2005年06月30日

株主優待と株主平等の原則

本日の日経新聞の投資・財務面には『株主優待の明と暗』と題されたコラムの上が掲載されていました。今まで私は、株主優待が充実されていく様を、個人株主重視のための微笑ましい光景くらいにしか考えていなかったのですが、このコラムを読むと、株主優待というのは株主平等の原則という観点から照らしてよいものなのかを改めて考えざるを得ません。
まず、機関投資家と個人化投資家の間の差異というものを考えねばなりません。例えば、コラムに掲載されていたアサヒビールをポートフォリオに組み込んでいた年金基金等も多数あると思いますが、そうしたところは、もらったビールをどうしたのでしょうか?従業員の間で抽選を行ってビールを渡していたとしたならば、受託者責任の履行という観点から問題という気がします。もちろん、そうした優待銘柄が少なかったり、優待の金額が微小であった頃は大きな問題にならないでしょうが、本日のコラムには居酒屋チェーンのロコワイドの優待利回りが9.4%と記載されており、これほどの利回りを年金資産に回していないとしたら大きな問題です。
また、個人投資家の嗜好の問題もあります。仮にアサヒビールに将来性があると判断した投資家も、アルコールを受け付けない体質の方であれば、本来現金で受け取れるはずの配当がビールで支給されれば、投資を躊躇するかもしれません。
持合解消の流れの中、個人投資家を拡充せねばならないとの危機感から、企業は顧客に株主になってもらうことを思いつきました。これ事態は、素晴らしい発想だと思うのですが、株主優待の比重が従来に比べて強まる中にあっては、株主平等の原則というものに対する配慮が必要であるという気が致します。
明日のコラムは株主優待の「暗」の部分について書かれているのでしょうか?内容が楽しみです。

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2005年06月29日

中小企業とデット・エクイティ・スワップ

本日、ようやく新会社法が成立するとのことで、日経新聞は6,7ページに特集を組んでいます。この見開きを見て改めて思うのは、会社法が対象とする会社の多様性です。左のページの毒薬条項は、株式を上場している大規模な会社にしか関係のない世界です。対して、右のページの合同会社は、上場よりはるか手前にあるか、あるいはそもそも上場の意図がない小規模な会社を対象にしたものです。
さて、本日着目するのはデット・エクイティ・スワップがらみの改正です。日経新聞の記述を引用すれば、改正のポイントは以下の通りです。

(引用始)
『今後は弁済しなければならない価格が決まっている債権で出資額がその額を下回っているときは検査役の調査がいらなくなる。(中略)
条件を満たせば債権者と債務者の合意だけでできるようになり、財務改善の機動性が増す。』
(引用終)

上記の改正により、債務を株式にかえてしまうデット・エクイティ・スワップは行いやすくなるわけですが、では、これは大きい会社と中小企業のどちらを想定した改正であるかといえば、実は両方です。
大企業のデット・エクイティ・スワップといえば、例えば当サイトの過去のエントリーである『いまさら人に聞けない「デット・エクイティ・スワップ」の疑問』でとりあげたミサワホームHDなどの実例を我々は見てきました。では、中小企業とデット・エクイティ・スワップの関わりについていえば、それは金融庁から発表された、以下のリレバン関連の文書に見出すことができます。

リレーションシップバンキングの機能強化に向けて

上記ファイルの22ページ目に「資本と融資の分離」と題したセクションがあり、そこで中小企業金融において『デット・エクイティ・スワップの手法を有効に活用していくことが適当なケースもあるものと考えられる』と述べられています。ではどういう場合にデット・エクイティ・スワップが適当であるのかといえば、中小企業の借入金においては、返済時期が近づくと借り換えでまた借り直し、あたかも根雪のように借入金として残り続ける長期固定的な借入金というものがしばしば存在します。そんな借入金は、借入金ではなくて実質的には資本なのではないかと、この文書は言っているのです。実質的に資本ならば、デット・エクイティ・スワップで銀行の債権を株式にかえてしまいましょう、ということなのです。
ここで思い出していただきたいのは、かつて吹き荒れた貸し渋り・貸しはがしの嵐です。その大元には金融検査マニュアルの存在がありました。つまり、金融庁の指導は遅かれ早かれ現実のものとなるわけです。デット・エクイティ・スワップについても、新会社法で検査役の調査が緩和されるわけですから、翌年から、中小企業の株主として銀行が登場する事態が増加することも想定しておかねばならないでしょう。
「銀行」が株式を保有することは、本来的に望ましくないことです。ですから、同文書では、デット・エクイティ・スワップにより取得した株式は、将来的に投資ファンド等へ売却する青写真についても言及があります。ということは、株主総会で村上ファンドのような手ごわい株主に経営者がつきあげられる構図は、大企業だけのものではない、という可能性もあるのです。そして、そうした手ごわい株主に対して計算書類の説明責任を負う担い手として期待されているのが「会計参与」なのです。
デット・エクイティ・スワップのケースを見て分かるように、新会社法は法の条文だけを追いかけていたのでは見えないことが多くあります。横断的に様々な施策や社会の実態を理解することが、法の理解につながるのでしょう。

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2005年06月28日

優先株について考えてみよう。

本日の日経新聞の企業総合面では、株主総会で優先株の消却の提案が相次いでいる状況について報じられていました。優先株とは、なにが「優先」なのかといえば、配当の支払いや残余財産の分配において、普通株に対して優先的に取り扱われる株式のことです。その代償として議決権が制限されていることが一般的です。・・・と、ここまでが「優先株」で検索して出てくるサイト上の一般的な説明です。では、どのような企業が優先株を使って資金調達を行うのでしょうか?
本日の日経新聞11ページを見ると、「優先株の発行残高が大きい企業」のランキングが掲載されており、1位双日を筆頭に2位三菱自動車と続いており、言葉は悪いですが、瀕死の企業、あるいはかつて瀕死の状態であった企業が多く目につきます。瀕死の企業は損失続きで、自己資本が極端に細っていることが一般的で、何がなんでも早急に自己資本を積みますことが必要となります。
利益の出ない企業が自己資本を積みますには、増資するしか手立てはありません。しかし、瀕死の企業の増資にそのまま応じるというのは、かなり度胸のいる行為ですし、投資先の企業が万一つぶれてしまった場合、業績が悪化していくのを漫然と見過ごしていた既存株主と同じ取り扱いを受けるのも面白くありません。そこで、登場するのが優先株で、配当の支払いや残余財産の分配において普通株式より優先的な取扱を受けるということは、投資家側から見れば優先株は普通株式よりもリスクが小さいということです。普通株式とリスクの大きさを変えてやることで、リスクの大きい企業へ資金が回ることになり、これが優先株の意義であるといえるでしょう。
本日の日経新聞のランキングに掲載されている企業は成熟段階の企業ばかりですが、リスクが高いという点でいえば、ベンチャー企業も同じです。そこで、ベンチャーキャピタルがベンチャー企業への投資において使用するのが、やはり優先株です。創業者と同じ大きさのリスクは負いたくないけど、でもベンチャー企業に投資したいという場合に、優先株を使用して、よりリスクを抑えた投資を行うことが可能になるのです。詳しい点は、下記のサイトを参照にしてください。

優先株式で投資する理由(VEC)

さて、そんなメリットのある優先株ですが、本日の報道は、その優先株を買い戻して償却してしまう動きについてです。なぜに、かくも役にたった優先株は消却されてしまう運命にあるのでしょうか?まず、簡単に分かる理由としては、優先的な配当の支払いをしているわけですから、配当の支払いの負担が重い、ということです。買い戻して償却すれば、毎年の配当の支払いの負担はなくなります。
また、より重要なポイントは、優先株主の利益と普通株主の利益は対立するということです。優先株主はとにかく配当が欲しいわけですが、企業が瀕死の状態を脱すると、今度は攻めの経営に転じるために、キャッシュを企業の中に蓄えて投資を行うことが必要となってきます。したがって、普通株主は優先株主に毎年毎年莫大な配当が支払われるのが面白くなくなってくるわけです。したがって、過度な優先株残高を持つ企業が一度危機的な状況を脱すると、本日の新聞報道のように償却の運命を見るわけなのです。つらいときに頼られて、羽振りがよくなってくると邪魔にされる・・・なんだか放蕩息子を抱えた親の心境になってしまいます。

