2005年12月08日

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『オーラの泉』が職場に進出??? 21世紀の人材育成と「スピリチュアル」

先日のエントリーで、私は『オーラの泉』の美和明宏氏と江原啓之氏を「金髪の魔女と得体の知れない落語家」などと書いてしまったが、実は両方とも、私は結構好きだったりする。で、昨日も中島啓江が母親の思い出を語り、アメージング・グレースを熱唱するのを食い入るようにみてしまったのだが、こうした精神世界を扱うテレビが深夜枠とはいえ、お茶の間に進出したことの意義は深いと思う。科学では説明できない領域を扱っているという点を強調して、『オーラの泉』を例えば『FBI心理捜査官シリーズ』や一連のUFOモノと同列で並べる方がいるかもしれない。しかし、『オーラの泉』がそれらと決定的に違うのは、登場するテレビタレントがなんらかの形で癒され、救われているという点であり、「オーラ」が見えようが見えまいが、前世がなんであろうかは、極論すればどうでもよい話なのである。私も、別に「オーラ」などというものを見ることができるわけでもないし、前世などは信じてすらいない。それでも『オーラの泉』を見続けるのは、出演者が救われる有様を見たいからである。
本日のエントリーの趣旨は、こうしたスピリチュアルな世界が、企業の人材育成の場に近い将来進出するのではないか、という私の直観をお伝えせんがためである。これは、少しも突飛なものであるとは考えていない。確かに給与を決定するという意味においての人事評価の領域では成果主義の勢力が依然として高まりつつあり、これはスピリチュアルなどという悠長なものとは相容れないものである。どんなに気高い精神の持ち主でも、数字を上げねば高給にありつけないのだから。
一方で、人材育成についてはどうかというと、みなさんの大半が一度は耳にしたことがあると思うが、コーチングの隆盛が著しい。コーチングの根底に流れる思想とは、なんであろうか?コーチング関係の書物の中で定評のある、『コーチング・バイブル』では、コーアクティブ・コーチングの4つの礎として以下を挙げている。

(引用始)
『①クライアントはもともと完全な存在であり、自ら答えを見つける力を持っている
②クライアントの人生全体を取り扱う
③クライアントが主題を決める
④クライアントと意図的な協働関係を築く』
(引用終)

近視眼的な視点から見れば、コーチングと成果主義は全く相容れないように見えるかもしれないが、長期的にはコーチングを通した人材育成は成果主義にも貢献するはずである。従来は上司が部下に正解を教え込むティーチングが主体であった人材育成が、近年はコーチングにその軸足を移しつつあるという点ではご賛同いただけると思う。
しかし、企業の人材育成においてコーチングを採用する場合において、注意を要するのが「①クライアントはもともと完全な存在であり、自ら答えを見つける力を持っている」という一番目の前提条件である。企業においては、将来のリーダーを育成していかねばならない。そのためには、ある方向感覚をもって人格を一定期間の間に高めていかねばならない。その際に大いに参考となると私が考えるのが、スピリチュアルな世界なのである。
その片鱗は既に見られている。例えば、先日姉歯氏の分析で紹介したエニアグラムなるものも、スーフィズムやカバラなどのスピリチュアルな領域に源流を持つものでありながら、既に多くの企業の人材育成に採用されている。ただ、現状ではエニアグラムを9つの性格の類型論としてしかとらえておらず、肝心の9つのレベルという点にまでは踏み込んで考えられていないようだ。つまり、エニアグラムにおいては人格の成長にもレベルがあると考えられており、9つの性格タイプそれぞれのやり方で、人格を成長させていくことこそが重要なのだが、そこまで踏み込んだ人材育成を考えている企業の実例を私は聞いたことがない。
リーダーシップの育成においては、IQ(Intelligence Quotient、知能指数)を文字ってEQ(Emotional Quotient、感情指数)なる考え方もある。EQとスピリチュアルの関連についていえば、私は後者の方がより広いと考えている。例えば、リーダーに求められる高い誠実性だが、誠実さは明らかに感情ではない。しかし、各企業のリーダーが誠実性を高めていく必要性は、構造計算書の偽造問題を見ても、あまりにも明白な形で我々は認識できたのではないか?不誠実なリーダーの振る舞いが、ある建設業界の企業を倒産においやった。だとすれば、誠実さ、そして更に広い意味でのリーダーの精神性を高めていくことが、各企業において不可欠なのではないであろうか?30代、40代を超えたいい年したオジサンに向かって「誠実な行いをしなさい」といって、通じるハズなどない。その気付きを与えるのに有効なフレームワークがスピリチュアルなのだと私は考えている。
もちろん、企業である以上合理的な意思決定をしなければならないのだから、江原啓之氏のような方を顧問にすえてすむ問題ではない。ダニエル・ゴールマンが感情の問題を大脳の構造と結びつけて「科学」として昇華したように、誰かがスピリチュアルを「科学」として昇華せねば、企業に受け容れられることは難しいであろう。誰がいつそれをやるのか?無論分かるはずなどないが、10年後くらいに、人材育成において新たな潮流が見られているのではないかという気がする。

