中小企業に対する金利スワップの押し付け販売が原因で、三井住友銀行は『一部業務を半年停止』という事態にまで追い込まれてしまった。
(4月28日の日経新聞朝刊より引用始)
『営業現場では、担当者が上司とともに顧客を訪問し、「金利スワップの購入が融資の条件」と強くにじませた例もある。』
(引用終)
こうした記述を読むと、独占禁止法違反で業務停止に追い込まれるのはやむをえない気がする。
金融に疎い方のために若干解説しておくと、変動金利のローンに金利スワップを組み合わせて、固定金利のローンに変換するアイデア自体は全く問題はない。というより、中小企業の金利リスクを減じるという観点から、素晴らしい提案である。しかし、それは変動金利のローンを貸し付けた銀行と、金利スワップを提案した銀行が別であった場合に限って、「素晴らしい!」という賛辞がもたらされるのである。
変動金利建てのローンと金利スワップを抱き合わせで販売する・・・変動金利建てのローン自体も中小企業向けの高めの(信用)リスクプレミアムが上乗せされていると考えられるし、金利スワップ自体も中小企業向けに対しては、高めの手数料が課されているはずである。(この辺りは厳密な数値での実証をする暇がないので、推察に基づく議論であることをご承知を)ということは、この「デリバティブ商法」に屈した中小企業は、ダブルに暴利をむさぼられているということになる。本当に融資先のことを考えるのであれば、固定金利建てのローンで貸し付けを1本実行すれば済む話ではないか!奥頭取は「顧客第一という経営理念を再確認する(引用)」とコメントしているが、頭取の認識通り、三井住友銀行に欠けていたのは、顧客重視の姿勢である。
こうした社風が三井住友銀行内に形成されてしまった背景をたどると、やはり大企業向けのビジネスに旨味がなくなってきたからに他ならない。デリバティブの教科書の冒頭に必ず登場する、歴史的なIBMと世銀の通貨スワップでは、間に仲介した金融機関(ソロモンだっけ?)は、べらぼうなベーシスを懐に収めたそうであるが、現代では大企業向けの金利スワップは「コモディティ」に成り下がり、十分な手数料を確保することができない。そんな中で、交渉能力や知識を十分に持たない中小企業が「収益源」として標的にされたのである。
読者のみなさんが中小企業経営者でなかったとしても、この話は他人事ではない。個人も同様な理由から、金融機関の標的にされているのである。例えば、変なタイトルで恐縮だが、過去に書いた下記のエントリーでは、「銀行が満期を決めるタイプの定期預金」についてご紹介した。
一般的な定期預金に比べれば、随分と表面的な利率が高いことで人気を博している同タイプの預金だが、こうした預金を支えているのがやはり「デリバティブ」なのである。この場合はスワップではなく、オプションが使われている。
このタイプの定期預金を購入すると、必然的に銀行に対してオプションを売ることとなる。そのオプションを売ったプレミアム分だけ定期預金の表面金利が高くなるのだが、得られたプレミアム分だけ丸々金利が高くならず、かなりの手数料が抜かれているはずである。(これも実証していないため、推察に基づいた議論であることをご承知下さい)そりゃ~、プレーンな定期預金に比べたら金利が高くなるのは当たり前だけど、オプションを売って背負うことになるリスクに比べたら、その金利はまだまだ足りないのである。
しかし、こうしたタイプの預金は法律を犯しているわけでは決してない。が、これは私の主観的な意見だが、顧客重視の姿勢があるとは少しも思えない。個人客のマネーリテラシーの薄さと心理的な錯覚につけこんだビジネスであり、「良心的」という言葉からは程遠いといえよう。ただ、それだけのことであり法的に問題はなく、あとは個人がそうした商品から身を守るためにいかに賢くなるかが重要となるのだ。
本日、ようやく新会社法が成立するとのことで、日経新聞は6,7ページに特集を組んでいます。この見開きを見て改めて思うのは、会社法が対象とする会社の多様性です。左のページの毒薬条項は、株式を上場している大規模な会社にしか関係のない世界です。対して、右のページの合同会社は、上場よりはるか手前にあるか、あるいはそもそも上場の意図がない小規模な会社を対象にしたものです。
さて、本日着目するのはデット・エクイティ・スワップがらみの改正です。日経新聞の記述を引用すれば、改正のポイントは以下の通りです。
(引用始)
『今後は弁済しなければならない価格が決まっている債権で出資額がその額を下回っているときは検査役の調査がいらなくなる。(中略)
条件を満たせば債権者と債務者の合意だけでできるようになり、財務改善の機動性が増す。』
(引用終)
上記の改正により、債務を株式にかえてしまうデット・エクイティ・スワップは行いやすくなるわけですが、では、これは大きい会社と中小企業のどちらを想定した改正であるかといえば、実は両方です。
