の投資ファンドは、筆頭株主となって(おそらく)経営陣に圧力をかけて、価値の顕在化を迫るという手法を取るという点です。個人投資家にはこのようなマネはできませんから、割安と思われる株を購入した場合でも、たとえ割安と判断した根拠が正しかろうと、割安のままで終わってしまうという可能性もあります。

【フジテレビの株価について考える】
さて、TOB実施後のフジテレビ株について考えてみましょう。フジテレビ株については、2つの側面から非常にリスクが高くなる、すなわち利益のブレが大きくなるということが確実にいえます。2つの側面の一つは財務構造で、TOBの資金を借入とCBで賄うために他人資本が増加するのと同時に、ニッポン放送の株取得は実質的に自社株買いでもあるため自己資本が減少し、財務構造が不安定になります。もう一点目は、ニッポン放送の収益とフジテレビの収益は共に広告収入であるという点で、好不況の波から受けるインパクトがこれまで以上に大きくなります。
このようにリスクの高まりは明確に認識することができるのですが、肝心のリターンをどうやって高めていくのか、という点が現段階では全く見えてきません。そもそも、ハイリターンの青写真もなく、自らハイリスクに転じてしまうというのもおかしな話ですが、後づけにせよ、リスクに見合ったリターンのプランを提示できないようでは、株主に対する責任を果たしているとはいえないでしょう。

Posted by Ken Kodama at 10:52 | Comments (0)

2005年01月17日

ダイエー病? 実績値経営の落とし穴

本日の日経新聞朝刊9ページの「経営の視点」と題したコラムの以下の記述が私の目を引きました。

(引用始)
『「今は消化試合。頑張るのは新体制から」。再生機構入りが固まった昨年十月以降も既存店のの売上高は前年実績を下回り、下落幅は同業より大きい。水準を落としておけば新体制時に改善度合いを強調できる読みがある。「ダイエー病」だ。この企業風土を引きずる限り再生はおぼつかない。』
(引用終)

小売業界では、その経営の力を測るのに際して、売上高や粗利益の前年同月比が非常に重視されています。上場小売業者の月次や四半期次の情報開示において、最も注目を浴びるのは、やはり、売上高、そして客数・客単価の前年同月比です。外から注目を浴びるのがこれらの指標なのですから、内部管理においてもやはり売上高等の実績値の前年同月比が重視されてくるわけです。
実績値の前年同月比を重視した場合に起こりうる典型的な問題例が日経新聞の上記の引用の箇所です。すなわち、前年度水準に達成することが不可能と判明するや、それならばと開き直って、今年度は徹底的に数字を悪くして、翌年度の劇的なV字回復の演出に回ろうとする行動が見られるようになり、これは「ダイエー」だけの企業風土病などではなく、経営管理の仕組みに起因するものです。
こうした弊害を減ずるのが計画値による経営で、前年同月の実績だけではなく、今年度達成すべき合理的に見積もられた計画値と本年度の実績を対比させて経営を行うことにより、上記のようなサボタージュは無力化します。
計画は年間の計画値から月次、そして週レベルまでブレークダウンして作成することが望ましいといえます。そして、週の実績が計画に満たなければ翌週以降のハードルを高くし、月次が満たなければ翌月以降のハードルを高くし・・・という具合にあくまでも年間の目標を達成するように、小刻みに状況に応じて目標値を改訂していくことが肝要で、そうすれば年間の目標の達成が近くなるだけでなく、さぼれば年後半きつくなってしまうわけですから、やはりサボタージュを抑制できます。
ダイエーの問題点は様々なマスコミで指摘されていますが、その多くの部分は固有企業の問題ではなく、日本の小売業に共通の問題であるはずです。ダイエー問題を我が身に置き換え、自社の経営課題をあぶりだす機会とすべきではないでしょうか。

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2005年01月14日

キャノンの情報漏えい防止システム

キヤノンが、企業機密や個人情報の漏えい防止に対応した情報管理システムを開発したとの報道です。以下にシステムの概要につき、NIKKEI NETから引用しましたのでご参照下さい。

