2005年06月06日

  執筆コンサルタントのプロフィールはこちら
  最近のニュース・レビュー記事はこちら new.gif


公的年金の運用を考える。

年金資金運用基金(年資基金)の累積損失が、株高により2004年度末時点でほぼ解消したことが明らかになったとの報道です。もちろん、これは「めでたい」報道ではありますが、年金の運用は長期的な視点で考えねばならず、短期的な損益に一喜一憂するのはあまり賢明ではありません。そこで、我々の公的年金の運用を預かる年金資金運用基金運用方針について考えてみたいのですが、当サイトをご覧いただいている方で、我々の公的年金の運用方針をご存知の方というのはどのくらいいるのでしょうか?恐らくかなり少ないと思われますが、こうした国民の無関心が年金不安の大きな原因ともいえるので、これを機に是非、公的年金の運用方針にご関心を持っていただければと思います。

【目標利回りは3.2%】
資産運用においては、まず目標とする利回りを算定した上で、それに基づいて、アセット・アロケーション(資産クラスへの配分)を考えます。これは、個人の資産運用でも同じなので、年金資金運用資金の方針の決定のプロセスを見ておくことは、我々の資産運用を考える上でも参考になります。
まず、目標とする利回りは3.2%であり、その根拠は以下のように書かれています。

(引用始)
『平成16年の年金財政再計算は、物価上昇率1.0%、賃金上昇率2.1%という前提のもと、名目の予定運用利回りを3.2%と設定している。このことを踏まえ、基本ポートフォリオは、実質的な運用収益を確保するため、名目の期待収益率と賃金上昇率等との差が一定以上確保されるような資産構成とする。さらに、給付に必要となる現金収入を効率的に確保できるよう、インカム及び流動性に配慮したものとする。』
(引用終)

つまり、この目標利回りは賃金上昇率と物価上昇率をカバーするに足る利回りであるということですが、少子高齢化の進展に伴う将来の給付減に対しては、運用利回りによるカバーがなされていないという点にも留意する必要があるでしょう。

【基本ポートフォリオの構成】
上記の目標利回りを受けて、アセット・アロケーションは以下のようになっています。

(引用始)
国内債券 67%
国内株式 11%
外国債券 8%
外国株式 9%
短期資産 5%
(引用終)

3.2%という、「長期的な利回り」としては控え目な水準であるため、株式の比重がかなり少なく抑えてあるのが特徴的だといえます。年金運用という長期スタンスの特性を考慮に入れると、もっと株式等のリスク資産を増やしてもいいのではないかという気が致します。

【その他の情報】
平成15年度の資金運用業務の概況書を見ると、その他の興味深い情報が満載されています。例えば5ページでは、アセットクラス間の相関係数が表にまとめられていますし、12ページにはパッシブ運用の比率がグラフになっています。48ページではパッシブ運用とアクティブ運用に分けた運用成績が表にまとめられていますが、株式においては、やはりパッシブ運用に軍配があがっているようです。

我々の資産である公的年金の運用状況をチェックすることは大切ですし、また、個人の資産運用を考える上での重要なヒントも詰まっていますから、お時間のあるときに、軽く眺めてみることをお勧め致します。

Posted by Ken Kodama at 19:12 | Comments (0)

2004年07月29日

  執筆コンサルタントのプロフィールはこちら
  最近のニュース・レビュー記事はこちら new.gif


北風と太陽

クーラーに当たりすぎて体調をおかしくしてしましました。皆様も猛暑の中の体調管理をしっかりなさっていただきたいと思います。
そのような事情で、今回はあまり頭を使わず書ける話題とさせていただきました。厚生年金の未加入事業者を社会保険庁が強制加入させるとの報道がありました。国民年金保険料を払わない人には年金徴収人がしつこくせまり、厚生年金についても同様に未加入事業所に強引に迫ろうとしています。
しかし、こんなアプローチが本当に機能すると政府は本気で思っているのでしょうか?この種の報道で私がいつも思い出すのは「北風と太陽」の寓話です。保険料を払わない人というのは、一部悪質な人もいるものの、大半のものは、保険料を支払う余裕がないから、支払わないのです。そのような社会的弱者に冷たい北風を吹き付けて、どうなると思っているのでしょうか?
強制的なとりたてよりもはるかに有効な策は、公的年金制度自体を魅力的なものにする「太陽」政策であるはずです。まず行うべきは、グリーンピア等の無駄遣いは一切やめ、国税庁と保険料の徴収機能を統合させ、コストを抜本的に削減することにより、我々が支払う保険料が無駄に使われないことを宣誓すべきです。
第二には、「少子高齢化」という構造的な問題に真剣に取り組み、子供を育て安い環境をつくり、場合によっては移民等も視野に入れ、若い世代の保険料の払い損にならないような制度を構築すべきです。
第三に、保険料の運用に最新の手法を取り入れ、少しでも将来の受給額の増加に努めるべきです。
そして、最後に、これらの改革を総合的に進めた場合の年金需給予定額を国民に示せば、現時点での未加入者も進んで加入するようになるはずです。

