2005年04月28日

合併会計

本日は久しぶりに会計ネタです。まずは、以下のNIKKEI NETの記事をご一読下さい。

(引用始)
『欧州連合(EU)の証券規制委員会は27日夜、EU市場に上場する日本企業に対し、2007年から追加的な決算情報の開示を義務付けるよう求める中間報告を正式発表した。企業の合併・買収にかかわる会計処理などで日本基準と欧州企業の利用する国際会計基準に違いが大きいと判断したため。』
(引用終)

企業が合併するときの会計処理には①持分プーリング法②パーチェス法の2種類があり、国際的な潮流はパーチェス法に統一されているのですが、日本では例外的に持分プーリング法を使用することが認められており、この点が日本人以外が日本で作成された財務諸表を投資判断の材料とするときに、比較可能を困難たらしめる要因です。
ここで、簡単に両者を説明しておきましょう。持分プーリング法は、会計を少しかじった方にはとっつきやすい方法です。基本的には合併する二社のB/Sを足し合わせればいいだけです。対して、パーチェス法では、合併において主導権をとっている方と、そうでない方をまず明確に識別することからはじめ、合併の主導権をとっている会社が、もう一方の会社を時価で買い付ける、という想定で両者の財務諸表を合体させる方法がパーチェス法なのです。
なぜ、日本では持分プーリング法を温存させているのか?EUの証券規制委員会のサイト内を検索していたところ、この疑問に対し、日本の会計基準委員会からのオフィシャルな回答をみつけたので、以下に引用し、拙訳を併記します。

(引用始)
『However, there have been limited situations where no party obtains control over the other upon business combinations and thus shareholders' interests in entities are not discontinued thereon. In such a case, it is considered that the pooling-of-interest method more reflects the economic substances and avoids an arbitrary treatment to determine which entity acquires the others.』
(引用終)

(拙訳始)
『しかしながら、これまでにも、限られた状況において、合併する両社いずれもが主導権をとらず、したがって株主の利益が中断することがない状況が存在しました。このような場合においては、持分プーリング法が経済的な実質をよりよく反映するのであり、どちらの会社が他方を買収するという恣意的な判断を回避することができるのです。』
(拙訳終)

私は日本の会計の専門家が出した、上記の回答を論駁する意思も能力もありません。しかし、会計基準というのはそもそも、異なる会社の経済的実質を比較可能にするためのルールであり、日本がグローバル・スタンダードと異質なルールに固執すれば、グローバルなレベルでの企業の比較可能性が阻害されることは明確で、会計基準が異なるがために、日本への投資マネーの流入が制限されている可能性すらあると思います。いっそ、今までの日本の会計基準を捨てて、国際会計基準に乗り換えるくらいの思い切りの良さがあってもいいと思うのですが、ここまで言うと言いすぎですかね(^_^;)

Posted by Ken Kodama at 17:53 | Comments (0)

2005年04月27日

「リスク・アービトラージ」ってご存知ですか?

さて、本日は先日いじったイトーヨーカ堂を、別の角度からいじってみたいと思います。イトーヨーカ堂の開示文書によれば、純粋持株会社の下にぶらさがる三社の株式の交換比率は以下の通りになっています。

イトーヨーカ堂 1.2
セブンイレブン 1.0
デニーズ    0.65

さて、本日の三社の株価の終値ですが、以下の通りとなっています。

イトーヨーカ堂 3,600
セブンイレブン 2,955
デニーズ    1,942

ここで、イトーヨーカ堂を基準に、先ほど交換比率をもとにした、理論株価を計算してみましょう。

イトーヨーカ堂 3,600
セブンイレブン 3,000
デニーズ    1,950

株式投資に馴染みの薄い方は、理論株価と本日の終値がほとんど変わりない水準に落ち着いていることに驚くかもしれません。4月21日のエントリーで書いたように、セブンイレブンとデニーズは、総合スーパーという現時点ではあまり魅力的でない業種のイトーヨーカ堂の株と抱き合わせになってしまう埋め合わせとして、交換比率には2社に対して13%のプレミアムが付されていました。つまり、持株会社移行がアナウンスされた時点では、実際の二社の株価はイトーヨーカ堂との比較において、もう少し低いレベルを推移していたわけですが、本日の終値を見ると、既にプレミアムは消失しています。なぜでしょう?
3社の実際の株価が、交換比率にほぼ一致した価格に落ち着いているのは、主に証券会社のトレーダーの仕業で、彼等は外資系証券であれば、Risk Arbitrage(リスク・アービトラージ)あるいはMerger Arbitrage(マージャー・アービトラージ)と呼ばれるチームに属しているはずです。彼等は会社の合併等がアナウンスされると、合併比率と実際の株価の乖離(かいり)に着目し、割安な方を買って割高な方を空売りするという行動に出ます。なぜなら、いずれ正式に合併して合併会社の株式と交換されれば、アナウンスされた比率通りの株式と交換されるわけですから、反対売買をすることにより、益を確定することができるからです。
このようなトレーダーたちは、純粋持株会社に移行することにより、時価総額が上昇するかどうか、などという株価の絶対的な水準には少しも興味はなく、3社の株価の開き具合、すなわちスプレッドのみに着目し、儲けを得ようとする人々です。そして、こういう人々がいるからこそ、3社の株価の開き具合は、ほぼ理論どおりに推移するわけです。
ですから、もしみなさんが現時点で、純粋持株会社移行により、3社の時価総額が上昇すると予想するならば、3社の内どの会社の株を買おうか、ということに神経質になる必要はありません。心配であれば、先ほどのように理論値を計算し、割安なものを買うように心がければ、少しでも安い買い物になります。
こうした取引は、個人投資家の皆さんに魅力的に見えるかもしれませんが、儲けを得ることは難しいでしょう。まず第一に、売買のタイミングが非常に重要となりますから、デイトレーダーのように専業の方でなければ、お仕事がおろそかになってしまいます。第二に、割高な株をカラ売りするための、株を借りてこなければいけませんが、みんな同じようなことを考えているため、品貸料が値上がりして、儲けが吹っ飛んでしまうかもしれません。大きい証券会社であれば、外から借りてこなくても、内部の他のトレーダー(特に先物と現物株のアービトラージトレーダー)が株を持っている可能性があり、そうした場合、会社内部での品貸料をいくらにするかという問題はありますが、外部に品貸料を払うことなく儲けを確定することができるのです。
スプレッドに着目したアービトラージは個人投資家にはまず無理だと私は考えるのですが、時々、本屋で、「個人でもできる裁定取引(アービトラージのことです)!!!」という類のタイトルの本を見かけます。中身は読んでいないのですが、どんな取引を紹介しているのでしょうね???

Posted by Ken Kodama at 17:13 | Comments (0)

2005年04月26日

日産 ~死角は外に~

日産が5期連続で最高益を更新したとの報道です。あのどん底にあった日産を苦境から救い出し、強い日産をよみがえらせ、更に厳しい目標を設定させて、突き進むゴーン氏の経営手法には、頭が下がるとしかいいようがありません。
しかし、今後の日産に全く不安材料はないのかといえば、全くそのようなことはなく、日産の「外」、すなわち販売網やサプライヤーとの関係構築が日産のアキレス腱になりかねない、ということが本日の新聞記事から見て取ることができます。
本日の11ページには「日産バリュープラン」の内容の変化が表にまとめられていますが、私が着目するのは投下資本(資産)利益率(ROIC)を20%に据え置いている、という点です。2004年4月の当初発表時から今に至るまでには、資源インフレという大きな外部環境の変化がありました。これは言うまでもなく日産のとってのコスト上昇要因ですが、そのような大きなコスト上昇がある中でROICを昨年と同一に保つには、どこかで埋め合わせをせねばなりません。日産はどこで埋め合わせているかと言えば、本日の新聞報道の記述のみから判断すれば、それは部品メーカーでのコスト削減で、関連部分を以下に引用します。

(引用始)
『部品メーカーに対し2004年度比12%プラスアルファのコスト削減目標を設定した。しかし部品メーカーからは「コスト削減分を日産と部品メーカーでどう分け合うのか明確でない」との声も漏れる。』
(引用終)