(引用始)
『デジタル複合機(多機能複写機)やプリンターで入出力する文書の内容を監視、「いつ」「誰が」「どの機器」から入出力したかを確認できる。新システムは、企業が顧客情報などの管理に使うサーバーとプリンターやデジタル複合機などを接続したネットワーク全体を監視する。社員がコピーしたり印刷した文書の内容をサーバーで読み込み、終業時間後に検索。「機密文書」「顧客名簿」など企業があらかじめ指定したキーワードを含む文書がコピーや印刷、ファクスされていたことを検知すると、サーバーがシステム管理者に通知する。』
(引用終)

この報道については、以下の2つの側面から興味深いと思いました。

【①OA機器メーカーのネットワークソリューションへの進出】
本日、日経紙面にて、この記事を読んだとき、最初に頭に浮かんだのが、当サイト11月9日付けのエントリーです。リコーと富士通研究所が共同でナレッジマネジメントシステム開発したとの報道をベースにしたエントリーで、このときはリコーが絡むことにあまりピンとこなかったのですが、本日のキャノンの報道と合わせると、OA機器メーカーが本気でネットワークソリューション分野への進出を目論んでいることが伺えます。キャノン、リコーといった大手メーカーが買収等により、この分野に本格進出してくる可能性も全くは否定できないでしょう。今後の動きに注目していきたいところです。

【②性悪説にたつ個人情報保護の取り組み】
従業員重視の日本的経営はどこへ行ってしまったのやら、最近の個人情報保護の波を受けて、従業員の性悪説にたった取り組みが目立つようになりました。当サイトでもとりあげた同趣旨のエントリーは、下記の2件がありました。

PCメーカーがPCを使わないという衝撃

監視されるソフトバンクBBの従業員

アメリカ企業の内部統制システムは職務分掌等が昔から整備されており、そうした意味では、日本企業も米国に近づいているいえるのかもしれません。ただ、こうした動きを急速に強めると従業員の閉塞感が必要以上に増加してしまう可能性もあるため、人事部主導による「心のケア」的な施策も必要となることでしょう。

Posted by Ken Kodama at 16:08 | Comments (0)

2005年01月12日

発明報奨

昨日の日亜化学と中村氏の和解の報道とタイミングをほぼ同じくして、日立が発明報奨制度を刷新したとの報道が本日の日経一面を飾りました。
まず、この一連の流れに思うところですが、中村氏らの、お世話になった会社を訴える動きに眉をしかめる方も少なくないですが、これらの人々がこうした動きに出なければ、特許法の改正も日立の制度改革の動きも恐らくなかったか、タイミングが遅れていたことでしょう。技術者の報奨が適正とはいいがたかったことが主因で、優秀な理系学生がインセンティブの厚い金融業界に流れてしまい、そのことによる社会的な損失は計り知れないと思います。企業内の技術者の正当な権利というものに、社会全体の目を向けさせたという点で、中村氏らの動きは評価されるべきだと思います。
次に日立の新制度の概要ですが、「(1)発明報奨の裁定委員会の設置(2)発明者への報奨内容の具体的な開示(3)報奨上位者の社内公表(引用)」の3つを柱としているとありますが、これは特許庁の以下のガイドラインに忠実に従ったものとなっています。

新職務発明制度における手続事例集

技術力をコアコンピタンスとする企業にとっては避けることのできない文書ですので、関連企業の方は上記リンクよりご覧いただきたいと思います。
また、「相当な対価」の算定の問題ですが、日立の場合のベースは新聞で見る限り「売上高」が主ファクターで、日亜の和解額も、下記の記述を見る限り、売上高が算定のベースとなっています。

(引用始)
『今回の和解では日亜の青色LED関連売上高の五割が中村氏が関与した発明によるものとし、他者にライセンス供与したと仮定した場合に得られるロイヤリティー収入を算定。「売上の3.5~5%」と計算した』
(引用終)

