私が以下のようなタイトルのエントリーを書いて、ネット証券業界の発想の貧困を嘆いたのは、今から約1年前のことであった。
実は、上記のエントリーを書く直前に胆石の発作を起こして救急車で病院にかつぎこまれていたのだが、あれから1年たったのだと思うと感慨深い。個人的な体験はさておいて、本日の日経新聞の7ページや、あるいは日経金融新聞の1面に紹介されている、カブドットコム、及びイー・トレード&楽天&SBI陣営による夜間取引のPTS(私設取引システム)の動きは、ネット証券業界のメンタルモデルの転換の兆しを彷彿させる現象であるといえよう。本日の日経新聞7ページでも、この動きは「ネット証券のサービス競争は手数料からコンテンツ勝負という第二幕に入った。(引用)」とまで評されている。
ここで私が使った「メンタルモデル」という言葉だが、私が最初にこの言葉にお目にかかったのは、あのベストセラーのピーター・センゲの手による『最強組織の法則』においてである。この著作には、「心の奥底には世界の仕組みに関して深く秘められた各自のイメージが存在し、それが新しい見識と相容れないせいで実行の段階まで進めないのだ。(引用)」との記述があり、上記の文章の前段が「メンタルモデル」の定義といってよいだろう。そして、ビジネスにおいてイノベーションを起こすには、このメンタルモデルに働きかける必要がある、としているのが最近発売された『インポッシブル・シンキング(日経BP社)』という著作である。私なりに「メンタルモデル」という言葉を言い換えれば、それは個々人の「信」であるということになる。「信」を変えればイノベーションが起こる。部下を「信」じてエンパワーメントを実践すれば、組織の生産性は増す。こんな「信」のパワーがあるからこそ、私は例えば下記のようなエントリーを書くことによって、「信」が形成されるプロセスに着目しているのである。
本日のタイトルの内容の基礎的な部分に関する記述が長くなってしまった。前置きはこれくらいにして、では日経新聞がこの動きをネット証券業界の「第二幕」と表現するならば、「第一幕」の同業界のメンタルモデルとはどのようなものであったのか?おそらくこんなところであったのだろう。
ネット証券業界「第一幕」のメンタルモデル
①主としてターゲットとすべき顧客はデイトレーダーである。
②したがって価格競争こそが全てである。
③ネット証券各社は、証券売買に関わる全てのサービスを垂直的に統合して提供すべきであり、他社との合従連衡は考えられない。
おそらく上記のようなメンタルモデルがネット証券業界を支配していたため、「消費者」達は低価格という便益を享受できたものの、高付加価値という観点からは、必ずしも満足のいくサービスを享受できていなかった。そこで登場した「夜間取引市場」は(FPとしての私の価値観とは相容れないが)一つの高付加価値の方向性であるといえよう。しかし、夜間取引市場の導入にあたっては、コストと流動性の確保という難問をクリアせねばならない。本日の日経金融新聞によれば、カブドットコムのシステム導入コストは20億円から30億円とのこと。また「取引所出身者らが不公正売買の監視などに当たる。(引用)」とあり、ランニングコストも馬鹿にならない。したがって、各社が個別に対応するには無理があり、したがってSBI連合のような合従連衡が必要となる。
「夜間取引所」のような、合従連衡の上にしか成立し得ないような馬鹿高いコストのサービスが、ネット証券業界「第二幕」の開幕のサービスとなったことから、「全てを自前でそろえねばならない」という呪縛から、各社経営陣は解放されたのではないか?Web2.0的な用語を使えば、マッシュアップの動きを加速化していくことが期待される。異質な2者を結びつけることこそがイノベーションである。したがって、「垂直的にフルラインに提供せねばならない」という呪縛から開放されれば、売買の取次機能すら持たない「ネット証券会社」も登場するかもしれない。
例えばアナリストが手薄である「中小型株」に的を絞り、消費者が情報提供や分析を手掛けるCGM型のビジネスを手掛ける会社が登場してもよい。ただで分析をするお人好しの「消費者」なんているのか?証券アナリストに憧れて証券会社に入社しながら、資金決済を担当させられてくすぶっており、自らを「正当に認められていない」と感じている人材は多くいるはずである。同様の不満を持ったIT系の人材が「リナックス」というプロジェクトの成功の鍵を握っていたわけだから、こうしたビジネスモデルが不満をかかえた人材の自己実現の場として機能する可能性は大いにある。
あるいは長期投資を志向する人々同士の「投資クラブ」的なリアルなつながりを支援するSNSがあってもよいはずだ。一度、ネット証券各社の経営陣が旧メンタルモデルの呪縛から解放されれば、多彩なアイデアが登場し、もう私から「コモディティビジネス」などと揶揄されることはなくなるであろう。
ボビー、実は39歳だったとのこと。ムルアカが同じ事務所だったりと、よく分からない世界。ちなみに、野球を見ない私は、昨年まで「ボビー」といえば「オロゴン」しかいないと思っていた。ヤフーのヘッドラインを見て、どう考えても腑に落ちないニュースが多いなあ、と首をかしげていたところ、バレンタイン監督もボビーであることを、かなり最近知った。こういうところが、一人で仕事をしていく上での恐さである。
さて、本題だが、本日の日経新聞の上村早大教授による『経済教室』は熟読に値する名文である。新聞という媒体に適した読みやすさであり、かつ専門的な見識に裏付けられ、かつハートも感じられる。お手元にある方でまだ未読の方は、是非目を通していただきたいと思う。
話題は、当ブログでは、「またー」のライブドア問題であるが、教授は金融庁の法運用に問題があったとの見方をとり、その様子を『法改正があるまではやり放題という自堕落な気分にあふれた証券市場(引用)』と手厳しく批判している。これは誠に的確な表現であると思うが、ではなぜ、このような自堕落な気分にあふれた証券市場になってしまったのかという点については、規制当局である金融庁と自主規制の担い手である東証や証券各社とのコミュニケーションが必ずしも十分とは言い切れない点があったということが第一であろう。この点については、以前も下記のエントリーにおいて考えてみた。
株式分割には問題があるというのは誰でも知っていたことだが、ではそれに対処すべきは、証券各社のレベルなのか、東証なのか、あるいは法改正を待つのか、という点において3すくみ状態であったため、問題が長らく放置されてしまったのであろう。したがってまず必要となるのは、これらの機関が密にコミュニケーションをとり、どこがアクションをとるべき問題なのかを明らかにすることにあるだろう。
第二の理由は、規制当局が保護すべき投資家に目線を合わせていなかったという点に求められるであろう。東証や証券各社が株式分割の問題への対抗策を打ち出し始めたのは、ライブドアが株式分割をバックに、敵対的買収を仕掛けるほどの勢力をつけてきて、大企業の経営陣の地位を脅かしはじめたからに他ならない。それまでも、多くの無知な個人投資家(投機家?)が株式分割の生贄となっていたが、それだけでは規制当局は動こうとしなかった。規制当局は、今後は投資家保護と真摯に対峙してゆかねばならない。
では、今後法の運用とはどのようにあるべきかという点については、上村教授は以下のように述べている。
(引用始)
『市場をメカニズムを守り抜くために包括規定を活用し、市場阻害阻害行為に対しては法制度の趣旨に反するか否かを経済的実質に即して判断し、果敢に排除するという法の運用姿勢の確立でなければならない。』
(引用終、太字は私の判断)
ここで、「包括規定」についてだが、教授はSECの10b-5ルールが、アメリカにおいてはよく機能していると言う。ここでSECの10b-5ルールを原文のままで恐縮だが、引用しておきたい。
(引用始)
It shall be unlawful for any person, directly or indirectly, by the use of any means or instrumentality of interstate commerce, or of the mails or of any facility of any national securities exchange,
A. To employ any device, scheme, or artifice to defraud,
B. To make any untrue statement of a material fact or to omit to state a material fact necessary in order to make the statements made, in the light of the circumstances under which they were made, not misleading, or
C. To engage in any act, practice, or course of business which operates or would operate as a fraud or deceit upon any person,
in connection with the purchase or sale of any security.