これは私の印象ですが、ゴーン氏は株主・顧客(エンドユーザー)というステークホルダーを重視することは鮮明にしているものの、サプライヤーや販売チャネルといったビジネスに不可欠な協力会社への配慮が不足している感があります。販社の実質的な統合によって、『販売台数は伸びたものの、「一台当たりの利益は大幅に減った」(引用)』とあり、チャネル・コンフリクトの緩和に対し、どう臨もうとしているのかも新聞報道からは、はっきりしません。
ライバルのトヨタの最大の強みが、サプライヤーとの長期的な良好な関係構築にある以上、この部分を本腰を入れて考えないことには、逆風下での更なる成長を継続するのは難しいと私は思います。ルノーとの「ウィンウィンの関係を深める(引用)」前に、まず協力会社とのウィンウィンの関係構築することが、先決事項なのではないでしょうか。

Posted by Ken Kodama at 11:03 | Comments (0)

2005年04月25日

決算情報と行動ファイナンス

本日の本題に入る前に、先週発売の『週刊新潮』をお読みになった方はいらっしゃるでしょうか?コンビニで立ち読みさせていただいたところ、「ホリエモン騒動で損をしたのは誰か」という類の記事が私の4月19日のエントリーの内容と酷似していたことに驚きました。(私の書いた日は新潮の発売前なので、私の盗作ではありませんよ!)また、私が参加させていただいている中小企業診断士による「診断士FP研究会」にて、持ち回りで講師を務めさせていただいた際の講義録と見まがうような内容のコラムが、4月3日付けの日経新聞(株式分割)と昨日の日経新聞(MSCB)に掲載されたことにも、大きく驚かされました。
もちろん、ニュースのソースとして私のブログが他に先んじることは今後もありえませんが、一連の事象のまとめ方・解釈の仕方という点においては、当ブログが他を一歩リードしている点は否定できないと思います。・・・まあ、早い話、自画自賛なのですが、今後も意味のあるコンテンツをいち早くお届けすべく、更新を頑張っていきたいと思います。

【決算発表と市場の反応】
本日のテーマは昨日の日経新聞のマネー入門に関わるものです。このコラムは、とっつきやすくしようとするための無意味なやりとりが多く、(例  サプライズっていうのは、英語で「驚き」っていう意味だぞ。  知ってるわよ。)2ch用語的に「萎える」ので個人的には嫌いなのですが、昨日のコラムは実は、行動ファイナンスに関わるトピックで、深遠な内容です。
おそらく、本日皆様のお手元には昨日の新聞はないであろうから、簡単に私の言葉で要約すると、『決算あるいはその直前のアナリスト予想で業績の上方修正のサプライズがあった場合、そのサプライズが株価に織り込まれるには、しばらくかかる。』といった内容です。もう少し具体的な記述として、野村證券の伊藤高志シニアストラテジストの言葉を、以下に引用してみましょう。

(引用始)
『最初のサプライズ効果は二週間程度でいったん株価に織り込まれてしまうが、三ヶ月後くらいから再び上方基調をたどることが多い』
(引用終)

【だからそれが何なの???】
これを見て「はあ、株価に情報が織り込まれるのは、時間がかかるのね」で終わってしまっては残念です。これが、なぜ興味深いかといえば、いわゆるMBAコースで勉強するような正統派ファイナンスの理論に反するからです。MBAコースでは「情報は株価に瞬時に織り込まれ」、「株価の動きはランダムウォークであり、その方向性を予測することなど不可能」と教わります。しかし、伊藤氏のコメントによれば、業績の上方修正の後、株価は上方基調にありランダムな動きをしていないというのが、正統派ファイナンスに反する点です。

【モメンタムとその背後にあるもの】
まず、一つ用語を覚えていただきたいのですが、このように、一定の方向性をもって(つまりランダムではない)動くことをモメンタムと呼びます。では、なぜこのようなモメンタムが生じるかといえば、2つの認知バイアスが存在します。それは誰のバイアスかといえば、我々投資家自身のバイアスと、そして株のプロである証券アナリスト自身のバイアスなのです。
前述の伊藤氏の言葉を二つの部分に分けて考えましょう。まず、情報が二週間かけて織り込まれるのは、これは投資家の過少反応というバイアスに起因するものです。すなわち、投資家自身が半信半疑であったり、新興市場では機関投資家等のプロが少ないために、市場が情報に対して過少に反応することが、モメンタムの原因であるとされています。
伊藤氏の言葉の後半の「三ヶ月後くらいから再び上方基調をたどることが多い」というのは、実は株のプロである、証券アナリスト自身のバイアスに起因するものなのです。多少なりとも将来の予測に関わることを仕事として経験された方はご経験があると思いますが、そうした際に保守的な予測をすることが多いと思います。業績の上方修正を受けても、職業的プロフェッショナルとして翌四半期の予測を保守的に行うため、翌四半期において再びサプライズが発生してしまうことが、「三ヶ月後くらいから再び上方基調をたどる」ことの原因なのです。もちろん、伊藤氏自身、職業的プロフェッショナルであるため、こんなことは解説しませんけどね!

なお、本日のエントリーの記述にあたっては、先日もご紹介した『行動ファイナンスと投資の心理学』を大いに参考にさせていただきました。ご興味のある方は、面白い本なので、是非一読されてみて下さい。


Posted by Ken Kodama at 10:46 | Comments (0)

2005年04月22日

GMに見る「製造業の金融進出」の隠れたリスク

最近の報道で、米自動車業界がかなり苦しい状況にあることは、皆様既に小耳にはさまれていることと思います。かつて、フォード自動車の日本法人に勤務した私として、なにかコメントしたいと思っていたのですが、最近、執筆「欲」が高じて、なにかオリジナリティのある視点が提供できないとエントリーを書くことにためらいが出てきてしまって、米自動車ネタではオリジナリティのある視点が提供できずじまいであったため、書けずじまいでした。
本日の国際面には『GM危機 見えない出口』と題したコラムの後編が記載されていますが、面白いと思ったのは、GMとGMAC(GMの金融子会社)の収益の関連です。以下、興味深い記述を引用してみたいと思います。

(引用始)
『市場は「GMとGMACは表裏一体」とみるため、GMの投資不適格への転落はGMACの危機に直結する。GMACの資金調達コストが跳ね上がると、魅力的なローンの提供は難しくなり、さらに新車販売が落ちる-。そんな連想が働く。』
(引用終)

上記の記述を面白いと私が感じたのは、いわゆる教科書で学習するような多角化のメリット・デメリットに反する部分があるからです。GMは自動車製造業であり、GMACは金融業ですから、多角化の類型としては、本業に関連のない部分に進出する、いわゆる非関連多角化という類型に分類されます。非関連多角化をすると、当然、新しく進出する分野にはノウハウがないため、最初は苦労しますが、ある程度軌道に乗ってくるとポートフォリオ理論で説くところのリスク分散効果を手に入れることができます。つまり、自動車製造業での収益が好ましくない場合でも、金融業での収益がそれを補い、両者の収益に関連性が希薄であるほど、高いリスク分散効果が手に入れられるのです。米自動車業界の不振は今にはじまったことではなく、今まではGMもこのリスク分散効果の恩恵に与っていました。
ところが、非関連多角化において金融業界を選んでしまうと、親会社の問題が「安全性」にまで侵食してしまった場合、逆にリスクが増幅されてしまうということが、最近GMの騒動からの私の新たな発見です。というのも金融というのは信用力を源泉とするビジネスであり、製造業の金融進出の場合、その信用力の源泉は親会社の製造業者のB/Sの健全性に他ならないからです。
こうしてみると、北尾氏率いるソフトバンクの金融グループがソフトバンク本体と距離をおきつつあるのも、「二人の確執」というレベルの問題ではなく、北尾氏の早期の行動は慧眼というほかありません。製造業の金融進出では日本ではソニー、アメリカではGEが有名ですが、こうした企業は親会社の信用力に問題が生じた際の金融子会社のリスクマネジメントというものを、GMのケースから学んで、今から備えておくべきだと私は思います。

Posted by Ken Kodama at 10:06 | Comments (0)

2005年04月21日

どうして「純粋持株会社移行」で「時価総額」が向上するのか???