大企業のデット・エクイティ・スワップといえば、例えば当サイトの過去のエントリーである『いまさら人に聞けない「デット・エクイティ・スワップ」の疑問』でとりあげたミサワホームHDなどの実例を我々は見てきました。では、中小企業とデット・エクイティ・スワップの関わりについていえば、それは金融庁から発表された、以下のリレバン関連の文書に見出すことができます。
上記ファイルの22ページ目に「資本と融資の分離」と題したセクションがあり、そこで中小企業金融において『デット・エクイティ・スワップの手法を有効に活用していくことが適当なケースもあるものと考えられる』と述べられています。ではどういう場合にデット・エクイティ・スワップが適当であるのかといえば、中小企業の借入金においては、返済時期が近づくと借り換えでまた借り直し、あたかも根雪のように借入金として残り続ける長期固定的な借入金というものがしばしば存在します。そんな借入金は、借入金ではなくて実質的には資本なのではないかと、この文書は言っているのです。実質的に資本ならば、デット・エクイティ・スワップで銀行の債権を株式にかえてしまいましょう、ということなのです。
ここで思い出していただきたいのは、かつて吹き荒れた貸し渋り・貸しはがしの嵐です。その大元には金融検査マニュアルの存在がありました。つまり、金融庁の指導は遅かれ早かれ現実のものとなるわけです。デット・エクイティ・スワップについても、新会社法で検査役の調査が緩和されるわけですから、翌年から、中小企業の株主として銀行が登場する事態が増加することも想定しておかねばならないでしょう。
「銀行」が株式を保有することは、本来的に望ましくないことです。ですから、同文書では、デット・エクイティ・スワップにより取得した株式は、将来的に投資ファンド等へ売却する青写真についても言及があります。ということは、株主総会で村上ファンドのような手ごわい株主に経営者がつきあげられる構図は、大企業だけのものではない、という可能性もあるのです。そして、そうした手ごわい株主に対して計算書類の説明責任を負う担い手として期待されているのが「会計参与」なのです。
デット・エクイティ・スワップのケースを見て分かるように、新会社法は法の条文だけを追いかけていたのでは見えないことが多くあります。横断的に様々な施策や社会の実態を理解することが、法の理解につながるのでしょう。
本日は新聞休刊日でしたが、スコアリングモデルを駆使した中小企業向け融資が急増しているとの報道がNIKKEI NETにありました。このスコアリングモデルなるものは何なのか、NIKKEI NETの説明を以下に引用したいと思います。
(引用始)
『大企業の資金需要が伸び悩むなか、各行は比較的利ザヤの高い中小向け融資に力を入れており、かねて取引関係を深めてきた地域金融機関との競争が激しさを増している。
大手銀行は財務諸表などをもとに企業を自動的に評価し、融資の可否や金利を決める「スコアリングモデル」を使った商品を相次ぎ投入。担保評価など事務面でのコストが減らせることに加え、貸出金利が2、3%台と大企業向けより高いこともあり、取り扱いを強化している。』
(引用終)
上記の説明を要約すれば、スコアリングモデルとは中小企業向け融資をローコストオペレーションのもとに実現する仕組みといえるでしょう。そして、これは我々がリレーションシップバンキングという言葉から連想する融資のスタイルとは対極にあり、同様の問題意識を持った方のサイトを発見しましたので、ご参照下さい。
この仕組みを活用した融資を銀行が行う際に、この定量的なモデルへの依存度がどの程度で、定性的な分析はどの程度行われるのか、その実態を私は知りません。しかし、「比較的利ザヤの高い」マーケットを求めて「競争が激化している」との記述を見る限り、危険な香りがすることは否めません。
以前、「自らカネを必要としない企業にのみ貸付を行う」という中小企業向け融資に関する磯崎氏のブログ記事をご紹介しましたが、この新聞報道の言うスコアリングモデル融資の純増が、競争激化の結果、カネを必要としない企業に回っているとすれば、銀行の信用リスク管理に疑問符をつけざるを得ません。
テレビ局を買い占める、というのは極端な例としても、必要以上のカネを持てば人の心は変わります。そして、多くの中小企業の所有と経営は一致しており、オーナー社長が変われば、ガバナンスなき中小企業の行動も変わります。こうした融資後の企業行動の変化というのは、このスコアリングモデルに織り込まれているのでしょうか?また、第二の不良債権処理の波が訪れないことを、ただひたすら祈るのみです。
日本ユニシスとソフトバンクは特許など知的財産のコンサルティング事業で包括提携したとの報道です。この包括提携の舞台となるのが、ソフトバンクの子会社であるインテクストラなる会社ですが、日経一面でとりあげてもらい大変効果の高いPRとなったことでしょう。
「知的財産信託」という観点から同様のエントリーはこのサイトで数多く扱ってきましたが、以下の2つのケースなどは、その根幹である「知的財産の評価」という難問を回避したスキームとなっていました。