(引用終、こちらのサイトより引用させていただきました)
面倒臭いのでいちいち訳さないが、一言で言ってば「悪いことはやってはいけません!!」ということである。(このずぼらさが、法を生業とする人と私の間にある永遠に埋められぬ溝なのです・・・)こうしたごくごく一般的な包括規定を根拠に、次から次へと繰り出される新手の金融取引手法の是非を判断するというのは、金融庁のお役人が得意とする仕事とは思えない。
環境変化が著しい現代においては、「法」の有効性というのは、数年のスパンで著しく失われてしまう。そこで、法を運用する規制当局も、規制される側の企業も、Compliance(法令順守)という近視眼的な視点だけではなく、Compliance & Ethicsという幅広い視点で考える必要があるのであろう。以下に、新約聖書の一節を引用しておくが、以下の一節は法の運用という問題を考える上において、ハートに訴えかける重要な指針になるのではないかと思う。
(引用始)
『わたしが律法や預言者を廃するためにきた、と思ってはならない。廃するためではなく、成就するためにきたのである。よく言っておく。天地が滅び行くまでは、律法の一点、一画もすたることはなく、ことごとく全うされるのである。それだから、これらの最も小さいいましめ一つでも破り、またそうするように人々に教えたりするものは、天国で最も小さい者と呼ばれるであろう。しかし、これをおこないまたそう教える者は、天国で大いなる者と呼ばれるであろう。わたしは言っておく。あなたがたの義が律法学者やパリサイ人の義にまさっていなければ、決して天国に、はいることはできない。』
(引用終、マタイによる福音書 第5章17節より20節まで、直接的にはこちらのサイトより引用させていただきました)
以前も聖書を引用したエントリーを執筆したが、聖書はかなり奥深く、かつ現代の世界にも通じる部分が多いように思われる。
今、『物理学者、ウォール街を往く』という本にはまっています。先日、書店に出かけ、仕事上必要な本とともに購入して、こちらはつまらないお正月番組のかわりに読もうと買っただけだったのですが、序文からしてオモシロすぎるので、仕事の本をほっぽらかして読んでいます。このはまり具合は、ハリポタ以来かも・・・
英語の原題は"My Life As A Quant"であり、「クオンツ」と呼ばれる金融ハイテクの第一人者の自伝となっています。著者のダーマン氏は、ハルの本でも紹介されているブラック・ダーマン・トイの金利モデルのあのダーマン氏です。前半は物理学者としての、後半はクオンツとしての生涯を振り返る内容となっています。
なにが面白いってユーモアのセンス!!大抵の本の『日本語版序文』はクソオモシロクもない美辞麗句が並べられているだけですが、この本は違う。例えば、こんなセンテンス。
(引用始)
『南アフリカ人の友人に、私はホテル・オークラでの心の平穏について話したことがある。彼は「良いホテルは現実を取り去るが、非人格化はしない」という誰かの言葉を引用した。』
(引用終)
あるいはこんなの。
(引用始)
『私は、東京で、ゴールドマン・サックスのクライアントに対して何度も金融モデルについて話をし、土岐大介が同時通訳した。彼はしばしば、私が10秒話した後に2分話し、私が1分話した後に10秒話し、私を驚かせた。』
(引用終)
物理学の素人の私でも、読み進む分には支障はないですが、デリバティブとかそういったものに一切興味がない人には、面白くないかもしれないです。ちなみにエニアグラムで言うと、この著者は4よりの5にマチガイナイ!!どうでもいいかもしれないけど(笑)
昨日のエントリーなどは、少しぶっ飛びすぎているのかなとも思っています。私のもう一つのブログに、外国為替証拠金取引に関する、かなりオーソドックスなエントリーを書きましたので、ご興味がある方は、ご参照してみて下さい。
さて、ソースを改めて引用するまでもない、みずほ証券の誤発注ですが、実は私が古巣の某証券で働いているときに、同様の誤発注の処理を近くから傍観したことがあります。当時報道された範囲でお話すると、原因は今回のような誤「入力」ではなく、テストデータを誤って本番環境に流してしまったというものでした。
いかにしてこのような誤入力を防ぐシステムを構築するか、というスタンスで書いた方がはるかに社会的な意義が高いのでしょうが、私が今回の事件と過去の私の体験を比べて感じたことは、「売り」の誤発注は「買い」の誤発注に比べてはるかに怖いという点です。それは、「決済」という観点と、「損失額の大きさ」という観点の2つからいえることです。
まず、「決済」についてですが、株式の売買においては、売買の日から3営業日後に、お金と株券を実際に受け渡ししなければなりません。(もちろん電子的に行われますが。)この場合、お金の方は、色がついていないわけですから、極端な話、借りてくればどうとでもなります。しかし、株券の方は数が限られており、今回のような上場直後の株式についてはなおさらです。金融機関が決済できないというのは致命的なことです。その回避策の1つとして、本日の日経金融新聞では、こんなことまで書かれています。
(引用始)
『ジェイコムがみずほ証券を引受先とする第三者割当増資を実施して株を調達するというシナリオもあるという。ただこれは大幅な株式価値の希薄化を招き、ジェイコムの資本政策も混乱する。』
(引用終)
まあ、まさかこんな手段はとらないとは思いますが、みずほ側にここまで考えさせたくなるほど、「決済」ができないというのは重いことなのです。
また、「損失額の大きさ」という点についても、「売り」の誤発注の方が「買い」に比べて大きくなる可能性がある、といえるでしょう。もし、誤って買ってしまった場合、実際にそうする金融機関はないですが、腹をくくって、長期的に持ち高を少しずつ減らしていくという戦略をとることすらできます。しかし、空売りのポジションが形成されてしまった場合、理論的には損失額は無限大に膨らみむので、一刻も早くポジションを解消せねばなりません。買いポジションの理論的な損失は、購入金額に限定されるのと比べると対照的です。なお、「空売り」の仕組みについては、私が過去に書いたエントリーをご参照下さい。