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2005年06月27日

買収防衛とコーポレート・ガバナンス

厚生年金基金連合会が、今年6月の株主総会で提案された買収防衛策の9割強に反対していることがわかったとの報道です。具体的には授権資本枠(発行可能な株式の上限の数)の拡大に反対しているわけですが、授権資本枠を拡大しただけでは、あくまでも「発行枠」が拡大しただけで実際に株数が増えるわけではないので、即、希薄化により株主価値が低下してしまうわけではありません。
では、どこで歯止めがかかるかといえば、取締役会です。新株を発行する場合には、取締役会の決議を要しますが、厚生年金基金連合会が授権資本枠の拡大に反対するということは、取締役会が株主利益の代弁者として機能していないと見ていることの現われであるともいえます。
では、なぜ日本の上場企業の取締役会が株主利益の代弁者として機能していないかといえば、社外取締役がほとんどいないからです。会社法で取締役がどう規定されていようと、所詮、社長をピラミッドとするヒエラルキーの中でがんじがらめの人々ばかりなのですから、株主利益と経営陣の利益が対立する場面が生じたならば、当然経営陣の利益の肩を持つわけです。
では、なぜ日本の上場企業には社外取締役が少ないのか?その点について、本日の日経新聞16ページではそうそうたる面々を集めて、紙上討論を実施し、冒頭の報道の中心人物である厚生年金基金連合会専務理事の矢野氏も討論メンバーに加わっていました。
興味深いのは「カリスマ経営者」と称される京セラ稲盛氏とユニクロ柳井氏の二人が、社外取締役そして取締役会の意義をよく理解していないという点です。このお二人は、企業経営の神様で、企業に莫大な利益をもたらしたという強烈な成功体験を持っているという点で共通しています。確かに企業に多くの利益をもたらすことが、株主の利益につながりますが、株主の利益を考えるにあたっては、利益の全体額ではなく、1株あたり利益で考える必要があります。株式交換により積極的にM&Aを推進する企業は容易に利益の金額を増やすことができますが、1株あたりの利益で見ると必ずしも株主利益の増加につながっていないケースも多くあります。このお二人のもたらした利益の増加は、希薄化のインパクトを無視しうるほど強烈なものであったため、企業の利益さえ考えていれば株主の利益につながったのでしょうが、それ以外の大多数のフツーの会社は、両者を峻別して考えることが重要です。
また、稲盛氏は『仮に月1回、1~2時間程度の取締役会に出席してもらったところで何も分からない。(引用)』といい、柳井氏は『(社外取締役の)人材が豊富とは思わない。成功した経営者が最も適任だろうが、・・・(引用)』と言いますが、私はこのような考え方は取締役会そのものの意義を理解していない現われだと思います。もし、社外取締役に分からない議論が取締役会で行われていたとしたら、それは(1)そもそも議題が細かいところに入りすぎでいるか、(2)経営陣の説明能力の不足を疑ってかかるべきでしょう。バフェットは投資対象の企業の社外取締役を多く務めましたが、彼自身、優れた経営者ではなく、優れた投資家にすぎなかったという点を忘れてはならないでしょう。
種を明かすと(ここが私がお人よしたる所以ですが・・・)、本日のエントリーは、先日読んだ日経ビジネス人文庫の『最強の投資家 バフェット』にかなり影響されています。著者は、あの日経新聞の激辛論説委員牧野洋氏で、バフェットの人となりやバリュー株の発掘法だけでなく、当エントリーのテーマであるガバナンスを考える上で、実によい著書ですので、お時間のある方は是非読んでみて下さい。

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2005年06月25日

「おんな」としての丹後局 ~50を超えて輝きを増す女優達~

昨日お休みしてしまったので、本日カバーのエントリーです。お休みなので、芸能ネタをお一つ。
みなさんはNHKの大河ドラマの『義経』はご覧になっていますか?私は日本史を恥ずかしいほど知らないので、大河はいつも敬遠していたのですが、今回はあの有名な義経と弁慶の出会いのシーンを見たくて、そのままはまってしまって、結構みています。驚かされるのが、テレビを最近あまり見ない私ですらほとんど知っている、超豪華俳優陣。そして、そのほとんどの配役が、我々がブラウン管を通して持つ「ステレオタイプのイメージ」とぴたりとはまったものとなっています。コミカルな南原清隆、熱血漢うじきつよし、理知的な中井貴一(ちなみに私同じ誕生日です。年は違うけど。)、元気がとりえの小池栄子、凛としてお美しい松坂慶子、そしてお人よしの蛭子能収・・・彼らはNHKプロデューサーの期待通りの仕事をこなし、また、演ずることにあまり経験のない俳優陣も、努力が伝わってきて、概ね、好感がもてます。
その中にあって、ひときわ別世界を作り出しているのが夏木マリが演ずる丹後局。ドラマを知らない人も「平幹二朗が演じる後白河法皇の奥さん役」といえば、なんらかのイメージを抱いていただけるかもしれません。でも、夏木マリの丹後局は凡人が思い描く丹後局像を完全に破壊して、つきぬけています。個人の方のブログを検索してみると、夏木マリの丹後局は「いっちゃってる」との表現をいくつか見かけ、私もまあ同感です。
なぜ、NHKが夏木マリを丹後局に配したかといえば、恐らく彼女が湯バーバの声を演じたという実績をかってのものだと思いますが、湯バーバと丹後局の共通点は「婆」という以外何も見当たりません。NHKの社員にあの丹後局像を生み出せるクリエイティビティがあるはずもなく、夏木マリ自らが役作りに励んだ成果なのではないかと私はにらんでいます。その役作りが、撮影現場でこれまたある意味「異界の人」平幹二朗との掛け合いにより、花開いたのではないかと思います。
日本の女優がこうした人間の本質に迫る名演技を見せ始めるのは、50を超えてからといった気がします。古くは、楢山節考の坂本スミ子、そして、近い将来では桃井かおりが「SAYURI」で演ずる芸者の置屋のおかみ等が、それに該当するといえます。
なぜ、50を超えて名演技が花開くかといえば、私は「彼女達が女を捨てることにためらいがなくなったから」と思っていたのですが、最近はどうも、この考えは人生を知らないションベン臭いガキンチョの考えではないかと思うようになってきました。異様なメークをし、甲高い声でしゃべるという点を捉えて「女を捨てた」というのは容易ではあるけれども、あの時代であの立場に置かれたならば、後白河法皇から寵愛を受けるための究極の媚態が、あのような形で結実したのではないかと思っています。ですから、50を超えて女優の演技に円熟味が増すのは、決して「女を捨てた」からではなく、自らの長い人生経験で色々な「おんな」のあり方が分かってきたからこそなのではないか、と最近は思うようになりました。
とはいうものの、日本のお若くお美しい女優の演技に面白みが欠けるのは、「女を捨てきれない」からという面が多分に影響していると思います。アメリカでは、「ゴシカ」でプライベートではトム・クルーズの恋人でありながら、ノーメークに近い状態で狂女を演じたペネロペ・クルズ、そしてブリジット・ジョーンズを演じるために太るというレニー・ゼルウィガー・・・日本の女優からこうした「武勇伝」を聞いたためしがありません。
夏木マリの公式HPはこんなにかっこよくしあがっており(長いフラッシュが邪魔ですが)、これが夏木マリの自分らしさなのでしょう。世間から「いっちゃってる」と評される丹後局を演じたところで、彼女の女としてのブランドバリューは少しも揺るぐことなないのです。若い女優の方、そして恐らくはより大きな責任のある彼女達をとりまく事務所のスタッフは、夏木マリを見習い、演技の幅を広げる努力をしてもらえば、我々がテレビや映画を見る楽しみが増えるのではないかと思います。

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2005年06月23日

オルタナティブ投資とは???

