2005年06月22日

  執筆コンサルタントのプロフィールはこちら
  最近のニュース・レビュー記事はこちら new.gif


木を見て森を見ず ~所得税改革~

政府税制調査会が所得税と個人住民税の改革についての報告書を公表したとの報道です。税制調査会の報告書については、ネット上からの閲覧が可能ですので、お暇な方は下記リンクよりご覧下さい。

個人所得課税に関する論点整理

新聞にも書かれていますが、書かれている内容の多くは個人所得税の増税につながることが多いです。廃止、あるいは見直しがほのめかされている所得控除のうち、一般的なサラリーマンに大きな影響をもたらすと思われるものを以下に挙げてみましょう。

・給与所得控除
・退職所得控除
・配偶者控除
・特定扶養控除

これらがサラリーマンの懐具合に具体的にどれくらいの影響を与えるかの試算については、そのうち、東洋経済かダイアモンドが特集を組んでくれるでしょうから、それまで待ちましょう。
これらの所得控除を廃止、あるいは見直す根拠に関しては、報告書を読む限り、理路整然としていると思います。また、税の専門家でなくとも読みやすい文章で書いてある点については評価したいと思います。ただ、この報告書が行っているように、現行の税制の個々の問題点の羅列が、所得税課税の基礎となってよいのでしょうか?まず、最初に全体を見渡す統合的な視点があり、その上で各々のポイントを見直していくべきではないのでしょうか?
私が、今後の税制改革において必要不可欠であると考える全体的な視点とは2つです。第一には政府全体レベルでの長期的な収支予測です。増税がいくらくらい必要なのかは、歳出削減の規模に依存しますし、仮に必要増税額の見通しがたったとしても、それを法人税・所得税・消費税・・・等のどこから増やすのか、そういった全体的な視点を持たぬまま、個別論点を突いていても、場合によっては、時代錯誤的な改革になってしまう恐れすらあります。
第二は、これは所得税改革なのですから、所得の分配の視点が欠かせないという点です。私が報告書を読んで意外に感じたのは、既にひたひたと迫りつつある所得の二極分化に関して、なんら言及がなかったという点です。現行の所得控除に矛盾があるからといって、どんどん廃止していってしまったら、所得の低い層にはかなり負担感が増すはずです。このような中で、「少子化対策」と称して小金をばらまくような小手先だけの改革を行ったとしても、一向に効果がないと思います。
と、こんな批判に対する予防線なのか、報告書の1ページ目には『目指すべき個人所得税改革のグランドデザインを描いていくに当たっての主な論点を整理するものである(引用)』と記されており、この報告書自体がグランドデザインではないんだよ、との断り書きがあります。じゃあ、グランドデザインはいつ、誰が作るのでしょうか???

Posted by Ken Kodama at 10:46 | Comments (0)

2005年03月04日

  執筆コンサルタントのプロフィールはこちら
  最近のニュース・レビュー記事はこちら new.gif


公開企業 VS 同族経営 西武問題

ネット上のソース記事を引用するまでもない、西武問題ですが、本日の日経新聞には、企業経営の根幹に関わる興味深い記述がありました。西武問題は、堤氏の個人的意識の欠落と片付けてよい問題では決してありません。現在ベンチャー企業のIPOブームですが、そうしたベンチャー企業のオーナー経営者も自らの利益と他の株主の利益相反という問題をあまり意識していないケースが多く、我々がこの問題からきちんと学ばねば、第二第三の西武問題が起こることが考えられるからです。

【企業価値を引き下げると相続税が減る???】
まず、本日の日経新聞から部分的に引用をしたいと思います。

(引用始)
「加えて、収益力を抑制することはコクドの企業価値を引き下げることになり、堤前会長から後継者への将来の相続税の節約につなげようとも考えていたようだ。」
(引用終)

大企業の経営しかしらない方は、中小企業が自らの企業価値を減らそうとして様々な手を尽くしいると聞くとびっくりされるかもしれませんが、これは相続税の軽減を目的としているからです。相続税を軽減するためには、株式の価値を減らすことが有効であり、そのためには利益を減らすことが有効な手段であったりするのです。例えば、日興コーディアル証券の事業承継対策とのタイトルがつけられたページには以下の記述があります。