「イトーヨーカ堂は20日、子会社のセブン―イレブン・ジャパン、デニーズジャパンと3社で持ち株会社を設立すると発表した(NIKKEI NETより引用)」との報道です。本日の日経新聞11ページによれば、「商品仕入れ、情報システム、金融事業で相乗効果を高める(引用)」との記述があり、実質的なシナジーについても多少は言及していますが、メインの「純粋持株会社への移行」は、形式的な話であり、これは決して、実質的な企業価値向上のための戦略ではないことは明確です。しかし、日経紙面の小見出しは「時価総額向上狙う(引用)」としており、新聞の記述だけでは「純粋持株会社」がなぜ「時価総額向上」に結びつくのか分かりにくいと思いますので、この点について考えてみたいと思います。

【企業価値=事業価値+非事業用資産の価値】
私がこの算式を当ブログで記述するのは何度目になるか分からないくらい引用していますが、しかし、この算式で考えると、見えてくるものが多いのです。株主価値の源泉となる企業価値ですが、事業価値と、主として営むビジネスに関係ない非事業用資産の価値の2つに分解することができます。具体的にこれらを数値化する手法としては、事業価値については将来のキャッシュフローを予測して現在価値に割り引くDCF法が用いられ、非事業用資産の価値については、それが株式であるならば時価を使用することが多いです。
さて、今回の話題のイトーヨーカ堂を分かりやすさのために単純に「①本業の総合スーパー」と「②『セブンイレブン』という本業には関係ないコンビニ事業の親会社」という2つの側面に分けるとすれば、前者についてはDCF法で、後者についてはセブンイレブンの東証での時価を求めて、足し合わせればセブンイレブンの理論的な企業価値を求めることが可能です。
しかし、実際のイトーヨーカ堂の株価は、理論値をはるかに下回る水準で推移しているのは、皆様の知るところです。なぜ、そうなるかといえば、本業の総合スーパーの事業が不振でそのイメージに引きずられてしまっているためなのです。言ってみれば「市場の錯覚」であり、もしかしたら行動ファイナンスでこの事象を説明する論文が既に書かれているかもしれません。

【純粋持株会社の価値は「足し算」】
さて、イトーヨーカ堂、セブン・イレブン・ジャパン、デニーズジャパンを、純粋持株会社の100%子会社にした場合、純粋持株会社の理論的な価値はいくらになりますか、と問われれば、それは3社の価値の足し算に他ならないことは、あまりにも明白だと思います。さきほどの「事業価値+非事業用資産の価値」という数式より、「純粋持株会社の価値 =A社の価値+B社の価値+C社の価値」という算式の方が、我々の感覚に明確に訴えるのであり、それは一般投資家全般でも同じであり、この分かりやすい構造にすることにより、錯覚によって埋没してしまっている価値を時価総額に顕在化させよう、というのが、今回の組織再編の狙いなのです。

【純粋持株会社移行は手放しで賞賛すべきことか?】
私は、こうした分かりやすい組織構造・資本構造に企業が移行していくことは、投資家保護という観点から大賛成ですが、一点注意せねばならないのは、子会社の株主の利益が侵害されてしまう、というポイントです。セブンイレブンの株主はコンビニ事業の成長性に着目したからこそ株主になったのに、本日の新聞報道を見て、自分の株式がイトーヨーカ堂の株式との抱き合わせ商品に転換してしまったことを知って、愕然とするかもしれません。セブンイレブン株が持株会社の株式に転換されることにより、確かに今までになかった、ポートフォリオ理論でいうリスク分散のメリットは享受できるようになりますが、全体としての収益性が低下してしまう事実は否定できません。
では、どこが間違っていたのかといえば、子会社上場の意思決定にさかのぼることができます。子会社の株主の利益を真に考えていたならば、一度子会社株式を上場したのならば、将来的には完全にスピンオフする覚悟がないのであれば、子会社は上場すべきではありません。日経新聞によれば、デニーズとセブンイレブン株いは13%のプレミアムがついているとのことですが、「13%上乗せしますからイトーヨーカ堂との抱き合わせ株に代えて下さい」というのは、あまりにも投資家軽視の政策といえます。今後は子会社株式の上場の意思決定は、慎重に行うべきでしょう。
なお、「欧州系証券(私の古巣ではないといいですが・・・)」によるコメントとして、「セブンイレブンを中核に他の二社をぶらさげた方が成長イメージを損なわない(引用)」とのコメントが日経新聞にありますが、「成長性のある企業を中核にする」というポリシーでは、業態転換の激しい小売業界にあっては、組織構造がいつまでたっても安定せず、5年、10年毎に「下克上」が起こってしまう可能性があり、私はこうした場当たり的な組織構造は好みません。

Posted by Ken Kodama at 10:39 | Comments (0)

2005年04月20日

買収か提携か

ドコモが三井住友カード及びJCBに出資し、資本・業務提携をテコに、クレジット事業に参入するとの報道が、本日の日経新聞一面でなされ、NIKKEI NETによればこれは「検討段階」とのことです。さて、ドコモほどの資金力のある企業であれば、資本提携よりさらに踏み込み、どこかのカード会社を買収してしまうという選択肢も、あり得たはずです。ホリエモン騒動も、最初は買収を目指していましたが、提携という形に落ち着きました。なんとなく、買収の方がおいしいところを、余すところなく食べつくせるような感じで、提携というのは次善の策というのが、一般的な方の持つ、両者の差異ではないでしょうか。
バーニーという戦略論の第一人者が書いた『企業戦略論』という著書によれば、戦略的な提携の方が買収よりも魅力的となり得る理由を、4つ列挙しています。両者を比較検討する上で有意義であると思われるため、本日はその4つを当サイトにて引用しておこうと思います。
①買収に対する法的な制約
買収によって多角化を行おうとする場合、独占禁止法が足かせになってしまう場面が想定されますが、提携においてはそうした法律の制約を受ける可能性が少ないです。
②高い不確実性の下では、買収により戦略的な柔軟性が制限される
買収するとなると、被買収企業の経営にかなりコミットすることが要求されますが、提携という形であれば、新事業に参入するか否かの柔軟性を確保することが可能です。
③買収対象企業に望んでいない「お荷物」組織までもがくっついてくる
提携であれば、関連する部分のみの統合を考えればよいですが、買収の場合は経済的な価値の向上を生み出さない部分であっても統合のためにエネルギーを割かねばなりません。日本のカード各社くらいの規模であれば、全く収益に貢献していない子会社を何社か保有している可能性もあり、提携であれば、そうした「お荷物」の整理に腐心する必要はありません。
④買収対象企業の経営資源やケイパビリティの価値が、その企業の独立性に依存してくる
お互いの企業が一つにならず、独立しているからこそ温存できるメリットというのが存在します。ホリエモンがニッポン放送を手中に入れたならば、みゆき様はラジオ番組を降板なさったかもしれませんが、提携という形にとどまったため、江本は野球解説を続け、「笑っていいとも」もタモリが死ぬまでタモリの司会で続くことでしょう。

Posted by Ken Kodama at 18:58 | Comments (0)

2005年04月19日

銭っ子ホリエモン

一連のホリエモン騒動を見ていて、『銭っ子』というドラマをフラッシュバックされた方はいないでしょうか?私の記憶が正しければ、今から25年くらい前に、「脳みそを溶かす」といわれる1時過ぎの時間帯の昼ドラとして放映されていたのが『銭っ子』です。全編は覚えていないのですが、戦後のどさくさで、ある都市開発にとってどうしても外すことができない小さな土地を手に入れてしまった少年が、それを驚くべき高い値で大人たちに売り抜けるシーンだけは、なぜか今でも覚えていました。そして、同様の結末を迎えたことは、皆様ご存知の通りです。

【やはりババをひいたのはライブドア株主】
今回の騒動で得をした人、損をした人、という切り口での分析が多くなされているようですが、本日の日経新聞では、GCAの佐山展生氏が『文句なく得したのはリーマン・ブラザーズ証券グループ、村上ファンド、SBIの三者だ。(引用)』と述べています。リーマンについては、若干異論があるので後でそれは述べるとして、村上ファンドが「してやったり」というのは間違いないでしょう。しかし、当然マネーの世界では、得をした人の影で損をした人がいるのが常で、それはフジとライブドア両者の株主であり、特にライブドアの株式の本質的価値の低下は尋常ではありません。
800億円のMSCBが全て株式に転換され、また、フジへの第三者割当増資により、株式数の大幅な増加による希薄化のダメージをもろにかぶるのが既存のライブドア株主です。日経新聞紙面によれば株式数は62%の増加とのことですから、株式数の増加による希薄化により、ライブドアの株式の本質的価値は4割低下したことになります。もちろん、これは株式分割ではなく、増資であるため、得られた資金を活用した株主価値の増大、という側面を合わせて考えねばなりませんが、低下した4割を補うだけの株主価値の増大があるとは、直感的に考えにくいですし、当然、ライブドアに数値化したプランがあるわけでもありません。日経新聞によれば「株価は2割安」とのことですから、現段階では下記の式からも分かるように、市場は今回の提携により2割の株主価値の増加があった、と判断しているようですが、2割の株主価値の増加ですら、怪しい気がします。