Posted by Ken Kodama at 10:28 | Comments (5)

2005年04月15日

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異業種出身者にダイエーの再生は可能か?

中々正式発表がされませんでしたが、ようやくダイエー社長に日本HPの樋口氏が就任するとの報道です。樋口氏は本日の日経新聞でも略歴が記されていましたが、日本HPのサイトによれば、「松下→ボストン・コンサルティング→アップル→コンパック→HP」と有名企業で重要なポジションを歴任された方です。また、CEOに決まっている林文子氏の経歴は、私も今日検索して初めて知りましたが、なんと高卒で自動車販売に手を染めたのは31歳のときからです。お二人とも、純粋な小売業を内から見た経験はないわけですが、果たしてダイエーの再生という難題をこなすことは可能なのでしょうか?
小売業界はどのような人にとっても身近な存在です。スーパーや百貨店で買い物をしない人などいないわけですから、異業種出身のお二人とて、消費者として小売業界との接点は既に有しており、ダイエーに対しても問題意識は持っているはずです。経営者としての輝かしい成功に彩られた経験があり、かつ、消費者として小売業に接してきたからこそ、「自分ならなんとかできる」との思いでダイエー経営陣への就任を決意されたことでしょう。しかし私の経験からすれば、消費者として小売業界に接してきたという過信は、必ずしもプラスに働くものではありません。
私のような中小企業を相手にするコンサルタントの方も、小売業界の経験がなかったり、コンサルティングの経験がなかったりする方でも、小売業界ならば親しみがあるのでなんとかなるのでは、と考えて挑戦される方達がかなり存在します。経験がなくとも成功される方もまれに存在しますが、(1)小売業経営に私的な思い入れを入れたり、(2)計数を無視(あるいは、計数の意味が分からない)した経営を行ってしまうことにより、失敗される方が多いのも事実です。
特に後者の計数管理は小売業の経営にとっての要です。新店出店・新業態開発といった派手な部分と合わせて、既存店の経営を以下にうまくおこなっていくかが小売業にとって重要ですが、既存店の経営はすなわち計数管理といっても過言ではないでしょう。たとえば、売上高一つをとっても、それを①坪当たりの売上高でみたり②店員の作業時間で割ってみたり(SPH)③客数・平均買上点数・平均単価に分解してみたり・・・と様々な分析を行うことが可能です。小売業のトップマネジメントには、こうした分析結果から、背後の真因の問題点を嗅ぎ取り即座に行動に移すことが求められますし、全ての指標を同時に改善することは難しいため、どの指標に重点を置くか等の決断を迫られることとなります。
こうした計数の体系が頭に入っている方として、日本マクドナルドの原田CEOを先日ご紹介しましたが、彼の経歴を見ると、アップルの社長だったり(樋口氏との面識もあることでしょう)、コンピュータ業界一筋だったりと、かなり樋口氏に酷似していたりします。業界の経験がなくとも、課題を発見し解決していく能力があれば、異業種からの転進も可能であることを立証しているといえるでしょう。
トップマネジメントとしての経験をとるか、業界での経験をとるか、ダイエーでは両者を天秤にかけて、前者をとったわけです。この判断が正しかったか否かは2~3年経過してみないと分かりません。ダイエーの今後の注目していきたいと思います。

Posted by Ken Kodama at 10:56 | Comments (0)