Posted by Ken Kodama at 17:31 | Comments (0)

2004年07月22日

  執筆コンサルタントのプロフィールはこちら
  最近のニュース・レビュー記事はこちら new.gif


またまた年金の計算ミス

また、公的年金の計算ミスの報道です。老齢基礎年金の「振替加算」で、全国の約700人に年金を7億円払い過ぎていたとのことです。ここで、「振替加算」について、簡単に説明しておきましょう。
老齢厚生年金をもらえる人に65歳未満の配偶者がいれば、一定額上乗せして、老齢厚生年金をもらえることができます。この上乗せ分のことを、「加給年金」と呼びます。配偶者自身が65歳になると、配偶者は自分の老齢基礎年金をもらえるようになります。このとき、今まで夫の老齢厚生年金の中でもらっていた「加給年金」は、配偶者自身の老齢基礎年金からもらえるように、きりかわります。そして、配偶者は老齢基礎年金に上乗せ額をもらえることになり、この老齢基礎年金に切り替えられた上乗せ分を「振替加算」と呼びます。
ただし、配偶者自身も現役時代に働いており、ある程度の老齢厚生年金・退職共済年金をもらえるのであるならば、この振替加算はもらうことができません。今回の計算ミスは、このように本来はもらえないはずの振替加算が、支給されてしまったことによるミスです。
多くもらえる分にはまだよいのですが、公的年金は仕組みが複雑で、下手をするとこのようなシステムミス等により、本来もらえるはずの金額をもらえない危険性があります。ご自身で検算してみるのがよいのですが、年金の仕組みに明るくない方は、ファイナンシャル・プランナー等にご相談されることをお勧めします。

Posted by Ken Kodama at 22:05 | Comments (0)

2004年06月29日

  執筆コンサルタントのプロフィールはこちら
  最近のニュース・レビュー記事はこちら new.gif


病める厚労省

先日、出生率が厚生労働省の予測した1.32を大きく下回る1.29を記録して話題となりましたが、その厚生労働省は2050年の出生率は1.39が達成可能だと主張しているとの報道です。彼等の主張する根拠は上記リンクより記事原文を読んでいただくとして、私には46年後に1.29が1.39に回復するとは到底思えません。
なぜ、彼らが我々の感覚とかけ離れた主張をするかといえば、先日可決された年金改革法案の前提が覆るのを嫌うからであり、問題を蒸し返すことで、面子がつぶれたり、手戻りの作業が発生したり、実はそういった次元の低いことが、本当の原因なのではないかと思います。
社会保障制度の抜本的な改革を目指す動きについて、先日の弊社記事で触れましたが、このような厚生労働省の態度を見ていると、国土交通省に骨抜きにされてしまった道路公団民営化案のような事態が、再び起こるのではないかという不安が、どうしてもぬぐえません。
官僚とはみなこうなのかといえば、金融庁などはUFJと激しくやりあったりして、どちらかといえば「改革派」の省庁といえるのではないでしょうか?この違いはどこからでてくるのかといえば、金融庁の親玉が民間人というのも多少はあるでしょうが、要所のポストに民間でキャリアを積んだ人々が入ってきていることが大きいと思うのです。たとえば、金融庁の求人サイトを見ると、かなりの高度な専門的知識を要する民間人を募集していることがわかります。また、これらの民間出身官僚はその後一生金融庁でサラリーをもらい続けていくのかといえばそうではなく、役所で働いていたという箔を得た上で民間に戻り、外資の金融機関で再び高給をもらえるポストについたりしているのです。そうした、官民の流動的な人材の出入りが金融庁を、まともな役所にかえたのではないかと私は思うのです。
社会保険庁にも民間人を入れるとの報道がありますが、こうした一度きりの採用ではあまり効果は期待できず、年金数理の専門家(アクチュアリー)等が民間の生損保と厚生労働省を行き来する時代が到来してはじめて、厚生労働省がまともな数値にもとづいた年金改革案を立案してくれるのではないかという気がいたします。