三菱信託から個人向けのオルタナティブ投資投信が発売されるとの報道です。「オルタナティブ投資」ってあまりぴんとこない方が多いと思うのですが、一体なんなのでしょう?
Alternativeを辞書でひくと「代替的な」とか「二者択一」とかでてきて、ますます訳が分からなくなります。実は、このオルタナティブという言葉は、私が知る限りでは、音楽の世界で早くから使われていました。Alternative Musicといえば例えばYanni(アメリカ版喜多朗みたいなシンセサイザー奏者)とかJean-Luc Ponti(ジャズ・バイオリニスト)といった、別の言葉で表現すれば「ニュー・エイジ」と評される人が多いようです。また、ロックだけに限定すれば、Talking HeadsR.E.M.といったあたりをひとくくりにしてAlternative Rockと呼ぶこともあるようです。では「オルタナティブ」ではないロックとはどういうのかといえば、例えばボン・ジョビとかジャーニーとかのコテコテの分かりやすいストレートなロックのことで、トーキング・ヘッズやR.E.M.は一癖ある、伝統的なロックとは一線を画したロックといえ、「オルタナティブ」という言葉は「伝統的ではなく新しい」といった具合に捕らえておけば、間違いないと思います。(音楽に興味のない人には蛇足でした。失礼しました。)
では本日紹介されている投信商品はなぜ「オルタナティブ」なのでしょう?「オルタナティブ」ではない伝統的な投資とは、株や債券を主体とした「パッシブ運用」又は「アクティブ運用」であるとされています。日本株のパッシブ運用であれば、日経平均225の銘柄全部を均等に買うのがパッシブ運用のイメージです。対して、日本株のアクティブ運用であれば、ファンドマネージャーが将来値上がりしそうだと目論んだ株だけピックアップして買うのがアクティブ運用のイメージです。両者共に、株式市場全体が上昇すればその恩恵に与り、株式市場全体が下落すれば、損失を被ります。
本日紹介されている商品は割安株を買うという点ではアクティブ運用であり伝統的な投資信託商品ですが、そこに先物の売りを組み合わせているという点が伝統的ではなく「オルタナティブ」なのです。ですから、上手くいけば、たとえ株式市場全体が下落していたとしても、値上がり益を得ることができるわけなのです。
さて、本日の新聞報道から私が「甘く危険な香り(by山下達郎)」を嗅ぎ取ったのは以下の一説で、引用いたします。

(引用始)
『株式市場全体の方向が見通しにくいなかで、三菱信託は市場の変動に左右されない確実な運用成果を求めるニーズが個人投資家にも広がっていると判断した。』
(引用終、強調は私による)

先物の売りをコンビネーションしているとはいえ、このファンドの基本はバリュー株投資です。バリュー株投資の成功者であるバフェットと村上ファンドはどのようにして成功したのでしょうか?
バフェットのスタイルは以下のとおりです。

上がらぬなら上がるまで待とうバリュー株(家康型)

企業経営にはあまり口出しせず経営陣を信頼して、10年単位の長期間で保有することにより利益を得てきたのがバフェットスタイルです。対して村上ファンドは、こんなところでしょうか?

上がらぬなら上げて見せようバリュー株(秀吉型)

日経新聞に嫌味を書かれながらも、株主総会に出席して経営陣を痛めつけ、モノいう株主として経営方針を影響を与え、株式の価値の顕在化に務めてきたのが村上ファンドスタイルです。
「三菱」信託がまさか秀吉型や信長型(???)をとることは考えにくいので、当然家康型でしょうが、バリュー株の価値が顕在するまでには長い時間を要することを投資家は覚悟すべきです。場合によっては、市場全体が上がって先物に損がでているにも係わらず、投資対象のバリュー株は値下がりし、現物先物のダブルパンチの損失を食らう可能性すらあります。本日の新聞の記述からはそうしたリスクが全く読めず、「オルタナティブってのは確実に儲かるらしい」というDQN(はしたない言葉で失礼!)投資家が泣きを見るのではというのが、私の心配です。


Posted by Ken Kodama at 13:09 | Comments (0)

2005年06月22日

木を見て森を見ず ~所得税改革~

政府税制調査会が所得税と個人住民税の改革についての報告書を公表したとの報道です。税制調査会の報告書については、ネット上からの閲覧が可能ですので、お暇な方は下記リンクよりご覧下さい。

個人所得課税に関する論点整理

新聞にも書かれていますが、書かれている内容の多くは個人所得税の増税につながることが多いです。廃止、あるいは見直しがほのめかされている所得控除のうち、一般的なサラリーマンに大きな影響をもたらすと思われるものを以下に挙げてみましょう。

・給与所得控除
・退職所得控除
・配偶者控除
・特定扶養控除

これらがサラリーマンの懐具合に具体的にどれくらいの影響を与えるかの試算については、そのうち、東洋経済かダイアモンドが特集を組んでくれるでしょうから、それまで待ちましょう。
これらの所得控除を廃止、あるいは見直す根拠に関しては、報告書を読む限り、理路整然としていると思います。また、税の専門家でなくとも読みやすい文章で書いてある点については評価したいと思います。ただ、この報告書が行っているように、現行の税制の個々の問題点の羅列が、所得税課税の基礎となってよいのでしょうか?まず、最初に全体を見渡す統合的な視点があり、その上で各々のポイントを見直していくべきではないのでしょうか?
私が、今後の税制改革において必要不可欠であると考える全体的な視点とは2つです。第一には政府全体レベルでの長期的な収支予測です。増税がいくらくらい必要なのかは、歳出削減の規模に依存しますし、仮に必要増税額の見通しがたったとしても、それを法人税・所得税・消費税・・・等のどこから増やすのか、そういった全体的な視点を持たぬまま、個別論点を突いていても、場合によっては、時代錯誤的な改革になってしまう恐れすらあります。
第二は、これは所得税改革なのですから、所得の分配の視点が欠かせないという点です。私が報告書を読んで意外に感じたのは、既にひたひたと迫りつつある所得の二極分化に関して、なんら言及がなかったという点です。現行の所得控除に矛盾があるからといって、どんどん廃止していってしまったら、所得の低い層にはかなり負担感が増すはずです。このような中で、「少子化対策」と称して小金をばらまくような小手先だけの改革を行ったとしても、一向に効果がないと思います。
と、こんな批判に対する予防線なのか、報告書の1ページ目には『目指すべき個人所得税改革のグランドデザインを描いていくに当たっての主な論点を整理するものである(引用)』と記されており、この報告書自体がグランドデザインではないんだよ、との断り書きがあります。じゃあ、グランドデザインはいつ、誰が作るのでしょうか???

Posted by Ken Kodama at 10:46 | Comments (0)

2005年06月21日

包括利益 VS 純利益

久々に会計ネタです。「包括利益」なるものが本日の主役ですが、まず、NIKKEI NETの報道を引用してみましょう。

(引用始)
『国際会計基準理事会(IASB、本部ロンドン)が企業の決算報告で「純利益」を廃止し、その代わりに「包括利益」を採用する検討を進めていることに対して、経済産業省や産業界が反発している。IASBは年内に結論を出す方針。経産省は純利益が企業の成長性を反映するうえで優れているとして、純利益の存続を主張する報告書をまとめた。』
(引用終)

「純利益」については、当ブログをお読みの方には改めて説明するまでもなく、P/L(損益計算書)の一番最後に来る数字のことです。対して、「包括利益」という言葉自体に馴染みがある方はあまりいないのではないでしょうか?「包括利益」と「純利益」というキーワードで検索してみると、えらく難しい論文しかひっかからないので、本日はこの「包括利益」を料理することといたしましょう。

【損益計算書は資本の増減の明細書】
利益が増えれば、自己資本も増えます。赤字であれば、その分自己資本は減ってしまいます。ですから損益計算書というものは、基本的には資本の部の増減の明細書であると考えて差し支えありません。
では、上場企業の2期間のB/Sの「資本の部」の差額が、P/Lのおしまいの「純利益」の額に一致するかといえば、世の中それほど甘くありません。一致しない原因は二つあります。
第一の原因は出資者である株主とのお金のやりとりです。株主から資本を払い込んで増資をしてもらったり、株主に配当金を支払う・・・こういった類の株主とのお金のやりとりについては、損益計算書にのせません。この点については、国際会計基準であれ、日本やアメリカの会計基準でも一枚岩で、将来的にも意見が割れることは考えにくいです。
第二の原因が包括利益と純利益の差異の原因でもあるのですが、まず具体例もみてみましょう。持ち合い株式を考えてみて下さい。株式持合いというのは、相手企業を支配する意図があるわけでもない一方で、すぐに売却して利ざやを稼ごうという意図があるわけでもない、会計的になんとも扱いにくいシロモノです。
株式持合い目的で1億円で株式を取得し、その株式が株価の下落により期末に5千万円となっていたとします。そうした場合、イメージ的には以下の仕訳をきることになります。