金額算定のベースに売上高をもってくるのは、わかりやすさという点ではダントツですが、企業価値の評価で使われるDCF法、リアル・オプション法等が知的財産の評価という分野にも進出してきていることも事実で、それらの手法を用いた方が合理的である、というケースも当然ありえます。
そうした評価の手法の複雑さ等も考慮に入れると、発明報奨の制度改革は、研究開発部門、知的財産を管轄する法務部門、人事・労務部門に加えて、財務部門の担当者も加えたプロジェクト・チームを編成した上で、取り組むことが望ましいかと思われます。

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2005年01月11日

待望のリバース・モーゲージ登場

中央三井信託銀行と三井住友海上火災保険がタッグを組んで、リバース・モーゲージ商品の取り扱いを3月から始めるという報道です。まず、リバース・モーゲージとは何であるかということですが、「リバース」が逆を意味するという点についてはよいかと思われますが、何の逆であるかといえば、我々が住宅を購入する際に利用する住宅ローンの逆であると思って下さい。どちらも持ち家を担保にして融資を受けるという点は同じですが、住宅ローンは一括で融資を受け分割で返済をするのに対し、リバース・モーゲージは分割で融資を受け一括で返済するという具合に、キャッシュフローのパターンが全く逆になります。したがって、融資を受ける目的が全く異なり、普通の住宅ローンの目的は住宅購入が目的ですが、リバース・モーゲージでは老後の生活資金の補填が主目的となります。
新聞によれば、80年代も同様の民間の商品が存在したようですが、若い私は知る由もなく、最近では武蔵野市を代表とする一部の地方公共団体が提供するのみだったのですが、それを中央三井が再び商品化したため「待望」とタイトルにつけたわけです。中央三井信託の商品を当サイトで取り上げたことは2回あり、いずれも高齢者をターゲットとしたものであり、高齢者のニーズをよく考えた上で商品化しており、高く評価したいと思います。以下は私のサイトの過去のエントリーへのリンクですのでご参照下さい。

難民への遺産寄付と高齢者の生きがい

痴呆後も運用を継続する信託

高齢者のニーズをつかんでいることもさることながら、自行のリスク管理に対して配慮した商品設計になっている点も高く評価したいと思います。具体的に言えば、融資額に上限が付されている点です。融資を受ける高齢者側にしてみれば、自分はまだまだ生きていけるのに、公的年金を補完するリバース・モーゲージによる融資が途中でストップしてしまうことは大いなる不安ですが、それを三井住友海上きらめき生命保険の提供する終身年金で補おうというわけで、融資は銀行、保険は生保と、「餅は餅屋」のアライアンスを組んで商品提供をしている点に好感が持てます。
難点はといえば、現段階での対象を富裕層に限定している点で、「住宅の土地の担保評価が一億円以上となるのが条件(引用)」といわれてしまうと、本当にこの商品を必要としている層には手が届かなくなってしまいます。「その後に対象を拡大することも視野に入れる(引用)」とありますので、この条件が緩和されることを期待したいと思います。
もう一つ気にかかる点は以下の記述です。

(引用始)
「融資の返済に際しては、同居する配偶者がいる場合には二年間の猶予期間を設ける。」
(引用終)

新聞記事のみが情報で詳しい商品説明がない現時点でははっきりとはいえませんが、上記の記述をそのまま読む限りでは、夫名義で融資を受け、夫に先立たれてしまった妻は、夫の死後二年間の間に返済のために持ち家を手放さざるを得ない、といった悲惨なケースが想定されます。夫婦での利用を妨げかねないため、商品設計上のもう一段の工夫をお願いしたいものです。

Posted by Ken Kodama at 11:23 | Comments (0)