Posted by Ken Kodama at 21:25 | Comments (0)

2004年06月07日

  執筆コンサルタントのプロフィールはこちら
  最近のニュース・レビュー記事はこちら new.gif


国民年金をこのまま放置してもよいのか?

恐ろしい報道である。かいつまんで要旨を説明すれば、国民年金の集金人に対して支払う給料の方が、集めた年金保険料より多くなってしまった「赤字」の都道府県が7県もあったとのことである。「最も効率が悪かった愛知県は、1万円の給与に対し4000円の保険料しか集められなかった計算」との記述もある。
いうまでもなく国民年金の保険料は年金給付の財源になっているのだが、この報道の7県では、年金としてリタイア生活を送るみなさんに分配される前に、年金集金人への給料を支払うために消えてしまっているのだ。では、肝心の年金の財源はどこから賄っているのかといえば、恐らく厚生年金の積立金を取り崩しているものと考えられる。
この状況は更に悪化することが予想される。ここ数ヶ月の政治家・有名キャスターの年金未納問題により、国民年金保険料を納めなくなる人は更に増加するであろう。そして、その人々を説得しようと年金集金人は増員されたり、残業を強いられたりして支払うべき給料は更に増加する。
特定の政党を支持する発言は避けたいのだが、年金の徴収コストを限りなくゼロに近づけるアイデアというのが、民主党案にあった、「基礎年金の財源を消費税にする」というものである。消費税を徴収するメカニズムというのは既に完成されている。仮に基礎年金の財源が消費税に置き換われば、数パーセントの消費税率上昇は覚悟せねばなるまい。しかし、そのための追加的なコストの出費はゼロである。なぜなら、全国のPOSレジの消費税率を5%から7%にいじれば、それで作業はほぼ完結するからである。その一方で、国民年金徴収人という人々は不要になるから、浮いた金額を年金の給付のために有効に活用できる。
一般的にFPとして、我々がアドバイスするのは「既存の制度をいかに有効活用するか」という点に絞られる。すなわち、「少しでも年金を多くもらうための裏技」を紹介する類のものであり、書店にもそのような趣旨の書籍が多く並んでいる。しかし、制度を与えられたものとして考える受動的な態度では、我々の真に幸福なマネーライフは程遠いのみならず、冗談ではなく、この国の財政基盤が崩壊してしまうかもしれない。
国民一人一人が主体的に行動して、制度を改革して未来を明るく変えていかねばならないとの意識を持たねばならない、そんな時期に来ているのだと思う。

Posted by Ken Kodama at 10:25 | Comments (0)

2004年06月02日

  執筆コンサルタントのプロフィールはこちら
  最近のニュース・レビュー記事はこちら new.gif


年金が目減り?マクロ経済スライドとは何か

本日の日経1面の次のような見出しをご記憶の方も多いと思う。
 基礎年金 15年で1割目減り 月額6万円割る
現在審議中の年金制度改革法が成立したとの前提で、厚生労働省が試算を行ったところ、上記のようなケースも見られたという。そして、この年金受給額が減少する原因がマクロ経済スライドなのだと書いてある。恐らく大半の方が、「なんだかよくわからないが将来の年金の受給額が減りそう」という感覚であると思われるので、以下に若干解説を加えたい。
【現在の国民年金の年金額の決定の仕組み】
そもそも、大前提として、新聞に「基礎年金」と書いてあれば、それは「国民年金」のことで、これは年金保険料さえ払っていれば、誰でももらえる。サラリーマンであっても、厚生年金保険料をきちんと納めていれば、老後は老齢国民年金を老齢厚生年金に加えてもらうことができる。
で、この国民年金だが、保険料を何年間支払ったかによってもらえる金額が異なってくるのだが、40年間きちんと納めた場合の満額は、現在年間79万7千円(月額6万6千円)である。
実は、この金額は毎年見直されている。どのような観点から見直されているかといえば、物価だ。物価が上昇しても年金が目減りしてしまわないように、総務省が作成する全国消費者物価指数を参照して、消費者物価指数が上がればそれに応じて年金額を上げる。逆もまたしかりで、消費者物価指数が下がれば年金額は下げられてしまう。