信託銀行も、今後知的財産評価の部分はこうした専門業者に外出ししていく可能性も否定できませんが、知財評価なき知財信託はインテル・マイクロソフトに旨味を吸い取られたパソコン組立業界のようなものです。今後、知財評価というニッチな分野で、どこがリーダーとなっていくのか、非常に興味があります。
インテクストラ社の受託評価・分析サービスのサイトを見ると、評価手法としてインカム・アプローチ、マーケット・アプローチの二種類が掲げられており、それぞれどのような場面に応じて使い分けるべきか、簡単な表もあり興味深いです。
当サイトが一貫して注目してきた「知的財産信託」ですが、UFJ信託が特許権信託の第1号を受託したとの報道がありました。(日経紙面には記事があったのですが、残念ながらNIKKEI NETには同記事がアップされていない模様です。)
日経新聞紙面の図を見る限り、この第1号の特許権信託のスキームは、ライセンス使用者からUFJ信託が実施料を徴収し、配当という形で中小企業に金銭が流れていく形式になっており、特許権信託を活用する中小企業が特許権を活用して早期に資金化できるというメリットはない模様です。このスキームにおいては、信託銀行が特許料の金銭の取り扱いや、契約締結の代行といった、専門的な事務を代行してくれるといったメリットのみのようで、先日紹介した二次著作権のビデオグラム化権を対象とした知的財産信託が、映像資産の早期の資金化を謳っていた点とは大きく異なる模様です。
私が7月6日に書いたレビューを読み返してみても、UFJ信託の知的財産信託が掲げていた当初の目的は①特許権侵害の防止と②中小企業の資金調達の2つであったはずで、今回の第一号案件では後者のニーズは満たさないものとなっています。後者のニーズを満たすためには、知的財産から生み出される将来キャッシュフローの予測という難問に立ち向かわざるをえず、最初のケースにおいては、こうした難問を回避したスキームとなってしまうことは止むを得ないのかもしれませんが、中小企業側のニーズとしては、法的な事務委託より資金調達の方が圧倒的に大きいわけですから、資金調達のニーズを満たす真の意味での知的財産信託が、早く登場することを望みます。
本日の日経1面の「金融重点強化プログラム」の記事とどちらを取り扱うか迷ったのですが、「金融重点強化プログラム」でも中小企業金融について触れられていたため、こちらを扱うことにしました。
みずほ銀行が西日本シティ、大垣共立、スルガ、荘内の4つの地方銀行と共同で、中小企業に無担保で無保証の長期資金を供給する新手法を開発したとの報道です。ここでスキームの概要をNIKKEI NETの記事から引用しておきたいと思います。
(引用始)
『新手法では参加する地銀が窓口になり、無担保無保証での資金調達を希望する企業を募集。応募した企業がみずほ銀行を引受先に一斉に私募債を発行する。みずほ銀行は集まった私募債をみずほ信託銀行を通して証券化し、投資家に社債担保証券(CBO)として販売する。社債担保証券は比較的安全な優先部分と元本割れの可能性が高めの劣後部分に分かれる。優先部分は参加する地方銀行が買い取るが、劣後部分は外部の投資家に引き受けてもらい、リスクをできる限り切り離す。』
(引用終)
ここで、このスキームへの参加者のそれぞれのメリットですが、まず資金調達が可能となる中小企業のメリットですが、これは、いわゆる、少人数私募債を発行したメリットと同じで、少人数私募債の詳細については、私の所属する中小企業診断士城南支会の一部メンバーが作成するサイトに非常に詳しいのでそちらに譲りたいと思います。
この新スキームで最大の恩恵に与るのは窓口となる地銀で、具体的には地銀のB/S上のポートフォリオのリスク分散が図られることとなります。私募債引受の窓口となる地銀は、その見返りとして、みずほから証券化後の優先部分を引き受けることとなり、その優先部分は貸倒リスクが少なく、地域的にも東北から九州までの4地域に分散されているわけですから、おいしいところどりです。資産の地域的な分散が図られていないとどのようなことになるかというと、例えば最近のマツダの火災などが、万一もっと大きな大惨事であったとした場合の、1次2次下請け等に波及する影響を考えていただけると分かりやすいと思います。
このスキームへの私なりの疑問は2つあります。まず、これは、証券化全般にいえることですが、劣後部分は誰が引き受けるのかという点です。ざっと検索した限りでは、劣後部分は売れ残ってしまうことが多いようであるということしかわかりません。クレジット・デリバティブ等を駆使した先進的な買い手がいるのかどうか、私にはよくわからないので、劣後の引き受けてに関してお詳しい方は、是非ご教授いただけると幸いです。
第二の疑問は、今後の地銀の存在意義といったところでしょうか。地元企業との密な関係をもとに深い情報を仕入れ、それをもとにリスクをとって融資を行うのが地銀の本分であるはずなのに、このスキーム上では地銀はリスクテークを放棄している感があります。新聞には「金融庁は地方銀行に対して(中略)地域に偏っているリスクの分散を進めるように求めている(引用終)」とありますが、それが実現できたときには、地銀は「地銀」ではなくなっているのではないかという気がします。