2005年01月07日

ブリヂストン 「自社株買い、後、借入」は是か非か

ブリヂストンが中国と東欧に工場を新設するとの報道です。本日は、この財務面での手当てのみにつき着目しますが、新聞記事によれば「投資額は計500億円を超える見込み(引用)」であり、「投資は主に自己資金のほか金融機関からの借入金で賄う(引用)」との記述があります。実は、ブリヂストンは昨年、ほぼ同額の500億円近くの自社株買いを実施しています。今年、500億円が工場新設のために必要となるのに、昨年、500億円を自社株買いで手元資金を取り崩している・・・これは財務部長と事業部長のコミュニケーションが疎遠であったためなのでしょうか?もちろん、そのようなことはなく、財務理論的に見ても、ブリヂストンの財務戦略は正しく、以下に2つの観点から検証してみたいと思います。

【企業価値の視点】
当サイトで何度となく登場した計算式ですが、企業価値に関する考え方を集約した計算式を以下に再掲致します。

事業価値 + 非事業用資産の価値 = 企業価値 = 負債価値 + 株主価値

さて、自社株買いのために取り崩した手元資金は余剰資金であったため、非事業用資産と考えられ、500億円の自社株買いを実施することにより、左辺からは「非事業用資産の価値」が500億円減少し、右辺からは株主価値が500億円減少します。
さて、工場建設のために500億円が必要となるわけですが、全額を借入により賄うと考えてみましょう。結論から言うと、企業価値の増加額は2つの理由により、500億円以上に増加します。第一の理由は、この資金は工場建設のための資金であるため、事業用の資産となり、寝ている資金ではなく、事業計画によって命を吹き込まれた資金です。工場稼動が成功するとの前提条件がありますが、それがクリアできれば、企業価値は500億円にプラスα分だけ増加するはずです。第二の理由は、負債の節税効果によるものです。利払いは法人税計算上損金に参入できるため、その節税効果分だけ企業価値は高まります。そして、両者の増分は株主に帰属するため、株主価値を高める経営をしているといえるでしょう。

【個々の株主レベルで見た場合】
先ほどは、企業全体で検討しましたが、今度は個々の株主レベルでみてみましょう。自社株買いを行うことは、個々の株主の取り分の増加を意味します。スイカを八等分するところを、4人いなくなれば、四等分の分け前に預かれる、というイメージです。先ほどみた、事業価値による増分及び負債の節税効果による増分を、より少ない株主の間で分配しあうこととなるため、株主にとっては悪いわけがありません。

【その他考慮すべき事項】
「賢明なる投資家」であるためには、ブリヂストンへの投資を考えるにあたっては、以下の事項も考慮せねばなりません。
● 自社株買い実施の価格水準は妥当であったか?
● 財務レバレッジが働く条件は整っているか?
● 安全性の見地からは問題がないか?
上記の論点については、私の発行するメルマガの10月、11月のコンテンツであるため、ご興味のある方はバックナンバーをお求め下さい。

あと、これはかなり乱暴かつ危険な発言として受け止めていただきたいのですが、最近、投資案件の資金を借入や普通社債(転換社債ではありません!!)により賄おうとしている企業は、株主価値を重視した経営を行っていることが多い感があります。もちろん、投資対象企業の分析をしっかりと行う必要はありますが、投資対象をスクリーニングする上で、多少参考になるかもしれません。

Posted by Ken Kodama at 10:31 | Comments (0)