加えてネット・デイトレーダーという外野が増加した今日を考えると、みずほの足元をみて、今から買い向かう方も少なくないと思います。しかし、もしみずほの誤発注が「買い」であったならば、その状況下で儲けをえるためには空売りをせねばならず、空売りができる個人投資家となると、その数は格段に減少します。
最後に余談ですが、本日の日経新聞7ページに小さく顔が出ている方は、私の記憶が正しければ、「あのとき」日本にいた市場部門のヘッドのはずです。昨日の報道を聞き逃すはずはなく、「日本人不信」に陥っているかもしれません(笑)。
本日の日経新聞では、大手生保各社の自己資本増強の動きが報道された。以下に、NIKKEI NETの報道を一部引用しておこう。
(引用始)
『大手生命保険各社が相次ぎ自己資本の増強に動いている。第一生命は今年度以降内部留保の積み上げ額を増やし、3年程度で5000億円増の総額2兆円にする。三井生命は9月末に住友信託銀行から劣後ローンで約100億円を調達した。株価回復や解約減少で経営環境は改善しているが、攻めの経営に向け投資を増やすために財務基盤を一段と強化する。』
(引用終)
劣後ローンは厳密には自己資本ではないが、もちろん広義では自己資本と考えてよい。本日の日経紙面にも表が記載されているように、自己資本増強の動きは生命保険各社で見られている。
一方で、損保各社は自社株買いを積極的に行っている。例えば下記のような開示文書を参照されたい。
三井住友海上火災の自社株買いに関する開示文書
ミレアホールディングスの自社株買いに関する開示文書
あまりにも明白な基本的事実を確認しておくと、自己資本が多ければまさかのときに安心であり、少なければまさかのときに対応しきれず経営破綻の憂き目をみる確率が高くなる。で、これは定量的な分析等を経ていない、私の全く主観的な感覚にすぎないのだが、生保と損保と、どちらがより大きな「まさか」に直面しているかといえば、それは間違いなく損保であろう。「災害時帰宅マップ」なるものがコンビニで売られている時代である。また、アメリカのハリケーンも世界的な異常気象の一環としてとらえるならば、たとえ本日の紙面に記載されているように今年大きな台風による被害がなかったとしても、来年以降どうなるかは極めて不透明と言わざるを得ない。
こんな状況にも関わらず、なぜ損保は自社株買いにより自己資本を圧縮しているかといえば、それは損保各社が上場株式会社であり、株主からの圧力にさらされているからである。対して、生保の多くは相互会社という形態をとっており、契約者と大きく利害が対立する株主というステークホルダーが存在しないため、自己資本の積み増しが許されるのである。
これだけ書くと、保険業においては、なんだか相互会社という枠組みの方が優れているのではないかと思われてしまうが、保険各社は相互会社から株式会社に組織変更をしてきた経緯がある。その最大の狙いは①コーポレートガバナンスの強化と②市場からの資金調達により経営基盤を安定させることにあったわけであるが、②については自社株買いという「マイナスの資金調達」を行っているのであるから、経営基盤の安定という当初の目的とは少々異なる方向に行っているといわざるを得ない。
保険というビジネスは、その「まさか」の大きさという点において、そしてその「まさか」が国民の生活の支えとリンクしているという点において、他の事業法人とは一線を画するといえる。そうしたビジネスを営む企業が、ROEというモノサシを杓子定規に使って、株主にアピールするのもどうかとも思う。しかし、とはいっても株式会社である以上、株主の権益は保護されねばなるまい。切れ味は悪いが、本日の結論は「利害調整が難しい」ということで・・・
なお、相互会社についてはWikipediaに分かりやすくまとめられているので、関心をもたれた方は是非ご一読されることをお勧めする。
ネット証券の4~6月期の業績が発表されたとの報道が、本日の日経新聞の金融面と日経金融新聞にあった。4社が増収増益と、一見概ね好調であるが、明暗を分けたのは「手数料」のみと、ネット証券業界全体が差別化を図れない「コモディティビジネス」に成り下がってしまった感がするのが気がかりだ。
イートレード証券が大きくシェアを伸ばしたのは「低い手数料」のおかげで、逆に松井証券が減収減益となったのは「委託手数料が割高と受け止められ(日経新聞より引用)」たからであり、この業界の戦略的な変数は、もはや手数料率しか残っていないかのごとくである。ネット証券業界の末路は、暗黙的談合戦略を繰り返す鉄鋼業界のようになるのであろうか?シニカルに言えば、将来三木谷氏と松本氏は「敵対的買収」に備えて株式を持ち合う仲になるのであろうか?暗黙的談合戦略については、下記のエントリーを参照されたい。
こうした動きに抗うための収益の多様化の策として、日経金融新聞では楽天証券の老人ホームファンドの組成の動き、及びマネックスと松井証券の主幹事業務への傾倒の動きを報じている。大垣尚司氏著の『金融アンバンドリング戦略』は、金融の機能を以下の4つの大別している。
①オリジネーション
②サービシング
③マニュファクチャリング
④リスク管理・資金調達
個人向けネット証券のビジネスモデルは①のオリジネーションにすっぽりと収まるものだが、楽天証券のファンドの組成は③のマニュファクチャリング機能への進出を意味し、引受業務への傾倒は同じ①のオリジネーションに該当するものの、法人向けの窓口を新たに構築することを必要とする。確かにネット証券は収益の多様化を図らねば、コモディティビジネスに成り下がってしまうが、異分野への進出は経営資源の分散を招き、本来の強みを活かしきれているとはいえない。他にネット証券の活性化の方策はないものか?