(借)自己資本 5千万円 (貸)持合株式 5千万円

もしこの株式が売買目的の株式であった場合は、仕訳のイメージは以下のようになります。

(借)株式評価損 5千万円 (貸)売買目的株式 5千万円

2つの仕訳を比較して気がつくのは、借方の科目の違いです。売買目的の株式であれば、「株式評価損」というP/Lの勘定を通して評価減を行うのに対して、持合株式の場合はP/Lを通さず直接資本を減少させているのです。このように株主とお金のやりとりをしているわけでもないのに、P/Lにのることなく自己資本を増減させる取引が存在し、それを含めるか否かで「包括利益」と「純利益」という異なる二つの利益の概念が生まれるのです。言うまでもなく、含める方が「包括利益」で含めない方が「純利益」です。
今は持合株式だけを例にとりましたが、本日の日経新聞には(一部の)デリバティブの評価損益等の取引も、「包括利益」と「純利益」の差異を産む取引として記載されています。では、これらはなぜP/Lに載せないのか、ということになるとだんだん難しくなってくるのですが、誤解を恐れず一言でいえば当期生み出された収益に関連がないからです。

【このバトルはP/Lの見せ方の問題】
産業界が反対だの、日本が反対だのと色々書かれていますが、日本の会計基準でも資本の部の数字には反映されているわけですから、基本的にはバトルがどういうところに落ち着こうともB/Sの数字が変わってしまうことはありません。その原因をP/Lに載せるのか否か、載せるのであればどういう載せ方をするのか、という点が論争のポイントです。
国際会計基準は、P/Lには包括利益のみを表示し、純利益を表示させない方向で動いているようです。先ほど見たように、基本的には「純利益 + 株式持合いの評価損益等 = 包括利益」なのですから、「純利益」を表示しないというのはいささか行き過ぎの感がします。こうした国際会計基準の動きの背景にあるのは、「そもそも利益とは何であるか」という、もはや哲学の領域です。会計界で神学論争していただくのは「どうぞご勝手に」ですが、財務諸表を活用するのは個人投資家というlaymenもいるのだということを忘れないでいただきたいものです。

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2005年06月20日

マックのつまずきの原因を考える

本日の日経新聞の9ページの『経営の視点』に、マクドナルドの業績の下方修正に関するコラムが掲載されています。一言でこのコラムを要約すれば、4月から導入された百円メニューは大幅な客数増をもたらしたものの、利益の増加に結びつくには至らなかった、といったところです。大幅な客数の増加については、これは当初からマックが目論んでいたことであり、4月の原田CEOのインタビューをもとに私が書いた関連エントリーがありますので、お時間がある方はそちらも参照してみて下さい。

マクドナルドは実は不動産業者???

実は私はマクドナルドのかなりヘビーユーザーでもあり(お里が知れてしまいますが・・・)、経営コンサルタントとしての立場だけではなく、顧客の視点からもマックのつまずきの原因を考えることができます。私が考えるつまずきの原因は以下の3つで、みなさんと一緒に順番に考えていきたいと思います。

①ワンコインメニューを時間限定にしなかった
4月の原田氏のインタビューで「時間帯ごとの売上高」という言葉があったことから、私はてっきりこのワンコインメニューは時間限定のものとばかり思っていました。例えば、昼時は混雑するけど、夕方4時~5時は客があまり入らない、といった情報をマックは蓄積しているでしょうから、そうした時間に限定してワンコインメニューを投入すれば、時間帯別の売上高がより平準化され、ワンコインメニューは利益の増加に貢献しえたはずです。しかし、私がマックを訪れる限りでは(といってもそんなに毎日のように行っているわけではありませんよ!)ワンコインメニューはいつでも買うことができ、店頭で割高なセットメニューの売上を奪っているのが目に付きます。

②「アーブ」が目に付きやすくなったメニュー体系
「マックのメニューには『アーブ』がある。」こう表現したのは、私がかつて勤務した金融機関の同僚です。『アーブ』というのは、『アービトラージ』の略で、いわゆる「価格のゆがみ」のことを言います。金融機関のトレーダーは「アーブ = 価格のゆがみ」をとらえて取引を行って、利益を手にしているのですが、その金融ジャーゴンをマックに使ってみたというそれだけのことですが、面白い表現だと思うので、ここに書いてみました。
「マックのアーブ」とは「ばらで買った方がセットで買うより安い」ということで、以前からマックのメニューにはアーブがありましたが、価格体系の変更によりこのアーブは、一層顧客にとって分かりやすいものとなってしまいました。なぜなら、大半のセットメニューは500円である一方、ワンコインメニューは1つ100円で、「ワンコイン × 5 = セットメニュー」という等式は、暗算が苦手な人にとっても、あまりにも明白だからです。
私自身、価格体系の改変後、マックで500円のセットを購入した試しがありません。お腹がすいているときであれば、380円のハンバーガーセットに100円のチーズバーガーを合わせて買い、合計額は480円でまだセット価格には至りません。また、小腹がすいたときは「シェークとアップルパイ」といった具合で、「200円なり」です。
『均一価格は客がメニューを選ぶ際、価格の高低で迷うストレスを解消する効果はあった。(本日の日経新聞より引用)』つまり、今回のメニュー改訂は顧客心理に着目したものですが、人間は簡単な四則演算をこなす、一応合理的な存在でもあるのだという側面を、あまりにも軽視したメニュー体系であるといえるでしょう。

③テークアウト顧客の軽視
マックにとって重要な顧客層というのは、私はテークアウトで購入する顧客だと思います。なぜなら、当然マック製品には店舗の地代コストが上乗せされていましますが、そのスペースを使用したりクーラーにあたったりすることなく、店内顧客と同じ価格で買っていってくれるからです。テークアウト顧客にとって重要な要素は、やはり味です。最近コンビニ弁当が進化を続け、味やヘルシー志向といった点でもひところとは比べ物にならないレベルまで向上したのに対して、マックは食に対するこだわりはほとんどなく、小手先のメニュー改変に終始し、新商品開発の努力を怠っています。
自らがフードビジネスの担い手であることを自覚し、食に対するこだわりをもたないことには、高い利益率をもたらすテークアウト顧客は離散してしまい、残ったのは百円シェーク片手に集団でメークを直す女子高生のみ、といったことになりかねないですよ。

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2005年06月17日

DOEって・・・

DOE。

このアルファベット3文字を見て、なぜかKABAちゃんの顔が頭に浮かんだという方は、芸能中毒症の疑いありです。KABAちゃんが在籍していたのは、dosですよ。

本日の日経新聞では、17ページの投資・財務面に、製薬大手が、このDOEという比率に沿って株主配分を厚くする、との記述があります。DOEってなんでしょう?
DOEはDividend On Equity(株主資本配当率)の略で、以下の計算式で求められます。

DOE = 配当 ÷ 株主資本 ・・・①式

さて、上の式を見てDOEは、あの有名なROE(株主資本利益率)に似ているなと気づかれた方は、センスのある方です。ここで、ROEの計算式を振替っておきましょう。

ROE = 税引後利益 ÷ 株主資本 ・・・②式

さて、企業の配当政策を考えるにあたって、忘れてはならないのが、配当性向です。配当性向は以下の計算式で求められます。

配当性向 = 配当 ÷ 税引後利益 ・・・③式

②のROEの計算式にも、③の配当性向の計算式にも税引後利益があるため、「これはなんとなく打ち消しあいそうだなー」という見当がつくはずです。ですから、DOEの計算式は、以下のように表すこともできます。

DOE = ROE × 配当性向
    = (税引後利益 ÷ 株主資本) × (配当 ÷ 税引後利益)

さて、上の式からDOEを配当政策の目標企業に掲げた企業は①ROEを増やすか②配当性向を増やすかすれば、DOEが目標値に達するということが分かると思います。ROEは経営努力の結晶なので企業の外的要因にも大きく左右されますが、配当性向は経営陣の裁量で決定できるため、DOEを配当政策の目標に掲げ、配当性向に調整機能を担わせることで、株主の受け取る配当は毎年安定的になります。配当性向のみを目標に掲げている企業は、ベースとなる純利益の金額が毎年大きく変動すれば、それに従って株主が受け取る配当の金額も大きく変動するのと、対照的であるといえます。
ちなみに、野村證券の配当政策はかなり株主重視の配当政策といえるでしょう。①まずDOEを目標値として掲げ、②税引後利益の金額が大きいときは配当性向も考慮に入れる、という二段構えです。
本日の新聞で登場した日本の製薬大手も、野村證券も、同業のグローバルプレイヤーと比べれば時価総額は小さく、常にM&Aの標的にされるリスクがあります。こうした外的な要因があるからこそ、株主重視の配当政策をとりいれているのでしょう。

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2005年06月16日

キャノンはすごい

キャノンがプリンターのインクカートリッジを生産する工場を800億円かけて大分県に建設するとの報道です。キャノンの動きに関しては当ブログで度々とりあげてきましたが、いい機会ですので、ここでその内容を振替っておきたいと思います。

キャノンの生産戦略に死角はないのか?