本日は新聞休刊日のため、ネット上になにかネタはないかと探していたところ、私が愛読する会計士の磯崎哲也氏のisologueというブログに、中小企業融資のビジネスモデルに関する興味深いエントリーがありました。
非常に簡単に、引用を交えつつ、エントリーの要旨を私なりにまとめさせていただくと、「銀行以上商工ローン未満の金利」での中小企業融資ビジネスにはオリックスや三井住友銀行等の成功例が多いとのこと。そして、その成功の秘訣は(1)『本部で「全体のポートフォリオ像」を考え、「それに合わせた貸出候補先」を営業マンにアタックさせる(引用)』ことと、(2)『融資を申し込みに来た客には貸さない(引用)』点であるとのことです。
ビジネスの基本は顧客の声に耳を傾けニーズを汲み取ることから始まるわけですが、商品そのものが「融資」となると、ニーズのあるところには貸倒リスクがある、となってしまうため、ビジネスの基本を否定してマーケティングを行うというのは画期的な発想の転換といえるでしょう。
そもそも新規の融資を必要としない企業に、どのような営業を展開しているのかには興味があります。やはり、生命保険商品のセールストークで行われるように、「節税」トークが展開されているのでしょうか。
こうした必然性のない融資残高も含めた数値で、国が政策決定をしているとしたら、いつまでたっても本当に融資を必要とするところにカネは回ってきません。
続けて磯崎氏はこうも述べています。
(引用始)
『「儲かるニッチ」を貸し出しを行う側から摘みに行くのと、「貸し渋りで困っている中小企業に貸します」というの(公益的な香りのするスタンス)はまったく対極の概念とも言えます。
ただし、そうした「公益」と「収益性」が合致するニッチが絶対存在しませんよ、ということを申し上げているわけではありませんので念のため。』
(引用終)
36歳とはいえ、まだ、青い私は氏のいう「公益性と収益性が合致するニッチ」を拡大していくことが、中小企業診断士としての使命であると考えていますし、また、私が受験指導しているTAC受講生の方にも、そうした方向性を志向していただきたいものです。
そうした方向性を志向する上での鍵となるのが、融資機関と中小企業の密なるコミュニケーションで、いわば中小企業の戦略的なデットIRが今後不可欠になるはずです。このコミュニケーションの橋渡しをするのが中小企業診断士なのですから、現在TACで受講中のみなさんは、心して、12月の財務会計の授業を聴講していただければと思います。
本日の日経新聞1面を、中小企業関連のニュースが飾りました。経済産業省と財務省は中小企業向けの公的信用保証を縮小する方針であるとの報道です。この報道はこれからの中小企業金融を考える上で重要であると同時に、信用補完制度は中小企業診断士試験の頻出事項でもあります。まず、圧縮の対象となる「中小企業向けの公的信用保証」とは何であるのか、概要を見ておくこととします。
【信用補完制度の概要】
信用補完制度とは、担保を十分にもたない中小企業が民間の金融機関から融資を受けやすくするために、中小企業の信用力を補完する制度のことです。
もう少し具体的に言うと、融資を受けたいが担保が十分にない中小企業は、信用保証協会という団体に保証料を支払うことにより、万一の場合の借金の返済を肩代わりしてもらいます。
信用保証協会は、こちらの一覧表からわかるように、現在全国で51あります。全国で51もあるわけですから、それぞれの財政基盤がこうした保証を行うに足るほど磐石であるわけではありません。そこで、各信用保証協会は信用保険を中小企業金融公庫との間で締結します。(信用保険業務は平成16年7月に中小企業総合事業団から中小企業金融公庫に引き継がれました)こうすることにより、中小企業金融公庫が、最終的な肩代わりをして、万一のことがあれば、信用保証協会に保険金を支払ってあげるわけです。
では、中小企業金融公庫自体が財政的にどうしようもなくなるとどうするのかといえば、税金が投入されます。今朝の日経新聞によれば2003年度の中小企業金融公庫の信用保険事業は4,000億円の損失を計上したとのことで、これだけの税金が投入されているのです。これまでの話を簡単に図示すると以下のようになります。
中小企業金融公庫 ← 政府
<税金>
保険金 ↓ ↑ 保険料
信用保証協会 → 銀行
<代位弁済>
保証 ↓ ↑ 保証料
中小企業
【モラルハザード】
一見、中小企業に優しい制度に見える信用補完制度ですが、この制度により引き起こされる最大の問題がモラルハザードと呼ばれるものです。モラルハザードとは危険を回避する仕組みを作ってやることで、かえって保険事故の発生可能性を増やしてしまうことをいいます。