私にはもっとクリエイティブで魅力的な未来が、ネット証券にはあるような気がする。例えば、本日の日経新聞の17ページにはMBHの松本大氏のインタビューが掲載されているが、「我が社が主催する株式投資の講習会にはたくさんの人が押し寄せる(引用)」そうであるから、同社の会員向けにイーラーニングに仕組みで、コストを抑えて付加的なサービスを提供してみてはどうか?また、株式投資関連のブログに着目すれば、純粋な利殖目的ではなく、他人から注目を浴びたり、個人投資家同士のつながり求めたりといった、一種の自己実現を株式投資から求めようとする投資家が多いことも事実である。そうした投資家の心理に着目し、希望する投資家の投資結果を毎月ランキング表示してあげたり、投資手口やポートフォリオを公開する手段を持たせてやるような、一種のSNS的なアプローチを取り入れることも、ネット証券の魅力を大きく増すことであろう。手ごろなSNSを買収することも、一つの選択肢となるかもしれない。
上記のアイデアは私が30分近くのブレーンストーミングで出したのに過ぎず、楽天の三木谷、MBHの松本という日本の頭脳とそのチームが本気を出せば、より魅力的なネット証券像を描けることは十分可能であるはずだ。
ネット証券が推し進めた手数料率の破壊は確かに個人投資家にとって大きな恩恵をもたらした。しかし、低い手数料率でネット証券業界が潤うためには、個人投資家を回転売買を繰り返すデイトレーダーと変貌させねばならない。また、かつての大手証券会社はプリンシパル投資に活路を見出そうとし、これもまた「投資家への利益相反」という観点から社会的に望ましくないことは、WEDGEの8月号でコメントさせていただいた通りである。
私は理想主義者なので、ネット証券各社がより良い社会を本気で追求しようとすれば、自然と道は開けてくるのではないかという気がする。
フジタ経営再建でゴールドマンなどが410億円出資するとの報道です。昨日のエントリーは、なんともタイミングよくプリンシパル投資をとりあげてしまいましたが(もちろんフジタの報道は予知しておりませんでしたが、不思議と微弱な予知能力に導かれることが時々あるのです。オカルトっぽくてすみません。)、もちろん本日のこの報道も、ゴールドマンの「プリンシパル投資」ビジネスの一環です。
昨日は「三井住友銀行を主導したゴールドマン内部の組織構造に興味はない」と素っ気なくしめましたが、証券業界全体の問題として考えると、証券会社がプリンシパル投資への傾斜を加速化するにあたって、無視できない問題があります。それは、証券アナリストの独立性という、昔からある問題です。
例えば、記憶に新しいエンロンですが、エンロンから多くの引受案件を受けて手数料を受け取っていた証券会社では、エンロンをお客さんとする「投資銀行部門」が「証券アナリスト」部門に圧力をかけて、エンロンをほめちぎるレポートを書かせていたことが問題になりました。(こちらの日銀レポートなどをご参照下さい。)
手数料ビジネスですらこうなのですから、自分が長期保有を行う「プリンシパル投資」への比重が増えた場合、同一証券会社お抱えの証券アナリストは中立なレポートを書き続けられるのか、おおいに疑問です。もっとずばりいえば、ゴールドマンの建設業界のアナリストのレポートは、今後信頼してよいのか、ということです。仮に「フジタ」はレーティングしないという決定をゴールドマンがしたとしても、他社のレポートの表現のさじ加減で、「フジタ」を浮き立たせることは可能でしょう。
こうした証券会社内部組織に端を発する「利益相反」という問題を考えると、全く独立系の証券分析専業の会社が出現してもよさそうな気がしますが、人気アナリストの年俸は2~3千万円と言われ、レポートの販売価格でビジネスが成立するのか疑問であるといわざるを得ません。
ホリエモン騒動で話題になったMSCBも証券会社と一般投資家の間に利益相反をもたらす取引で、今この時期、証券会社の利益相反について考察を深める時期に来ているといえるのではないでしょうか?
本日日経新聞7ページに、大手証券会社がROE向上のために「投資」に活路を見出そうとしているとの記事が紹介され、「プリンシパル投資」に積極的だとの報道がありました。しかし、多くの方にとって「プリンシパル投資」といっても「はぁ?(摩邪風)」といったところでしょうから、この言葉について少々考えてみたいと思います。
【プリンシパル投資とは ゴールドマン・サックス等による定義】
本日の日経新聞記事でも感じられるように、この領域で圧倒的に強いのがゴールドマン・サックスです。そこで同社のサイトの定義を参考にすることといたしましょう。同社のプリンシパル投資部門の英語と日本語のページがあるのですが、なぜか日本語のページの方は、分かりやすい説明が削除されているため、英語のページや他の金融用語定義集を参考に「プリンシパル投資」の特徴を明らかにすることといたしましょう。
・株式や不動産を買い取り、被買収企業の経営陣と一丸となって資産価値を時間をかけて高める手法。
・最終的には、売却によるリターンを実現して投資回収することが目標。
・インベストメント・バンキングが手数料ビジネスであるのに対し、プリンシパル投資は株式リスクを積極的にとる。
つまり、手数料ビジネスではなく、自らエクイティ・リスクをとるところに、インベストメント・バンキング(投資銀行)業務との差異があります。そういうと、「昔っから、証券会社って自己勘定でトレーディングとかやってるじゃん」と突っ込まれそうですが、自己勘定のトレーディングとプリンシパル投資の違いは、投資期間が短期か長期か、また、投資先の経営に関与するか否かに差があるといってよいでしょう。日経新聞や週刊誌でも報道されていますが、旅館やゴルフ場を買いあさっているゴールドマンの部隊はこのPIAという部門になります。本日の記事の冒頭に、ゴールドマンの三井住友銀行の優先株買取に関する記述がありましたが、旅館・ゴルフ場と比べると明らかに異質で、三井住友銀行の優先株買取を主導したゴールドマン内の組織に関しては、私は知りませんし興味もありません。
(当初一部分引用をしておりましたが、無断の引用はクレームがくるかもしれないので、表現を改めて内容を若干修正しました。)
ヤフーが、日興コーディアル証券とイー・トレード証券と提携し、証券仲介業に参入すると正式発表したとの報道が本日の日経新聞1面を飾りました。異業種からの証券仲介業参入を表明する企業は多くありますが、1面で扱うヤフーは別格ということなのでしょう。
実は、私もこのブログを運営していて、ヤフー・ファイナンスのパワーを見せつけられることがあります。私のサイトへの訪問者数(PVとは異なる概念で、同一IPアドレスから1日に複数回訪れても、1人としてカウントされます)は、ここ最近、平日は1日あたり150人から200人で安定しています。そのうち、2回以上訪れていただいたリピーターの方は、1日あたり40人前後で、残りの100~150人くらいの方は、検索をしているうちに、偶然たどりついてしまった、という方々です。
なぜ、こんな話をするかといえば、1日の訪問者数がときに3倍近くの500人近くに増えることがあるのです。なにが起こったのかとびっくりして調べてみると、ヤフー・ファイナンスからのアクセスなのです。私のサイトには株式投資家に役立つエントリーが数多くあると自負しています。それで、そのエントリーをどなたかが、ヤフー掲示板にURLを貼って下さっているようです。例えば、下記のようなエントリーが、過去にヤフー掲示板に貼られました。
はじめの方のエントリーはダイエーの掲示板にはられ、減資の意味が分からない方にご好評をいただいたようです。また、後半の方は、自ら株主である企業が突然MSCBを発行してしまい、わらをもつかみたい思いで、私のエントリーを眺めてくださっているようです。ヤフーは株式の銘柄毎に、語り合う掲示板がありますが、その各々の銘柄の掲示板を見ている人が、少なくとも200~300人いるということが、私のサイトをカウントすることで分かります。また、必ずしも、掲示板を見る全ての人がURLを踏まないでしょうから、掲示板を見る人は、銘柄あたり1日1,000人くらいはいるのではないでしょうか?