2005年01月06日

復活!松下銀行

本日はトップのトヨタのロボットの活用とどちらを選ぶか悩みましたが、同様のエントリーをキャノンの生産無人化にて書いているため、松下の純金融資産が1兆円を超えたとの報道を下にしたエントリーを書きたいと思います。
さて、純金融資産の定義ですが、日経新聞の記述を引用すると『現金・預金を中心とした手元資金から有利子負債を引いた額』とあり、借金を今完済したとしても、なお1兆円の現金が松下電産の手元に残るということです。これは、赤字に転落した松下がキャッシュフロー経営を推進してきた努力の成果といえるでしょう。
キャッシュフロー経営の利点を否定するつもりは毛頭ありませんが、逆に、キャッシュフローのみを信奉してきた場合の落とし穴にも触れねばなりません。よく「利益はフィクションであり、キャッシュは客観的な事実」などといわれ、経理部長の手腕で恣意的に動かせる利益は、アナリスト等からは敬遠されがちです。しかし、穿った見方をすれば、キャッシュフロー経営をあまりにも邁進しすぎた場合、数字のお化粧の担い手が、経理部長から事業部長に移っただけ、ともいうことができます。大規模な企業でキャッシュフローを重視する企業は、おそらく営業CFと投資CFを合計したフリーキャッシュフローに(FCF)ついて、事業部長に責任を負わせているはずです。年度末にFCFが目標値に達しないと予想する事業部長が何をするかといえば、在庫を減らすか必要な投資を手控えるかのいずれかでしょう。つまり、将来の成長を犠牲にすれば、いとも容易くFCFの目標はクリアできるわけです。
苦境にある企業がキャッシュフローの改善を第一の目標に掲げるのは至極正しい行動です。しかし、松下の場合、純金融資産が1兆円を突破した今では、新たな経営指標を目標に掲げて経営を行うべきでしょう。現金は最も収益を生まない資産の運用形態といえます。株主を重視するのであれば、そろそろこの現金を使った成長の青写真を出していかねば、株主に対する責任を果たしているとはいえないでしょう。
現金収支が改善し足元が固まった今、松下は企業価値、株主価値の向上を更に邁進すべきで、私であればその管理指標としてEVAの使用を進言いたします。残念ながらEVAについて本日述べる時間的余裕はありませんが、タイミングがあえば、当サイトで取り上げたいと思います。また、私の発行する個人投資家のためのメールマガジンでは、現在、DCF法を中心とした企業価値の評価の説明を行っており、数ヶ月先のことになると思いますが、EVA、MVAの概念等についても段階を追って説明していくつもりですので、ご興味のある方はご購読下さい。

Posted by Ken Kodama at 10:36 | Comments (0)

2005年01月05日

本腰を入れてパソコンに取り組むNEC

NECが家電量販店にパソコンを即納できる体制を整えたとの報道です。以下にNIKKEI NETの記事を引用させていただきます。

(引用始)
『現在は週1回だけの店頭への在庫補充を毎日実施する新方式に切り替える。2006年3月末までに全面的に移行し、企業ごとの受発注も店舗ごとに細分化。きめ細かなやり取りで量販店の在庫を半分以下にし、新製品発売時に起きる旧製品の値崩れを防ぎやすくする。全面移行後は年100億円規模のコスト削減を見込む。パソコンで国内シェア首位のNECの取り組みは他社も追随する可能性が高い。』
(引用終)

改めて、私なりに要約させていただくと、販売店への補充のタイミングを週1回から毎日に切り替えることで、販売店の在庫を圧縮し、新製品への切り替えのタイミングの値崩れを防ぐことが狙いです。一見、運営上の問題の改善にしか見えないかもしれませんが、私にはこの記事より、NECがパソコンビジネスに本腰を入れ始めた姿勢が伺えます。
NIKKEI NETの記事では背後の最も重要なポイントが書かれていませんが、日経新聞上に記述があるように、このような日次の補充が可能となったのは、生産が受注生産から見込生産に切り替えられたためです。まだ注文を受けていないパソコンをNECは作ることになるわけですから、当然NECにおける在庫リスクは高まります。
パソコン組立に強みを持つデルは、全て受注生産により在庫を極限まで減らし、そのことによりコスト的に他社を圧倒しましたが、今回のNECの動きはこの方向性に逆行するようにも見えます。NECの志向するところは、量販店もパートナーであると考えた上での全体最適なのでしょう。デルの場合は直販が主流であるがため受注生産が有効ですが、他社のチャネルに販売を依存するようなケースでは、このような試みが有効なのかもしれません。
パソコンから撤退してしまったIBM、個人向け販売に本腰を入れるNEC、法人向けには(おそらく)ネットワーク端末を主軸にしようとする日立。さあ、明確な方針を打ち出していない他社はどのような戦略を採るのでしょうか?