(引用始)
3. 利益の引下げ
短期的な対策としては、次のようなものがあります。
・不良在庫処分
・不良債権償却
・固定資産の売却損の計上
・従業員への決算賞与支給
・役員退職金の支給
中長期的な対策としては、次のようなものがあります。
・減価償却資産の購入
・レバレッジド・リースまたはオペレーティング・リースの導入
・生命保険への加入
(引用終)

同様の記述はファイナンシャルプランナーのテキストにも頻出されており、これが同族経営の経営者に対するアドバイスの常套句なのですが、こうしたことを株式公開企業が行っては、他の株主との利益相反になるため、絶対行ってはならないのはいうまでもありません。
確かに、今回このようなことが行われたのはコクドという非公開会社ですが、傘下に西武鉄道のような上場企業を抱えているのであれば、他の株主と利害をともにする覚悟で経営に当たらねばなりません。
そのためにまず行うべき第一のステップが資本関係の透明化です。ニッポン放送買収も、元をたどれば資本関係のゆがみがあったことが原因です。歴史のある企業グループは非常に複雑な資本関係を有しているのが常ですが、そうした複雑な構造になった経緯を調べると、現時点ではあまり意味のないことが多いものです。透明性の高い資本関係を再構築する動きが、ニッポン放送・西武問題を受けて、日本で加速化していくことを希望します。

【過度な負債は企業価値を損なう】
第二のポイントを知る上で有用な記述を日経新聞より引用します。

(引用始)
「80年代後半から90年代初めにかけて、コクドは毎期50億~140億円の営業利益を上げていた。一方で60億~170億円の借入金金利を払い続け、最終利益は1億~2億円台まで圧縮された。課税対象となる法人所得と最終利益は必ずしも一致しないが、重い金利負担は所得減らしに結びつく。」
(引用終)

負債による節税メリットが企業価値を向上させることは、当サイトでも繰り返しお伝えしてきましたが、度を越えた負債への依存は企業価値を損なうということも、財務理論上知られています。これがMMの第三定理で、財務破綻に伴うコストの存在により、ある水準を超えた負債は企業価値にとってマイナスに作用すると言われています。企業価値向上のために負債を活用するには、要はバランスが肝心であるということです。

Posted by Ken Kodama at 11:07 | Comments (0)

2005年01月04日

  執筆コンサルタントのプロフィールはこちら
  最近のニュース・レビュー記事はこちら new.gif


「大金持ち」は飛行機を買って節税する。

日本版LLPに関する報道が、再び日経新聞1面を飾りました。日本版LLC自体については、当サイトの12月9日のエントリーで触れましたので、詳細は割愛しますが、本日新聞報道の下記の記述を読む限り、あとは税制の詰めだけという感がします。

(引用始)
『ただ、経営に全く関与せずに投資目的だけでLLPの事業に出資するのは、課税逃れにつながるとして認めない。税務上の取り扱いの詳細については今後、財務省と改めて詰める段取りだ。』
(引用終)

上記の財務省の心配は杞憂などではなく、過去に任意組合を使った租税回避の金融商品が大金持ちに向けて販売されていたことを受けてのものです。これは昨年の文芸春秋の記事にも取り上げられ、私も読んだ記憶があります。(私の文芸春秋購買の目的はおそらく皇室ネタだったと思いますが・・・)
当サイトをご覧いただいているほとんどの方は、この租税回避金融商品の恩恵に与れるほどの資産家ではないと思いますが、話のネタに面白いと思うので、野村バブコックが販売したという商品の概要をご説明したいと思います。読売オンラインにも図が入った記事がありますので、あわせてご参照下さい。