私自身は最近は株式投資はしていませんが、このエントリーを書いたり、他に調べものをするときに利用するのはヤフー・ファイナンスです。やはり操作性がよいし、グラフとかも美しくみやすいと思います。
と、そんな具合に株式投資家に圧倒的な支持を受けているヤフー・ファイナンスですが、新聞でも述べられていたように、証券会社を買収するわけでもなく、証券仲介業とは、少々拍子抜けな感じもします。ただ、ヤフーの発達の経緯を考えてみると、広告収入ほぼ100%からスタートし、最近ブロードバンド接続ビジネスとの収益比がほぼ50:50くらいになってきたわけです。今までのヤフー・ファイナンスは広告収入を増加させるためのポータルへの人寄せという役割にすぎなかったわけで、そう考えると、こうした段階を踏んだ事業拡大も賢明といえるかもしれません。
「コストで勝負」のネット証券だけでなく、日興コーディアルを提携先に加えた点が興味深いです。ネットのヘビーユーザーに対面営業が受け入れられるのか、日興コーディアルの健闘を見守っていきたいと思います。
大手銀行が貸出リスクを売買する専門部署を相次いで新設したとの報道です。貸出リスクの売買はクレジット・デリバティブと呼ばれる金融商品を通じて行われますが、ご存知ない方も多くいると思われるため、簡単にその商品の概要を見ておくこととしましょう。
【クレジット・デフォルト・スワップとは何なのか?】
まず、用語の整理をしておきましょう。クレジット・デリバティブは信用リスクを原資産とした金融派生商品全般を指す言葉です。具体的にはクレジット・デリバティブにも色々なバリエーションがあり、金融マンのバイブルであるハルの"Options, Futures, & Other Derivatives"の第四版には、「クレジット・デフォルト・スワップ」、「トータル・リターン・スワップ」、「クレジット・スプレッド・オプション」の3つが紹介されています。その代表格が「クレジット・デフォルト・スワップ」であることは、本日の新聞の記述からもお分かりいただけると思いますが、この商品にフォーカスして話を進めることとしましょう。
「クレジット・デフォルト・スワップ」の詳しい説明は金融大学のサイトをご覧頂きたいのですが、私なりの言葉で一言でいえば、「金融債権が貸し倒れた際に備える保険」です。
1億円を(有)エイムハイ・コンサルティングに融資しているA銀行が、貸倒リスクに敏感になり、貸しはがしするのは可哀想だけど貸出リスクは外だししたいという場合には、クレジット・デフォルト・スワップの売り手であるB証券にα%を支払うことにより、貸倒のリスクを肩代わりしてもらうことになります。もしも(有)エイムハイ・コンサルティングが経営破綻してしまった場合、B証券は1億円をA銀行に対して支払うこととなり、A銀行は貸倒リスクから解放されることになるのです。「会社版の生命保険」というイメージでとらえても、それほど遠くはないでしょう。
【なぜクレデリは儲かるのか?】
2~3年前の金融業界の関係者によれば、「クレデリ(クレジット・デリバティブの略称です)は儲かる」が一般的な認識でした。なぜ、儲かるのでしょう?
その前に、先ほど例に出した、保険料として支払う「α%」について考えてみたいと思います。この「α%」はどういう水準に落ち着くべきなのでしょうか?答えは(有)エイムハイ・コンサルティングのリスク・プレミアムです。銀行の貸出であれ、社債による直接金融であれ、企業の調達金利は、「無リスク金利(国債の利回り) + 各企業のリスクプレミアム」という考え方で決定されます。もし、(有)エイムハイ・コンサルティングが社債を発行していたとすれば、社債市場で観察される(有)エイムハイ・コンサルティングのリスク・プレミアムが、クレジット・デフォルト・スワップの「α%」ということになります。
さて、クレジット・デフォルト・スワップは、生命保険に似ているということを思い出してください。どうして、このような金融商品でリスクを外だししようと考えるかといえば、損失を回避したいからです。クレジット・デフォルト・スワップの本当の対価は「α%」なのに、損失を回避したいという心理的なバイアスが作用し、保険の買い手であるA銀行は、「α%」に上乗せした金額を支払ってしまうものなのです。買い手が理論値より高い値段で買ってくれるために、クレデリのディーラーは大もうけしているのが現状ですが、クレデリの日本市場が厚みを増し、売り手の参加者が増えれば、こうした非合理的なプレミアムはそのうち消失すると思われます。
【20年後、銀行は信用リスクの取り手であり続けるのか?】
さて、このようなクレデリを売買する投資銀行は、日々これらの商品のプライスを出しています。単純に社債市場のプレミアムを引っ張ってきているという部分もありますが、一方で、「クレジット・アナリスト」なる専門家を抱え、財務諸表分析や定性分析等のアプローチで、各企業のクレジット・リスクを日々ウォッチしているところが一般的です。
その一方で、融資を行う日本の銀行に目を向けると、自らの貸出債権を時価評価しているなどというところは、皆無に近いといってよいでしょう。つまり、クレデリを売買する投資銀行の方が、信用リスクを厳しく見て、積極的に信用リスクを取りにいっているのです。本来、信用リスクを取った対価として利息を得ていた銀行は、信用リスクを外だしする方向に進むのであれば、銀行の存在意義とは何なのでしょう?融資実行の際の初期の形式的な審査や事務手続きを行う「窓口」に過ぎないのでしょうか?
新聞の記述によれば、東京三菱銀行で新設された部署は、「クレジット・ポートフォリオ・マネジメント室」なる名前のようですが、どういった方向性を志向するのかといえば、以下の引用をご覧下さい。
(引用始)
『市場売買を通じて突出した特定の業種、地域、グループ向けの貸出リスクを外部に売却する一方、逆に取引の薄い業種・地域向けのリスクを調達すれば、全体の貸出資産の構成やリスクを均衡のとれた中身に組み替えることができる。』
(引用終)
上記の記述にしたがって、銀行が貸出ポートフォリオを整えていくと、いわゆる貸出市場全体に連動してくるようなポートフォリオ像に近づいていくことでしょう。すなわち、信用リスク全体のインデックスに連動したパッシブ運用のポートフォリオが形成されていくはずです。その一方で積極的にリスクを取る投資銀行は信用リスクのアクティブ運用者とみることができます。パッシブVSアクティブのどちらが良いのかという議論は古くからありますが、パッシブを選択するにしても、銀行自らが貸出債権を時価評価する覚悟で信用リスクに積極的に対峙しないことには、旨味のあるプレミアムがまたしても「外資系」に流出してしまうことになります。
クレデリとどう対峙するのか・・・銀行の哲学が問われていると私は思います。
(今日は神が舞い降りてきたかのように、短時間で(45分くらい)納得のいくコンテンツを書き上げることができました!日々のコンテンツレベルのバラつきはどうかご容赦下さい(^^ゞ)
本日の日経新聞はライブドア一色でした。一面の買収防衛策に関する記事もライブドアに端を発したものですし、セブンイレブン株譲渡の報道も、その背後の動機の「資本のねじれの解消」は、やはりフジテレビとニッポン放送の問題につながります。これほどライブドア一色の日に、この問題に触れぬわけいかないと思い、本日はライブドアネタにしようと思いますが、矛先は今回の騒ぎの黒子であるリーマンブラザーズです。
私は、財務内容の悪い企業に対してゼロクーポンCBの発行をもちかける、投資銀行の営業手法に対して以前から大きな疑問を抱いていました。「ゼロクーポン」CBなのですから、CBの購入者には利息収入があるわけではなく、そこからゲインを得ようとするのであれば、ゼロクーポンCBに内蔵されたコールオプションを活用するほかありません。財務内容が悪い企業であれば、当然株価の上昇は期待できず、したがってCBホルダーは、原証券の空売りポジションとCBに内蔵されたコールオプションを合成して、プットオプションを複製する戦略に出ることは目に見えています。(八重洲校で講義をお聞きいただいている方には、7回目に簡単にこの仕組みをお話する予定です。)