2割安 = 希薄化(4割減) + 株主価値の増加(2割増)

【新興市場株のリスク】
ライブドアが上場されているマザーズのような新興市場においては、機関投資家という物言う大株主が存在しないため、株主利益を損なうようなファイナンスが行われることがしばしばあります。IPO人気の加熱はまだ冷めていないようですが、新興市場株への投資を考えている方は、このリスクをしっかりと認識する必要があります。すなわち、機関投資家という「にらみ役」がいないため、個人投資家自らが開示文書に目を通し、「にらみ役」となれるような人でなければ、やけどをする可能性が大きいということです。
一方で、ライブドアのようなケースでは、ホリエモン自身が大株主であり、彼自らが株主利益を損なう経営等行うはずがない、と信じていらっしゃる方もいることでしょう。しかし、そのような方は彼がライブドア株をいくらで取得したのかご存知ですか?彼自身はライブドア株の株価が、たとえ100円にまで下がったとしても、取得価格と比較すれば全く損をしていません。しかも、ここまでライブドア株の株価が上昇したのも、百分割という手法で市場を幻惑させてきたからで、必至の経営努力によりここまできたのとは、全く事情が異なります。つまり、ホリエモンという大株主の利益は最近ライブドアの株主となった方(高い値で買った方)の利益とは一枚岩ではないという点に注意する必要があります。

【リーマンの損得】
リーマンは、貸株を早期に返却したことから考えると、「空売りを繰り返す」ことによる利益はあまり得られなかったと考えてよいでしょう。したがって、転換条項にある通り、10%のディスカウントでライブドア株を取得して市場で売却したわけですから、800億円の10%である80億円とそれほど大差ない金額が、今回のスキームによるリーマンの収益と考えてよいでしょう。
しかし、今回の騒動で日本市場で失ったレピュテーションというのは、かなり甚大なのではないでしょうか?リーマンという名前の認知度こそ拡大したことでしょうが、それはリーマンの望む方向とは異なることでしょう。加えて、クライアントがリーマンにカモにされていると高笑いするアドバイザー等も出てきてしまったりして、「顧客をカモにするあくどい証券会社」とのイメージ(実態は・・・私は詳しく知りませんが・・・)がついてしまったことは、リーマンの「想定外」だったのではないでしょうか?

Posted by Ken Kodama at 11:22 | Comments (0)

2005年04月18日

「場当たり的」に見えてしまう生保の運用戦略

生保の株式運用に、拡大の兆しが見えはじめてきた、との報道です。以下にNIKKEI NET記事を引用しておきましょう。

(引用始)
『減少を続けてきた生命保険各社の株式運用額が拡大に転じる兆しがみえてきた。今年度は大同生命が国内株の残高を昨年度並みに1000億円強積み増すほか、前年度に削減した三井生命と朝日生命も「横ばい」を計画しており、保有株式を圧縮する動きは終息しつつある。生保の運用資産は国債の比重が膨らんできたが、景気回復や自己資本の増強を背景に運用収益の拡大を狙い価格変動の大きいリスク資産に投資しやすくなっている』
(引用終)

生保が今まで株式での運用割合を減らし続けてきたのは、今さら言うまでもなく、過去の運用の失敗を反省し、『ソルベンシー・マージン比率』なる自己資本とリスク資産の割合を示す安全性をチェックする指標を重視する経営を行おうとしてきたからに他なりません。本日の日経新聞紙面の表を見ると、2005年度の株式運用計画において、前年度比で「横ばい」としているところが多いのですが、この「横ばい」が日経新聞の言うような「拡大に転じる兆し(引用)」であり翌年度に株式運用額を拡大するようなことがあれば、私は大きく首を傾げざるを得ません。
なぜならば、もし翌年度以降に生保が株式での運用残高を拡大したとするならば、生保は株式の下落局面で株式を売却し、株式の上昇局面で株式を購入することとなり、これは明らかに愚かな運用です。
最近、私は個人投資家向けのアセット・アロケーションに関してアマゾンで洋書を取り寄せたりして勉強し直しているのですが、アセット・アロケーションの成功の鍵の一つがリバランスにあります。アセット・アロケーションは文字通り「資産の配分」ですが、仮に株33%、債券33%、REIT33%というポートフォリオを組むと一度決めたならば、この割合を貫き通すことが重要なのです。例えば何も売買はしていなくても、株の値上がりにより、上記の構成割合が株50%、債券25%、REIT25%に変化したとします。そうなった場合は値上がりした株を売却して、得られた資金で債券とREITを買い増し、当初の保有割合である「株33%、債券33%、REIT33%」に戻してやることが重要で、これをリバランスと呼ぶのです。リバランスを通じて何を行われたかを別の言い方で表現すれば、「相対的に値上がりした株式を売却し、相対的に値下がりした債券とREITを買い増した」と言えます。
これは少しも難しいことではなく、値段の安いときに買って値段の高いときに売るのは投資の基本中の基本です。生保各社の運用方針を微細に検討したわけではありませんが、一見、この基本と逆の動きを感じさせるところに、一抹の不安を感じざるを得ません。

Posted by Ken Kodama at 10:15 | Comments (2)

2005年04月15日

異業種出身者にダイエーの再生は可能か?

中々正式発表がされませんでしたが、ようやくダイエー社長に日本HPの樋口氏が就任するとの報道です。樋口氏は本日の日経新聞でも略歴が記されていましたが、日本HPのサイトによれば、「松下→ボストン・コンサルティング→アップル→コンパック→HP」と有名企業で重要なポジションを歴任された方です。また、CEOに決まっている林文子氏の経歴は、私も今日検索して初めて知りましたが、なんと高卒で自動車販売に手を染めたのは31歳のときからです。お二人とも、純粋な小売業を内から見た経験はないわけですが、果たしてダイエーの再生という難題をこなすことは可能なのでしょうか?
小売業界はどのような人にとっても身近な存在です。スーパーや百貨店で買い物をしない人などいないわけですから、異業種出身のお二人とて、消費者として小売業界との接点は既に有しており、ダイエーに対しても問題意識は持っているはずです。経営者としての輝かしい成功に彩られた経験があり、かつ、消費者として小売業に接してきたからこそ、「自分ならなんとかできる」との思いでダイエー経営陣への就任を決意されたことでしょう。しかし私の経験からすれば、消費者として小売業界に接してきたという過信は、必ずしもプラスに働くものではありません。
私のような中小企業を相手にするコンサルタントの方も、小売業界の経験がなかったり、コンサルティングの経験がなかったりする方でも、小売業界ならば親しみがあるのでなんとかなるのでは、と考えて挑戦される方達がかなり存在します。経験がなくとも成功される方もまれに存在しますが、(1)小売業経営に私的な思い入れを入れたり、(2)計数を無視(あるいは、計数の意味が分からない)した経営を行ってしまうことにより、失敗される方が多いのも事実です。
特に後者の計数管理は小売業の経営にとっての要です。新店出店・新業態開発といった派手な部分と合わせて、既存店の経営を以下にうまくおこなっていくかが小売業にとって重要ですが、既存店の経営はすなわち計数管理といっても過言ではないでしょう。たとえば、売上高一つをとっても、それを①坪当たりの売上高でみたり②店員の作業時間で割ってみたり(SPH)③客数・平均買上点数・平均単価に分解してみたり・・・と様々な分析を行うことが可能です。小売業のトップマネジメントには、こうした分析結果から、背後の真因の問題点を嗅ぎ取り即座に行動に移すことが求められますし、全ての指標を同時に改善することは難しいため、どの指標に重点を置くか等の決断を迫られることとなります。
こうした計数の体系が頭に入っている方として、日本マクドナルドの原田CEOを先日ご紹介しましたが、彼の経歴を見ると、アップルの社長だったり(樋口氏との面識もあることでしょう)、コンピュータ業界一筋だったりと、かなり樋口氏に酷似していたりします。業界の経験がなくとも、課題を発見し解決していく能力があれば、異業種からの転進も可能であることを立証しているといえるでしょう。
トップマネジメントとしての経験をとるか、業界での経験をとるか、ダイエーでは両者を天秤にかけて、前者をとったわけです。この判断が正しかったか否かは2~3年経過してみないと分かりません。ダイエーの今後の注目していきたいと思います。