【租税回避金融商品のスキーム】
まず、野村バブコックが資産家を集め、任意組合を設立します。なぜ、株式会社や有限会社でなく、任意組合かといえば、任意組合の所得は個人の所得と通算できるからです。これが、いわゆるパススルー課税のことで、厳密さを欠いた表現をすれば(いつものことですが)、パススルー課税と有限責任を抱き合わせにしたものが、日本版LLPといえます。
さて、この任意組合は何をするかといえば、さすが資産家の任意組合ですから、航空機を買い付けます。そして、これを航空会社にリースするのです。ここで会計理論の登場ですが、組合の資産である航空機の減価償却は定率法で行われます。つまり、最初の方が費用が大きくなるわけです。対して、リース料はリース期間を通じて定額であるため、リース期間の最初のうちは、任意組合に大損が出ることになり、これを個人の所得と通算して、所得税を軽減しようとするのが、このスキームの趣旨なのです。しかし、上記読売オンライン記事によれば、「著名な経済評論家を含む」資産家側も追徴課税された模様です。
確かに、こうした動きに目をつむったままで、「定率減税廃止」などといわれても、全く説得力がありません。また、この金融商品のスキームは野村「バブコック」や「航空機リース」といったキーワードが我々の目を幻惑させますが、その仕組みの基本は、所得税の基本と会計の基本を足し合わせたにすぎません。マネーリテラシーのないものが馬鹿を見る時代です。本業のお仕事にお忙しい皆様は、是非ファイナンシャルプランナーと呼ばれる人々をご活用下さい。

なお、本日のエントリーの内容を記述した論文を見つけましたので、ご参照下さい。

租税回避行為の否認のあり方について
(任意組合等を利用した租税回避スキームを中心として)

Posted by Ken Kodama at 11:50 | Comments (0)

2004年12月16日

  執筆コンサルタントのプロフィールはこちら
  最近のニュース・レビュー記事はこちら new.gif


税制大綱 人材投資減税とは?

自民、公明両党は15日、2005年度税制改正大綱を決定したとの報道です。昨日は所得税の主要トピックである、定率減税について取り上げましたので、本日は法人税がらみのトピックを取り上げたいと思います。恐らく、本日の新聞報道の中で、(中小)企業経営者の方の目を大きくひいたのが、人材投資減税の文字ではないでしょうか?ある程度細かい説明は本日の日経新聞の4ページに記載されていますが、残念ながら非常に読みにくい文章となっています。これを分かりやすい言葉に翻訳するだけでも付加価値があるのではないかと思われるので、日経新聞4ページの情報を以下に分かりやすく記述してみたいと思います。

【中小企業者の場合】
人材投資減税は、中小企業者とそれ以外で減税額が異なります。もちろん、中小企業者の方が減税額は大きいわけですが、誤解を恐れず感覚的にわかりやすい文章で表現すると、中小企業者は他の様々な条件が整えば、2005年4月以降の事業年度に支出した教育訓練費の2割が法人税額の控除という形で戻ってきます。つまり教育訓練費が実質8掛けとなるということです。ここで他の様々の条件の骨子を書いておきましょう。
①教育訓練費の金額が、直前2年の平均額に比べて40%以上の割合で増加していること。
②「税額の控除」という仕組みであり、その控除の限度は法人税額の10%相当額となっています。つまり、教育訓練費の金額の2割が、法人税額の10%に収まっていなければフルに適用は受けられません。したがって、赤字企業には適用できない仕組みであるということです。
ただし、①の条件については、増加率が40%未満であれば、増加率に0.5を乗じたものが控除率となります。例えば、教育訓練費の増加率が20%であった場合は、控除率は0.5を乗じて10%となり、教育訓練費は実質9割となります。

【大企業の場合】
参考までに大企業の場合を書いておくと、控除率自体は25%と中小企業者より大きいですが、控除率を乗じるベースは教育訓練費全額ではなく、過去2年間の平均額を超える部分のみとなっています。

【これを受けてどうすべきか】
既に教育訓練を2004年度において実施しようと考えていた企業は、実施を遅らせることで、2割セーブできます。また、この税制を受けて、教育訓練を積極的に行うのは素晴らしいことですが、税制に振り回されるのではなく、戦略的な人材育成プランを練り上げ、それにしたがって支出をすることが肝要であることをお忘れにならないで下さい。また、「教育訓練費」と認められるか否かの判断については、顧問税理士にご相談下さい。