2005年02月15日

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JTの職務給

JTが年功型の給与を廃止し、職務給制度を導入するとの報道です。まず、この「職務給」の簡単な説明ですが、「人ありき」ではなく「仕事ありき」で給与の水準を決める仕組みです。経理の部長職なら○○万円、予算担当の課長なら○○万円、といった具合です。お馴染みの「成果給」も「職務給」も、日本においては年功序列型により肥大化した総人件費を抑制しようとの目的で導入された点は共通していますが、「成果給」は目標達成度合いにより毎年給与が変動するため、よりインセンティブを引き出すという目的においては優れていますが、富士通の暴露本等に代表されるよう、昨年は成果主義の問題点がクローズアップされたため、JTは「成果給」ではなく「職務給」という選択に至ったかもしれません。
私の個人的な体験ですが、職務給に関しては、大変深く接してきました。というのも、本日の新聞にも記載があったとおり、職務給はアメリカで一般的な給与体系であり、外資系企業の日本法人の大半が、やはり職務給を採用しているからです。個人的体験に根付いたJTへのアドバイスをするとすれば、それは以下の2つとなります。

①人材マーケットの相場を受け入れること
職務給は仕事で給与が決まるのであり、特に経理・財務・人事・システムといった、どの会社にも汎用的な職務であれば、それぞれの給与水準には人材マーケットでの相場というものが存在します。例えば、私がかつて働いた金融業界等は特に顕著な例で、経理・財務担当職も職務が細分化されており、トレーディング業務の収益を管理する「プロダクト・コントローラー」なる職務も、プレーンな債券担当であれば6~800万円、デリバティブが加わると8~1100万円、クレデリができれば1000万円~1200万円といった具合です。(これはあくまでもイメージを喚起するための「例」であることをご承知下さい)こうしたマーケットを無視した水準設定を行うと、職務給制度は必ず破綻を招きます。給与水準がマーケットより低ければ、優秀な人材の流出を招き、逆に高ければ、てこでも異動を拒もうとする無能社員の温床となりかねません。したがって、ここからもう一段階進めて考察すれば、職務給制度は人材の流動化を促すものであり、それに対する備えをあらかじめ行っておく必要があるということがいえるでしょう。

②社内での公平性の維持の仕組構築を考えること
これも、実体験に基づくものですが、昨日まで秘書であった方が、ある日突然企画担当のクリエイティブな職務についている、という光景もたまにあります。そして、ひそひそと裏でささやかれるのは、「あいつ、この異動で年収が200万円上がったらしい・・・」といったような生々しいものです。もちろん、抜擢を否定するつもりは全くありませんが、職務給制度は仕事を変えない限り給与は変わらないわけですから、その職務の異動において、公平性を担保するような仕組みを社内に構築する必要があります。たまたま社内での仕事上の連携が深かったために抜擢が行われたり、あるいは、男女の関係があったための異動であったとささやかれたり、はたまた、男同士のよく分からない関係が異動の背後にあったり・・・等ということがあれば、他の従業員の不満は爆発して、会社運営が成り立たなくなる危機すらあります。
公平性を担保する代表的な仕組みとしては、「社内公募制」と呼ばれるものがあり、イントラネットに社内の空席のポジションを列挙し、従業員自らが応募できる体制をとっておくものです。

Posted by Ken Kodama at 09:58 | Comments (0)

2005年02月08日

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ボーダフォン社長とコミュニケーション能力

ボーダフォンの社長が4ヶ月で交代してしまったという報道です。しかし、社長に就任したのは昨年12月であるわけですから、交代の意思決定は就任後わずか2ヶ月で行われたこととなります。
本日の日経紙面では、社長交代のきっかけとなった販売面での不調の原因を、いくつか分析しています。その中で私の注意をひいたのが、「世界統一端末」戦略です。世界中で同じデザインの端末を販売すれば、当然のごとく規模の経済が働き、コストメリットが得られます。私が間近に見た世界統一戦略の成功例が、かつての古巣のアパレルのギャップです。ギャップにおいては、製品デザインはおろか、テレビCMですら全世界統一で、大きなコストメリットを享受しています。ギャップが成功し得たのは、比較的シンプルなデザインのアイテムに集中することにより、国ごとの嗜好の差異の影響を被らなかったためですが、日本においては携帯端末が一種の自己主張のアイテムになっているため、世界統一戦略が功を奏さなかったといえるでしょう。
ただし、これらの販売面での不調は、「2ヶ月」という短期間での社長交代の真因にはなりえません。私は外資系企業の日本法人での勤務経験が長かったため、こうしたエグゼクティブクラスの日本人が短期で会社を去っていくのは、数回目前にしたことがあります。今回のボーダフォンの場合でも、またそれ以外の一般的な場合でも、日本人エグゼクティブが短期間で職を離れる第一の原因は、やはりコミュニケーション能力にあります。非常にシンプルなケースで言えば、単に英語が話せないということが原因で離職されてしまう方もしばしばいます。
ただし、最近の外資系日本法人の一つの流行として、英語でコミュニケーションがこなせて、かつ専門性がある人材を雇用すると、人件費が高くつくため、社内に同時通訳者を置いて、英語ができない有能な人材を雇用する企業も増加していることは確かです。しかし、同時通訳がいるからといって、コミュニケーションの問題は解決済とはならないのです。
今回のボーダフォンを例をとれば、以下は私の完全な憶測ですが、それほど実態とかけ離れていないと思います。まず、本社が、日本法人の販売が計画値に達していないことを指摘して、プレッシャーをかけてきます。しかし、日本法人の現場の幹部クラスは、それが本社の戦略に起因するとの思いから、津田社長に対して本社への説得を要請します。津田社長はインテリジェントなジェントルマンですから、本社の言うこともよく分かるし、現場の日本人幹部の言うことも分かるし・・・で、調整不能に陥ってしまいます。
こうした状況において、リーダーにとって大切なのは、コミュニケーションの前提として、自己の主張をしっかり持つということです。少し極端に言えば、会社が苦境にあるときは、みんなの言い分をよく理解する頭のいい社長よりも、多少バカでも強い信念を持った社長の方が、会社を苦境から救い出すことが多いものです。
『端末・サービスの開発は自分が引き続き経営責任を持つ』という津田氏の発言も、なんだかムシのいい話に聞こえてしまします。