まず、上記のエントリーでとりあげたのは、キャノンの生産無人化の動きです。キャノンといえば、セル生産方式が成功した企業として有名だったのですが、その成功体験に満足せず、生産無人化という、より高いリスクテーキング志向の道を歩みだしたわけです。

金型内製

そして上記エントリーでとりあげたのは、いわゆる内製化の問題です。ソニー等名門企業がデジタル家電で苦しんだ、その最大の理由の一つが、部品の内製化率が低くなったことだといわれました。(詳しくは『デジタル変調と「内製化」』を参照して下さい。)そんな折、発表されたのが、キャノンによる金型の内製化でした。
そして、今回の工場設立の報道におけるキーワードの1つが、製造業の国内回帰です。今回のエントリーでは「製造業の国内回帰」という個別の問題を考えることはせず、タイトルを「キャノンはすごい」としたのは、こうした大胆な生産戦略を描ける経営陣の柔軟な思考そのものに焦点を当てたいからです。
キャノンの生産無人化の方針を「すごい」と私が思うのは、セル生産方式という人に焦点を当てた生産方式の成功体験を、ある意味否定しているからです。また、内製化や国内回帰の決断を「すごい」と私が思うのは、他の企業がコスト削減でアウトソーシングや海外生産を推し進める中、いち早くその方向性の問題点を見抜き周りの流れに左右されずに独自の決断を下したからです。「時期尚早」のツルの一言で会議が流れる、横並び志向の企業では絶対にできない決断です。
また、これら3つの生産戦略は莫大な投資を伴う、非常にリスクの高い戦略です。これほどまでに果敢にリスクテークする日本の企業を、私は他に知りません。莫大な投資でリスクテークできるその背後の理由は、①事業の選択と集中が的確で、②選び取った事業で競争に打ち勝ってきているからこそ、リスクテークできるのです。トヨタは細かいカイゼンの積み重ねであそこまで達しましたが、キャノンは大胆な自己変革で急成長し、両者のアプローチは大きく異なり、経営陣としてどちらを賞賛すべきかといえば、やはりキャノンでしょう。
最後に細かい点を一点。キャノンの営業利益の6割を消耗品が占めるとの記述が日経新聞にありましたが、これについては以下のエントリーをご参照下さい。

携帯電話とキャプティブ製品の価格設定

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2005年06月15日

眠る快楽

最近、職場のストレスでメンヘル系に障害が出て、十分睡眠が取れない人の話をよく聞きます。私も、会社勤務時代は同様の悩みを抱えていたのですが、そのような方に、当時私がとっていた「眠るレシピ」をご紹介致しましょう。
用意するものは2つ。アロマとCD。アロマについては、柑橘系は目を覚ますだの色々あるようですが、一般的にはラベンダーが眠りには効くようです。昔通っていたフィットネスクラブのティップネスで、「アロマリラクセーション」なるクラスがあったのですが、アロマの香りをかぎながら、自分の足の裏をモミモミしていたりすると、驚くことに、周りに2~30人の人がいるのに、必ず一人は、ガーガーいびきかいて寝入っちゃう人とかいるんですよね(笑)そのクラスでは3種類のアロマを使っていたのですが、最後に使うのはラベンダーが多かったようです。
さて、もう一つ欠かせないのが、耳をマッサージするような音楽。私が愛用していたのはミケランジェリの演奏によるドビュッシーの映像。まあ、ドビュッシーのピアノ曲であれば、他でも代替可だと思うのですが、ミケランジェリって人は完璧主義者で、ピアノを弾くタッチが他の人とは全然違うんですよねー。ピアノってたたけば誰でも同じ音が出る、って思っている方もいるようですが、弾き方次第でどんな音色でも出るんですよ。かくいう私も昔はピアノをたしなんだりして、ドビュッシーなら「月の光」か「アラベスク」レベルならとりあえず譜面を追うことはできるのですが、リラックスするどころか家族にイライラ感をもたらしていましたね(笑)
このミケランジェリというピアニストの音色が素晴らしいのは、彼が神経症的に完璧主義者だからなのですが、多くのファンが待っているのに突如日本公演をキャンセルさせたエピソードなどは面白いので、お暇があればリンクをはったサイトを眺めてみて下さい。
ラベンダーのアロマとミケランジェリのCD。さあ、これで今日からふとんに入るのが楽しみになるはずです!

Posted by Ken Kodama at 21:42 | Comments (0)

出版業界の返品率を考える

インターネット書店の急成長や出版市場の長期低迷を受け、出版取次大手のトーハン、日本出版販売(日販)が書籍の物流改革に乗りだすとの報道が、本日の日経新聞の企業面にありました。出版取次の二社が小売店舗を巻き込んだ情報システムの高度化により、情報の共有化で収益力の回復を目指す、というのが新聞報道の粗筋で、まあ、SCM的な経営を出版物流が取り込み始めた、といったところでしょう。
この記事で私が着目したのは、「返品率」の数値です。アマゾンでは返品率が7~8%である一方、モルタル店舗の返品率は3~4割との記述があり、この差は尋常ではありません。外資系のアマゾンは、合理的な経営をしているから、こんなに差が開いてしまうのでしょうか?
私は、恐らくこの差の原因は「平積陳列」にあると思います。本棚に一冊だけある本よりも、その下で10冊単位くらいで平積みにされている本の方が、なんとなく売れ筋の本であるような気がして、同様の内容なら、売れ筋の本を購入するというのが人間心理です。ネット専業のアマゾンは平積みなどする必要はありませんが、モルタル店舗のいわゆる「販促」として、ただ積まれるだけのための本の存在が、返品率を大きく押し上げているのでしょう。
本屋さんの陳列は、大きいところでも小さいところでも、似たり寄ったりです。でも、平積みで好調な売れ行きを連想させる陳列という発想から脱却した、21世紀の陳列法が存在するはずです。どんな陳列法がありうるのか?電車の待ち時間にでも考えてみて下さい!

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2005年06月14日

証券取引所の「自主規制」を考える

東京証券取引所は13日、上場審査などの自主規制機能の分離を求める金融庁に対して、分離を否定する報告書を提出したとの報道です。本日の日経新聞では、多くの関連記事が紙面を占拠していますが、分からない方には、何が問題なのかぴんとこないのではないでしょうか?もし何が議論になっているのか分からない方がいるとすれば、それは恐らく「自主規制」の意味が分からないからでしょう。そこで、東証が取りまとめた自主規制に関する報告書を手がかりに、この問題を考えてみたいと思います。

証券取引所の自主規制に関する研究会中間報告書(サマリー)

証券取引所の自主規制に関する研究会中間報告書

まず、「自主規制」という言葉の定義を報告書より引用しておくこととしましょう。

(引用始)
『一般に自主規制とは、同業者同士または同業者から構成される団体などが一定の目的を達するため、その構成メンバーに対し、財やサービスの提供などについて一定のルールを定めその遵守を求めることを指すと考える。』
(引用終)

まあ、少し小難しい文章ですが、自主規制とは法律による規制ではなく、同業者団体が自主的に定めるルールなのだといえるでしょう。では、何を目的としたルールなのかといえば、同報告書によれば、自主規制の目的については、3つの考え方があるとしています。

(引用始)
『①有価証券の売買等の公正・円滑の確保及び投資者保護
②公益又は投資者保護
③国民経済の適切な運営及び投資者保護』
(引用終)

この3つの考え方を論じだすとこのブログの手には負えなくなりますが、どのような考え方であっても、投資者保護が最重要の目的であると考えてよいでしょう。
さて、ではなぜ法律による規制だけではなく自主規制も併せておくべきなのか、といえば、それは『証券市場の特性を踏まえたいわゆる現場主義による機動的かつ実効性の高い規制が期待されたことによる(引用、強調は私)』と同報告書は述べています。
・・・本当に自主規制は、今まで「機動的かつ実効性が高」かったのでしょうか?大幅な株式分割による株価の歪みについては、随分前から指摘されていたことですが、証券業界がようやく重い腰をあげたのは、今年3月になってからのことです。詳しくは下のエントリーをご参照下さい。