Posted by Ken Kodama at 10:44 | Comments (0)

2004年12月15日

  執筆コンサルタントのプロフィールはこちら
  最近のニュース・レビュー記事はこちら new.gif


定率減税とファイナンシャル・プランニング

最近新聞をにぎわしていた「定率減税」ですが、ようやく政治決着がついたという報道です。以下、キーとなるポイントを引用させていただきます。

(引用始)
『所得税減税の上限は06年1月から現行25万円を12万5000円、控除率は20%を10%に引き下げる。個人住民税は06年6月から減税上限額を4万円から2万円、控除率を15%から7.5%に縮小。年年間の負担増は最大で所得税12万5000円、個人住民税2万円の合計14万5000円となる。』
(引用終、強調は私の判断によるもの)

この記事を読んで多くの方は、「なんとなく年間で数万円の増税だな」との印象をお持ちかと思われますが、サラリーマンの方は今後右肩上がりで給与が増加していくことは期待できないわけですから、増税分を事前に織り込んで家計を営むことが肝要となってきます。
その増税額を把握する一助として、本日の日経新聞3ページには「モデル家庭」の増税額の概算表が記載されています。こうした特集でいつも登場するのは子供2人夫婦2人のモデル家庭で、独身の方や、子供1人の家庭は途方にくれるばかりです。本日はサラリーマンの方を対象に、この新聞報道のもとで税制が確定した場合の、来年度の増税見込額の把握方法をご紹介したいと思います。

【現行の定率減税の仕組みを知る】
廃止されてしまうといっても、現行の仕組みを知らないことには、増税見込み額を把握することは不可能です。現行の定率減税とは最終的に計算された所得税を2割引きにしてくれる仕組みです。ただし、国民全員の所得税を2割引きにしてしまうと、高額納税者がものすごい得をしてしまうため、2割引きの限度が現在は25万円となっています。
これが、来年度は1割引となり、限度が12万5千円になるということです。

【源泉徴収表が鍵となる】
さて、来年度の増税見込み額を把握するには、現在の所得税額が把握できればよいこととなります。その上で鍵となるのが源泉徴収表です。少しでも早く知りたい方は、昨年度の源泉徴収表をご用意いただき、そうでもない方は今年分のものが会社からもらえるまでお待ち下さい。こちらのサイトには大変見やすい源泉徴収表の見本がありますので、イメージのわきにくい方はご参照下さい。
さて、この源泉徴収表の2段目の一番右側に「源泉徴収税額」なる欄がありますが、これが前回払った所得税の金額です。そして、これは2割引の特典を既に受けた金額であることに留意して下さい。
2004年度の「源泉徴収税額」が10万円である場合の、翌年度増税見込み額は以下のプロセスで算出できます。

①今年の定率減税適用前の税額=10万円 ÷ 80% = 12万5千円
②翌年度の所得税の見積もり額 = 12万5千円 × 90% = 112,500円
③増税見込み額 = 112,500 - 100,000 = 12,500円

ここで、注意せねばならないのが所得税の定率減税が今までは25万円であったのが、翌年度は12万5千円になるというポイントです。
したがって、プロセス①で計算した定率減税前の所得税額が125万円以上であった方は、増税見込み額は新しい限度と古い限度の差額の12万5千円となります。

【定率減税と証券税制】
実はこの定率減税を活用した証券投資に関わる節税のテクニックがあるのですが、それは私が発行する有料のメルマガのコンテンツであるため、ここではご紹介できません。この節税メリットを最大に享受できるのも今年度限りとなります。ご興味のある方は上記リンクより12月号のバックナンバーをお求め下さい。(仕組み上、1月以降にならないと購入できないかと思われます。)

Posted by Ken Kodama at 13:16 | Comments (0)

2004年12月06日

  執筆コンサルタントのプロフィールはこちら
  最近のニュース・レビュー記事はこちら new.gif


サルでもわかる「移転価格税制」とホンダのケース・スタディ

本日の日経1面に、自民党税制調査会が国際取引への課税強化の方針を固めたとの報道がありました。2つの柱があり、①海外投資家の日本国内での取引に対するものと、②国内企業に対するもので、後者に対しては移転価格税制の対象となる海外グループ会社の範囲を拡大しようというものです。本日はこの移転価格税制について考えてみたいと思います。