上図を見ていただければわかるように、融資を行った銀行は、融資先が倒産してもお金がいくつかの機関を迂回して国から入ってくるわけですから、痛くも痒くもありません。その結果が4,000億円の税金投入となってしまったのです。
このモラルハザードを抑制するという意味においては、今回報道されているように保証範囲を圧縮することは好ましいことといえるでしょう。そして、タイミング的にも、銀行の不良債権の削減に目処がつき、信託業法の改正により可能となる「知的財産信託」等の融資の代替となる枠組みが提供されることが間近である今は、この報道の与える衝撃を少しでも和らげるという意味でよかったのかもしれません。
【中小企業のとるべき道】
中小企業の融資は、担保を絶対に必要とする時代から確実に変化してきています。新たな融資の方向性とは、当サイトにて紹介した、以下の2つのエントリーが参考になるかと思われます。
中小企業経営者の方は、伝統的な融資手法にとらわれず、積極的に新しいタイプの融資の動向に目を配っていく必要があるといえるでしょう。
本日の日経新聞のトップを、知的財産関連の報道が飾りました。映画やアニメなどのコンテンツ(情報の内容)を対象とした国内初の知的財産信託が登場するとの報道です。これまで、当サイトでは、知的財産関連の報道を注視し、以下のエントリーを書いてきました。
当サイトが知的財産信託に着目する理由は①土地等の担保を持たない中小企業にとって新たな資金調達源となりうること、また②私が受験指導をしている中小企業診断士試験の要である財務会計と経営法務の交錯する論点であり、学んだ知識を生きたビジネスの場に応用するのに格好である、と考えるからです。
【なぜビデオ化権が対象となったのか】
今回の知財信託の対象となったのは、「ビデオ化権」又は「ビデオグラム化権」と呼ばれるもので、この権利を知的財産の中でどこに位置づけられるのか確認しておきたいと思います。
知的財産は大きくわけると①工業所有権と②それ以外に分類することができます。工業所有権としては、特許権・実用新案権・意匠権・商標権があり、工業所有権以外の代表格が文化的な創造物を保護する著作権です。
著作権はさらに、著作物の財産的価値を保護する「財産権としての著作権」と著作者の人格的な利益を保護する「著作者人格権」に分かれます。著作者人格権の方は、他人に譲ることのできない性格のもので、ビデオグラム化権は分類としては「財産権としての著作権」の支分権と位置づけられます。
例えば映画に関していえば、映画館で上映する権利は上映権、そしてDVDやビデオにする権利はビデオグラム権と、「財産権としての著作権」は支分権に分かれているわけです。住友信託は知的財産信託第一号をはじめるにあたって、なぜ上映権に手を染めず、ビデオグラム化権に着手したかといえば、それはビデオグラム化権から生ずる将来のキャッシュフローの予測が比較的容易であるからに他なりません。映画があたるかあたらないかを予測するのはかなり難しいですが、ビデオが売れるか売れないかは、上映のデータにある程度比例すると予測され、知的財産信託の最大の難問である、キャッシュフローの予測をある程度クリアできるのです。
今回対象となったアーティストハウス社の映像子会社アーティストフィルム社の事業理念にはその点が明記されているため、以下に引用します。
『株)アーティストフィルムは、国内外の映画を中心にビデオグラム化権(DVDやビデオとして出版する権利)の取得を行っています。
リスクの高い映画配給を原則行わず、長期的収益を見込めるマーケティングコストが限定的なビデオグラムに事業を特化しており、一定の収益が確実で当社のブランド作りに有効な作品には、プロデュース、出資の参加もしております。』(引用終)
今後もしばらくの間は、著作権がらみの知的財産信託の主流は、こうした二次利用に関わるものが主流になるのではないかと、思われます。
【今後の信託銀行の動向】
知的財産信託の信託財産を工業所有権に定めるか、著作権に定めるかによって、まったく異なる人材が必要となります。工業所有権をターゲットにするのであれば、技術に対する洞察をもつ人材を集めねばならず、またウォッチすべきマーケットは産業財市場となります。逆に著作権がらみであればエンターテインメント業界に見解を有し、消費財市場のマーケティングの観点を欠かすことはできません。大田区と組むUFJ信託は、最初は恐らく前者に特化していくのでしょう。住友信託は「今後は特許権などの知財信託にも力を入れる。」とのことですが、「知財信託」ということで一まとめにして、同じ人材を投入しているようであれば、適正なプライシングを提供できるのかどうかという点において、一抹の不安を感じざるを得ません。
東京三菱銀行とみずほコーポレート銀行は年内に貸出債権の売買仲介に共同で乗り出して、第1弾として三菱商事向けの貸出債権(最大500億円)を対象にした売買市場をつくるとの報道です。
このローンの転売市場を必要としている背景に、「シンジケートローン」なるものがあります。さてシンジケートローンとは一体なんなのでしょうか?