Posted by Ken Kodama at 10:17 | Comments (0)

2005年01月26日

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成果主義時代の労使交渉

本日の日経新聞の企業総合面に、大きくスペースを割いた、日産の労使交渉のトピックがありました。NIKKEI NETより以下に報道の要旨を引用いたします。

(引用始)
『日産自動車労働組合(郡司典好委員長、組合員数3万人)は25日、今春の労使交渉で、月次給与の総原資引き上げを軸にした新しい賃上げ要求案を決定した。日産は昨年4月から個人の業務成果に応じて月次給を決める新制度を導入、ベースアップ(ベア)の考え方がなくなった。日産労組はベアに代わる基準を設け、好業績に見合った賃上げの獲得を目指す。』
(引用終)

人事の専門家でない方には、上記の記述は意味は分からないとはいわないまでも、ぴんとこないのではないでしょうか?そのような方のために、定期昇給ベースアップの概念を簡単にご説明しておきたいと思います。

【定期昇給・ベースアップ・職能資格制度】
定期昇給もベースアップも、どちらも従業員の給料が上がることというのは正しい認識ですが、両者のもとにあるのが賃金表なるものです。賃金表とは、等級ごとの給与水準を定めた表のことで、例えば、「事務職2級の人は基本給20万円、営業職3級の人は基本給30万円」といった具合に等級と給与水準がマッピングされている表です。
そして、ベースアップとはこの賃金表の書き換えのことを言います。ですから先ほどの例でいえば、「物価上昇に伴い、事務職2級の基本給は21万円、営業職3級の基本級は31万円とする。」といった具合に、賃金表そのものを書き換えてしまうことを言います。これに対して定期昇給とは賃金表上の移動のことで、「事務職3級が昇格して事務職2級になって基本給が増える」といった具合です。
そもそも、こうした賃金表をベースに個別の賃金を決定するためには、等級がしっかりと定義されている必要がありますが、こうした等級をベースに人事制度を運用する手法を、職能資格制度と呼びます。ですから、職能資格制度を敷いている企業における労使交渉においては、その根幹である賃金表に照準が定められ、ベースアップが労使交渉の最大のテーマとなっていたわけです。

【成果主義時代の労使交渉】
さて、先ほどの職能資格制度ですが、厳密にいえば年とともに給与が増える年功制とは異なるのですが、結果的に年功制と同様な運用を行っている企業が多く、適正な個別賃金の配分がなされていないという問題が多くの企業で表れました。そこで登場したのが、成果主義という考え方で、各従業員の生み出した成果に基づいて給与を決定しようというのがその考え方の基本です。したがって、当然の帰結として、先ほどの「賃金表」は成果主義のもとでは意味をなさなくなり、賃金表の書き換えを目指すベースアップを労使交渉の主テーマとしても意味をなしません。
そこで、成果主義を導入している日産の労使交渉においては、ベースアップという考え方がなくなり、「賃金の総原資」が交渉の争点となった、というのが今回の報道の背景です。
成果主義の普及が、いわゆる個人レベルにおける「勝ち組」と「負け組」の二極分化を後押ししていますが、こういう時代にこそ労働組合の存在意義は大きいと思われます。本日は従業員よりのコメントとなりますが、今回の報道を機に、「なんとなくイメージが悪い」と思って敬遠していた労働組合について、考え方を改めてみるのもよいのではないでしょうか?