【移転価格とはなにか】
法人税率の高い国、低い国があるのは、皆様ご存知の通りです。海外で積極的に事業を展開している国際的な企業グループであれば、税率の高い国での利益をできるだけ少なくして、代わりに税率の低い国の利益を多くして、全体での支払税額を少なくしようとする誘惑にかられます。しかし、こうした行動は税務当局から租税回避と見られ、こうした租税回避を抑制するのが移転価格税制なのです。
移転価格とは多国籍企業のグループ会社間で、国境を超えて行われる取引の価格のことです。グループ会社間の取引なのですから、親会社の意のままに決定することができ、通常取引されている価格より高かろうが低かろうが、子会社は従わざるを得ません。しかし、このような市場とかけはなれた移転価格を野放しにしておくと、租税回避が横行してしまうため、企業グループ間の取引価格すなわち移転価格にしばりをかけようというのが移転価格税制の趣旨なのです。
基本的には企業グループ間の取引であっても、独立した企業間の取引価格の水準で価格を設定せねばならず、こうした独立した企業間で設定されるであろう取引価格をアームズ・レンクス・プライス(arm's length price)と呼ぶのです。

【租税回避と認定されないために】
私の少ない経験からすると、実際のところ、租税回避などという大それた意図は少しもないのに、知らず知らずの内に、アームズ・レンクス・プライスとかけ離れた取引価格を企業グループ間で設定しまっていることが、結構あるものです。租税回避と認定されてしまわないためには、どうやって企業グループ間の取引価格を決定すればよいのでしょうか?
まず、行うべきはファンクション・アナリシス(function analysis)と呼ばれるものです。企業グループ内のそれぞれの独立した法人が、グループ内においてどのような機能を担っているか、そしてどの法人がビジネスリスクを負うべきなのか、といったことを分析し明らかにしていきます。
次に行うべきなのが、上述のファンクション・アナリシスに基づいた価格設定で、価格設定のメソドロジー(方法論)には、2つの代表的な方法があります。すなわち①マーケット・ドリブン法②コスト・プラス法の2つです。マーケット・ドリブン法は、市場で販売できる価格を基準にして、各法人のとるべきマージンを控除して移転価格を算出する方法で、コスト・プラス法は製造原価に適正なマージンを上乗せして移転価格を算出する方法です。
ここで大切なのは、税務当局に追及されたときに、グループ企業間の移転価格は合理的な考えと数値データに基づいて決定されたものだということを説明する、バックアップの資料を整備しておくということです。こうした資料がなければ、税務当局への反論のしようがありません。

【例題 ホンダの1000cc級戦略車の移転価格を考える】
本日の日経1面には、移転価格を考える上で、格好の例題があります。ホンダは排気量1000cc級の「コンパクトカー」と呼ばれるクラスで、2008年にも発売する世界戦略車の開発に着手したとの報道がそれで、日経紙面には「開発」は日本で行い、「生産」はタイで行い、「販売」は欧州で行うとの図が描かれています。これは、非常に粗いレベルのファンクション・アナリシスと考えてよいでしょう。では、このファンクション・アナリシスに基づけば、タイから欧州に販売するときの移転価格は①マーケット・ドリブン法によるべきか、②コスト・プラス法によるべきかどちらでしょう?
色々な考え方があるのかもしれませんが、私はタイから欧州に販売するときの移転価格はコスト・プラスによるべきであると考えます。その根拠に、マーケット・ドリブンにした場合を考えて下さい。マーケット・ドリブンで移転価格を設定すれば、販売台数が計画に満たないときに、タイの生産工場に赤字が出てしまうことが考えられます。これはすなわち、タイの生産工場に欧州での販売リスクを負わせているからに他ならず、このスキームを考える以上、タイの工場には生産に対する適正な利潤が落ちるようにすべきで、コスト・プラスを採用すべきでしょう。
今年の中小企業白書の主要テーマの一つが中小企業のグローバリゼーションであり、中小企業とて移転価格税制に対して無策であるわけにはいきません。かといって、あまり追加的なコストをかけるわけにもいきませんから、仮に税務当局に追及されても理論的に説明し得る、バックアップの資料を整備しておくことを、まずはおすすめ致します。