【シンジケートローンとは】
シンジケートローンは、複数の金融機関がシンジケート団を組んで、それぞれの銀行が同じ契約書で、同じ条件で実行される融資のことで「協調融資」とも呼ばれます。こうしたタイプのローンが広まってきた背景としては、銀行側の事情があり、近年クレジット(与信)の管理が精緻化してきており、たとえよい融資案件と思われるものであっても、一つの銀行が単独でB/Sに巨額の資産を計上して融資を実行することはリスク管理の観点から好ましいと考えられていなく、したがって、他の銀行とチームを組んで融資を実行するわけです。
シンジケートローンには2つの形態があり、短期の運転資金に対応するのが「コミットメントライン」で、3~10年の長期資金に対応するのが「タームローン」です。タームローンの方は、長期の融資がシンジケート団により実行されると考えてよいのですが、コミットメントラインは多少理解しにくいかもしれません。
コミットメントラインとは、かみくだいていうと、融資設定枠をシンジケート団との間で設定して、その枠内であれば、「借りたい額をいつでも借りれる仕組み」といってよいでしょう。例えば融資枠10億円を設定すれば、ビジネスの成長などで運転資金が必要になった場合は、そのときに新たな契約を結ぶことなく運転資金を機動的に調達できるというメリットがあります。ただし、設定された枠に対して、銀行に手数料を払わねばならず、いつでもお金を借りられる保険料のようなものと考えて差し支えないでしょう。銀行側も資産を増やさず手数料収入が得られるため、メリットがあるわけです。このコミットメントラインは協調融資の形態をとってシンジケート団と取り交わされることも、また個別の銀行と相対で取り交わされることもあり、必ずしもシンジケートローンという枠内で行われるものではありません。
【中小企業のシンジケートローンの活用】
こちらの日銀のHPでは、「3」でコミットメントラインの活用事例が、「4」でタームローンタイプのシンジケートローンの活用事例が紹介されています。中小企業がコミットメントラインを活用するメリットは①資金を機動的に調達できることと、②必要なときに借りればよいのでB/Sを圧縮できることです。
またタームローンタイプのシンジケートローンを活用するメリットは①単独行では実現できないローンが可能になる点であるのは分かりやすいですが、②シンジケート団に財務状況を開示する「デットIR」のノウハウが将来、株式公開を志向するときに大いに役立つ点であるというのは、面白いメリットです。
こちらの富士総研のレポートの5ページでは、中小企業がシンジケートローンを活用したくない理由の第二位として「利用するメリットがよくわからない」が挙げられているのは、なんとも残念です。一中小企業診断士として、こうした情報不足の解消に役立てればと思い、本日のエントリーを執筆しました。
銀行のビジネスモデルが変わりつつあり、大口融資先への融資の利ざやが縮小する中、中小企業向け融資や住宅ローンを核とするリテール市場への本格的進出を狙おうとしているのはみなさんご存知の通りです。
そんな中、中小企業向け融資の新たな試みに関する報道が、本日も日経新聞に掲載されました。「大手銀行が中小企業向けの資金繰り支援融資に知恵を絞っている」との報道で、UFJとりそな銀行の商品が紹介されています。両者とも売上債権をバックにしたものとなっており、UFJのものは売掛金残高の枠内で融資を行うが売掛債権を担保にとらないという点で目新しいと思います。
新聞報道等から見る限り、中小企業向けの融資は3つの方向に向かって進展している感があります。
第一の方向性は、当記事に紹介されているような、売掛債権をバックにした融資です。売掛債権を売却するのか、担保にとるのか、それとも今回のUFJのように無担保で貸し出すのか、技術的な差異はありますが、売掛債権をバックにしているという点で共通しています。こうした融資において貸し出す側にとって重要なのが、リアルタイムで売掛債権の回収状況を把握するという点で、今回のUFJの融資においては、UFJに開設した口座での売掛金回収が前提となっています。また弊社サイト6月8日に紹介した、ガリアプラス社とミロクドットコム社共同の売掛債権担保融資では、会社の帳簿を会計ASPを通じて融資先に開示することで、より低利で融資を受けることが可能となっており、趣旨は同じと考えてよいでしょう。売上債権をバックとした融資は①リアルタイムで回収状況を把握し、②銀行側のシステムで定量的なリスクを人手(コスト)をかけず把握することが、銀行が競争に勝つための条件となるでしょう。
第二の方向性は知的財産信託を活用したもので、ここでは知的財産から生み出されるキャッシュフローがバックとなっています。こちらについても弊社サイト7月6日付けの記事で紹介済みですが、このタイプでの融資において重要なファクターとなるのが、知的財産の評価法であることはいうまでもありません。
第三の方向性がいわゆるリレーションシップバンキングの考え方に基づくもので、私が新聞を読み落としているだけなのか、「リレーションシップバンキング」という文字が新聞紙上を躍るのを見かけた記憶があまりありません。このタイプの融資では、上記2つのような定量的な情報より、経営者の資質といった定性的な情報をいかにして入手するかが重要となってきます。
土地がなければ融資が受けられないという時代からは確実に変化していることが窺えます。融資をする銀行も、受ける中小企業も、そして私のようなコンサルタントも、マインドを切り替えないと、新しい時代を乗り越えていくことはできません。