その結果痛手を被るのは、またもや、無知な個人投資家です。金融商品販売法という手ごわい法律により、もう証券会社は個人投資家を直接だまして旨味をしゃぶりつくすことはできなくなりました。しかし、無知な個人投資家からしぼりとろうとするその商魂は途絶えていなかったのです。だます相手はCBの発行体に代わりましたが、発行体のPLは少しも痛手を負うことなく、むしろ「ゼロクーポン」なのですから経常利益の増益要因ともなります。財務内容の厳しい企業にとってはモルヒネのようなものです。しかし、マネーゲームはゼロサムゲームなのですから、どこかで誰かが泣いているはずで、それが希薄化と空売りでガタガタになった個人投資家の持ち株なのです。これが、私がゼロクーポンCBを「悪魔に魂を売り渡す資金調達」と呼ぶ所以です。
ライブドア副社長の日記を読むと、なるほど、リーマンはこのような営業トークをしたのか、ということが手に取るように分かります。そして、同じ方の「風説の流布」呼ばわりされてしまった2月18日付けのエントリーを読むと、なんとも痛々しい限りですが、しかし本当に痛い思いをするのはやはり個人投資家である株主なのです。
投資銀行の直接のカスタマーは法人であるわけですが、その証券市場での重要な役割を考えると、結果的に個人投資家を粗末にするようなビジネスはすべきではないし、そのようなことをしていては、長期的には自らの首を絞めかねないといえます。今回の問題が、企業の買収防衛に対する法整備の道筋を開いたことは大いに評価すべきですが、保身を狙う経営者の便乗陳情という色彩が多分に強いと思います。その背後にあるMSCBに対しても、なんらかの規制があってしかるべきではないかと私は思うのですが・・・
こうした動きがあるということは、私は全く初耳でした。金融庁が一般企業が保険業務に進出しやすくするため、新たな参入基準を2006年にもつくる方針であるとの報道です。以下、報道の概要を下記に引用しておきたいと思います。
(引用始)
『既存の保険会社の基準とは異なり、10億円の最低資本金規制を緩め、商品審査も簡略にする。一方で取り扱う保険商品を限定する。小粒ながら斬新な商品を提供できる「ミニ保険会社」に門戸を開き、利用者の利便性向上につなげる。』
(引用終)
新聞でも書かれているように、この動きの狙いは、まずは、様々な問題を抱える無認可共済への対応にあります。数年の移行期間を設けて、無認可共済を免許制か登録制のいずれかにより、保険業法のもとに従わしむることを目指しており、消費者にとっては好ましい動きといってよいでしょう。企業年金の分野においては、受給権保護に問題があった「税制適格年金」の廃止が決定し、確定拠出企業年金法、確定給付企業年金法のもとに整備がなされた経緯をなんとなく連想させられます。
ただ、そんなことより、圧倒的に興味深いのは、この法律を使って、どのような保険ベンチャーが誕生するかという点です。新聞には、下記のような記述がありました。
(引用始)
『自転車や登山用具のメーカーが、レースや登山でのけがを保証する商品を開発する例などを金融庁は想定している。』
(引用終)
「Mountain」「Bicycle」「Insurance」の3語でググってみて、トップに出てきたのが、こちらのMcKay Insurance Agencyなる会社のサイトです。いつもながら、役所は海外の情報収集については、しっかりやっているなと感心させられます。この法律の可決により、日本でも保険マーケットのニッチの開拓が進むことが予測され、その際参考になるのは、やはりアメリカです。日本では目にしたことのない新奇なビジネスアイデアであっても、英語でググると、大抵既にビジネスとして成立している場合が多いものです。
保険のニッチマーケット開拓にご興味のある方は、英語で検索してみることをお勧め致します。
UFJ銀行の検査妨害事件で、元副頭取ら3人が銀行法違反(検査忌避)容疑で逮捕されたとの報道です。本日の日経の社説は同記事を取り上げ、「UFJ銀だけでなく、どの企業にとっても法令遵守という当然のことの重要さをもう一度確認する機会にしたい(引用終)。」と結び、これは企業側の問題であるとしています。もちろん、この認識に間違いはないのですが、検査忌避への真に抜本的な対策を考えるのであれば、監督官庁側の中長期的な努力が必要になると私は思います。
同社説では沖原頭取の反省の言葉として「内部管理や法令遵守の意識が脆弱な企業風土があった(引用終)」を引用しています。「個」の責任を「風土」という形のないものになすりつけようとする無責任な発言ともとれますが、一方で、自ら会社全体で法令遵守の意識に乏しいと認める開き直りの発言ともとれます。我々は、「では何がそのような風土を生み出してしまったのか?」と問いを深めるべきでしょう。
私は検査忌避を増長させるような企業風土があったとすれば、その原因は監督官庁の側に跳ね返ってくると思っています。一言でいえば、監督官庁の人材に法令遵守を徹底させうるだけの資質が備わっているのかどうか、という点です。その資質とは①モラルと②業界知識の2点です。
モラルについては、私から申し上げるまでもないですが、金融庁の役人にはかつてノーパンしゃぶしゃぶ接待にほいほい出かけていってしまった人々が含まれています。また省庁は異なりますが、厚生労働省の勤務実態がないといわれる監修料の受取や、年金資金の巨額の蕩尽などを考えると、「こうした役人に法令遵守うんぬんを言われる筋合いはない」と考えるのが人間心理というものでしょう。日本のビジネスの中枢をチェックするわけですから、監督官庁側にも高潔な人材が求められることは、当然の道理だと思います。
二点目の業界知識については、金融業界人はプライドの塊であるということを理解する必要があり、そのプライドの裏打ちするのが高い学歴と、最先端の金融技術に通じているという自負です。金融業界の人は役人やマスコミを、「全く知識がない」といってとかくバカにしがちです。普段バカにしている相手から検査を受ければ、その検査そのものをバカにしてしまうのは目に見えています。中途採用や人材の交流により金融庁は最先端の金融技術の習得に努めねばなりませんが、この点については金融庁も努力している点が伺えます。
「検査」が有効であるには、検査する側に十分なモラルと知識があることが前提となります。今回の事件を一民間企業を叩く表層的な反省に終わらせることなく、監督官庁の高度化につなげていかねばなりません。
異業種から新規参入した銀行4行の2004年9月中間決算が15日に出揃い、ソニー銀行を除く3行は黒字であったとの報道です。赤字の理由として、本日の日経新聞朝刊には以下のような一文がありました。
『住宅ローンの金利リスクを抑えるために実施したヘッジ取引で評価損が膨らんだ。』(引用終)
この一文は、まずヘッジ取引なるものを知らない方には全く意味をなさないでしょうし、また、ヘッジ取引に関して漠然とした知識しかもたない方にとっては、更に不可解なものにうつるはずです。こうした2パターンの方を想定して、上記の一文の背景を解説してみたいと思います。
【ヘッジ取引とは】
ヘッジ取引とは、私なりの定義をさせていただくと、将来の不確定要素を排除するための取引です。
よく使われるのが外国為替取引です。例えば、アメリカに商品を輸出した決済代金として3ヶ月後に100万ドル受け取ることが確定しているとします。そのような場合、3ヶ月後の為替レートの水準など分からないわけですから、そうした不確定要素を排除したいわけです。いくつかの手法はありますが、ポピュラーなのは、現時点でドルの為替先物を売却しておくことです。こうしておくことで、為替レートを3ヶ月後ではなく、今の時点のレートで固定させることが可能となります。そして、この際に用いられた「ドル為替先物の売却」が、この場合におけるヘッジ取引ということになります。
ソニー銀行の場合、主力の住宅ローンの大部分は変動金利建てとなっています。このままでは将来受け取る金利が確定していないため、不確定要素を排除するためにヘッジ取引が行われます。ソニーのIR資料を見ると、住宅ローンのヘッジ取引として金利スワップが使用されていることが明記されています。金利スワップとは、変動金利と固定金利を交換する取引のことで、ソニーは住宅ローンから変動金利を受け取るわけですから、変動金利を支払い固定金利を受け取る金利スワップを組むことにより、将来の不確定要素を排除することが可能となります。
【なぜヘッジ取引から赤字が出てしまうのか?】
ここまでは、ヘッジ取引とはなにかの説明でしたが、ヘッジ取引について漠然とした知識しかもたない方は、なぜソニー銀行はヘッジ取引から赤字を垂れ流しているのか、疑問であるはずです。先ほど書いた外国為替の設例の取引からは、評価損益は生じません。なぜ、ヘッジ取引から赤字が出ているのでしょうか?