Posted by Ken Kodama at 11:36 | Comments (0)

2004年10月04日

  執筆コンサルタントのプロフィールはこちら
  最近のニュース・レビュー記事はこちら new.gif


フリーターに住民税課税

総務省は2007年度にも、課税漏れとなっている1年未満の短期就労者から個人住民税を徴収するとの報道です。本日の日経朝刊トップに『フリーターに住民課税』の見出しが躍り、フリーターの方はどきりとされたことと思いますが、別に新たな課税がなされるわけではありません。現在は、1月1日時点で就労していなければ納税義務が生じないため、極端な話で言えば、1月2日から12月31日まで就労された方には住民税が課されないことになってしまい、今回の措置は、こうした制度の不備による不公平感を解消することに目的があります。ですから、公平性という観点からは当然の措置で、こうしたフリーターから住民税を課税できるようにするため、全ての企業に事務負担が生ずるとの観点から、トップ記事に取り上げられたのだと思われます。
これは、公平性という観点から至極まともな措置なのですが、しかし「フリーターからお金をとる」ことだけ考えているという点からすれば、極めて「木を見て森を見ず」的な政策だと私は思います。
UFJ総研の作成したフリーターに関するレポートに非常に興味深いものがありますので、以下引用したいと思います。


(引用始)
【平均年収】正社員:387万円、フリーター:106万円
【生涯賃金】正社員:2億1500万円、フリーター:5200万円
【住民税】正社員:64,600円、フリーター:11,800円
【所得税】正社員:134,700円、フリーター:12,400円
【消費税】正社員:135,000円、フリーター:49,000円
【消費額】正社員:282.9万円、フリーター:103.9万円
【年金受取額】正社員:(月額)146,000円、フリーター:(月額)66,000円
【経済的損失】税収:1.2兆円減少、消費額:8.8兆円減少、貯蓄:3.5兆円減少
(引用終)

こうした数字を目の前にして、税の公平性だけを振りかざして、フリーターから税をとりたてることは、果たしていかがなものなのでしょうか?もちろん、フリーターになる動機は様々であるのは事実ですが、人件費抑制を推進する企業の犠牲になっている面も否定できません。フリーターの老後の生活はどうなるのでしょう?こうした面に道筋をつけることが先決なのではないでしょうか?
全てのフリーターに可能な選択肢ではありませんが、彼等にはもともと捨てるものがないわけですから、人生一発逆転を目指して、起業するというのも一つの有効な手段だと思います。ただ、起業のノウハウを当然有しているはずはなく、かといってコンサルタントにフィーを払うほどの蓄えもないでしょうから、政府がフリーターが行う起業に補助金を出してくれると、私のようなコンサルタントにとっても、フリーターにとっても、そして社会全体にとってもハッピーな解になると思うのですが・・・

Posted by Ken Kodama at 19:27 | Comments (0)

2004年06月23日

  執筆コンサルタントのプロフィールはこちら
  最近のニュース・レビュー記事はこちら new.gif


政府税調の個人税制改革のための報告書

政府税制調査会(首相の諮問機関)が22日、個人税制の改革論議の土台となる報告書をまとめたとの報道がありました。

報告書全文がある政府税調のサイト

上記の報告書は、税制改革論議の共通の土俵作りを目指すために、日本の経済・社会構造変化の実像をを把握したもので、したがって、具体的な税法の条文をどうこうするといった記述は全くなく、社会学の論文の要旨のようなものです。このような根本的な経済社会の構造変化を正しく把握して、トップダウンアプローチで税制を改革していこうとする姿勢は大変素晴らしいですが、道路公団改革の一連の動きからもわかるように、小泉改革に見られる共通の特色として「竜頭蛇尾」が挙げられます。この論文で示した経済社会の構造変化の認識が、具体的な税法条文の改正にどこまで反映されるのかという点に不安を覚えます。また、現時点で具体的な改正の方向性を打ち出していないのはよいとしても、少なくとも現行の税制が、この構造変化にいかに対応できていないか、そのギャップ分析を行うことは可能です。税制改革の工程表を作成し、期限を決めた上で論議を進行させ、この報告書での問題意識が、個々の条文の改正にまで行き渡ることを、切に願います。
当報告書の経済社会構造の変化の認識はそれ自体興味深いので、「構造変化の実像の10のキーファクト」を以下に、列挙・引用致します。