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2005年04月13日

『村上ファンド』再考

昨日の私のエントリーに対する反論であるかのような記事が、本日の日経新聞の3ページにおいて、掲載されました。以下、日経新聞に掲載された、村上ファンドの投資手法に対する疑問を引用致しましょう。

(引用始)
『ただ、こうした投資手法は、投資先企業が抱える現金を吐き出させるなど短期的な利潤獲得に偏りがちで、長期的な企業価値の増大に必ずしもつながっていないといった批判も根強い。専門家からも「M&Aは長期にわたって企業価値の向上につながらなくてはならない。何十年かけてためた資産を最近登場した株主に配当として差し出すことには違和感を感じる」(佐山展生・一橋大学大学院教授)といった声もある。』
(引用終)

ライブドア騒動で一躍有名になった専門用語「企業価値」ですが、非常に重要な概念であるのに、都合良く解釈されて自らの立場の正当化に援用される例が多いことに嫌悪感すら覚えます。
村上ファンドが着目するような、過剰な現金を有する企業が取るべき道は2つに1つです。すなわち、(1)その現金を正のNPVを生むような有効な投資に回して企業価値の向上を図るか、(2)有効な投資案件がないのであれば株主に返還する、のいずれかです。
株式会社が必要以上の現金を法人の資産として溜め込んでいることは、よくないことで、それは経営陣の怠慢の結果であるといえます。なぜならば、現金として資産を保有していれば、金利以上のリターンを期待することはできません。一方で、株式投資家は株式の持つ高いリスクにさらされています。高いリスクを負いながらも、経営陣が資産の大半から利息収入した上げていなければ、投資家はリスクに応じたリターンを手にできなくなってしまいます
「何十年かけて資産を溜めてきた」のであるとすれば、それは経営陣が企業経営とは本来相容れない「貯蓄は美徳」という倫理を持ち込んで、株主軽視を何十年行ってきたことの裏返しであるといえます。「最近登場した株主に配当として差し出」さねばならないのは、旧株主がしびれをきらし、株式を売却することにより経営陣にノーをつきつけた結果なのです。村上ファンドに配当を払うのが面白くないというのであれば、普段から株主重視の経営を行っていればよいまでのことです。

Posted by Ken Kodama at 10:21 | Comments (0)

2005年04月12日

『村上ファンド』を通して証券市場のモラルを考える

村上ファンドが、今度は大証の株を取得したとの報道です。村上ファンドの狙いは何かといえば、NIKKEI NETの記述を以下に引用することとしましょう。

(引用始)
『大証は証券決済の安定性確保などを理由に200億円を超す内部留保金を抱えており、これを新規投資や株主配分に回すよう求めるとみられる。』
(引用終)

村上ファンドは以前からも、同様の投資活動を行ってきましたが、フジテレビ騒動で一躍、世間の高い注目を浴びました。彼等の行動は、古い世代の経営陣が眉をしかめそうだ、という点で、ライブドアやMSCBの発行で側面支援したリーマン・ブラザーズ等と、なんとなく「似ている」と思われる方が多いことと思います。しかし、ご異論があることと思われますが、私は、一連の村上ファンドの動きはモラルにのっとったもので、株式百分割でのし上がったライブドアはモラルがない、と考えます。そのように私がいう根拠は、村上ファンドは市場の歪みを正しつつ儲けを得ようとしているのに対し、ライブドアは市場に歪みを意図的に形成することにより儲けを得てきたからです。その方向性は全く逆で、以下に村上ファンドが、社会経済的に果たす役割について、簡単に考えてみたいと思います。

【アービトラージャーの社会的な役割】
村上ファンドを考える前に、最初に、アービトラージャーと呼ばれるトレーダーについて考えてみたいと思います。アービトラージャーは日本語では、裁定取引業者と呼ばれ、市場の短期的な歪みを利用して儲けを得るトレーダーのことです。例えば、株の先物市場と現物市場の間の歪みを利用して儲けを得るタイプのアービトラージャーは、かなり多く存在します。彼らは、先物市場が現物市場に比べ割高になったときに、「先物を売り現物を買う」というトレードを行います。そして、値段の水準が戻ったときに反対売買を行うことにより、儲けを得るのです。
彼等の行動は純粋に数字に基づくもので、そこにはモラルの片鱗もないように思われますが、彼らがアービトラージという市場の歪みをとりさるトレードを行うことにより、先物市場と現物市場は連動し、例えば先物市場をヘッジ取引等の用途に使用することが可能になるわけです。つまりアービトラージャーの利己的な行動により、先物市場は現物市場の価格と連動し、ヘッジ取引が可能となるのです。

【村上ファンドの役割は】
村上ファンドが着目するのも、やはり歪みです。しかし、彼等の着目するのは、アービトラージャーのように2つの市場間の歪みではなく、株式の本質的な価値と市場で取引されている価格の間の歪みに着目します。例えば、今回の大証のケースでは、大証は巨額のキャッシュを持っていながら、それを有効に活用できません。村上ファンドはそれを有効な投資に回すか、あるいは使い道がないのであれば本来の出資者である株主に返還しなさいと、至極当然のことを行うように自らが大株主となって経営陣に迫ることにより、大証の本質的な株式の価値が市場で顕在化し、それにより、儲けを得ようとしているのです。
彼等のようなファンドが存在するということは、怠慢な経営陣の元、本来得られるはずの利益を手にできなかった従来の株主にとって救世主のような役割を果たすといえるでしょう。またマクロ的に見ても、眠れる資金を有効に循環させる、という意義も果たしているといえるでしょう。

【マネーリテラシー教育のあり方】
一方で、ライブドアの手法にモラルがないと私が考える理由は、百分割に関して色々な場で述べてきましたし、また新聞でも詳しい解説がたくさんなされていたため省略しますが、SBIの北尾氏もライブドアの手法が「地下水(証券市場のことらしいです)を汚している」、すなわち秩序を乱していると感じたからこそ、のりだしたとの趣旨のインタビューを朝日新聞で行っていました。ですから彼も、ライブドアのモラルという点では、私とそれほど意見が異ならないものと思います。
我々は学校教育や家庭教育を通して、社会で生きていくための様々なモラルを学びますが、お金に関するモラルについては学んだことはありません。証券会社に在職したことがある人ですら、「インサイダー取引は禁止されている」という法律は目にしたことはあっても、自分の子供に、ではなぜインサイダー取引はいけないのかと聞かれたら、しどろもどろになってしまう方がほとんどではないでしょうか?お金儲け自体はよいことでも、お金を儲けるためにやっていいことと悪いことがあるということを、細かい法律を羅列するのではなく、その背後にあるモラルにまでさかのぼって教えることが必要なのではないでしょうか
マネーリテラシー教育もまだ議論に上り始めた段階ではありますが、こうした本質的なことを是非とも取り上げてもらいたいものです。

Posted by Ken Kodama at 17:39 | Comments (0)

2005年04月11日

ケーススタディ『斑尾高原農場』の着眼

中国の問題一色の感じの本日の日経新聞ですが、あまりにもコントロバーシャルなトピックのため、本日は11ページの『斑尾高原農場』の記事に注目してみたいと思います。
先日、『ダイエーのリバイバルプランを考える』というエントリーにて、「ダイエーは食のSPAを志向すべき」という趣旨の意見を書かせていただきましたが、本日の日経新聞の斑尾高原農場なる会社は、「お手本はファッション・ブランドの戦略(引用)」というだけあって、これぞまさしく、食のSPAと呼ぶのに相応しい企業といえます。SPAの厳密な定義はこちらのサイトを参照していただくとしても、そもそもSPAの「A」はアパレルの「A」で、食のSPAという言い方自体には矛盾がありますが、それでもそう呼ばざるを得ない相似点を列挙しておきましょう。

● 直営店での販売が主体であり、「製販」が一体で行われている。
● 顧客の声をメールで共有し商品開発に活用している。
● ブランドイメージを重視し、価格帯は高め。
● 陳列にビジュアル・マーチャンダイジングの手法を取り入れている。(商品棚に整然と並べるのでなく、欧州の市場のような雰囲気を演出する。(引用))

