久々の更新で、かつ久々の時事ネタかつ金融ネタ。しかし、今年の夏は本当に忙しくてかつ暑くて、かなりバテ気味です。皆様も是非お体にお気をつけあれ。
【証券化→オリジネーターのモラルハザード→リスク総量の増大】
で、渦中のサブプライム問題だが、この問題がなぜこれほどまでに株式市場に影響を与えるかについては、正直よく分からない。本日の日経平均も急反発しているようだし、市場はヒステリックに反応しすぎたのかもしれない。しかし、問題の端緒となったアメリカのサブプライム融資については、私は問題は深刻であると考えている。
アメリカに限らずとも、日本の金融機関も住宅ローンの貸し出しにおいては、もはや証券化という仕組みを抜きにしては語れない。簡単に言えば、自社のローン債権をまとめて証券化して、リスクを負ってくれる誰かに転売するのである。
住宅ローンと20年、30年付き合わねばならないならば、オリジネーターである金融機関だって、そりゃあ慎重な融資姿勢で臨むこととなる。でも、バランスシートから切り落とせるのであれば、オリジネーションフィーの極大化を目指せばよいのであって、貸し倒れリスクにはそれほど神経をとがらせなくてよい。だって、奇特な他の誰かがそのリスクを喜んでとってくれるのだから。まあ、実際のところは劣後部分は完全に転売できなかったりして、オリジネーターが完全に貸倒リスクから逃れられることはないようだが、証券化が登場する前と後とでは、貸倒リスクに対する認識が甘くなったとする推論は成立するであろう。
その単純な帰結としては、オリジネーターはフィーの極大化を目指してローン商品を「売って、売って、売りまくる」ことを目指すこととなり、その結果として全世界レベルで見れば、金融リスクの総量は証券化誕生前に比べ、かなり増大しているはずである。
【オフバランスした積もりがオンバランス】
で、証券化により銀行から外されたと思っていた貸倒リスクは、やはり実は銀行が部分的に負っていた、というのが新聞報道から読み取れる事実である。高リスクの証券化商品を買い漁るファンドへの融資の担い手として、銀行はファンドに資金を供給する。この辺は銀行の内部事情に通じていないので憶測になるが、ファンドへの融資担当者が住宅ローン債権の質に対する分析が行いうるかどうかは、はなはだ疑問である。仮に行っていたとしても、定量的な分析のみしか行いえず、定性的な分析は不可能に等しいであろう。「ファンドマネージャーとしての実績」のようなものも、当然ファンドへの融資を考量する上でのキーファクターとなる。でも、住宅ローンが焦げ付けばみんなアウトなんだけどね。
ここで私が気になるのは、ローン債権が回りまわってファンドへの融資という形でB/Sにのっかって、しかもその融資担当部門はリテール部門からホールセール部門へと、およそ住宅ローン債権を管理するにふさわしくない部門に担当が鞍替えされている点である。
しかも、日本の金融機関もこの問題により評価損を計上するという。その根底の思想を探るには、過去に書いた下記のエントリーが参考になると思われる。
ここに書いたように、おそらく金融機関は究極的には『信用リスク全体のインデックスに連動したパッシブ運用のポートフォリオ』を組みたいのだろう。個人の資産運用としては、インデックスファンド信奉者である私も、もしこういうストラテジーを銀行が持っているとしたら、大いに疑問を抱く。だって、銀行は信用リスクのプロなのだから。地域差、業種、個人の所得別等々で強い分野、弱い分野があるはずである。そうした独特のリスクを手放して一般的なリスクを保有するようなことをしていたら、収益極大化の観点でも望ましくないはずだし、モラルハザードを推し進める恐れもある。
今回のサブプライム問題をもってしても証券化自体の善悪は新聞報道で見る限り問われていないようだが、これを気に一考してみてもよいのではないかという気がする。