Posted by Ken Kodama at 12:45 | Comments (0)

2005年01月12日

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発明報奨

昨日の日亜化学と中村氏の和解の報道とタイミングをほぼ同じくして、日立が発明報奨制度を刷新したとの報道が本日の日経一面を飾りました。
まず、この一連の流れに思うところですが、中村氏らの、お世話になった会社を訴える動きに眉をしかめる方も少なくないですが、これらの人々がこうした動きに出なければ、特許法の改正も日立の制度改革の動きも恐らくなかったか、タイミングが遅れていたことでしょう。技術者の報奨が適正とはいいがたかったことが主因で、優秀な理系学生がインセンティブの厚い金融業界に流れてしまい、そのことによる社会的な損失は計り知れないと思います。企業内の技術者の正当な権利というものに、社会全体の目を向けさせたという点で、中村氏らの動きは評価されるべきだと思います。
次に日立の新制度の概要ですが、「(1)発明報奨の裁定委員会の設置(2)発明者への報奨内容の具体的な開示(3)報奨上位者の社内公表(引用)」の3つを柱としているとありますが、これは特許庁の以下のガイドラインに忠実に従ったものとなっています。

新職務発明制度における手続事例集

技術力をコアコンピタンスとする企業にとっては避けることのできない文書ですので、関連企業の方は上記リンクよりご覧いただきたいと思います。
また、「相当な対価」の算定の問題ですが、日立の場合のベースは新聞で見る限り「売上高」が主ファクターで、日亜の和解額も、下記の記述を見る限り、売上高が算定のベースとなっています。

(引用始)
『今回の和解では日亜の青色LED関連売上高の五割が中村氏が関与した発明によるものとし、他者にライセンス供与したと仮定した場合に得られるロイヤリティー収入を算定。「売上の3.5~5%」と計算した』
(引用終)

金額算定のベースに売上高をもってくるのは、わかりやすさという点ではダントツですが、企業価値の評価で使われるDCF法、リアル・オプション法等が知的財産の評価という分野にも進出してきていることも事実で、それらの手法を用いた方が合理的である、というケースも当然ありえます。
そうした評価の手法の複雑さ等も考慮に入れると、発明報奨の制度改革は、研究開発部門、知的財産を管轄する法務部門、人事・労務部門に加えて、財務部門の担当者も加えたプロジェクト・チームを編成した上で、取り組むことが望ましいかと思われます。

Posted by Ken Kodama at 10:59 | Comments (0)

2004年11月12日

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在宅勤務に「みなし労働」の適用を検討

厚生労働省は会社員が自宅などで働く在宅勤務が普及するよう「みなし労働制」の適用範囲拡大など関連法制の整備を検討するとの報道です。
「みなし労働制」とは現在既に労働基準法で規定されていますが、大きくわけて2つのタイプがあります。第一のタイプは外回りの営業マンなどに対して適用するものです。外回りの営業マンは、そもそも働いた時間をチェックすることができないので、所定労働時間、つまり就業規則に定められている時間について働いたとみなしてあげましょう、という制度で、これは事業場外のみなし労働時間制と呼ばれています。
第二のタイプは、外回りではなく内勤だけれども、仕事の性質上、仕事のやり方を個々の従業員にゆだねる必要があり、労働時間を算定することが難しいタイプのものです。具体的にはどういう仕事があるかというと、デザイナー等のクリエイティブな職種の方などは、アイデアが浮かばないと仕事が進まず、気分がのらない昼間はお茶でも飲み、夜になると突然アイデアが湧いてくる、などということがよくあります。こうした方に適用されるのが専門業務型裁量労働制で、前もって決めた時間を働いた時間とみなそうという制度です。また、デザイナーとまでいかなくても、経営企画や証券会社のアナリストなどという企画・分析を担当する方達に対して適用されるのが、企画業務型裁量労働制と呼ばれています。
一見働く労働者側にとって好都合にきこえる制度ですが、今話題の富士通のバクロ本でも弊害が指摘されています。「ある決まった時間働いたとみなしてあげる」ということは、反面から見れば、「いくら多く働いても残業として認めない」ということで、富士通のバクロ本では、裁量労働制が適用された社員に時間がかかりそうな面倒な仕事を全て振り、残業代を減らそうとする行為が描かれています。
現在検討されている、みなし労働の在宅勤務への適用拡大についても、労働者保護の見地から、在宅勤務者にしわ寄せがいかないよう、法整備を進めていく必要があるでしょう。ただ、あまりに適用の手続きが煩雑となると、理想的な勤務形態である在宅勤務が進展せず、落としどころをどの辺りにするのかという点に、今後注目していきたいと思います。