可能性は二つあります。第一はヘッジがうまくいっていないという可能性です。金利スワップでヘッジ取引を行うこと自体、高度な専門的知識を要し、そうした資質にかける方が担当されていた場合、ヘッジ取引が適切に行われなくなる可能性があります。また、仮に専門的知識があっても、内部統制が機能していない場合には、金利スワップで投機的な取引を行い、損失を出す可能性すらありえます。
第二の赤字の説明の理由として考えられるのは、極めて会計的なものです。通常ヘッジ取引を行った場合、ヘッジされる原取引とヘッジ取引の損益を合算すると、ゼロに近くなります。しかし、会計原則の仕組上、ローン債権は時価評価しませんが、ヘッジ取引である金利スワップ取引は時価評価することになっており、片側しか時価評価していないために、大きなマイナスを計上したりプラスを計上したり、ということがあり得ます。
「ソニーブランド」を信奉するならば、第一の理由のようなお粗末なものは考えられず、したがって、赤字の理由は第二の極めて会計的なもの、となるのでしょうが、名門の住友商事ですら、かつてデリバティブで巨額の損失を計上したくらいですから、易々とソニーブランドを信奉するわけにもいきません。
【住宅ローン販売金融機関に望まれる開示情報】
ソニー銀行の場合、住宅ローンが全体のビジネスに占める割合が非常に高く、こうした問題が早くから顕在化してしまいましたが、他の金融機関も大なり小なり同様な問題を抱えているはずで、それが我々の眼に触れないだけです。
公庫の廃止を受けて、今後民間金融機関の住宅ローンの比重はますます高まるでしょうから、適切な情報開示が求められるところです。
私は、住宅ローン債権の時価情報を、注記情報として開示するのが望ましいと考えています。金融機関にそれほど手間もかからないはずです。仮に現時点で、内部管理用としてローン債権を時価評価していないとすれば、それは大きな問題です。
また、民間金融機関の住宅ローンの多くは変動金利建てのローンを主力商品としていますが、今後金利上昇を受けてローン破産者が続出することが大いに考えられます。そうした場合、金融機関は貸倒のリスクのみならず、ヘッジ取引だけ残存してヘッジ元取引が消失してしまうことによるアンマッチが生じてしまうことも、将来的に大いに考えられます。そしてアンマッチ分のヘッジポジションをクローズする際に大きな損失を被ることも十分考えられます。預金者として、また、投資家として、銀行に必要十分な情報開示を望みたいところです。
日本IBMが金融機関向け次世代型基幹システムを開発し、第一弾としてスルガ銀行から受注したとの報道です。新聞報道では、このシステムの技術基盤がオープンシステムであるというハード面を強調していますが、ファイナンシャル・プランナーとしては、背後に見える銀行のリテール戦略の方に目が行ってしまいます。
本日付の日経新聞の15ページの図を見れば明らかなのですが、システムのメーンの切り口は「顧客」であり、顧客の属性に適合した自前のローン商品、提携先の投信、保険等をクロスセルして、顧客の生涯価値を最大化しようとする、ワン・トゥー・ワン、CRMの思想が鮮明に伺えます。
また、私の興味を大きく惹いたのが以下の記述です。
『新システム導入で利率や融資期間などの個別機能を自由に組み合わせ、年齢や勤務先、家族構成など顧客の属性をもとにした特注の住宅ローンや融資が可能になる。』(引用終)
これは、実は私が温めていたアイデアと重なります。(といってももちろん弊社の力では商品化できないのですが・・・)今でも返済期間・利率などは銀行の既存のシステムで柔軟に対応できると思うのですが、返済額については、元金均等・元利均等のいずれかからしか選択できません。返済のスケジュールを変更しようとすれば繰上返済を行うほかなく、若干その手間が面倒であり、繰上返済の手間を軽減するローン商品として新生銀行・東京スター銀行から新ローン商品が登場していますが、いずれも返済額は一定との前提にたつことにはかわりはありません。
はじめからライフスタイルに応じて返済額にめりはりをつけるローンがあれば、利用する側にとっては大きなメリットだと思います。(子供が中高生のときは教育費がかさむのでその期間だけ返済額を少なめに組みたい等々)また、銀行側も「繰上返済」というサプライズをマネージする必要が軽減され、ALMの観点からも有効だと思われます。スルガ銀行がここまでの商品を考えているのであれば、あっぱれといいたいところです。
一点、「オープンシステム」という点についてコメントするならば、既存のソフトを組み合わせて使用するため、新聞報道にあるように①コスト削減②将来の戦略変更に柔軟に対応できる等のメリットを享受できますが、①複数のシステムにアクセスするために操作性の観点から接客する人の生産性が落ちる、②顧客のポートフォリオ全体の分析をどこまで詳細に行いうるか疑問、といったデメリットもあります。
経営コンサルタントとしてこの新聞報道はリテールバンキングを考える上で実に興味深いですが、FPとしては、こうした情報武装した銀行が続々登場するとなれば、明らかに脅威です。うかうかしていられません!!