新株売買翌日に VS 神業を持つオバチャン

なぜ、この時点でようやく証券各社が重い腰を上げたのかといえば、この問題が証券各社の重要顧客である大企業を悩ませ始めたからです。そう、ホリエモンが大掛かりな敵対的買収を仕掛けるまでの資金力を得たおおもとをたどれば、そこには大幅な株式分割による錬金術が重要な役割を果たしていたため、はじめて証券各社は重い腰をあげて自主規制に動いたのです。それまでも、大幅な株式分割で泣かされた個人投資家は多くいましたが、個人投資家は証券各社にとって重要でない、というのは言いすぎであるものの、モノ言わぬ顧客なので、自主規制に動かなかったわけです。
また、上記の証券各社による自主規制の数日前に、東証は東証でなんともぼんやりとした自主規制を打ち出しています。詳しくは、下記のエントリーをご参照下さい。

大幅株式分割に指針

規制当局、証券取引所、証券業協会、とルール作りの団体が3つもあることから、「どこかがルール作りに腰をあげてくれるだろう」的な押し付け合いの空気があることも否めないでしょう。
証券取引所と証券業界の自主規制をごちゃまぜにしましたが、いずれもこれまで決して機動的ではなく、またそれは「投資者保護」というよりは、より多くのお金を落としてくれる「資金調達者保護」の色合いが強かったわけです。東証が上場をすれば、新たな問題が発生する、というのではなく、利益追求の姿勢が今までより「鮮明」になり、直接の顧客である「資金調達者」よりの姿勢が更に明確になることが予想される、ということです。
では、どうすべきなのか?私の個人的な意見は、日本では自主規制には期待せず、理想的には、ルール作り関しては問題意識の最も高いと思われる金融庁に一本化していくべきだと思います。(かなり異端な意見ではあるとは思いますが)ルールを作るには、その根底に「なにがよくてなにがいけない」の価値判断、すなわち、モラルが必要とされますが、国民の大半が信仰を持たない日本においては、キリスト教国であるアメリカと比較すると、土壌となるモラルの欠落が著しいといえます。文化的背景から考えれば、わが国にはそもそも、「自主規制」は期待しにくい、というのが私の考えです。
まあ、前段落はかなり異端、かつ、過激な意見であることは承知なので、皆様に同調を求めることはしませんが、自主規制が目指す「投資者保護」の「投資者」とは、我々一人一人のことです。この問題に対する感心が、当ブログにより少しでも高まれば嬉しい限りです。

Posted by Ken Kodama at 10:50 | Comments (0)

2005年06月13日

猫に小判? ~ダイエーの「攻め」のシステム投資~

本日は新聞休刊日だったため、昨日の新聞記事からのレビューです。ダイエーが40億円かけて「攻め」のためのシステム投資を行うとの報道です。NIKKEI NETの文面だけからは、どんなシステムか分からないため、新聞から一部記事を引用したいと思います。

(引用始)
『新システムでは店員が無線対応の端末を携帯し、作業を店頭ですべて行えるようになる。顧客の注文で別サイズの衣類を探す場合などメーカーへの発注状況や他店の在庫状況が即座に分かる。』
(引用終)

このブログをやってて良かったと思うのは、こういうときです。このシステム、どこかで聞いたことはありませんか?実は当ブログで昨年の9月に取り上げた丸井在庫管理のシステムとそっくりです。当時のエントリーは下記をご参照下さい。

丸井の在庫管理システム

当時のエントリーでは、私は丸井の在庫管理システムを褒めちぎっていますし、今も基本的にその考えは変わりません。私の某社での勤務経験から、このシステムの有効性がよく分かるからです。でも、丸井で有効なこのシステムはダイエーでも果たして有効なのでしょうか?
ダイエーはご存知の通り、「食に経営資源をシフトする」リバイバルプランを掲げています。これについては、私の今年3月のエントリーをご参照下さい。

ダイエーのリバイバルプランを考える

食に経営資源を集中する戦略をとるのであれば、システム戦略も経営戦略と整合性をとって、「攻めの投資」を行うべきは、やはり「食」分野のはずです。生鮮食料品売場ではこの無線端末は役に立たないはずで、「ここから3駅先にあるダイエー鴨居店には万能ネギの在庫が残っています」といっても、下手をすれば主婦から平手打ちを喰らうのがおちでしょう。
もちろん、ダイエーでもこのシステムは衣料品に使うのでしょうが、食に経営資源を集中するといっているダイエーが、今後他店から取り寄せてまで買いたくなるような衣類を扱うスタンスであるのか否かという点が重要だと思います。そこまで魅力的な衣料品を扱うつもりならば、衣料品も看板に掲げた「総合スーパー」道を、まっしぐらに進めばよいはずです。衣料品の扱いを曖昧にしていながら、衣料品分野で「攻め」のシステム投資を行うのはナンセンスな気がします。
また、ダイエーの新CEOと新COOはつい先日就任したばかりなのに、こうした重要案件の決裁を就任早々迫られて押し切られてしまう、トップの地位の相対的な弱さなどを、この報道から推し量ることができます。(この部分は憶測にすぎませんが)ダイエー大丈夫なんでしょうか?ダイエーは恐らく当ブログで取り上げた企業としては、回数はナンバーワンだと思います。そこまで取り上げると、なんだか情が入ってしまいます。

Posted by Ken Kodama at 20:43 | Comments (0)

2005年06月10日

ノンリコ・アパートローン

本日の日経新聞7ページには「返済原資限定」タイプの個人向けアパートローンのコラム記事が掲載されていました。「返済原資限定」とはどういうことかといえば、このアパートローンの場合、返済原資をアパートから得られる賃料に限定するということです。ですから、このローンが変動金利であったとすれば、この先金利が上昇して、毎月の返済額(支出)が賃料(収入)を上回ってしまうような事態になったとしても、奥さんのパート代からやりくりしたり、目玉を売ったりして金策する必要はないということです。
これはアパート投資を考えている人にとっては、大きなメリットです。しかし、メリットがあればかならず代償があるのが金融の世界です。こうしたタイプのローンは「ノン・リコースタイプ」のローンと呼ばれますが、一般的には、ノン・リコースタイプのローンは、その他のいわゆる普通のローン(リコースタイプ)に比べて金利が高めに設定されていることが通常です。
ローンを借りる側は、リスクを軽減されるメリットを享受できるために高めの金利を支払うこととなりますが、銀行側から考えれば「高めの金利を受け取ってリスクを引き受けている」ことになります。では、銀行側が引き受けているリスクはなにかといえば、端的に指摘している一文を引用すると、「住宅販売会社の経営悪化によるリスクを抱え込むのと同じ(本日の日経新聞より引用)」ということになります。
つまり、不動産市況が悪化して賃料の水準が引き下がれば、このローンで融資している銀行は大きな損失を被るわけですから、こうしたタイプの融資を行う銀行は不動産マーケットのリスクを抱え込んでいることになるのです。リスクを積極的に引き受けるには、そのリスクについての専門的な知識が必須で、そうした事情からこうしたタイプの融資を行っている金融機関は不動産関連業者とタイアップしているのです。
東京スター銀行のサイトを見ると不動産投資ローンを紹介するページがありますが、気をつけねばならないのは、ここで紹介されている不動産投資ローンはノン・リコースタイプではない、ということです。では、本日の記事のノンリコタイプのローンはどこで紹介されているかといえば、こちらのサイトで、失礼ではありますがサイトの見た目もあまりきれいではなく、東京スター銀行のサイト内で扱っていないところを見ると、不動産マーケットのリスクを抱えることに躊躇しているのかな、という気が致します。
個々のケースを細かく見ないと断定的なことはいえませんが、一般的に、私は変動金利型のリコースタイプの不動産投資ローンはお勧めしません。金利が低い現時点で見ると利回りはものすごく高くなるかもしれませんが、10年後の金利について、誰が確定的なことがいえるのでしょうか?15年くらい前にタイプトリップしていただいて、その頃のあなたは、そして専門家のエコノミスト達も含めて、誰が現在のゼロ金利を予測しえたでしょうか?変動金利型のリコースタイプの不動産投資ローンでマンション投資を行うというのは、まあ、投資というよりばくちに近いと考えた方がいいでしょう。自分が抱えるリスク要因が理解できないのであれば、手を出さぬが賢明です。

Posted by Ken Kodama at 10:38 | Comments (0)