Posted by Ken Kodama at 10:20 | Comments (0)

2004年10月08日

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パートにストックオプション付与

西友はパートを含む3万5000人の従業員に業績連動型の給与体系を導入したとの報道です。パートの戦略的活用のために業績連動型の給与を導入すること自体は、今日ではそれほど目新しいことではありませんが、これもウォルマート傘下に入ったことによるものでしょう。ウォルマートはパートにもストック・オプションを付与していることで有名です。今後、西友もパートへのストック・オプション付与に踏み切るかどうかは分かりませんが、既にパートにストック・オプションを付与している企業が権利行使価額をどのくらいの水準に設定しているかに興味があったため、調べてみました。日本でパートにストックオプションを付与している企業としては、スターバックス・ジャパン、オリジン東秀、リンガーハットが有名なので、この三社について調べてみました。
【スターバックス・ジャパン】
2001年2月決議 7,679株 6,500円
2002年6月決議 9,682株 30,500円

【オリジン東秀】
1999年6月決議 79,000株 1,084円
2000年6月決議 93,000株 1,374円
2001年6月決議 61,500株 2,316円
2002年6月決議 75,500株 2,469円
2003年6月決議 80,000株 1,393円

【リンガーハット】
2001年決議 211,400株 113,000円

スターバックスは私の推測ですが、最初の条件が役員クラス用で、後のものが一般社員用であると思われます。特に、オリジン東秀において、顕著に見られるのですが、毎年新しく資格を得た従業員に継続的に付与しているのでしょうが、そのときの株価の8~9割辺りを権利行使価額に設定しているため、そのときの株価の動向によりかなり条件が不平等になってしまいます。例えば、オリジンの株価が全従業員が一丸となって努力したことにより2,000円に回復したとしても、2001年と2002年に付与された従業員は恩恵にあずかれません。
リンガーハット、スターバックスは実質的に付与したのは1回だけのようですが、そうすると、付与された従業員と、その後に入社してきた従業員との間に不公平感が生まれてきます。
役員クラスならいざ知らず、パートの従業員は100円、200円節約するために必死になっている人々です。そうしたパート従業員間にこのような不公平感が生まれれば、日々の仕事にも影響がでるのではないかと懸念されます。不公平感を払拭するために現金賞与を併用したりすれば、企業収益にかなりの痛手になるでしょう。
どうやら、パートや一般従業員にストックオプションを導入するためには、株価が安定していて、かつなだらかに右肩上がりを続けていることが、必須条件のようです。

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2004年08月17日

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広がる障害者雇用 ~ 障害者雇用促進法 ~

企業による障害者の雇用が拡大しつつあるとの報道です。本日はこうした動きを後押しする「障害者雇用促進法」について、解説をするつもりなのですが、障害者と仕事というテーマが出ると、必ず私が紹介する話があるので、それをまずはお聞きいただきたいと思います。
私が、フォード自動車で働いていた頃、社員研修の一環として、ある福祉施設の長の方のお話をきく機会がありました。その方が福祉施設での長年の勤務を経て、人間が人間らしく生きていくためには次の3つがあればよいのだと悟ったとおっしゃるのです。それは①友達②共同生活の場③仕事だというのです。私の頭では当然そこにあってしかるべき「家族」という言葉が登場しなかったのが大変意外だったのですが、「家族」が入りえない複雑な状況を察すると、その方の言葉は私にとって重みを持ち、血縁を超えた深い愛を感じ、聞いてから6~7年経た今もなお、私の心に刻み付けられているのです。健常者の我々は見落としがちなのですが、仕事は人として生きていく上で、大切な要素なのだということを認識いただければと思います。