売られているものが「食」である点を除けば、これは完全にギャップやファーストリテイリング(もちろん元祖はギャップですが)の模倣ですが、「洋服」ではなく「食」にSPAというビジネスモデルを導入することにより、全く新しいタイプのビジネスが生まれるのだ、ということは起業を志す方に是非知っておいていただきたい事実です。
最近、ドリームゲートの登録アドバイザーとして、起業を志す方のビジネスプランを拝見する機会が増えましたが、ビジネスに関わるアイデアで、頭にひらめく類のものは、大体既にどこかでビジネスとして成立していると考えておいた方がよいでしょう。既に、どこかの他の企業が成功を収めている領域において、新規参入者として顧客を奪うには、よほどのこと(商品の品質が格段にいい等)がないと難しく、したがって、ひらめいたアイデアに更に、独自性をつけるべくプランを煮詰めていくべきです。
その際の思考プロセスとして、「無から有」を作り出そうとするのは、かなり至難の業といえ、なかなかアイデアも浮かばないものです。しかし、「新たな組み合わせ」によって、新しいビジネスアイデアをひねり出すことはそれほど難しいことではありません。
SPA形態のアパレル業者は、現在無数に存在し、また一方で、「ジャム、ドレッシング、ソース、ワイン」などの食材を製造、あるいは販売する企業も無数に存在します。しかし、両者を合わせて『「ジャム、ドレッシング、ソース、ワイン」などの食材をSPAというビジネスモデルの下で製造販売する』となると、ぐっと競合者は減り、そして、このように日経新聞で紹介され、ひいては、私のようなものがブログに取り上げる、などということがおきるのです。
起業しようとする業界のみならず、ビジネス全般にアンテナを張り巡らすことにより、こうした「組み合わせの思考」は幅を持ち始めます。アイデアで勝負しようという方は、是非、幅広い領域からの情報収集に努めることをお勧め致します。
未来経済研究室のケーススタディも、ご参照してみて下さい。

Posted by Ken Kodama at 16:08 | Comments (0)

2005年04月09日

スティービー・ワンダーの新作に寄せて

先日も少し書きましたが、コンサルティングもFPも「人対人」のビジネスであるため、私のパーソナリティーをご理解いただくという趣旨のもと、不定期にビジネス外のコンテンツをこの場で提供させていただくことをご了承下さい。

【私とスティービー・ワンダーとの出会い】
本日のエントリーはStevie-Wonder.comにて、スティービー・ワンダーの新作が、実に10年ぶりに、4月下旬から5月上旬に発売されるとのニュースを受けてのものです。私と彼との出会いは、彼が来日してテレビ出演した1980年にさかのぼります。当時、テレビで盲目の彼が自在にシンセサイザーを操る姿に衝撃を受け、以来、私は彼の音楽とブラックミュージックに傾倒することとなります。私の英語力は平均的な日本人の方より上と自負していますが、その遠因は少しでも彼の音楽を理解したいとの動機にさかのぼることができます。当時の彼のアルバムを「貸レコード屋」で借りてきて、プレーヤーとラジカセを何で接続すればよいのか分からず、スピーカーにラジカセを密着させてダビングし、絶妙なタイミングで隣家の犬の鳴き声が入る、「Hotter Than July」を何度も聴いたあの頃が懐かしく思い出されます。またクレジットを見ると、彼がドラム・キーボード・ハーモニカとほとんど全ての楽器を担当していることに驚愕し、「多重録音」という概念を知らなかった私は、ときどき見かける大道芸人のごとく、キーボードに手を置きつつ、足でドラムを操作し、必要あらば顔面の前につるされたハーモニカを吹き鳴らす・・・などという光景を想像していたことも、懐かしい思い出です。
中二ではじめて彼のコンサートに行き、はじめて彼が私の眼前で歌った曲が、名盤中の名盤"Songs in the Key of Life"中の"Love's in Need of Love Today"という曲です。最初は彼の歌声だけがステージに響き渡り、マネージャーであるお兄さんに手を引かれながらステージに現れた彼を見たときには、感動の涙が頬をつたったものです。

【スティービー・ワンダーの一般的な評価と私の見解】
スティービー・ワンダーは、その天才としての才能を1970年代に開花させ、1980年代になんとか維持し、1990年代以降は「かつて天才だった人」との評価に成り下がってしまったというのは、音楽を聴く耳を持っている批評家・ファンの一致する見解で、私もこれは否定しません。しかし、晩年の作品が若干過小評価されている感があるので、少し反論しておきたいと思います。例えば、1987年に発売されたCharactersというアルバムは批評家達から酷評を受けましたが、それに対抗するコメントを出したのがプリンスです。「皆、彼がやろうとしていることを理解していない。気に入らないのら、聴かなければいいまでの話だ」といった趣旨のコメントを発し、そうした相思相愛が、今回のシングル曲の"So What The Fuss"へのプリンスのギターでの参加、という流れにつながっているのでしょう。
確かにCharacters以降の作品はセールス的にも大きな成功を収めていませんが、この時期の彼の作品で特筆すべきは、バラードの深みが増したということにつきるでしょう。例えばCharactersの第一曲目のYou Will Knowという曲は、ドラッグに慰めと快楽を見出そうとする子供達、孤独と経済苦にあえぐシングルマザーに対する「神からの言葉」という形式になっており、以下に一部引用します。

You will know
Troubled heart you’ll know
Problems have solutions
Trust and I will show

You will know
Troubled heart you’ll know
Every life has reason
For I made it so

「問題には必ず解決がある。私が見せてあげるから信じなさい。」「どんな人生にも意味がある。なぜなら私がそう(世界を)作ったのだから。」「God」はスティービーならずともアメリカンポップスにしばしば登場しますが、私は彼のこの詩には他には見られない深みを感じます。
また、同アルバム中の"With Each Beat of My Heart"は詩ではありませんが、楽器をシンプルに抑えて、心音や「ボーカル・パーカッション」を効果的に使用し、俗な言葉で言えば、究極のリラクセーション・癒し効果が得られる音作りと、メロディーが実に調和された名曲です。こうしたバラードの名曲が、評論家達の間で過小評価されているのは実に残念です。

【さて本題の今回の新作は】
さて、今回の新作ですが、シングルカットの"So What The Fuss"が試聴できます。私の感想ですが、冒頭での「ブリブリ」のシンセベースに、「あの時代」のファンクで育った方は、「にんまり」することでしょう。そして、彼は基本的に自分で演奏するため、ギターがメインにフィーチャーされることは少ないのですが、プリンスの参加でファンキーなカットフレーズに乗せた彼のボーカルを聞けるのは、珍しいといえるでしょう。似ている曲としては、Charactersの中の"Skeltons"や、ニクソン大統領を批判した"You Haven't Done Nothin'"が連想されます。
同サイトには、「ビルボードのR&Bチャートで急上昇」と書いてあり、ビルボード紙のサイトを見ても確認できず、よくよく見ると「アダルトR&Bチャート」なるチャートがあるらしいです。ラップ好きの若者は除くなんともニッチな、R&B好きオジサン・オバサンのためのチャートで、「昨年のアニタ・ベーカーの記録を更新した」とのことです(笑)。
と、比較的好意的なコメントを羅列しましたが、はっきり言って、あまり良い曲ではありません。こうしたノリノリ・ブラックの分野で、彼の天才ぶりが伺えることは、今後、もしかしたら、もうないのかもしれません。したがって、アルバム中に「名バラード」が収録されていることを、ただただ期待するだけです。
万一「名バラード」すら収録されていなかったとしても、それでも、私はスティービーの新作を何年もまた、待ち焦がれることでしょう。それが、長年のファンというものの心理なのですから。

【追記】
"So What The Fuss""You Haven't Done Nothin'"が似ていると言ったのは、(1)シンセベースを主体とした曲調と(2)政治への批判が含まれているからですが、後者について詩を比較すると、興味深いです。"You Haven't Done Nothin'"のタイトルの「You」はニクソン大統領であると言われ、「ニクソン、お前何もやってねえのに、偉そうな口きくな」と「政治家という第三者の批判」となっていますが、今回の"So What The Fuss"では「世界中で戦争が勃発し、未だに平和が実現できないのは、我々の責任だ」として"Shame on US"としています。一部の政治家に責任をなすりつけずに、これは我々みなが取り組まねばならない問題、としているところに、メッセージ曲としての深化も伺えるといえるでしょう。

Posted by Ken Kodama at 14:52 | Comments (0)

2005年04月08日

マクドナルドは実は不動産業者???