 1.今世紀日本は「人口減少社会・超高齢化社会」
 2.「右肩上がり経済」の終焉
 3.家族の形の多様化
 4.「日本型雇用慣行」のゆらぎと働き方の多様化
 5.価値観・ライフスタイルの多様化・多重化
 6.社会や「公共」に対する意識
 7.分配面での変化の兆し
 8.環境負荷の増大、多様化
 9.グローバル化の進行
10.深刻化する財政状況

Posted by Ken Kodama at 10:25 | Comments (0)

2004年06月17日

  執筆コンサルタントのプロフィールはこちら
  最近のニュース・レビュー記事はこちら new.gif


金融一体課税とはなにか、またどう対処すべきか?

政府税制調査会より、金融一体課税に関する報告書が発表されました。日経新聞報道では、早ければ2005年度中からの段階的な実施を検討しているようです。詳細は上記のリンクより原文をご覧頂くとして、ここでは報告書の背景と概要を簡単にご紹介したいと思います。
【現行の所得税の仕組みとその問題点】
企業が支払う法人税の仕組と、我々個人が支払う所得税の仕組を比べてみると、所得税の仕組の複雑さがわかります。法人税の仕組を単純化して簡単に説明すると、全ての収益(益金)とそれにかかった費用(損金)を全部まとめて所得の金額(課税標準)を計算して、それに法人税率をかけて計算します。
ところが、我々の支払う所得税を計算するためには、我々の得た所得はそれぞれの所得の性格に応じて、「利子所得」「配当所得」「譲渡所得」「給与所得」などと分類されて、それぞれの所得に応じた税率で所得税が計算されます。ここで問題なのが、分類されたそれぞれの所得の間で損益を通算することがほとんどできない点にあります。
例えば株式投資を行っていらっしゃる方は少なくないと思われますが、損失を出してしまった方もまた少なくないと思われます。しかし、株式の売買で損失を出す一方で、配当はしっかり受け取っていると思われますが、この配当のもうけと売買の損失を相殺できないため、結果的に税金を多く納めねばならない結果に陥ってしまっています。安間伸さんという方の書いた「資産運用のカラクリ」という著作の表現を借りれば、「勝ったら税金、負けたら救済なし」という、我々個人のとって厳しい仕組になってしまっているのが、今の税制の問題点なのです。
【金融一体課税の目指すもの】
「負けたら救済なし」という酷な仕組を見直し、金融商品から生じる所得を一体として見て、例えば株の売却損が出ても、その分配当から得たもうけから控除できるようにして、リスクのある金融商品への投資を促そうというのが、金融一体課税の目指すところなのです。これを一言でいうと「貯蓄から投資へ」という言葉になり、報告書では「貯蓄から投資へ」というスローガンが何度も登場します。
【我々はどう対処すべきか?】
まだ、改正法案の細かい点はでていないため、具体的な対応策は申し上げられないのですが、少なくとも今の時点でいえるのは、これまで株式投資を敬遠していた方も、税制によるメリットが生まれるのですから、株式投資を行うことを検討してみてもよいのではないかということです。会社や政府が老後の生活資金を高い利回りで運用してくれる時代は終焉を迎え、我々が経済的に豊かな老後を送るには自らの手で金融資産を増やすことを考えねばなりません。金融一体課税が実現すれば、損をしても節税できるわけですから、今までよりもリスク商品への投資はしやすくなると思われます。
このサイトでは今後も金融一体課税の動きを注視し情報提供を行っていきたいと考えています。

Posted by Ken Kodama at 16:23 | Comments (0)