企業の障害者雇用を後押ししているのは、報道にもある2つの要素です。第一にCSR経営の大きな潮流であり、第二に障害者雇用促進法を主とする関連法制です。前半のCSRについては本日のテーマではないので割愛させていただくとして、障害者雇用促進法は企業の障害者促進を図るため、以下の「アメ」と「ムチ」を用意しています。
まず、法定雇用率というものがあるのですが、従業員100人につき1.8人以上の障害者を雇用せねばならないとしています。それを上回る障害者を雇用していれば、超える1人につき月額27,000円を支給し、満たなければ不足する1人につき月額50,000円を徴収するというものです。(ちなみに従業員が300人以下の中小企業は適用されません。)また先程の法定雇用率は企業グループ毎に算定され、障害者雇用のために設立した特例子会社に障害者が集中的に雇用されていても、企業グループとして基準をクリアしていればOKとなります。
現時点ではこうした法制度のアメとムチに促されて障害者雇用が拡大している要素が強いですが、障害者雇用が一般化してくると、今度は障害を持たない人材と同様にいかに障害者を戦略的に活用するか、ということが主眼になってくるはずです。そのような時代になったときに乗り遅れないためにも、企業は今から障害者雇用を、戦略的優位を築くという観点からも、真剣に検討すべきでしょう。

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2004年07月26日

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OECDがパートタイマーの企業年金加入を勧告

OECDがパートタイマーも企業年金に加入させるよう、勧告を出したとの報道です。
5月26日付弊社レビューにてパートタイマーにも残業代を支払うようにしようとする、労働基準法の改正の動きを伝えましたが、日本国内のこのような法改正に、今後OECDの勧告が影響を与えることが考えられます。
OECDの勧告の原文は公開されてはいますが、残念ながら、現在邦訳はみあたりません。同勧告は会計基準や年金基金の健全性など、多岐に渡る内容を含んでいますが、日経報道とのかかわりで言えば、PDF文書の7ページ目が該当します。ここで、OECDはパートのみに限らず、「企業年金の加入資格を年齢・性別・雇用形態等によって差別してなならない」ともっと幅広い視点での勧告をしています。
会社経営に携わる方は、現時点では、当然日本の法改正の動向までは読めず、動きようがないように感じられるかもしれませんが、そのようなことはありません。人事政策は長期的な視点で行わねばならず、かなり先の法改正も視野に入れておく必要があります。
現時点で何を考えるべきかといえば、漠然としていますが、パート社員の処遇に関して考えをめぐらすべきです。パート社員の戦略的活用については、多くの事例が出るにいたっていますが、その処遇については、多くの場合、パート社員の活躍に伴っていないのが実情です。しかし、こうした労働者保護を目的とする法律の動向は、パート社員への残業手当支払いの義務付け、及び当報道の年金加入の勧告など、ますます保護を高めていこうとする、大きな流れがあります。
パート社員に負の部分を全部押し付けるような考えは捨て去るべきでしょう。パート社員保護の大きな流れの中で、自社のパート社員の処遇をどのようにすべきか、漠然と頭の中に絵を描く段階にあると考えられます。

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2004年06月24日

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吉野家に学ぶフレキシブル経営とパートタイマー人件費管理

吉野家が不採算店20店の深夜営業を休止するとの報道です。既に既存店売上高は4月から3割減のペースが続いており、この決断を迅速と呼べるかどうかは評価は分かれるでしょうが、お客様の利便性等も考慮に入れると時期的にも適切と思います。売上が回復しないときには、コスト減でなんとかしのぐというのはビジネスの鉄則ですが、吉野家は深夜営業を休止することにより、パートタイマーの人件費と光熱費を削減することが可能となります。言うまでもなく、パートタイマーの人件費削減の方が金額的にもインパクトが大きいのですが、ではパートタイマーの人件費とはどのように管理すればよいのでしょうか?
新聞紙面には「原則として赤字になっている時間帯に限り営業を休止」と書いてあります。ということは、吉野家は月次決算や日次決算を超えて、時間帯別の損益管理を行っていることになります。これは最新鋭のシステムがないとできないのではないかというと、そんなこともありません。小売業であればPOSレジはあり、したがって時間帯別の売上・客数・客単価は存在しますし、原価テーブルをあわせれば、時間帯別の粗利も簡単に算出できます。それにあとは人件費を合わせれば、最低限必要な時間帯別損益は算出できます。(実際、勤怠管理が行えるPOSレジも多くあります。)
一方、小売業でパートタイマーを減らすと覚悟せねばならないのは、顧客満足度の低下です。(レジの打てる店員が少ないと、レジ待ちで我々はいらいらしたりします。)では、コスト削減から享受できるメリットと顧客満足度の低下からくるデメリットをどのように折り合いをつけていけばよいのでしょうか?これを管理するための経営指標として、人時生産性というものがあります。
人時生産性(英語ではSPH = Sales Per Hour)とは売上を店舗で働く人の総労働時間数で割ることにより算出されます。たとえば、ある1時間に9万円の売上があり、その1時間に3人の店員で対応していたとすれば、人時生産性は1時間あたり3万円となります。人時生産性の数値が高い程効率がよく、低いほど、売上に比べて過剰な人員を有していることになります。
吉野家のようなフレキシブル経営を目指す場合、まず最初にすべきことは、この人時生産性をPOSの売上と勤怠表から作成し、記録を作ることです。そして、どの程度の人時生産性の値が自社のビジネスの平均的な値であるのかを、肌にたたきこみます。そして、それにより得られた数値の感覚を頼りに、人が多すぎると思われる時間帯の人員を減らし、逆に店員が少なく、売り逃しの機会損失が生じていると考えられる時間帯に、追加人員を投入する、その繰り返しをすることが、売上の変動にも耐えうる強靭な企業を作り上げていくのです。
フレキシブル経営は、巨額の投資で完成した最新鋭のシステムなどによってではなく、実はこのような当たり前な思考の愚直な実践の繰り返しにより実現されるのです。