本日の日経新聞朝刊16ページには、『トップに聞く企業戦略』シリーズの一環で、日本マクドナルドホールディングスの原田CEOのインタビューが掲載されていました。
さて、経営論という文脈の中でのマクドナルドというと、真っ先に思い出すフレーズがあります。これは私の潜在記憶下に格納されており、私がいつどこで最初に目にしたのかが思い出せないのですが、英文での検索の結果、同米本社のかつてのCFO、Sonneborne氏が発した言葉のようです。私の記憶が正しければ、同氏がどこかのMBAスクールでの講師として招かれたときに、学生に対して「マクドナルドは、どの業種を営む企業か知っていますか?」と尋ね、多くの学生が「フードビジネス」と答える中で、彼が出した答えが以下の文章です。比較的簡単な英語なので、原文と、拙訳を記しておきます。

"We are not basically in the food business. We are in the real estate business."
(基本的には我々はフードビジネスに身をおいているのではありません。我々が営むのは不動産業なのです。)

"We are in the real estate business. The only reason we sell hamburgers is because they are the greatest producer of revenue from which our tenants can pay us rent."
(我々は不動産業者です。我々がハンバーガーを売っている理由は、ハンバーガーこそが、我々のテナントが我々にレントを支払うための原資となる、最大の収益源となるからなのです。)

このやりとりが私の潜在意識下に残存し得たのは、「なるほど、そういう見方もできるのか」という意外性ゆえのことですが、マクドナルドの不振を伝える報道を聞くたびに、こうしたビジネスの捉え方そのものが、業績不振の真因ではなかったのか、という気がしていました。このビジネスの捉え方も一つの慧眼といえるのでしょうが、それは顧客のベネフィットとは明らかに異なるものです。MBAの学生がマクドナルドがフードビジネス業者であると考えるのであれば、顧客もしかりで、食に対するこだわりがなかったことが、恐らく業績不振の真因だったのでしょう。
対照的な逸話として私が思い出すのが、モスバーガーが海老竜田バーガーの発売前に計上した1億円近くの「えび廃棄損」です。当時、もうあとは店頭に並ぶのを待つだけとなった海老竜田バーガーを社長に試食させたところ、「これでは『ぷりっぷり』ではなく、『ぷり』だ」との鶴の一声で、開発は一からやり直し、巨額の損失の計上となったのです。
本日の原田CEOのインタビューを読むと、この方の認識は「不動産業者としてのマクドナルド」ではなく「小売業者としてのマクドナルド」というカラーが鮮明です。かつて私が身をおいた、アパレルのギャップの問題意識とオーバーラップし、これがギャップのトップのインタビューとして掲載されていてもなんら不思議はありません。今回掲載の戦略の方向性を一言で述べるとすれば、「既存店重視で、客単価よりも客数を追求する」戦略体系であるといえるでしょう。価格体系の見直しや、時間帯ごとの売上高に着目するという視点は、全て上記につながっていき、原田氏は「CEO兼会長」という立場でありながら、これほどまで微細な戦術レベルが、整合性を持って頭に叩き込まれている点は、賞賛に値するといってよいでしょう。四期ぶりに連結黒字が達成されたのは、彼のようなトップマネジメントの存在が大きいのでしょう。
しかし、気になることは、依然として「小売業者」ではありながら、「食品を扱う」という意識が、少なくともインタビューからは全く伺えない点です。「ギャップジャパンのトップインタビューであってもおかしくない」、と私がいうのは、「食品」に関する言及がないからでもあります。米本社との契約等から、商品開発はある程度制約があるのかもしれませんが、基本に立ち返り、顧客の真のベネフィットに関する洞察を深め、「食に対するこだわり」がCEOの口から聞こえるようになったとき、日本マクドナルドは、さらに「化ける」ことでしょう。

Posted by Ken Kodama at 10:45 | Comments (0)

2005年04月07日

配当は「快楽」?

本日の日経新聞15ページには『投資を考える』と題した連載コラムの『配当新時代④』が掲載されていました。同コラムの要旨をかいつまんで、ご紹介すれば、「個人投資家の注目は配当利回りの高い銘柄に集中している」との内容です。

【配当とMM理論】
配当が個人投資家にとって有益か否か、という点は、実は中々難しい論点です。ここで、伝統的なファイナンス理論であるモジリアーニ・ミラーの理論をご紹介しておきましょう。まず第一の「税のない世界」なるものを仮定すれば、配当政策、すなわち配当を多くしようが少なくしようが、それは株価に全く影響を与えません。しかし、当然現実の世界には存在する税(所得税)を考慮に入れると、配当をもらってしまうと、キャピタルゲインに対する課税に比べて、より早い時点で課税されてしまい、課税の繰り延べ効果が得られないという点で不利であり、この理論通りに現実の株価が動けば、増配のアナウンスは株価に対してネガティブに働くはずです。この考え方を個人投資家の方に分かりやすく解説したのが、ベストセラーになった安間伸さんの『ホントは教えたくない資産運用のカラクリ』という本で、『突然ですが、私は配当が嫌いです。なぜかというと、損だからです。(同著より引用)』と、単純明快な文章で、驚くべき結論を提示しています。

【行動ファイナンスからの説明】
しかし、このブログをお読みの皆様も恐らく配当は好きなはずで、また多くの方がそうであるからこそ、フジテレビがライブドアに対抗して、大幅増配をアナウンスしたとき、フジテレビの株価は上昇したわけです。MMの理論に反して増配が株価の上昇を招く理由を説明する学問として、行動ファイナンスなる学問がここ数年で急速に進化しました。書店で関連本が数冊でていましたが、最近出版された『行動ファイナンスと投資の心理学』という本は、その読みやすさで抜きん出ていますので、興味のある方にご一読をお勧めします。
一般の人々に配当が好まれる理由をいくつかの観点から説明していますが、快楽的フレーム化という観点が、最も私がうなづける説明です。すなわち、配当には「株価が下がったとしても、いつかは配当という形で、お金を取り戻すことができると考えることで、慰めを得ることができる。(引用)」というのが、大まかな論拠です。これを、より一般的にいえば、「小さいポジティブな結果が、それよりもはるかに大きい損失を部分的に相殺するために利用される(引用)」ということになり、これは一抹の救い効果と呼ばれているらしいです。これは、保険の世界でも応用できる論理でしょう。本当は掛け捨て保険の方がコスト的に優位なのに、配当がある保険や終身保険が好まれるのは、やはり「一抹の救い効果」によるところが大きいでしょう。
また年金生活者が、日常の支出を補うために元本に手をつけることに、大きなためらいがあることも、配当が好まれる理由として説明されています。私の周囲では、これは年金生活者に限定されることではなく、右肩上がりの昇給を望めない今、減少する収入を埋め合わせるインカム・ゲインを得る手段として、株式の配当やマンション投資などが関心の的となっています。

【プロフェッショナルとして誤解とどう付き合っていくか】
株に関しては、配当のみならず、一般の投資家の方は様々な錯覚を抱いています。「株式分割は投資家にとってプラス」などというのが誤解の最たるもので、それが100分割後の乱高下を招いたのですが、問題であるのは、一部のプロフェッショナルですら、こうした誤解を抱いていることです。先日ご紹介した内藤忍氏の『資産設計塾』という良著ですら、株式分割を株主優待と同様なメリットとして錯覚してしまっていることは、良著であるがゆえに遺憾です。
配当利回りが銘柄選別において大きな役割を果たしつつある、という現象については、私から助言できることがあるとすれば、投資対象はあくまでも株式なのですから、株式投資家としての当然のエチケットである、発行体の財務分析を行ってから、投資を実行すべきである、ということです。いくら目先の配当利回りがよくても、将来的に事業が衰退していくことが目に見えていれば、それに伴う元本の減少は、配当という「一抹の救い」では補え切れないものとなることでしょう。
「インカム・ゲイン」に着目するにしても、株式という商品の性格上、必ず元本の増減があるのだという、基本に立ち返って、投資の判断をすべきではないかと思われます。

Posted by Ken Kodama at 11:19 | Comments (0)

2005年04月05日

もしも石油タンカーに自分の名前がついたなら

本日、買収関連で一面に登場したシェブロンなる企業ですが、かつてライス国務長官がDirectorを務めた企業でもあります。そして、なんと彼女の名前を冠した、「コンドリーザ・ライス」なる石油タンカーを保有していた(今は改名)ことでも有名で、マイケル・ムーアのFahrenheit911でも、石油業界との癒着を皮肉られました。タンカーの画像のあるサイトを見つけたのですが、なんだか合成っぽくって、胡散臭いのですが、どうなんでしょう?