2005年06月09日

プリンシパル投資と証券アナリスト

フジタ経営再建でゴールドマンなどが410億円出資するとの報道です。昨日のエントリーは、なんともタイミングよくプリンシパル投資をとりあげてしまいましたが(もちろんフジタの報道は予知しておりませんでしたが、不思議と微弱な予知能力に導かれることが時々あるのです。オカルトっぽくてすみません。)、もちろん本日のこの報道も、ゴールドマンの「プリンシパル投資」ビジネスの一環です。
昨日は「三井住友銀行を主導したゴールドマン内部の組織構造に興味はない」と素っ気なくしめましたが、証券業界全体の問題として考えると、証券会社がプリンシパル投資への傾斜を加速化するにあたって、無視できない問題があります。それは、証券アナリストの独立性という、昔からある問題です。
例えば、記憶に新しいエンロンですが、エンロンから多くの引受案件を受けて手数料を受け取っていた証券会社では、エンロンをお客さんとする「投資銀行部門」が「証券アナリスト」部門に圧力をかけて、エンロンをほめちぎるレポートを書かせていたことが問題になりました。(こちらの日銀レポートなどをご参照下さい。)
手数料ビジネスですらこうなのですから、自分が長期保有を行う「プリンシパル投資」への比重が増えた場合、同一証券会社お抱えの証券アナリストは中立なレポートを書き続けられるのか、おおいに疑問です。もっとずばりいえば、ゴールドマンの建設業界のアナリストのレポートは、今後信頼してよいのか、ということです。仮に「フジタ」はレーティングしないという決定をゴールドマンがしたとしても、他社のレポートの表現のさじ加減で、「フジタ」を浮き立たせることは可能でしょう。
こうした証券会社内部組織に端を発する「利益相反」という問題を考えると、全く独立系の証券分析専業の会社が出現してもよさそうな気がしますが、人気アナリストの年俸は2~3千万円と言われ、レポートの販売価格でビジネスが成立するのか疑問であるといわざるを得ません。
ホリエモン騒動で話題になったMSCBも証券会社と一般投資家の間に利益相反をもたらす取引で、今この時期、証券会社の利益相反について考察を深める時期に来ているといえるのではないでしょうか?

Posted by Ken Kodama at 10:34 | Comments (0)

2005年06月08日

プリンシパル投資、はぁ?(摩邪風)

本日日経新聞7ページに、大手証券会社がROE向上のために「投資」に活路を見出そうとしているとの記事が紹介され、「プリンシパル投資」に積極的だとの報道がありました。しかし、多くの方にとって「プリンシパル投資」といっても「はぁ?(摩邪風)」といったところでしょうから、この言葉について少々考えてみたいと思います。

【プリンシパル投資とは ゴールドマン・サックス等による定義】
本日の日経新聞記事でも感じられるように、この領域で圧倒的に強いのがゴールドマン・サックスです。そこで同社のサイトの定義を参考にすることといたしましょう。同社のプリンシパル投資部門の英語と日本語のページがあるのですが、なぜか日本語のページの方は、分かりやすい説明が削除されているため、英語のページや他の金融用語定義集を参考に「プリンシパル投資」の特徴を明らかにすることといたしましょう。

・株式や不動産を買い取り、被買収企業の経営陣と一丸となって資産価値を時間をかけて高める手法。
・最終的には、売却によるリターンを実現して投資回収することが目標。
・インベストメント・バンキングが手数料ビジネスであるのに対し、プリンシパル投資は株式リスクを積極的にとる。

つまり、手数料ビジネスではなく、自らエクイティ・リスクをとるところに、インベストメント・バンキング(投資銀行)業務との差異があります。そういうと、「昔っから、証券会社って自己勘定でトレーディングとかやってるじゃん」と突っ込まれそうですが、自己勘定のトレーディングとプリンシパル投資の違いは、投資期間が短期か長期か、また、投資先の経営に関与するか否かに差があるといってよいでしょう。日経新聞や週刊誌でも報道されていますが、旅館やゴルフ場を買いあさっているゴールドマンの部隊はこのPIAという部門になります。本日の記事の冒頭に、ゴールドマンの三井住友銀行の優先株買取に関する記述がありましたが、旅館・ゴルフ場と比べると明らかに異質で、三井住友銀行の優先株買取を主導したゴールドマン内の組織に関しては、私は知りませんし興味もありません。

(当初一部分引用をしておりましたが、無断の引用はクレームがくるかもしれないので、表現を改めて内容を若干修正しました。)

Posted by Ken Kodama at 10:18 | Comments (0)

2005年06月07日

ネットの音楽配信とリスナーの行動変化

音楽とビジネスが交錯する話題は私にとっての格好の題材ですが、アップルが8月上旬に日本で、インターネットによる有料音楽配信サービスを始めるとの報道です。大ヒットしている端末の「iPOD」とのリンクにより、かつて音楽を乗せる媒体がレコードからCDへと移行したように、CDからネット配信への移行がこれをきっかけに加速度的に進むのではないかと予想されます。また、本日の新聞では触れられていませんが、ネット配信への移行はリスナーの行動にも変化を与えるものと考えられ、結果として音楽市場のパイの縮小につながるのではないかと懸念もしています。以下、私の私見におつきあいいただければ幸いです。

【価格低下による裾野の拡大】
音楽市場のパイの縮小を予測するのですが、やはり「一曲百五十円」という価格設定は従来のCDシングルに比べて圧倒的に安く、これによるリスナーの裾野拡大も期待できるかもしれません。なぜ、ここまで安くなるかといえば音楽をのせるためのCD、ケース、及びそれらを運ぶための流通網が不要となるからで、先日とりあげたQBハウスの話も少し連想させられます。

【薄れる「アルバム」の意味】
より本質的なことは「CDがなくなる」「ケースがなくなる」といったことではなく、「アルバム」という十数曲からなる集合の意味合いが薄れてしまうのではないかということです。ネット上でも「アルバム」毎に購入するということも可能ではありますが、「一曲百五十円」という価格設定のもと、単品買いのリスナーが増えるものと考えられます。「アルバム」という集合の意味が希薄になるということは、曲の集合の編集権がリスナーに渡ることを意味しますが、これはミュージシャンの創作欲をそぐことになるのではないかと、私は懸念するのです。
例えば、30代後半以上の方はご記憶のクインシー・ジョーンズのヒットアルバム『愛のコリーダ(The Dude)』ですが、このアルバムでクインシー・ジョーンズが目指したかったものは「ジャズとソウルの融合」です。シングルカットされた「愛のコリーダ」を聞くだけでも、ファンキーなボーカル、リズムの中に、ハービー・ハンコックが奏でるなんともジャジーなエレピが聞こえ、確かに1曲だけでも「ジャズとソウルの融合」は楽しめます。しかし、アルバム8曲目の「ヴェラス」のようにトゥーツ・シールマンスが奏でるハーモニカ、口笛&ギター(口笛とギターをユニゾンさせていて、スキャットとギターをユニゾンさせるジョージ・ベンソンに似ています)による明らかにジャズ色の濃い曲と同じアルバムに編集することにより、もっと大きな意味での「ジャズとソウルの融合」を我々は堪能できるわけで、リスナーの単品買いが加速化すると、こうした芸術性の高いアルバムを生み出そうとする意欲がアーティスト側に薄れてしまうのではないか、というのが私の懸念です。

【懐かしき「ジャケ買い」】
レコードの時代には試聴機すら整備されておらず、ジャケットの印象だけで中身を全くきかずにアルバムを買ってしまう「ジャケ買い」なる行動もありました。CDの時代になっても、大きさが縮小した分インパクトには欠けますが、「ジャケ買い」は残っていましたが、ネット配信となると、こうした衝動的な購買行動は少なくなってしまうことでしょう。
衝動買いがなくなるということは消費者が賢くなるということで、決して悪いことではありませんが、しかし、「ジャケ買い」という消費行動がなければ、果たしてアニタ・ベーカーはあれだけ急速に受け入れられたのかと、私は思うのです。この、歌のうまさへの期待と都会の洗練と土の香りと人間の強さが同居したジャケットがなければ、彼女の実質的なメジャー・デビュー・アルバムである『ラプチャー』は、あれだけの大ブレークをすることはなかったでしょう。
ネット配信では「パッケージによるマーケティング」を行うことができませんが、一方で動画の配信というより強力なマーケティング・ツールがあるものの、製作コストは動画の方が高いはずです。有効なマーケティング・ツールが一つなくなるという点で、私は音楽市場のパイ縮小につながるのではないかと懸念するわけなのです。

こうした音楽の技術革新に対してアーティスト側はどう考えているのでしょうか?著作権問題等でも鋭い発言をしてきた坂本龍一氏あたりのご意見を聞きたいところです。(ちなみに私は坂本氏と握手&メール交換したことがあり、人生最大の自慢です!この自慢したくて坂本氏の名前を出したわけではないんですが・・・)

Posted by Ken Kodama at 10:07 | Comments (0)