東京三菱銀行が中小企業向けに金利上昇リスクを回避したローンを投入したとの報道です。2つのタイプのローンが紹介されていて、そのうちの「逆市場連動型ローン」という方は、金利が上がると、支払利息が減るという一見不思議なローンです。実はこれは、派生商品の一つである「金利スワップ」を使用することで、こうしたローンができるのです。
「逆市場連動型ローン」により東京三菱銀行から借入を行う中小企業は、分解して考えると、通常の固定金利を払う一方で、固定金利を支払いTIBORをベースとした変動金利を受け取る金利スワップ契約を銀行と締結していると考えることができます。上の図で実線部分は固定金利ですから、点線部分の変動金利が上昇すると、中小企業側から銀行への支払利息が減るということがご理解いただけるでしょう。
一方で、こんなローンを販売している東京三菱銀行側の経営が心配になる方もいるかもしれません。しかし、大抵は、こうしたデリバティブがらみの商品を販売している銀行は、反対のポジションをとって、自分のところには、その差額のマージンだけ残るように取引を行っているはずです。上図でいえば、銀行は別のカウンターパーティーと固定金利払い変動金利受けのポジションをとって、リスクの残らない形にしているはずです。
みなさんはアメリカのオレンジ郡という地方都市が、デリバティブ取引の失敗で破綻したというニュースを覚えていらっしゃるでしょうか?そして、実はその破綻の原因が、この東京三菱銀行が発売しようとしているローンと似ているといったら、「どきり」とされるでしょうか?でも、この東京三菱銀行のローンが原因で破綻するなどということはないのでご安心下さい。違いはというと、東京三菱銀行のローンではどんなに金利が低くなっても、上限金利が設定されていて、金利が天井知らずで上がっていくことはありません。しかし、オレンジ郡のデリバティブには、こうした上限金利が設定されておらず、金利の動きが目論見と反対に振れてしまったため、悲劇が起きてしまったのです。
では、中小企業経営者の方にこのローンを勧めるかといえば、2つの理由からお勧めしません。第一の理由は節税の観点からです。変動金利である6ヶ月物TIBORが上昇するということは、その裏で景気の動向がよくなっているはずです。景気がよくなって商売繁盛している上に、利息がどんどん減って儲けがでてしまったら、節税対策で頭を悩ませねばなりません。第二の理由は、これは私の個人的な意見ですが、このローンは「リスク回避」というよりは、将来の金利上昇にかけた財テクといった色が強いという気がするからです。本当に金利上昇リスクから身を守りたいのであれば、固定金利で借り入れればよいのです。こうした、財テクで稼ぐことを考える前に、本業でいかに儲けを出すかを考えるべきだと思います。
UFJ信託銀行と大田区産業振興協会が月内にも提携し、中小企業が持つ知的財産の活用を支援する事業が始動するとの日経報道です。知的財産信託に関しては、弊社2004年5月19日のレビュー記事において、日本生命とみずほ信託銀行の事例を紹介し、同記事へのアクセス数等の面から、みなさまの関心の高い分野であることが改めて確認できました。本日ご紹介するのは、中小企業の活用事例であり、中小企業の資金調達の道を広げるという意味で、非常に興味深いものです。
【仕組の概要】
大田区は東大阪市と並んで優れた技術をもつ中小企業が集積していることで知られる地域です。今回の仕組みのもとでは、大田区の中小企業が持つ特許権の信託をUFJ信託が一括して請け負い、特許権侵害を防ぐとともに、資金調達にも知的財産を活用する、となっています。
この中で最も注目すべきは、信託銀行が不正利用の監視や特許利用契約の締結を通して、特許権侵害の防止に一役買ってくれる点でしょう。一般的に、下請け的な立場に甘んじている中小企業は、販売顧客である大企業への交渉力を持たず、本来受け取れるべき正当な対価を受けていないケースが往々にしてあります。この仕組みのように信託銀行を介することで、中小企業側が正当な対価を受け取ることが可能となれば、意義は大きいでしょう。
また、契約締結等の事務作業の負担から中小企業が解放される点も、意義が大きいといえるでしょう。一般的な大企業であれば、きっちりとした法務部門が存在し、事務作業を信託銀行が請け負ってくれることによるメリットはあまりないと考えられますが、中小企業では法務専任のスタッフを抱えることはコスト的に難しく、信託銀行側に投げることができるメリットは大きいでしょう。
【最大の難問~知的財産の評価額をどうすか?~】
上記の仕組において、中小企業は特許権等を信託することにより、まとまったお金を調達することが可能となるのですが、最大の難問はその特許権をいくらで評価するのかという点です。これは私の推測ですが、信託銀行各社もまだ確たる方法論を現段階では確立しておらず、現在評価方法を急ピッチで作成しているはずです。公認会計士協会からは、6月15日に「知的財産評価を巡る課題と展望について(中間報告)」と題されるレポートが発表され、信託銀行各社がこれを参考にすることは大いに考えられます。(残念ながら同文書は有料ダウンロードのため、リンクできません。7月のJICPAジャーナルに掲載されるそうなので、ご興味のある方はご参照下さい。)
したがって、知的財産の評価方法を具体的にご紹介することはできないのですが、ここで一般的な財産評価の考え方をご紹介しておきます。
株式であれ、債券であれ、不動産であれ、どのような資産であっても、その評価額は一般的に「その資産から生み出される将来のキャッシュフローを現在の価値に割り引く」ことにより算出されます。