金融庁は17日、シティバンク在日支店に対しプライベートバンキング業務を手掛ける全4拠点の営業認可取り消しや、新規の外貨預金業務の一時停止などの処分を発表したとの報道です。シティの外貨預金に関しては、この報道と直接的な関係があるかどうかは定かではありませんが、弊社サイトの関連記事がありますので、ご参照下さい。
本日(9月19日)の日経新聞の社説のタイトルは「シティバンクよ、お前もか」でした。これは、CSFB(クレディ・スイス・ファースト・ボストン)の飛ばしがらみの取引に端を発した、一連の外資系金融機関の不祥事を意識してのタイトルなのでしょう。ここまでくると、外資系金融機関の日本の拠点には、構造的な問題があると言わざるを得ないでしょう。なにが問題なのでしょうか?私は外資系金融機関に勤務経験もあるし、また、勤務以外の人脈を通しても多少内部の事情を知っています。また、金融以外の外資系での勤務経験も有しています。そうした、個人的な体験・交流から、外資系金融機関の日本拠点の問題点を挙げるとすると以下のような点になるでしょう。
①お金を稼ぐトレーダー・営業関係者にはコンプライアンスとは縁遠い人が多い
シティ、CSFBなどとカタカナで来られると、英語を操るスマートな洗練された人々の集団であるかのような錯覚を起こしますが、お金を稼ぎ出すトレーダーや営業マンは、そうしたイメージからはかけ離れた方が実際多いものです。そして、はなから「法令遵守(コンプライアンス)」などといったことを馬鹿にしてかかった人が多いのも事実です。
②管理部門の力が営業部門に比べて圧倒的に弱い
①の問題点は、まあ、仕方がない点でもあります。営業マンがあまりにスマートすぎたら、泥臭くお金を稼いでくれません。深刻な問題はこちらの②の方でしょう。管理部門にはコンプライアンス(法令遵守)といった、営業活動が法令に合致したものか調べる専門の部署が存在しますが、管理部門の営業部門に対する影響力があまりに非力なことが多いのです。私は、この現象は、日本の外資系金融機関に特有のものだと思っています。メーカーや小売の場合、お金を稼ぎ出すのは個々の営業マンの努力ももちろんありますが、そのビジネスの仕組自体に依存するところが大きいのです。したがって、営業における「個」の力は小さく、営業系の人々がそれほど大きな顔をすることもありません。
しかし、今回問題となったプライベートバンキングなどの業務のよい場合、個々の営業マンがいかに人脈を有しているかどうかが、大きな鍵となり、したがって、自分の力を知る営業マンは組織の中で大きな顔をして、管理部門のいうことを無視するようになります。
それは、PB業務に限らず、トレーディング、法人営業においても同様です。
外資系金融機関の内部において、管理部門がいかにして復権するかが、こうした不祥事を未然に防ぐ鍵となることでしょう。
「東京がアジアで最も重要な拠点」と考える外資系金融機関が6割に達するとの報道です。理由については「金融システム不安が遠のいたことや日本の金融機関の情報開示が進んだことなどを評価」としていますが、私にはもっと別の理由があるように思えます。
外資系金融機関が日本にて行う業務は大きくわけて2つといってよいでしょう。一つは株式や債券のトレーディングで、証券の流通市場に関わるもの、もう一つは企業の資金調達に深く関与するもので、発行市場に関わるものや純粋なアドバイザリー業務が後者に該当します。
前者においては、特に為替のトレーディングなどは24時間相場が動いているわけですから、ニューヨーク、ロンドンに加えて、アジアに一つ拠点が必要となるわけです。そして、その選択は東京、香港、シンガポールのいずれかになるのですが、こうしたトレーディング上の要請でアジアに拠点が必要になる場合は、3つのうちいずれでもよく、コストの安いところを選択する傾向が強かったといってよいでしょう。その結果、トレーディングを主体とする金融機関で東京を縮小するところは結構多かったのが実情です。
ところが、今回の調査で東京が見直されているというのは、後者の発行市場がらみの需要が大きくなると外資金融機関が見ていると考えているといってよいでしょう。景気がもちなおしているというのが、最大の理由でしょう。また、一つ私が個人的に注目しているのが、欧米流の(財務)マネジメントスタイルが日本に浸透してきたことも大きい要因だと思われます。例えば、先日の三井住友のUFJ買収提案ですが、こうした敵対的買収の提案を日本企業が行うことは数年前までは考えられなかったことです。「株主を重視した経営」が日本の経営陣にも浸透しつつあり、こうした欧米流の手法に理解が深まると、外資金融機関の活躍できるフィールドが広がるわけです。報道はされませんが、三井住友の背後には絶対にどこかの外資金融機関(米系のGではじまるとこかな???)のアドバイスがあったはずで、UFJに提案した申し入れ書の作成にも関与しているはずです。そして、巨額のフィーを稼いでいたはずです。
更に先のこと、例えば10年くらい先のことをいうと、そのころは中国経済が恐ろしい勢いで成長を遂げているはずです。そうすると、発行市場がらみの注目も中国に集中し、そのとき金融センターとしての本当の地盤沈下が東京を襲うのではないかという気が漠然とします。そうした未来に備え、なにか策はあるのでしょうか?
UFJグループが13日、三菱東京フィナンシャル・グループと経営統合に向けた交渉に入る方針を固めたとの報道です。三菱東京側の現時点でのプレスリリースでは、まだUFJ側からの申し入れすらない段階のようで、どのような展開になるかは現在では分かりませんが、仮にこの経営統合が実現すると、4大金融グループが3大金融グループになってしまいます。FPとしての視点からは、体力の劣ったUFJが救済され、個人の預金がより安全になるというメリットはあるものの、これだけ銀行が統合されてしまうと、銀行業界も寡占状態となり、競争が働きにくくなるというデメリットもあります。個人的な体験ですが、私が某金融機関に時間を約束の上訪問した際、1時間待たされるという腹立たしい思いを最近致しました。こうした金融再編の動きが消費者へのサービス低下につながらないことを切に願う次第です。
さて、UFJをここまで追い込んだのは先の金融庁による検査なのですが、その検査を担当したとされる目黒謙一検査管理官が、大手行全てを担当するとの人事が発令されたとする報道がありました。これだけ注目を浴びてしまうと、特定の銀行を担当させることは、担当行の株価下落等も招きかねず、こうした形にせざるを得なかったのでしょう。
注目すべきは、目黒氏は高卒のノンキャリア組だということです。「仕事と学歴は関係ない」、いやむしろこの場合は、高度な専門性が要求される検査のような業務だと、長年の経験が要求されるのですが、一般的に高学歴のキャリア官僚は細かい事実の検証のような地道な作業を嫌がったり、一箇所に固定される人事を嫌うということを考えると、「学歴は仕事の邪魔となることももありえる」ということを如実に語る事例といえるでしょう。キャリア戦略という観点からも興味深い報道です。
なお、目黒氏についての記述は、こちらのブログに詳しい記述があり、参考にさせていただきました。ご興味のある方はご覧下さい。