2005年06月06日

公的年金の運用を考える。

年金資金運用基金(年資基金)の累積損失が、株高により2004年度末時点でほぼ解消したことが明らかになったとの報道です。もちろん、これは「めでたい」報道ではありますが、年金の運用は長期的な視点で考えねばならず、短期的な損益に一喜一憂するのはあまり賢明ではありません。そこで、我々の公的年金の運用を預かる年金資金運用基金運用方針について考えてみたいのですが、当サイトをご覧いただいている方で、我々の公的年金の運用方針をご存知の方というのはどのくらいいるのでしょうか?恐らくかなり少ないと思われますが、こうした国民の無関心が年金不安の大きな原因ともいえるので、これを機に是非、公的年金の運用方針にご関心を持っていただければと思います。

【目標利回りは3.2%】
資産運用においては、まず目標とする利回りを算定した上で、それに基づいて、アセット・アロケーション(資産クラスへの配分)を考えます。これは、個人の資産運用でも同じなので、年金資金運用資金の方針の決定のプロセスを見ておくことは、我々の資産運用を考える上でも参考になります。
まず、目標とする利回りは3.2%であり、その根拠は以下のように書かれています。

(引用始)
『平成16年の年金財政再計算は、物価上昇率1.0%、賃金上昇率2.1%という前提のもと、名目の予定運用利回りを3.2%と設定している。このことを踏まえ、基本ポートフォリオは、実質的な運用収益を確保するため、名目の期待収益率と賃金上昇率等との差が一定以上確保されるような資産構成とする。さらに、給付に必要となる現金収入を効率的に確保できるよう、インカム及び流動性に配慮したものとする。』
(引用終)

つまり、この目標利回りは賃金上昇率と物価上昇率をカバーするに足る利回りであるということですが、少子高齢化の進展に伴う将来の給付減に対しては、運用利回りによるカバーがなされていないという点にも留意する必要があるでしょう。

【基本ポートフォリオの構成】
上記の目標利回りを受けて、アセット・アロケーションは以下のようになっています。

(引用始)
国内債券 67%
国内株式 11%
外国債券 8%
外国株式 9%
短期資産 5%
(引用終)

3.2%という、「長期的な利回り」としては控え目な水準であるため、株式の比重がかなり少なく抑えてあるのが特徴的だといえます。年金運用という長期スタンスの特性を考慮に入れると、もっと株式等のリスク資産を増やしてもいいのではないかという気が致します。

【その他の情報】
平成15年度の資金運用業務の概況書を見ると、その他の興味深い情報が満載されています。例えば5ページでは、アセットクラス間の相関係数が表にまとめられていますし、12ページにはパッシブ運用の比率がグラフになっています。48ページではパッシブ運用とアクティブ運用に分けた運用成績が表にまとめられていますが、株式においては、やはりパッシブ運用に軍配があがっているようです。

我々の資産である公的年金の運用状況をチェックすることは大切ですし、また、個人の資産運用を考える上での重要なヒントも詰まっていますから、お時間のあるときに、軽く眺めてみることをお勧め致します。

Posted by Ken Kodama at 19:12 | Comments (0)

2005年06月02日

ネクタイの底力

ノータイ姿の経済財政諮問会議の写真が、本日の日経新聞にちらりとありましたが、改めてネクタイの底力を知らされた感じです。
ネクタイがないと、「ヒモ」に見えてしまう方、「法定に出廷した罪人」に見えてしまう方、平日の昼間鳩に餌を与えているオジサンにだぶってしまう方、フツーに「危ないオジサン」になってしまう方・・・小泉総理は髪型で得してますね、芸術家になってしまいます。「私は指揮者です」といっても通ってしまう感じ。

Posted by Ken Kodama at 19:54 | Comments (0)

地震デリバティブ VS 地震保険

天候デリバティブ商品が好調であるとの報道が本日の日経新聞にありました。天候デリバティブ商品に関するエントリーは、1年前のものがありますので、そちらをご参照下さい。

損保ジャパンの天候デリバティブ商品

さて、新聞記事中には、「地震デリバティブ」なる、私にとっての初耳の用語がありました。地震といえば「地震保険」というのが定番です。地震保険と地震デリバティブはどう違うのかと思って調べてみたら、こちらのサイトによくまとまっていました。両者の違いの最も重要な点は、実損填補をするか否かという点です。損保会社では、実損填補をしない商品には「デリバティブ」という名前をつける、というネーミングスタンダードが定着してきているようです。ですから、損失がでていようがいまいがに係わらず、気温が一定値を上回っていたり下回っていたりしたら、お金を払うのが「天候デリバティブ」であり、地震で家が壊れていようがいまいがお金をもらえるのが「地震デリバティブ」なのです。
ですから、さきほで紹介したサイトにも書いてありますが、地震デリバティブがリスク・マネジメントの一環として意味を持つのは、間接的な損失に備えるためです。例えば、地震の心配のない北海道(本当はどうかよく知りませんが)に工場や本社を持つ企業が、その売上の9割方が静岡県に依存しているような場合、東海大地震が来てしまった場合、地震保険に加入していてもお金は一切入りませんが、地震デリバティブなら、お金が入ってくるのです。
しかし、しばらく前のニュースで、「損保会社が最近地震保険への加入を引き受けなくなってきている」というのを目にしており、こういう報道が出始めると、「そろそろ本当に大地震がくるんだなー」と実感させられますね。

Posted by Ken Kodama at 19:44 | Comments (0)

2005年06月01日

ヤフー・ファイナンスのパワー

ヤフーが、日興コーディアル証券とイー・トレード証券と提携し、証券仲介業に参入すると正式発表したとの報道が本日の日経新聞1面を飾りました。異業種からの証券仲介業参入を表明する企業は多くありますが、1面で扱うヤフーは別格ということなのでしょう。
実は、私もこのブログを運営していて、ヤフー・ファイナンスのパワーを見せつけられることがあります。私のサイトへの訪問者数(PVとは異なる概念で、同一IPアドレスから1日に複数回訪れても、1人としてカウントされます)は、ここ最近、平日は1日あたり150人から200人で安定しています。そのうち、2回以上訪れていただいたリピーターの方は、1日あたり40人前後で、残りの100~150人くらいの方は、検索をしているうちに、偶然たどりついてしまった、という方々です。
なぜ、こんな話をするかといえば、1日の訪問者数がときに3倍近くの500人近くに増えることがあるのです。なにが起こったのかとびっくりして調べてみると、ヤフー・ファイナンスからのアクセスなのです。私のサイトには株式投資家に役立つエントリーが数多くあると自負しています。それで、そのエントリーをどなたかが、ヤフー掲示板にURLを貼って下さっているようです。例えば、下記のようなエントリーが、過去にヤフー掲示板に貼られました。

大京再建と「減資による株主責任の明確化」

「良いMSCB」など存在するのか?

はじめの方のエントリーはダイエーの掲示板にはられ、減資の意味が分からない方にご好評をいただいたようです。また、後半の方は、自ら株主である企業が突然MSCBを発行してしまい、わらをもつかみたい思いで、私のエントリーを眺めてくださっているようです。ヤフーは株式の銘柄毎に、語り合う掲示板がありますが、その各々の銘柄の掲示板を見ている人が、少なくとも200~300人いるということが、私のサイトをカウントすることで分かります。また、必ずしも、掲示板を見る全ての人がURLを踏まないでしょうから、掲示板を見る人は、銘柄あたり1日1,000人くらいはいるのではないでしょうか?
私自身は最近は株式投資はしていませんが、このエントリーを書いたり、他に調べものをするときに利用するのはヤフー・ファイナンスです。やはり操作性がよいし、グラフとかも美しくみやすいと思います。
と、そんな具合に株式投資家に圧倒的な支持を受けているヤフー・ファイナンスですが、新聞でも述べられていたように、証券会社を買収するわけでもなく、証券仲介業とは、少々拍子抜けな感じもします。ただ、ヤフーの発達の経緯を考えてみると、広告収入ほぼ100%からスタートし、最近ブロードバンド接続ビジネスとの収益比がほぼ50:50くらいになってきたわけです。今までのヤフー・ファイナンスは広告収入を増加させるためのポータルへの人寄せという役割にすぎなかったわけで、そう考えると、こうした段階を踏んだ事業拡大も賢明といえるかもしれません。
「コストで勝負」のネット証券だけでなく、日興コーディアルを提携先に加えた点が興味深いです。ネットのヘビーユーザーに対面営業が受け入れられるのか、日興コーディアルの健闘を見守っていきたいと思います。

Posted by Ken Kodama at 20:13 | Comments (1)