債券がもっともわかりやすいでしょう。利払いと償還の期日にいくら入ってくるかは決まっているのですから、あとはこれを適切な割引率で現在価値に割り引くだけです。債券ディーラーはこうして計算された理論価格をもとに債券の売買を行っています。不動産であれば将来得られる賃料の予測額を、株式であれば将来得られる配当の予測額を、適切な割引率で割り引きます。ここで、債券と比較すると、債券の利子や元本に比べて、賃料や配当は将来得られるキャッシュフローというのが、より不確実になるという点に注意する必要があります。不動産には空室リスクが、株式には利益の変動リスクがあるからで、したがってリスクを反映させた債券の割引率よりは高い割引率を設定すべきです。
この考えを例えば特許権に応用すると、やはり特許権も将来得られるキャッシュフローの予測額を割り引くことにより評価額が計算されますが、特許権においては、技術の陳腐化のリスク等を勘案して、割引率を設定することになるのでしょう。
【改正信託業法の成立時期について】
現行の法制度のもとでは、上記の仕組みは実現できません。というのも、現行の信託業法では、信託の引受ができる財産の種類を①金銭②有価証券③金銭債権④動産⑤土地及びその定着物⑥地上権及び土地の賃借権の6つに限定されており、特許権等が含まれていないからです。信託業法の改正は、年金改革関連法案の混乱を受け今国会では成立できず、臨時国会での成立、来春の施行を目指すとの報道があり、具体的に動きがあるのは、来春以降となる見通しです。
ガリアプラスという会社がミロクドットコムのASPの会計システムのユーザーである企業を対象に、売掛債権担保融資の貸出金利を実質年利2%引き下げるとの報道である。両者ともターゲットは中小企業であり、資金調達に頭を悩ませる中小企業経営者の方には、押えておいていただきたいニュースである。「売掛債権担保融資」そして「会計ASP」という言葉に若干に解説が必要かもしれない。
【売掛債権担保融資とはなにか】
これについては、ガリアプラス社のサイトに非常に詳しく丁寧な説明があり、詳細はそちらに譲るが、若干私なりの言葉で説明を加えると、売掛金を担保にした融資なのであるから、お金の流れとしては請求後即入金があったかのような効果をもたらすものである。だから、請求から入金までの期間が一般的に長い業界(例えば金型製造)等にある企業は、この仕組を利用することによる恩恵が大きいと思われる。また、成長期にあり、年々運転資金が増加してしまう企業なども、この仕組の活用により、運転資金部分の銀行借入額を圧縮することが可能となる。
似た仕組みとしてファクタリングがあるが、こちらは売掛債権をファクタリング会社に売却してしまうものであり、その根本的な違いから派生する両者の違いに関しては、ガリアプラス社のサイトを参照されたい。
【ASPとはなにか】
次にASPについてだが、ASPとは「Application Service Provider」の略で、一言で言えば、インターネットを活用したソフトのレンタルのことである。プログラムはレンタルする会社のサーバー上にあるのだから、アップグレード等があってもレンタルする側としてはなにもしなくてもいいし、レンタルなのだから初期費用が大きくなることなく、気軽にサービスを開始できる。
記事に登場するミロクドットコムは会計のASPを提供する会社である。
【なぜ会計ASPの利用企業への売掛債権担保融資が低利になるのか】
理由は簡単である。つまり、融資先の会社の帳簿をリアルタイムで見せて下さい、その代わりに低利でお貸しします、ということである。この点に抵抗感を示す、中小企業経営者の方がいるかもしれない。帳簿をガラス張りにする代償として2%金利が下げられるのがこの仕組であるが、中小企業経営者の方がどのように受け止めるかに、このプログラムの成功はかかっているだろう。
本日のこの日経報道に関して。新聞を購読の方は上の図を紙面にてご覧になったかもしれない。
まず、知的財産とは特許権、商標権、著作権等をいい、わかりやすい説明はこのサイトに譲る。
本題の今回の仕組みだが、日本生命保険の子会社の持つソフトの著作権を、みずほ信託が受託し日生に代わって管理するというもの。ここで、素朴な疑問が湧く。両社にとって、このスキームを使うメリットはなんであろうか?
まず、みずほ信託側だが、こちらは簡単だ。信託業務の対象を拡大して、手数料収入を拡大したいのだ。日経紙面によれば、現在の信託業法では原則として知的財産は対象外であるらしい。今回の仕組は著作権法の例外規定を利用したもので、今国会で審議中の改正信託業法が成立すれば特許権等も対象となり、ビジネス基盤は飛躍的に拡大する可能性がある。
では、利用する日生側のメリットとなるとわかりにくい。まず報道でも触れらているのが、「著作権管理の事務作業から解放される」というもの。これは確かにわかりやすいメリットだが、それだけなら、なにも信託などという仕組を使う必要はないであろう。
ここで参考になるのが経済産業省のこのPDF文書。この中に知的財産信託を活用した場合のメリットがいくつか書かれているが、私の想像による日生側の最大のメリットは、恐らくソフトの著作権を時価で譲渡して、価値を顕在化させることであろう。生保各社は内部留保を厚くしているとの報道もあり、方向性としては合致する。ただ、このPDF文書には、それを特許権のメリットとしており、著作権でも時価譲渡できるのかどうか、私にははっきりとわからない。
また、当サイトでこの記事をとりあげたのは、それが中小企業の資金調達の道を広げうるからだ。すぐれた技術を特許権などの形で保有しているが、まだ経営基盤が確立されていないベンチャー企業などは、特許権を信託銀行に託することで、資金提供者はその中小企業の倒産によるリスクから隔離され、資金調達が従来に比べ容易になる。
今後法案が通った後での各信託銀行の動き注意深く見守っていきたい。
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