Posted by Ken Kodama at 11:57 | Comments (0)

2005年01月04日

「大金持ち」は飛行機を買って節税する。

日本版LLPに関する報道が、再び日経新聞1面を飾りました。日本版LLC自体については、当サイトの12月9日のエントリーで触れましたので、詳細は割愛しますが、本日新聞報道の下記の記述を読む限り、あとは税制の詰めだけという感がします。

(引用始)
『ただ、経営に全く関与せずに投資目的だけでLLPの事業に出資するのは、課税逃れにつながるとして認めない。税務上の取り扱いの詳細については今後、財務省と改めて詰める段取りだ。』
(引用終)

上記の財務省の心配は杞憂などではなく、過去に任意組合を使った租税回避の金融商品が大金持ちに向けて販売されていたことを受けてのものです。これは昨年の文芸春秋の記事にも取り上げられ、私も読んだ記憶があります。(私の文芸春秋購買の目的はおそらく皇室ネタだったと思いますが・・・)
当サイトをご覧いただいているほとんどの方は、この租税回避金融商品の恩恵に与れるほどの資産家ではないと思いますが、話のネタに面白いと思うので、野村バブコックが販売したという商品の概要をご説明したいと思います。読売オンラインにも図が入った記事がありますので、あわせてご参照下さい。

【租税回避金融商品のスキーム】
まず、野村バブコックが資産家を集め、任意組合を設立します。なぜ、株式会社や有限会社でなく、任意組合かといえば、任意組合の所得は個人の所得と通算できるからです。これが、いわゆるパススルー課税のことで、厳密さを欠いた表現をすれば(いつものことですが)、パススルー課税と有限責任を抱き合わせにしたものが、日本版LLPといえます。
さて、この任意組合は何をするかといえば、さすが資産家の任意組合ですから、航空機を買い付けます。そして、これを航空会社にリースするのです。ここで会計理論の登場ですが、組合の資産である航空機の減価償却は定率法で行われます。つまり、最初の方が費用が大きくなるわけです。対して、リース料はリース期間を通じて定額であるため、リース期間の最初のうちは、任意組合に大損が出ることになり、これを個人の所得と通算して、所得税を軽減しようとするのが、このスキームの趣旨なのです。しかし、上記読売オンライン記事によれば、「著名な経済評論家を含む」資産家側も追徴課税された模様です。
確かに、こうした動きに目をつむったままで、「定率減税廃止」などといわれても、全く説得力がありません。また、この金融商品のスキームは野村「バブコック」や「航空機リース」といったキーワードが我々の目を幻惑させますが、その仕組みの基本は、所得税の基本と会計の基本を足し合わせたにすぎません。マネーリテラシーのないものが馬鹿を見る時代です。本業のお仕事にお忙しい皆様は、是非ファイナンシャルプランナーと呼ばれる人々をご活用下さい。

なお、本日のエントリーの内容を記述した論文を見つけましたので、ご参照下さい。

租税回避行為の否認のあり方について
(任意組合等を利用した租税回避スキームを中心として)

Posted by Ken Kodama at 11:50 | Comments (0)

2005年01月03日

PCメーカーがPCを使わないという衝撃

当サイトにお越しの皆様へ

明けましておめでとうございます。本年も昨年同様、日経新聞のニュースを主なソースとした、レビュー・解説記事を主体としたサイトを運営していく所存です。仕事を開始する前、仕事中の息抜きに、当サイトをご覧いただければ幸いです。

さて、年始早々衝撃の報道が日経1面を飾りました。

(引用始)
『日立製作所グループは社員が業務で利用するパソコン約30万台を全廃し、情報漏えい防止型のネットワーク端末に切り替える。新端末は内部に情報を一切保存できず、盗み出されても顧客情報や製品開発情報などが流出する危険がない。機密情報の流出防止が企業共通の課題に浮上するなか、パソコンメーカーでもある日立のパソコン全廃は、企業の情報システムのあり方を大きく変えそうだ。』
(引用終)