【新法案のもとでの国民年金額決定の仕組み】
さて、私がいうまでもなく、年金財政は火の車である。現在の年金額のレベルを維持しようとすると、現役世代の保険料が高騰してしまう。それでは若い人々があまりにも可哀想なので、老人のみなさんも痛みをわかちあって下さいという趣旨のもと作られた仕組が、マクロ経済スライドなのである。
具体的には、毎年年金額を見直すのは今までと同じなのだが、前年度の年金額に以下で計算された率を乗じることで、年金額を見直すのである。

 物価変化率 - スライド調整率

この後の「スライド調整率」が年金生活者のみなさんに痛みをわかちあっていただくための調整率であると考えてよい。では、このスライド調整率とはなにでどのように計算されるのかについては難しくなるため説明を避けるが、厚生労働省によれば、2025年までは平均的に0.9%と見込まれている。イメージとしては、年金額が毎年0.9%近く、じわりじわりと減っていくと考えてよいだろう。このじわりじわり年金額が減るマクロ経済スライドの仕組みにより、物価の動きによっては、冒頭に挙げたような「15年で1割目減りしてしまう」ケースや「月額が実質的に6万円を割ってしまう」ケースがありうるということを、厚生労働省が試算してみせたということだ。

【今回のコラム執筆にあたって参考にしたネット資料】
みずほリサーチのPDF文書・・・年金改正の全体像をつかむのによい文書である。
自治労連のHP内の文書・・・当コラムではふれなかったが、スライド改定率と物価増減率の関係に関する細かい論点がわかりやすくまとまっている。
ALL ABOUT JAPAN内の文書・・・マクロ経済スライドに関するわかりやすい説明がある。

Posted by Ken Kodama at 10:54 | Comments (0)

2004年05月21日

  執筆コンサルタントのプロフィールはこちら
  最近のニュース・レビュー記事はこちら new.gif


厚生年金の受給時期繰り下げ

本日の日経紙面のトップを飾ったこの報道。2007年4月から、厚生年金の受給の繰り下げが可能になるとのことだ。
受給の繰り下げについて説明が必要かもしれない。実は、基礎年金である国民年金については、現在でも、受給の繰り下げが可能だ。国民年金は現在支給開始年齢が65歳だが、自ら申請することによって、支給開始年齢を遅らせることができる。こんな馬鹿な申し出をする人などいないかと思われるかもしれないが、実は支給開始を遅らせる見返りに支給額が他の人に比べて多くなるという仕組みだ。
どのくらい多くなるのかといえば、一月遅らせると0.7%増える。一年遅らせると0.7×12(ヶ月)で8.4%、最高の5年間遅らせると0.7×12×5でなんと、42%も年金の手取額を増やすことができるのだ。この増加率は国民年金の話であるが、報道によれば、厚生年金でも同じ率が適用されることとなるそうである。
したがって、65歳で退職した時点でその時点の金融資産残高と今後5年間の予想支出額を計算し、今後の5年間の支出を十分賄えるのであれば、繰り下げ申請をして、額の多い年金を遅れて受給するというのは、有力な選択肢だ。
恐らくこのブログに目を通して下さる方は、40代未満であるかと思われるが、実はこの報道にもあるように、年金財政の悪化から、支給開始年齢自体の引き上げが検討されており、現在40代未満の人は、最初から年金支給開始年齢が70歳などということも十分に考えられる。したがって、支給繰下などという話は遠い将来は全く関係なくなってしまっているかもしれない。このような公的年金の先行きの不透明さが、我々国民、そしてFP業者の頭を悩ませるのである。
なお、この改正の動きに批判的なコメントを加えると、年金の受給繰り下げが申請できるのは、かなり家計が裕福な方に限られると思われる。見方を変えれば、家計が裕福な方の資産運用を国家が補助しているともいえ、所得の分配という観点からは望ましいとはいえないであろう

Posted by Ken Kodama at 16:36 | Comments (0)