Posted by Ken Kodama at 16:54 | Comments (0)

ダイエーの「ミニ店舗」と繰り返される歴史 ~小売の輪~ 

ダイエーの再生プランの一つとして、食品スーパーの「ミニ店舗」なる概念が登場しました。以下、本日のNIKKEI NETより一部引用したいと思います。

(引用始)
『柱となる食品スーパーは、コンビニエンスストア3店舗分の広さに相当する売り場面積で400平方メートル弱のミニ店舗を導入する。既存店の活性化へ、2007年2月期までに全体の売り場面積の約1割に当たる16万平方メートルに外部の専門店を誘致する。これらにより営業損益を年間100億円以上改善する考え。』
(引用終)

さて、「食品」の「ミニ店舗」といえば、恐らく多くの方がショップ99を連想されたのではないでしょうか?「なぜコンビニでは生鮮食料品を買えないの?」というニーズを汲み取り、『新鮮食生活が99円のワンストップコンビニ!(同社HPより引用)』というコンセプトで成功を収めている企業です。
ショップ99は、まさしく小売の新業態といえますが、その小売の新業態の生々流転を説明する理論として、「小売の輪の理論」なるものがあります。簡単にご紹介しておきましょう。
まず、小売の新業態が登場するときは、大抵、低価格を武器に参入してくるものです。そうでもしないと、既存の業態から顧客を奪ってこれないからです。ショップ99も、まさしくこの原則にのっとり、低価格で生鮮食料品を扱うコンビニとして登場してきています。しかし、他人の成功は大抵真似されるもので、やがては模倣者が現れます。しかし、模倣者が成功を収めるには、「安い」だけでは勝負にならないため、品揃えの拡大や高級化といった非価格競争に向かうこととなります。この段階で、競争の主軸は「低価格→高サービス」に移行するわけですが、その結果価格も「高価格」に移行すると、新たに「低価格」での新業態の参入の可能性を招くわけです。このように「低価格での新業態参入→高サービス高価格化→低価格での新業態参入・・・」を延々と繰り返して、小売業態が発達していく、と説明するのが「小売の輪の理論」なのです。
昨今のダイエー関連報道からすれば、低価格路線を修正する方向性は明確ですから、ダイエーはショップ99が成功を収めている領域に非価格競争を持ちかけてくることは明白であるといってよいでしょう。これだけ国費を投入して債務免除してもらった企業が、成功企業の模倣者として競争を仕掛けてよいものなのか、という議論は当然あるのでしょうが、本日はこの単純な「小売の輪の理論」でかなり多くの小売の新業態の栄枯盛衰が説明できるということを実感いただければ、本日のエントリーの目的は達成されたことになります。

Posted by Ken Kodama at 10:15 | Comments (0)

2005年04月04日

貿易保険の規制緩和

貿易保険の規制緩和の流れを受けた報道が、ここ数日の間に3件ありました。以下に簡単に引用しておきます。

3月28日 東京三菱銀行(NIKKEI NETより)
(引用始)
『経済産業省が所管する日本貿易保険は東京三菱銀行と提携し、貿易保険制度を活用した中小企業向けの新型融資を始める。商品を輸出する中小企業が代金を回収できなくなるリスクを補償するとともに、輸出債権を担保に銀行が融資をして、資金繰りを円滑にする。4月末から取り扱いを始める。 』
(引用終)

3月31日 東京海上日動火災(NIKKEI NETより)
(引用始)
『損害保険最大手の東京海上日動火災保険は30日、4月にも貿易保険の引受業務に乗り出す方針を明らかにした。貿易保険は政府の規制緩和策で民間開放が決まっており、これに基づく参入第1号となる。欧州の大手保険会社と提携して輸出先企業の信用情報を充実させるほか、保険契約手続きを大幅に簡素化することで顧客の拡大を目指している。 』
(引用終)

4月4日 日本貿易保険(NIKKEI NETより)
(引用始)
『独立行政法人の日本貿易保険は2007年4月をめどに、貿易保険のうち業界団体と契約する「組合包括保険制度」を見直す。現在は業界団体のすべての加盟企業に同じ保険を適用しているが、企業ごとに保険をかける製品などを選べるようにする。企業は保険の範囲を狭めるとこれまでより保険料が安くて済む。貿易保険は民間保険会社の参入解禁が決まっており、今回の見直しは規制緩和の効果といえそうだ。』
(引用終)

全く、異なる分野ではありますが、住宅ローンについても将来的な公庫の廃止を受けて、民間金融機関が競うように新商品を開発した経緯が連想されます。輸出に携わる中小企業の方は、今後新商品の動向を注視し、有利な保険商品を選択できるよう情報収集を怠らないように努める必要があります。
また、最後の報道は企業側に保険選択の自由が認められる、との趣旨のものです。こうした場合に必要となるのがリスクマネジメントの視点です。すなわち、自社の貿易に関わるリスク要因をしっかりと識別した上で、必要な保険を選択していく必要があります。保険料を削減するために、保険を選択しないという選択もありえますが、その場合はリスクを外部に出さずに自社で受けることを意味するので、万一の場合に、耐えうる財務状況にあるのかを検討した上で、意思決定を下すべきでしょう。

Posted by Ken Kodama at 20:46 | Comments (0)

2005年04月01日

持ち合い復活と「暗黙的談合戦略」

昨日は鉄鋼業界の株式持ち合いの報道が、本日は石油業界の株式持合いの報道が、日経新聞に登場しました。昨今の潮流を受けて、この動きを表層的に分析するならば、「ライブドア騒動を受けて敵対的買収から身を守るため、株式持合いをアナウンスし、そのアナウンスメント効果により、いざというときには持ち合い企業がホワイトナイトとして支援する」といったところになるでしょうか。しかし、今後、敵対的買収に備えて、同一業界内で株式を持ち合う動きは、日本全般に広がることはまず考えられず、伝播する業界は予測可能です。
上記2つの業界の共通の特色を考えていただきたいのですが、それは、いずれも(1)寡占状態にあり、(2)取り扱う製品がコモディティー製品であり差別化が困難である、という点です。こうした業界において、戦略的に操作しうる変数というのは、価格と供給量しかありません。むやみに価格を引き下げたり、供給量を急増すれば、一時的にはライバルを出し抜けるかもしれないですが、長期的には業界全体の超過利潤を減じてしまうため、こうした業界は「暗黙的談合」という戦略を必然的にとるわけです。もちろん、明示的に談合すれば法に触れるので、相手の出方を見ながら、価格や量を調整するわけです。
しかし、こうした馴れ合いの業界において、一番怖いのは、ライバルの裏切りです。温存された業界秩序を不意打ちする裏切りさえなければ、業界内はみなハッピーになるわけで、今回のような株式の持ち合いは、そうした裏切りのインセンティブを削(そ)ぐことになります。なぜならば、ライバルを出し抜いて圧倒的優位にたっても、自らの保有資産であるライバル企業の株式の価値が大きく減じるからです。
ですから、今回持ち合いを発表した二業界は、その業界特性から、業界全体の利益の保護という観点から持ち合いをしたくてうずうずしていたわけですが、ライブドアというピエロの登場により、「敵対的防衛から身を守る」という世間的に非難を浴びない口実を隠れ蓑に、長年の悲願を成就できたのだ、と考えることの方が、より妥当な分析だと思います。
ですから、上記の二要件にあてはまる業界を探り出し、株を買っておけば、短期的な利益を確保できるかもしれず、デイトレーダーの方には、一考の余地があるかもしれません。しかし、長期的投資を志向するのであれば、こうした業界には、非効率が温存される傾向が強いため、さらなる詳細な調査をしてから、投資の可否を判断されるのが賢明だと思われます。

Posted by Ken Kodama at 11:38 | Comments (0)