Posted by Ken Kodama at 16:29 | Comments (0)

2004年05月26日

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「パートに残業手当」報道の解説及び対処法

本日の日経朝刊のトップを「パートに残業手当」の文字が飾った。これが対応するネット上の記事。この法案が来年の通常国会に提出される予定とのことだが、パートを多く活用している中小企業は人事がらみの案件だけに、早めに手を打つ必要があろう。以下、報道に従って簡単な解説をしておきたい。
【残業手当の現状】
現在の労働基準法の下では、法定労働時間を超えて労働させた場合には25%~50%の割増賃金を支払わなければならないとしている。法定労働時間とは労働基準法で週40時間と決められている。これは、パートだろうと正社員だろうと同じで、両者とも週40時間を超えて働いたら、割増賃金がもらえる。
【改正後の残業手当】
改正案では、法定労働時間ではなく、所定労働時間を超えて労働させたら割増賃金を払わねばならない。所定労働時間とは、各企業の就業規則で定められた時間から休憩時間を差し引いた労働時間のことである。各企業で定めている時間であるから、企業毎でバラツキがあるのだが、多くの企業では正社員の所定労働時間は法定労働時間と同じ40時間である一方、パート社員の所定労働時間は週30時間未満に抑えられていることが多い。したがって、この改正により、ほとんどの正社員は影響を被らないが、パート社員については、今まで割増賃金を支給されなかった分についても、割増賃金を支給される可能性がでてくる。
【なぜ正社員とパートの所定労働時間は違っていたのか?】
さきほど、正社員の所定労働時間は40時間でパート社員は30時間未満のケースが多いと述べたが、その原因は厚生年金法にある。厚生年金法では、その対象にすべき人(被保険者)について、以下のように定めている。

「短時間労働者(パート社員)については、所定労働時間が一般の人に比べて4分の3以上の場合であって、常用的使用関係が認められる場合に、原則として被保険者となる。」

つまり、正社員の所定労働時間は40時間だから、パートの所定労働時間を30時間以上にすると、「4分の3以上」にひっかかり、パートも厚生年金の被保険者としなければならなくなってしまい、そのためのコスト負担が企業側に生じてしまうのだ。
【この法案改正への単純な対処法】
この法案への単純な対処としては、パートの所定労働時間を法定労働時間の40時間まで拡大することが考えられる。ただし、その場合厚生年金保険料のコスト負担増があるため、割増賃金率と厚生年金保険料の増加をシミュレーションして、最適な法定労働時間を割り出す作業を行うべきであろう。
【この法案改正への本質的な対処法】
上記案は以下に現金支出を抑えるかしか考えていない。そもそも、この法案改正の背景には、パートの労働が正社員に比して、正当に評価されていないとの認識がある。日経朝刊記事の後半部分には、「正社員とパート・派遣社員の処遇格差を縮めることも企業に求める」との記述もある。この改正をきっかけに、パートの処遇全般について、抜本的に見直しをかけるのが本筋であろう。

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当法案改正をきっかけに人事制度改革を考える企業があれば、弊社として相談にのりますので、メールにてご連絡下さい。

Posted by Ken Kodama at 10:46 | Comments (0)