PCメーカーがPCを利用しない方針を固めるという報道は衝撃的ですが、同社の動きは、これから同社が外販を開始するというネットワーク端末の販売のための、体を張ったマーケティング活動と見ることもできます。

【PC業界へのインパクト】
IBMのPC事業の売却と合わせ、日立のこの動きがPC業界の再編を加速させる可能性があります。私が改めてここで述べるまでもなく、PC業界はユーザーの低価格志向と、インテル・マイクロソフトといった圧倒的な力を持つサプライヤーの板ばさみになり、デルのように組み立てのプロセス自体によほどの強みを持たない限り、全くうまみのないビジネスと化してしまっているのが現状です。ここで、ネットワーク端末とは、日経新聞の「きょうのことば」欄によれば、HDDはおろかCPUすら持たない端末ということなので、ネットワーク端末の組立製造ビジネスにおいては、少なくとも、サプライヤーの価格支配力から免れることが可能となります。
この報道は、あくまでも日立社内でのPC利用の全廃であり、消費者向け・法人向けのPC製造を中止する旨の記述は全くありませんが、近い将来、少なくとも法人向けには、「ネットワーク端末 + サーバー」の売り込みを主軸に据えようとの目算があるはずで、また、仮にそうした目算もなくこうした動きに出たとすれば、軽率な感がします。私個人の根拠のない推測ですが、PC組立業界の将来像は、今年から来年の業界の出方にかかっている気がいたします。

【ユーザー企業のメリット・デメリット】
さて、ユーザー企業がPCからネットワーク端末にインターフェースを置換した際、どのようなメリット・デメリットが生ずるのでしょうか?私が思いつく限り、以下に列挙してみました。

<メリット>
①情報漏えいのリスク軽減
日立のPC利用全廃の最大の動機はここにあるようです。まず、端末内にデータが蓄積されないわけですから、ノートPCの盗難等に起因する、情報漏えいを防止することが可能です。また、CPUすら持たない端末なのですから、例えば、社内の共有ドライブ等で、「給与」や「査定」と名のつくファイルを検索しようものなら(このサイトの読者の皆様はこんなことしてないと信じていますが・・・)、それは本社のサーバーに記憶され、「不自然な操作」と認識され、「瞬時に拒絶」されてしまうはずです。つまり、物理的・心理的な作用から情報漏えいリスクが軽減されるわけです。
②ランニングコストの軽減
新聞には「パソコン利用に比べ、システム管理費や整備費を三割削減できる」との記述があります。クライアント・サーバ・タイプのシステムを構築すると、クライアント上にインストールされたシステムのバージョン管理等の追加のランニングコストが発生しますが、懐かしき集中管理に逆行することにより、こうしたコストは不要となります。

<デメリット>
①かなり高額なイニシャルコスト
新聞には「システム導入コストは一万台の場合でサーバーや通信インフラ増強を含めて総額約二十億円」との記述があり、切り替えには、かなり高額なイニシャルコストを覚悟せねばなりません。
②レスポンス低下を主因とする生産性の低下
例えば、我々が普段何気なく表計算ソフト上で行うコピーペーストのような処理も、本社のサーバー上で処理せねばならないのだとしたら、レスポンスの低下は甚大なはずで、それに伴い、利用者の生産性の低下が大きな問題となるはずです。また、どんな先進的な企業でも社内のネットワークのトラブルはつき物で、ネットワークが不安定なときに、自分の端末上にデータが保存できないとなると、データ修復のためにやはり生産性は低下するはずですし、そうしたバックアップをサーバ上で行うのであれば、サーバの増強のための出費はばかにならないはずです。

繰り返しになりますが、これは単なる一企業の動きではなく、PCメーカーの動きなのですから、かなり大きな賭けに出たという感がします。日立の今後の動きに注目していきたいと思います。

Posted by Ken Kodama at 14:39 | Comments (0)